新製品レビュー

Nikon NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

軽量ながらZシリーズの描写性能を引き出せる1本

ニコンからZマウント用の高倍率ズームレンズ「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」が発売された。4月の発売予定が延期となっていたレンズだが、この7月3日にめでたく発売となった。なお、同じく発売が延期となっている「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」は現在も具体的な発売時期が未定となっているが、こちらの発売も待ち遠しい。

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(以下、本レンズ)は、Zマウント用として初の高倍率ズームレンズだ。広角24mmから望遠200mmの8.3倍ズームで、標準ズームと望遠ズームの焦点距離を1本のレンズでカバーしている。

ニコンの高倍率ズームといえばFマウント用の「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」があるが、本レンズと比較してみると、望遠側が300mmから200mmと短くなってはいるものの、広角側が28mmから24mmに広がっているので、風景や引きのない室内での撮影でより使い勝手のいい焦点距離となっている。

デザインと操作性

鏡筒デザインはこれまでのZレンズ同様、黒と白文字のシンプルなものでスッキリとかっこいい。ズームリングはかなり幅広く、安定したホールディングと操作性に優れる。ピントリング(コントロールリング)もまた、これまでのZレンズ同様やや細めのつくりとなっているが、スムーズな操作性で不満はない。

重量はなんと約570gしかなく、35mm判フルサイズ用の高倍率ズームレンズの中でもかなり軽い部類に属する。

同じフルサイズミラーレスのライバル機を見ても、ソニー「FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS」は約780g、キヤノン「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」では約750gとなっており、いずれも700g強の重さがある。これらのレンズに対してみても、本レンズは約200gも軽量に仕上げられているのだ。

焦点距離の違いがあるとはいえ、AF-S NIKKOR 28-300mmの重量は約800g。Zマウントとなったことで、設計の自由度がひろがったこともあるだろうが、軽量化の進展が非常に大きいことがわかる。

この軽量設計の恩恵はボディとの組み合わせた際に、さらに際立つ。今回はZ 7と組み合わせて試用していったが、本レンズと組み合わせた総重量は約1,245gしかない(Z 7の重量は約675g)。実際に1日撮影してみても首への負担は少なく、重さで手が疲れることもなかった。グリップが深いZ 7とは好相性の組み合わせだと感じた。

ちなみに、Zマウントの標準ズームレンズで多く採用されている沈胴式の構造は本レンズでは用いられていない。そのため最も短くなる24mm側でもレンズの全長は114mmとなるなど、やや長めのレンズといった印象を抱く人もいることだろう。最大径は76.5mmでフィルター径は67mm。同梱の花形フードは広角24mmに対応するため浅めの設計であり、長めの鏡筒にはちょっとアンバランスかもしれない。

ズームを200mmまで伸ばすと全長は倍近くまで伸びる。軽量な設計となっているからか、200mmまで伸ばしても重量バランスは良く、フロントヘビーになることもない。このバランスの良さは、手持ちでも三脚でも扱いやすいというメリットをもたらしている。

“沈胴式を採用していないから”というわけではないかもしれないが、本レンズにはZレンズでは初めてズームロック機構が採用されている。ただ、ズームのトルク自体が比較的固めなので、ズーム中間域で真上や真下にレンズを向けても自重で落下するようなことはない。実際の運用時にはカメラバックに入れる際に念の為ロックする、といった使い方になるだろう。

作例

日光の森でぐるぐるとねじれて育ったミズナラを見つけた。光を求めて高く伸びた力強さを描くためにローアングルからあおって撮影した。広角24mmで撮影したが解像感はパーフェクトに近く、雨に濡れて苔むした木肌を美しく描きだしている。画像周辺部には色収差がみられるものの、等倍拡大してようやく確認できる程度。発生量自体とても少ないのでまったく問題にならないだろう。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(24mm) / 絞り優先AE(F11・2秒・+0.7EV) / ISO 64

雨が森を潤し、苔むした倒木にはミズナラの幼木が育っていた。かつて枝が広がっていた空間はぽっかりと穴があき、スポットライトのように地面を照らしている。この日は激しい雨が降っていたが、本レンズは防塵防滴仕様のため、こうしたシーンでも安心して使用できる。レンズ交換のほとんど必要ない高倍率ズームであることと防塵防滴仕様であることによって、雨の日の撮影は本レンズ1本だけで対応することもできる。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(26mm) / 絞り優先AE(F11・0.3秒・-1.7EV) / ISO 64

