ミニレポート
"自作絞り"で、絞っても玉ボケを得るアイデア
宙玉レンズ用に考案 黒ケント紙や樹脂ワッシャーを活用
2021年4月1日 12:00
イルミネーションなどを撮影すると、「玉ボケ」とか「丸ボケ」と言われるきれいなボケができる。しかし絞りが開放だときれいな円になるのだが、レンズによっては絞ると多角形の絞りの形になってしまい、ちょっと残念なことがある。そこで、少し絞りつつきれいな玉ボケを得るために円形の絞りを自作してみたので、今回はその過程をレポートしたい。
上の写真は、夜の街並みをアウトフォーカスで撮影したもの。絞りは開放の2.8で撮っているのでボケもきれいな円だ。
そして次の写真は絞りF4で撮影。六角形になっているが、これは絞りの形がそのままボケに反映されている。
これはDomiplan 2.8/50という、玉ボケ好きの間で人気のあるレンズだ。ボケの円に明るい縁取りが出て、いわゆる"バブルボケ"となるのが人気の理由。絞り羽根の枚数も少なく、ちょっと絞るとこんなふうにカクカクしたボケになってしまうのだ。
この玉ボケは、広角系よりも望遠系のほうが大きくなる。だから玉ボケを大きく目立たせたいのであれば、焦点距離が長いほうが有利だ。次の写真は35mm判換算420mm相当(M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO+1.4xテレコンバーター)で撮影したもので、絞りは上が開放の2.8、下がF8。絞ったほうのボケには絞り羽根の形が見えているが、Domiplanのようには目立っていない。これは絞り羽根のが9枚で、円形に近くなっているからだ。
そのほか、玉ボケが大きくなる条件は、なるべく点光源がピント位置から遠くにあることだ。この写真の人形のサイズは4cm、つまりクローズアップで撮っていることになる。そして丸くボケているバックの小さなLEDとの距離が広がれば、玉ボケはさらに大きくなっていく。
絞りを自作する
今回はDomiplanに手作りの絞りを取り付けてみた。黒い紙に丸い穴を空け、両面テープでレンズの裏に貼るという簡単工作だ。絞りのサイズをどれくらいの大きさにするのかは、次の式を参考にした。
焦点距離 ÷ 有効口径 = F値
Domiplanは焦点距離50mm、F2.8なので、有効口径は約18mmになる。有効口径というのは絞りそのものではなく「レンズの入射ひとみの直径」なのだそうだが、試作としてはとりあえず穴のサイズを7mmにして、玉ボケのサイズや被写界深度などの描写を見ながら調整することにする。
穴をどうやって空けたらいいのか悩んだのだが、レザークラフトなどに使う穴あけポンチのセットを発見したので買ってみた。
作り方は、
・ポンチで黒い紙に穴を空ける
・レンズに合わせて外周を切る
・レンズに自作絞りを接着
という手順だ。
最初に紙の外周を切り抜いてしまうと真ん中に穴を空けるのが難しいので、まず黒い紙(厚手の黒ケント)にポンチで穴をあけ、型紙を仮止めしてドーナツ型にカットした。一見きれいに見えた穴だが、よく見ると毛羽立っていたので、カッターを逆側から突っ込み、グリグリやって毛羽立ちを抑えた。
ここからは、レンズの後ろ側に手作り絞りを貼っていく。両面テープはニチバンのナイスタック「しっかり貼れてはがしやすいタイプ」が、しっかり貼れてはがしやすい。
まず両面テープを貼り、
テープの剥離紙を剥がす。
あとは不要な部分をカッターでカットし、
絞りを貼り付けた。
玉ボケ撮影を試す
下は、自作絞りを使って撮影したものと、それを部分拡大した写真。ガラスに映った光の反射が丸くボケている。
そしてこちらはレンズの絞りを使用。六角形の絞りの形が確認できる。最初はフルサイズで撮影していたのだが、玉ボケが目立たなかったのでAPS-Cにクロップした。焦点距離は35mm判換算75mm相当ということになる。カメラはソニーα7R IVで、ExaktaマウントからEマウントへのアダプターを使った。
もう少し玉ボケを目立たせようと思い、次は絞りのサイズを11mmと大きめにしてみた。下はその作例だ。ビルの窓の灯りが玉ボケになっている。フチ(輪線)も出ているから、自作の絞りであってもそのままバブルボケになるということだ。
こちらは店頭にあったイルミネーションをボカしてみた。こうやって撮影してみると、このDomiplanというのは独特の味わいのあるレンズだということが分かる。
自作絞りはテープで取り付けるため"絞り固定"となるのは不便だが、撮影意図にフィットする絞りのサイズが感覚的にわかれば、あとはシャッタースピードやISO感度で調整すればいい。もちろん絞り開放が良かったり、ボケがカクカクしても構わなければ、このような工作は不要だ。
宙玉にも自作絞り!
