新製品レビュー

RTX4090搭載のクリエイター向けPC「マウスコンピューター DAIV DD-I9G90」

ニコン Z 9のRAWデータと8K動画で動作検証

マウスコンピューター「DAIV DD-I9G90」(右)。モニターはiiyama「ProLite XB3288UHSU」

マウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」シリーズは、とにかくハイスペックを詰め込んでクリエイターの要求に応えるPCシリーズ。最近のデジタルカメラは、高画素の写真だけでなく、高解像度/高フレームレートの動画を撮影できる機種が多く、ニーズも高まっている。画像の補正だけでなく動画の編集も行うとなると、PCにもとにかく大盛りのスペックが必要になる。こうしたニーズに応えられるDAIVの最新モデルをチェックしてみた。

この記事で紹介した「DAIV DD-I9G90」が4月5日10時59分まで安くなっています。

DAIVブランドは、マウスコンピューターの中でも「クリエイターのためのPC」というコンセプトで開発されたシリーズ。ビジュアル制作大手のアマナグループの協力により開発され、フォトグラファーから映像クリエイター、CGクリエイターといった幅広いプロのニーズに応えることを狙っている。

この例ではデスク上にあるが、大型なのでデスク下に置く方が良さそう。その分、デスク下に置いたときの使い勝手も配慮されている

BTOにより、必要に応じてカスタマイズにも対応。デスクトップPCとノートPCの2ラインナップだが、今回はデスクトップPCの最新ハイエンドモデルを試用した。

DAIVデスクトップPCは、これまでAMD Ryzenを採用した「DAIV Aシリーズ」、インテルCoreプロセッサの「DAIV Zシリーズ」、さらにNVIDIAのハイエンドグラフィックスを搭載した「DAIV Zシリーズ(プロフェッショナル)」という3シリーズだったが、最新スペックと新デザインを採用した「DAIV DDシリーズ」が投入された。その中から「DAIV DD-I9G90」をお借りした。

未来的デザインのハイエンドマシン

まずは簡単にスペックを確認すると、CPUは最新のCore i9-13900KFを採用。第13世代となったCoreプロセッサは、コア数は24、スレッド数は32となって、L2キャッシュの増加やDDR5-5600の採用など、従来よりもさらに高速化している。グラフィックスはNVIDIAのGeForce RTX 4090。こちらもハイエンドで4Kゲームも快適に動作するスペックだ。

DAIV DD-I9G90 スペック

  • OS:Windows 11 Home 64ビット (DSP)
  • CPU:インテル Core i9-13900KF プロセッサ
  • グラフィックス:GeForce RTX 4090
  • メモリ:標準容量64GB (32GB×2 / デュアルチャネル)
  • M.2 SSD:2TB (NVMe Gen4×4)
  • 無線:Wi-Fi 6E(最大2.4Gbps)対応 IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠 + Bluetooth 5内蔵
  • 電源:1200W/AC 100V(50/60Hz)【80PLUS PLATINUM】
  • 重量:約13.9kg
  • 保証期間:1年間センドバック修理保証・24時間×365日電話サポート
Core i9の最新プロセッサを搭載

メモリは標準で64GBのDDR5-4400。最大128GB(DDR5-3600)まで拡張可能。ストレージは2TB NVMe SSD(M.2 PCIe Gen4 x4接続)なので十分なスピードだが、より高速なSamsung PM9A1(2TBのNVMe SSD)へとカスタマイズすることもできる。

DAIVの名前の由来にも「Visual」とあるとおり、画像、映像向けに特化した製品

システムドライブは2TBだが、ストレージとしてM.2 PC Express接続のSSDやHDDの追加も可能。他にも光学ドライブの追加や外付けストレージの追加などのカスタマイズ、マウスやキーボード、ディスプレイのオプション追加もできる。逆に言えば、すでに自分の体に適したキーボードなどを持っているなら、追加する必要はない。

シャーシのデザインも変更されている。これまでは、上下にハンドルがついたようなデザインだったが、DAIV DDシリーズでは上部のハンドルもデザインが変わり、一体感が高くよりオリジナリティのあるデザインとなっている。従来モデルはやや武骨寄りのデザインだったが、未来的な印象になった。

シャーシを正面から見たところ。なめらかな曲面を生かしたデザインだが、柔らかさというよりも未来的な印象がある
背面はエアフローを考慮したデザイン。インタフェースも豊富

シャーシは大型で内部も広々。今回は自分で拡張はしていないが、自分が普段使っているPCから比べれば楽に内部にアクセスでき、パーツ交換も容易にできそう。内部が広いため、ロングサイズのグラフィックスカードも2枚設置できるようになった。CPU、グラフィックスカード用に240mm水冷を2基搭載できるほか、ATXマザーボードだけでなくEATXマザーボードも対応できるという。エアフローも配慮されており、重い処理が長時間にわたる動画編集でもパフォーマンスが期待できそう。パフォーマンスは一定の期待が持てる。

前面パネルを外したところ。マグネット脱着式のホコリ防止用フィルターも装備されている
フィルターを外すとズラッと並ぶファン。動画編集時など、内部が高温になって動作が遅くなることを防いでいる
光学ドライブは前面パネルと一体化するように装着できる
内部は少しケーブルを避ければ内部までアクセスしやすい広々としたもの。右手前側に縦に延びるバーは「VGAサポートバー」で、グラフィックスカードを支えて脱落しにくいようにしている(DAIV発表会にて撮影)

前面インタフェース類は本体天面に移動。大きさや11kgを超える重さなどから考えて、DAIV DDシリーズは床置きを想定しているのだろう。その意味では、前面にあるよりも天面にあった方がアプローチしやすい。この変更は正しいと思う。USB Type-Cポートも1基追加されており、利便性も向上した。