ラベンダーの蜜をアゲハチョウが吸っていた。とっさの撮影でもレンズ交換せずに望遠200mmで遠くの被写体をクローズアップできるため、シャッターチャンスにめっぽう強い。これは風景やネイチャーといったフィールド以外にも、人物やイベント撮影、スナップなど、あらゆる被写体で大きなアドバンテージをもたらしてくれる。

このシーンではシャッタースピード優先で撮影したため、F値は開放のF6.3となっているが、周辺光量落ちは多め。画像四隅はかなり黒く落ちこんでいる。ただ、個人的に周辺光量落ち自体は作品として見た際にはむしろ好みなので、あまり気になってはいない。どうしても気になる、という人はカメラ内で周辺光量補正ができるので、該当機能をオンにしておくのがいいだろう。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm) / シャッタースピード優先AE(1/1,250秒・F6.3・-0.7EV) / ISO 360

200mmの最短撮影距離0.7mで撮影したサトキマダラヒカゲ。最大撮影倍率は0.28倍とクローズアップ撮影もけっこう楽しめる。またZマウントレンズ全般にいえることだが、最短撮影時にも解像力の低下はほとんど感じられず、高い解像力を維持している。さらに、本レンズはボケもやわらかく素直なので扱いやすい。

また補正効果約5.0段という強力なレンズ内手ブレ補正機構を内蔵するため、望遠域であってもフレーミングをしっかりと安定させながら撮影することができる。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm) / 絞り優先AE(F6.3・1/400秒・+0.7EV) / ISO 560

上の写真と同じチョウを最短撮影距離0.5m(24mm側)で撮影した。広角側の最大撮影倍率は製品仕様表に記載がないため、具体的な数値は不明だけれども、印象としてはあまり寄れないと感じた。望遠側がそこそこ寄れるだけに広角ももう少し寄れたらうれしかった。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(24mm) / 絞り優先AE(F4・1/60秒・±0EV) / ISO 64

スズメバチが他のスズメバチを威嚇しているところ。望遠側の開放F値はF6.3と、決して明るいとは言えないため、晴れている日でも木陰など少し暗がりになる場所ではシャッタースピードを確保するためにISO感度をやや上げてやるのが、使いこなしのコツになるだろう。F値と本体サイズはトレードオフの関係なので仕方のないところだ。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm) / 絞り優先AE(F6.3・1/400秒・+0.3EV) / ISO 1800

上と同じ撮影ポジションから少し太陽をのぞかせてみた。本レンズはレンズ面に対して垂直方向から入ってくる光による反射を抑制するニコン独自のコーティング「アルネオコート」を採用しているが、逆光耐性は並といったところでやや目立つゴーストがひとつ発生しやすい。ゴーストの個数自体は少ないのでフレーミング次第で目立たない位置に調整すれば、対応できるレベルだ。

ニコンZ 7 / NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm) / 絞り優先AE(F6.3・1/400秒・-0.3EV) / ISO 640

まとめ

レンズ交換をすることなく、あらゆる被写体を撮影できる便利さは、スナップや旅行での撮影に最適だ。一方でじっくり撮影する風景写真などではレンズ交換をすればいいのだから高倍率ズームはいらないのではと思われがちだが、個人的には高倍率を中心としたレンズ選びも大いにおすすめしたい。

というもの、私は風景写真でも超望遠ズームをけっこう使うので、たとえばちょっと重たいが「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」のようなレンズも使おうと考えると、本レンズの焦点距離的にベストマッチとなるわけだ。

また、Zマウントでシステムを組んでいく場合は、広角側は軽量な「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」を揃えればパーフェクトだ。またはズームレンズは本レンズだけに絞ってしまって、他は好みの単焦点レンズをいくつか揃えるというもの個性的でグッドだ。

いずれにせよ、本レンズは約570gと携行性に優れた重量に反して、Z 7のような高画素モデルの撮影性能をしっかりと引き出してくれる高い描写力をしっかりと備えている。フルサイズミラーレスデビューしたいと考えているフォトグラファーにとっても、かなり魅力的な万能レンズとなる。フルサイズZシリーズはもちろん、APS-Cセンサー採用機であるZ 50ユーザーにとっても魅力的な選択肢となることだろう。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。