新製品レビュー
Samsung Galaxy S23 Ultra
2億画素カメラ&強力な画像処理のハイエンドAndroidスマホ
2023年4月24日 08:00
Samsungの「Galaxy S23 Ultra」は、写真や動画機能が充実したハイエンドスマートフォン。Galaxyシリーズはこれまでも様々な機能を搭載し、高画質化も図ってきたが、最新モデルのスマートフォンがどこまで進化しているのかチェックしてみた。
大画面とSペンが便利なハイエンドスマートフォン
Galaxy S23 Ultraは、6.8型3,088×1,440という大型高精細ディスプレイを搭載するスマートフォンで、底面にSペンを内蔵し、ペンによる手書き入力や細かい編集作業などが可能というのが特徴。
スペックもハイエンドで、ゲームから高解像度の画像補正、高解像度動画の編集なども軽快に行える。その分本体サイズは大きく、約164.4×78.1×8.9mm、重さは234gにもなる。
従来通り、画面の端がカーブしたエッジディスプレイとなっているが、従来よりもフラットな面が増えている。
とはいえ、カーブしているのは確かなので、撮影時に横持ちをしていると指が画面に触れて操作ができなくなる場合もあった。
ディスプレイ自体は撮影時だけでなく再生時にも、大きさ、高精細、明るさといった性能は威力を発揮する。直射日光下でも十分見やすい。
Sペンを内蔵していることもGalaxy S23 Ultraの特徴のひとつ。このSペンによる手書き入力に対応しており、Lightroomでの細かな処理にも使用できる。特に最近はAndroid版Lightroomでもマスク処理が強化されているので、細かい作業にSペンは向いている。
面白いのは、標準のギャラリーアプリに画像の自動切り抜き機能が追加されている点。iPhoneにも搭載されている機能だが、被写体を長押しすると自動認識してその部分だけ切り抜いて、別の画像に張り付けることなどができる。それなりに精度高く切り抜いてくれるので、いろいろと遊べるだろう。
ギャラリーアプリの画像の切り抜き。Sペンで長押しするだけでその被写体を認識して切り取ってくれる。背景が透過されるので画像として保存するかコピー&ペーストで他の画像と組み合わせることもできる。
AIで高画質化したカメラ
カメラとしては4つのレンズを搭載。超広角カメラ(13mm相当、35mm判換算・以下同)、広角カメラ(23mm相当)、望遠カメラ1(広角カメラに対して3倍、69mm相当)、望遠カメラ2(同10倍、230mm相当)となっている。
画素数は超広角カメラが1,200万画素、広角カメラが2億画素、望遠カメラ1および望遠カメラ2が1,000万画素となっている。
広角カメラの2億画素という数値に衝撃を受けるが、通常の記録モードではすべてのカメラで4,000×3,000ピクセルの1,200万画素に統一されている。望遠カメラ1と2はいずれも拡大処理をしているようだ。
そのうち広角カメラは、16個の画素を1つの画素として扱うピクセルビニングにより、1,250万画素の画像を生成したうえで1,200万画素として記録している。4つの画素を1つの画素として見なし、5,000万画素として記録することもできる。さらに2億画素のまま記録することも可能だ。
イメージセンサーはSamsung製のISOCELL HPと推察される。その場合のセンサーサイズは1/1.22型で、ピクセルサイズは0.64μm。1,200万画素で記録する場合のピクセルサイズは2.56μm、5,000万画素なら1.28μmとなる。
優秀な広角カメラの画質
次に、一番よく使うであろう広角カメラの画質を見てみよう。色味やダイナミックレンジなどは従来機から変わらないように見える。こってりとした色味で、コンパクトデジカメと考えても十分な画質。2億画素を扱うとはいえ、1,200万画素での撮影で引っかかることもなく、動作は快適。2億画素での撮影時も違和感のないペースで撮影できた。
カッチリとした解像感高めの描写。色のりがこってりとしているのはSamsungらしい。
夕方の雰囲気も出ていて明暗のバランスもいい。
建造物のシャープなデザインが高い解像感とともに写し取られている。
広角カメラ開放F値はF1.7。被写体にグッと近寄れば背景はそれなりにボケてくれる。
記録解像度ごとの画質
広角カメラで同じ位置から1,200万画素、5,000万画素、2億画素を撮り比べて、中央付近を等倍で拡大してみた。
1,200万画素で記録。コントラストやダイナミックレンジが得られているが、細部が物足りない。
5,000万画素で記録。オートだったので露出が変わってしまったが、細部の描写は思ったよりも悪くない。ビニングが効いているのかなかなかに高画質だ。ただしややざらつきが感じられ、ダイナミックレンジが狭く感じる。
ビニングされていない2億画素はどうかというと、スマートフォンの画面上でみるならまあ十分なレベル。ただ、こうした直線の多いシーンでは有効だが、木々の枝のような、不規則な細かい被写体を見ると解像しきれていないようだ。
Expert RAWモードに2億画素モードがないことから、現実的には5,000万画素にとどめておいた方が画質面でも無難だろう。特段、2億画素を使った撮影機能があるわけでもないし、画像サイズが大きく容量も重いのもネックだ。