天面にあるインタフェース部。電源ボタンだけくりぬかれたスライドドア
ドアを開くとUSB Type-Cを含めたインタフェースが現れる

ハンドルは上部1カ所だが、DAIVシリーズの特徴となるキャスターの利用には問題がない。ハンドルを持って前面を持ち上げると後ろ下部のキャスターが接地し、前後に軽い力で動かせるようになる。背面の端子にアクセスする場合や移動のときに楽に移動できる。

上部のハンドルは裏⾯に⼤きなクッションがあって持ってもあまり痛くない
底部にあるキャスター。なめらかに前後に動かせる

Z 9の8K動画も快適に編集

画像の補正は、CPU、グラフィックス、メモリ、ストレージの全てが影響する。最近はグラフィックスカードのGPUによる画像の表示や処理、書き出しが広く活用されているが、CPU速度も重要だし、メモリは画像の一時保存先として高速性と容量の大きさが重要視される。ストレージはもちろん高速であるほど処理が速くなる。動画を処理するとなったら、さらにその一段上のスペックが必要になる。

DAIV DD-I9G90は、現在の最上位レベルのスペックを備えており、今のところは最も快適な処理ができると考えられる。実際に試してみよう。

CPUパフォーマンスを計測するCINEBENCH R23のテストでは、シングルコアで2238、マルチコアで31815という結果。シングルコアはともかくマルチコアの性能はかなり高性能。Adobe Camera RawによるRAW現像をしているとCPUが使われているため、こうしたシーンで効果を発揮しそうだ。

GPU性能の計測には3Dmarkを利用。Time Spyのスコアは29785で、グラフィックスは34943、CPUは16062という結果だった。PCmark 10での結果は9683。

テスト結果

  • CINEBENCH R23(シングルコア):2238
  • CINEBENCH R23(マルチコア):31815
  • 3Dmark Time Spy(スコア):29785
  • 3Dmark Time Spy(グラフィックス):34943
  • 3Dmark Time Spy(CPU):16062
  • PCmark 10:9683

ストレージはCrystalDiskMark 8で計測。シーケンシャルリード、ライトの速度は十二分に速い。今回はBTOの標準SSDだが、高速なSamsung製SSDにすればさらに高速化することが期待できそう。

CrystalCrystalDiskMark 8の結果

いずれも高いパフォーマンスを示しており、日常用途では過剰なほどだが、画像や映像の処理をしているときは頼もしいと感じるレベルだ。

実際にLightroom Classicではどうか。ニコンZ 9のRAWデータ100枚を読み込んでテストをしてみた。約4,571万画素のフルサイズセンサーの画像とはいえ、100枚程度であればさすがにサムネイルの表示は高速で検証にならないが、当然ながら等倍表示も高速で引っかかりは感じない。

設定の「パフォーマンス」にある「Camera Raw」で「グラフィックプロセッサーを使用」の設定項目を「オフ」(CPUを使う)と「カスタム」(ディスプレイ、画像処理、書き出し全てにGPUを使う)に切り替えて100枚の画像に自動補正をかけて書き出しをしたところ、CPUでは79秒だったのに対し、GPUでは45.8秒だった。枚数が多ければ多いほどこの差はさらに広がるわけで、大量データを処理する場合に効果は大きいだろう。

Photoshopに画像を転送してフィルタを適用するとCPUが一斉に激しく動作する。32コアが動作している様子は壮観ではある
Photoshopで100枚の画像を開いたところ、メモリは56.7GBを消費した。64GBだとやや物足りないかもしれないが、BTOでは128GBまで増設できる

続いては、Adobe Premiere Proを使った動画処理でのテスト。使ったのは同じくZ 9の4K、8Kの映像。Z 9の場合、4K(3,840×2,160)で120p〜24pまでの動画撮影に対応。さらに8K(7,680×4,320)で30p、25p、24pでの撮影ができる。8Kだと3,317万7,600ピクセルになるので、静止画切り出しでも十分な解像度ではあるが、それだけの容量の動画ということで、高速なマシンでないと処理が難しい。

Premiere Proに動画ファイルを読み込んでみると、8K動画でも快適に編集作業ができる。プレビューのシークでも引っかかりはなく、スイスイと任意の位置に移動できる。エフェクトの適用でも止まることはなく、複数の処理をサクサクと適用できて快適だった。

Z 9で撮影した8K動画を複数取り込んでみたが、高解像度であることを感じさせないスピード。シークバーがキビキビと動かせるので停滞せずに編集作業ができる

9.34GBの8K動画(3分26秒)を4K H.264動画に書き出しをしたところ、2分54秒と実時間よりも少し速いスピードでの書き出しができた。GPUを使うことによって十分な高速化を実現している。もちろん、長時間になるとそれだけ時間がかかることになるが、ここまで高速化できるようになった、とも言い換えられる。

効率的に画像・動画編集を

DAIV DDシリーズは、シャーシのデザインを一新し、中身も最新パーツを使ったデスクトップPC。CPU、グラフィックスは最上位レベルで、今後さらにパーツを入れ替えたいと思ったときも、カスタマイズ性も高いので安心感がある。

価格は税込67万9,800円から。メモリを128GBにしたりSSDを高速化したりすると86万円となってしまうので決して安い価格ではないが、効率化を追求して仕事のスピードを速める、というのも大事なポイントだ。

今どきはハイエンドPCを探すとゲーミングPCになってしまうことも多く、クリエイター向けと銘打ったハイエンドPCは多くない。多くの画像と動画を扱うクリエイターが効率的な画像補正、動画編集をしたいというニーズに最適な製品だと感じた。

【2023年3月20日17時】初出時、記事タイトルでグラフィックボード品番を「GTX」と誤って記載していたため修正しました。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。