ミニレポート

"巻き簾"や"ぶら下げ"を活用。ローアングルでキノコを撮るためのアイデア集

これがキノコ撮影の様子

私はキノコや苔などを身近な雑木林で撮影することが多い。なるべく低い位置から撮影したいわけだが、そんな場合の撮影の工夫を今回は紹介してみたい。

Leofotoポケット三脚MT-03+自由雲台LH-25の組み合わせ。地面からカメラの底面までは約10cm

まずオーソドックスなパターンで言えば、丈の短い雲台とミニ三脚を使うことだ。地面からカメラの底面までの高さは9〜11cmぐらいになる。キノコ目線とまではいかないが、低い位置から撮影ができる。軽いししっかり固定できて撮りやすい。ふだんバッグの中に忍ばせておいても邪魔にならないし、ネコ目線で撮ったりするのに向いている。

巻き簾で「置くだけ撮影法」

ただ、もっと低い位置から撮りたいんだよなー、というケースもある。そんな場合は地面に置いて撮るという方法もあるのだが、それだと上を向けるとか下を向けるといったアングル調整が難しい。

そこで用意したのが巻き簾だ。卵焼きとか海苔巻を作るのに使う調理用具のことですね。これは100円ショップなどで購入が可能。使い方としては、この巻き簾を折ってレンズの下に入れるのだが、厚みを変えることにより角度を調整できる。

巻き簾を丸めてレンズの下に入れた状態。どの位置に入れるかによっても角度は変えられる
レンズではなくボディの下に入れることにより下向きにもできる

巻き簾以外だと、滑り止めシートなんかも使える。パソコンや玄関のマット、コップなどの下に敷いて使うシートのこと。ホームセンターや100円ショップなどで販売されている。

滑り止めシート。ソフトなので若干沈むが、滑らないのはいい

そのほかゴムのシートでも木片でも、レンズの下に入れて角度の調整ができれば構わない。滑らず、柔らかすぎず、厚みを変更しやすいものがいい。

3mm厚のゴム板。重ねる枚数を変えることにより角度の調整ができる
ゴム板をレンズの下に入れたところ。これも滑りにくい

注意点としては、ダイレクトに地面に置かないようにすること。三脚穴に泥などが入ると嫌なので、最初から地面に置いて使うつもりであれば養生テープなどを貼って保護しておいてもいい。どの方法においても、カメラはただ地面に置かれているだけで安定性はよくないので、シャッターをを切るのにはリモートケーブルを使用している。

機材を組み合わせた「ぶら下げ式」

上の方法は"地面に置いて撮る"ということだけを想定しているが、もう少し高さや角度にバリエーションを出したい場合は、もっと機材を組み合わせて工夫をしている。三脚にベルボンのマルチアングルユニットを組み合わせる方法だ。

この製品は、グリップを回転させることによりロックしたり解除したりする仕組みなのだが、グリップから手を離さずにロック操作と角度・方向の操作ができるのが気に入っている。

梅本製作所自由雲台、ベルボン アングルアダプター4、ベルボン マルチアングルユニット、Leofotoカーボン三脚LS-223C。赤丸部分がマルチアングルユニットのグリップ
赤丸部分はベルボンのアングルアダプター4、直角にアングル変えたい場合に便利

ただしこの方式の場合、カメラの下に雲台がくる分、どうしても高さが出てしまう。そこで試行錯誤の末に考えついたのは、カメラの上部にあるホットシューを利用して上から吊り下げる方式。これを現在の基本装備としている。

カメラのホットシューに取り付けたのはVIJIMカメラハンドルグリップ。以下は上のパターンと同様。梅本製作所自由雲台、ベルボン アングルアダプター4、ベルボン マルチアングルユニット、Leofotoカーボン三脚LS-223C

ホットシューについているのはカメラをぶら下げるためのハンドル。ややこしい感じだが、これで地面の高さから撮影ができ、さらに高い位置からの撮影も可能になった。さあ今日はキノコを撮りに行くぞー、という場合はこんな組み合わせで出動している。

上の写真を部分アップ。このパターンでも、ベルボン マルチアングルユニットを使って直角に向きを変えている

注意点としては、ホットシューに取り付けている部分が緩むとカメラが脱落してしまうということ。私もカメラを落としてしまったことがある。そこで現在は、外れても大丈夫なようにカメラのストラップを三脚に引っ掛けて使っている。

実際に撮影しているところ。ミニ三脚だとこの高さからの撮影ができない

ピント合わせにはバリアングル式モニターを活用している。ファインダーを覗こうとしたら地面に這いつくばらないといけないから、これは凄く便利。ピント拡大とピーク表示のオンオフを使いやすいボタンに割り当て、マニュアルフォーカスで撮影している。オートだとなかなかピントを合わせづらいケースがあるので、拡大表示でしっかりピント合わせをしているというわけだ。また、被写界深度を深くしたい場合には深度合成モードを使う場合もある。

撮影例

オリンパス OM-D E-M1 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
オリンパス OM-D E-M1 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
オリンパス OM-D E-M1 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
オリンパス OM-D E-M1 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro

地面からの撮影では、ふだん見ることのない姿を写すことができておもしろい。キノコに限らず、野草でもネコでもローアングル撮影に挑戦できる被写体はいろいろあるので、興味のある方は、巻き簾からお試しを!

宙玉アワード2020 審査結果発表!

「宙玉アワード2020」の審査結果が発表されました。宙玉サイト(https://soratama.org/)よりご覧ください!

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「改訂新版 写真の色補正・加工に強くなる〜Photoshopレタッチ&カラーマネージメント101の知識と技」(技術評論社)などがある。撮影や工作に関する情報は上原ゼンジ写真実験室にまとまっている。