望遠カメラ1/2の実力
撮影機能としては、望遠カメラ1(3倍)、望遠カメラ2(10倍)での撮影が可能な点は従来通り。ただし特に明言はないが、スペック的には同じでも、恐らくAI処理が向上した結果なのか、画質は向上しているように見える。
デジタルズームは30倍〜100倍まで拡大できるが、さすがに100倍は無理のある画質。スマートフォンの画面で拡大せずに見るというのであれば、写っているものが分かるレベルで、楽しい気分にはなる。
カメラごとの画角の違い
遠くにモデルに立ってもらい、同じ位置から光学カメラ→望遠カメラ1→望遠カメラ2→デジタルズームと迫ってみた。
広角カメラでの撮影。サムネイルだと分かりづらいが、中央にモデルが立っている。
望遠カメラ1だとモデルの存在をようやく認識できるようになる。
望遠カメラ2だとここまで近づく。ただ、暗部のノイズが多くなり、細部の描写も低下している。
デジタル30倍ズームで撮影。かなり遠くからの撮影なのに、モデルをしっかりフレームに収めることができた。
人物撮影/ポートレートモード
モデルを撮影しながら、顔検出や露出制御を見てみた。デジタル処理で背景ボケを強めるポートレートモードも試している。
広角カメラを用いて逆光で撮影。検出した顔にピントと露出があっている。背景には強いHDRがかかり、顔との露出差がなくなっている。適度なボケもいいあんばいだ。
ポートレートモードでは光学3倍での撮影になった。デジタル処理で背景は強くボケている。人物を浮き上がらせつつ、近距離の前ボケは弱めなので自然。ただ、指の周りの処理が完璧ではないようだ。
髪の毛の分離に失敗することもあるが、シーンによってはずいぶんと健闘している。
Expert RAWモード
Expert RAWモードは、従来のプロモードのようにシャッタースピードや露出、ホワイトバランス、ISO感度を切り替えられるモードで、RAW(DNG)で撮影して、撮影後にすぐにLightroom mobileに転送できるという点が特徴。撮影後すぐに編集することもできるし、Lightroomの機能を利用してPCと同期することも簡単にできる。5,000万画素での撮影も可能だ。
Galaxyシリーズには、強力なファイル共有機能があり、撮影した画像をすぐに転送できるが、Android以外には転送しづらい。その点、Lightroomを中継すれば他のメーカーのAndroid端末やWindows PC、Macとも同期しやすい点も便利。
画像処理の部分だけでなく天体写真モードも搭載。通常の夜景撮影は連写合成で手持ち撮影が可能だが、こちらは三脚必須で数分間の撮影時間が必要。撮影時間に加えて、長時間露光時での星の位置が移動してしまうのを、AIを活用した合成処理で点として押さえる処理時間も必要になる。
現在地に合わせて星図を表示してくれる機能もあり、スマートフォンのセンサーを使ってカメラを向けた方向にある星座が表示されるので、撮りたい星座を簡単に見つけられる。星の軌跡を表示する天体ハイパーラプス機能も備えている。
効果の高い動画記録時のスーパー手ブレ補正。8K動画も記録可能
SoCがSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyとなったことで、8K動画の撮影も快適。手ブレ補正効果もかなり高められており、光学式手ブレ補正と電子式手ブレ補正(VDIS)を併用することで、歩きながらの動画撮影もかなりブレが抑えられる。
4K30p、スーパー手ブレ補正による撮影。画角はかなり狭くなっているが、手ブレは大幅に抑えられる。
さすがに8K動画では通常の手ブレ補正だが、それでも歩くぐらいならそれなりに手ブレが抑えられるので優秀だ。
まとめ:AIのアルゴリズムで画質向上
Galaxy S23 Ultraは、ハードウェアよりもアルゴリズムの改善が画質に大きく寄与しているようだ。特に光学3倍、光学10倍の望遠カメラの画質が向上。解像感が向上している。
2億画素の広角カメラは、ピクセルビニングによって暗部から明部までバランスよく描写し、描写にも不満は感じない。2億画素での撮影はダイナミックレンジや解像の面では厳しくなるが、直線が中心のビルなどの建造物だと従来の1億800万画素よりもよく写るように感じた。5,000万画素もよく解像しており、スマホカメラとしては実用的なレベルになっている。
天体撮影や夜景撮影、動画の手ブレ補正など、難しいシーンにも対応できる実力も備えており、完成度の高いカメラという印象だ。スマホカメラらしくシャドーを明るくしすぎて少しノイズが乗っているので、個人的にはトーンカーブを少しいじると写真の雰囲気も良くなると感じた。
撮影時にマイナス補正をして撮影。明るくなりがちなので、少しマイナス補正をした方が好み。
最大の難点は日本モデル特有のシャッター音で、大きめの音は健在。シャッター音の小さめなスマホカメラもある中で、もう少し静音化してくれると使いやすくなる。このあたり、仮にSIMフリーモデルでシャッター音を消せるモデルがあればなお良かった。
それでも、画質面では最高クラスと言ってもよく、見やすい大画面、シャッターリモコンとしても、細かな補正作業にも使えるSペンも優秀で、カメラ機能を求めるユーザーにお勧めのスマートフォンだ。
モデル:透子