ミニレポート
“新しい家族の一員“みたいな自動カメラ「PowerShot PICK」
キヤノンの新コンセプト第3弾 音声コマンドや顔追尾の検証動画も
2021年2月19日 00:00
キヤノンがクラウドファンディングサイト「Makuake」で販売するニューコンセプトカメラ「PowerShot PICK」について、外観や基本的な動作をお伝えしていきたい。
なお、当初用意数の3,000台は既に販売受付が終了しているが、2月19日10時から1,000台の追加発売が行われる。用意しているのは「本体1台+急速充電器1台」のセットで、価格は4万2,500円(税込)。
キヤノンの新コンセプトカメラ第3弾
PowerShot PICKは顔認識機能による自動追尾を特徴とした自動撮影カメラだ。カラビナスタイルの「iNSPIiC REC」や望遠鏡型カメラ「PowerShot ZOOM」に続く、キヤノンの新コンセプトカメラ第三弾として登場した。
本機はファミリーユースをメインに想定しており、自動撮影機能によって家族全員が一緒に写った写真を残せるという点がポイント。撮影するタイミングもカメラ側の判断としており、思いがけないシーンが撮れることも楽しみのひとつだという。家族の様々なシーンを切り取ってくれる本機を、同社は「思い出フォトグラファー」と表現している。
自動撮影とは
自動撮影とは読んで字のごとく、電源を入れたら後はカメラ自身の判断で静止画や動画の撮影を開始してくれる(初回起動時のみスマートフォンとのペアリングが必要)。顔認識機能によりカメラが周囲にいる人物を見つけて顔を追尾。35mm判換算19~57mm相当の画角を有するレンズで、左右±170度のパン、上下-20〜90度のチルト(いずれもリモート撮影時の数値)を駆使して構図の調整まで自動で行う。
撮影するタイミングもカメラ自身が判断する。人の動きや表情が判断材料となるが、基本的には笑顔に反応するように設定している。しかし、それだけでは同じような画ばかりになってしまうため、カメラ側の判断により、様々な表情や構図で撮影のバリ―ションを増やしていくのだという。
画角内に人物がいない時は、カメラが自ら首を振って探しに行く。登場人物をカメラに登録することも可能で、特定の人を多く撮影したい場合は、その人にお気に入りマークを付けることで優先的に撮影してくれる機能も有している。
PowerShot PICKの名前の由来について同社は、家族の思い出や日常の何気ないシーンなどを、カメラ自身の判断によって“pick up”することに想起していると説明。二度と戻らない一瞬を、後々に宝探しのような感覚で掘り当てることができる。そんな期待がこのカメラには込められているのだという。
外観
梱包をほどいて一番最初に驚いたのはそのサイズ感だ。外形寸法は約56.4×56.4×81.9mm。手のひらに収まる小ささで、とてもかわいらしい印象。重量も約170g(SDカード含む)で、指でかるくつまめてしまう程だ。センサーは有効約1,170万画素の1/2.3型CMOS、画像処理エンジンはDIGIC 7を搭載している。
カメラの設定等は専用アプリで行う仕様のため、カメラ本体の操作系は非常にシンプルになっている。左側面に電源ボタンとワイヤレス送信ボタンを、右側面に充電・給電用のUSB Type-C端子を備えている。また、両側面にはそれぞれ収音用のマイクが備わる。背面にはmicroSDカードスロットを搭載している。
電源を入れるとカメラがピュイっと応答。レンズがくるっと動いたら起動した合図。まるで飼い主の呼びかけに反応するペットのようでとても愛らしい動きだ。同社によると、本機がひとりのキャラクターとしていかに愛着を持ってもらえるかが、外観や音声をデザインするうえでのテーマだったという。
音声コマンドによるハンズフリー操作にも対応。可能な操作は4種類で、最初に「Hello PICK!」と呼びかけたあと「写真撮って!」(静止画撮影)、「ビデオ撮って!」(動画撮影)、「休んで!」(自動撮影一時休止)、「他も見て!」(被写体変更)の呼びかけで指示を送ることができる。うまく指示が伝わらない時は落ち込んだような音を出して知らせてくれる。
以下の動画は、起動から指示出しまでの動作確認。音声コマンドはスマートフォンによる文章読み上げ機能を使ったが、使用上特に問題なく認識してくれたように思う。一度目の「Hello PICK!」の呼びかけ後、次の指示が一定時間来なかったために、カメラが指示を認識できていない合図(落ち込んだような音)を発している。
専用アプリ
専用アプリを使用してスマートフォンとカメラを接続することで、様々な操作が可能としている。
カメラ操作画面からはリモート撮影に対応。レンズのパン、ティルト、ズームの操作で画角調整ができる。左上に配したアイコンで露出補正(±2段)の調整も可能。中段右側のレーダーはカメラがどの方向を向いているかを示している。レーダーの下のカメラアイコンを押すとカメラが正面方向に自動で戻る。画面内に認識可能な顔が映っている際には丸枠で表示され、カメラ側で自動追尾をつづける。自動追尾スイッチのON/OFF操作で自動追尾を停止することも可能。
再生画面ではカメラで撮影した画像や動画を確認することができる。カメラ側がおすすめする画像を“pick up”する機能がある。
基本設定画面では、静止画撮影時のアスペクト比や動画撮影の画質設定ができる。静止画撮影はアスペクト比4:3(約1,200万画素)もしくは16:9(約900万画素)から選択。動画はフルHD(1,920×1,080、60p)に対応している。
自動撮影に関する設定も可能。登場人物の優先設定や、撮影頻度のカスタマイズができる。自動撮影モードはエコ、ライト、アクティブ、カスタムの4種類から選択。カスタムでは、撮影頻度や探索範囲、ズーム範囲を調整できる。
ホーム画面のカメラアイコンをタッチすると、カメラ側からのメッセージを確認できる。長時間同じ場所に置いておくとカメラが設置場所の変更を提案してくきたり、充電が減っているときには知らせてくれる。
自動追尾性能を確認
自動追尾の挙動について確認した。画面内で認識した顔には白い丸枠が表示される。マスクを着けているので少々反応が鈍くなるが、最初に口元まで出して認識させておくとその後も追尾を続けてくれた。顔の動きをパンやティルトを駆使してカメラが追いかけ続けている様子がわかる。レンズの動きも非常にスムーズ。
使い方を発掘していく楽しみ
同社は、このカメラをどのように使うとよりいい写真や動画が撮れるのか、ユーザー自身の手で見つけていってほしいのだとコメントしている。基本的には据え置いての使用を想定しているが、それではどこに置くと面白い写真が撮れるのか。それを考える楽しみもありそうだ。
カメラの底面には三脚ネジ穴(1/4インチ)を備えており、カメラのセッティングにさらに応用が利くようになっている。
MakuakeではVelbon製三脚とのセットも展開された。スマートフォンホルダーが付属したハンドグリップにもなる三脚で、自分撮りをしながらの手持ち撮影などにも対応する。このセットを用意したのも、ユーザー自身で使い方や活用方法をひろげていってほしいという、開発への想いが込められているという。このセットは、受付開始から数時間で売り切れとなっていたようだ。
手持ち撮影で揺れ具合をチェック
本機は手ブレ補正機構を有している。そこで、ミニ三脚に取り付けて、歩き撮影を試してみた。肘を90度くらいに曲げて自然な姿勢で持ち、普通の速度で歩いてみる。
撮影した動画に、不自然なブレはないように感じた。途中、大きな段差を昇降したが、そこでも目立ったガタツキは感じられなかった。自分撮りをしながらの歩き撮影にも対応できそう。
ドライブ記録に挑戦
車の助手席にカメラを取り付けて、ドライブ記録を試してみた。レンズが揺れることでブレを抑制していることがわかる。動画は外部編集ソフトを利用して映像を繋いでいる。BGMも編集にて別途付けている。
自動撮影モードにしておくと、カメラが被写体を探して首を振り始めてしまうため、専用アプリのリモート撮影画面にしたまま、事前に画角を決めて撮影を実施。途中、音声コマンド「Hello PICK! 他も見て!」によりパン撮影も実験(音声コマンドの入力時はリモート撮影画面から退出しておく必要がある)。ドライブレコーダーや他の小型カメラ車載動画とは異なる、本機ならではの楽しみ方かもしれない。
今回はドライブ記録として、走行する道路の様子を撮影したが、例えばこれを助手席から後ろの席に向けて設置すれば、家族旅行などで出かけた際の思い出作りにも応用が利きそうだ。
次なる新コンセプトは
同社が新コンセプトカメラを積極的に投入する理由は、イメージングの力でもう一度市場に“成長のワクワク”を提供するためなのだそうだ。スマートフォンがフォトライフの中心となりつつある昨今の状況において、“新しい商品”によって“新しい写真の楽しみ方”を提案したいのだという。
ソトアソビカメラとして若年層へのコミュニケーションを企図した「iNSPiC REC」。“撮る×見る”を一体化させた「PowerShot ZOOM」。そして“家族”がテーマとなった今回の「PowerShot PICK」。三者三様でそれぞれに魅力が詰まっている。
PowerShot PICKに触れて感じたのは、“新しい家族”が加わったという感覚。家の掃除を担当してくれるのがお掃除ロボットならば、本機は家族の撮影係を担ってくれるカメラマン。同社が言う「思い出フォトグラファー」という表現はしっくりくる気がした。今回は大人数の場で試せなかったのが心残り。
また、工夫次第で様々な使い方ができそうな期待も感じた。自動撮影でカメラにお任せもよいが、自分で扱うカメラとしても用途の幅は広いように思う。今回はドライブ記録を試したが、とくに手ブレ補正を生かした動画撮影には色々と応用が利きそうだ。欲を言えば、専用アプリのリモート操作による画角調整が、もう少々だけ操作性がよくなると嬉しい。
一見すると曲者ぞろいの新コンセプトカメラだが、それらは「そんなアイデアがあったのか」という驚きや、「こんな見え方があるのか」という喜びを提供してくれる。次はいったいどんな世界を見せてくれるのか。既に楽しみな気持ちを抱えている筆者は、同社の狙いにすっかりはまっているのかもしれない。