元々この玉ボケの形が気になったのは宙玉(そらたま)での撮影時だ。宙玉というのは玉を接写して撮影するので、周囲は強制的にボケる。イルミネーションを撮影したりするとそのボケが美しいのだが、ボケがカクカクしているのが残念だったのだ。絞りを開ければ玉ボケはきれいになるのだが、そうすると宙玉のエッジもボケてしまい、宙玉の透明球っぽさが薄れてしまうのだ。
最近気に入って使っていた宙玉用のレンズはソニーのFE 50mm F2.8 Macroなのだが、レンズの裏を見るとちょっと複雑で、手作りの絞りは貼りづらそうだった。そこで使ったのはタムロンSP 45mm F/1.8だ。
このタムロンレンズ用の自作絞りには、ナイロン製のワッシャーを利用した。ポンチの工作では若干の毛羽が発生してしまったが、このワッシャーの穴はきれいな円形だ。
これが、組み上げた宙玉のセットだ。なんだかものものしい感じになってしまった。
タムロンのレンズがニコンFマウント用だったので、ソニーEマウントへの変換アダプターと、宙玉にピントを合わせるための接写リング(Neewer製16mm×2)を組み合わせているからだ。
マウントの変換アダプターはPixco製だが、絞りを開けた状態にキープできることがポイント。この組み合わせではカメラから絞りの操作ができないので、レンズの絞りは開放状態にしておきたいからだ。
そして、今回工作した自作絞りを使っての描写が次の写真だ。玉ボケもきれいになりました。宙玉の場合は接写になるので、絞っても玉ボケは大きくなる。だからこのボケ味を生かした撮影がしたかったのだ。
一方こちらは、自作絞りではなく、レンズにもともと備わっている絞りを使って撮影したもの。使用レンズはFE 50mm F2.8 Macro、絞り羽根は7枚あるのだが、絞って撮影すると絞りの形が玉ボケに出てしまう。この違いを解消したくて、わざわざ絞りを自作したというわけだ。
これも自作絞りを使った撮影例だ。イルミネーションのようにはっきりしていないが、花もきれいに丸いボケになっていることが確認できる。玉ボケ狙いであれば、木漏れ日や水面のキラメキなんかもおもしろい。
今までイルミネーション撮影時の玉ボケの形に不満があったので、それが解消できることがわかりとりあえず満足。あとはこの絞りの着脱が簡単にできるように工作したいところだ。
今回はレンズの後ろに絞りを貼り付けるという工作をしたわけだが、この方法だとケラレが発生する場合もあるので万能な方法とは言えない。またこの工作はカメラやレンズにダメージを与えるおそれがあるので、真似される場合は自己責任でお願いします。
もっとも、単純に玉ボケを楽しみたいだけであれば絞り開放で撮影すればよいので、玉ボケ写真が撮ってみたいという方はお試しを。このデジカメ Watchでは、とよけん先生こと豊田堅二さんが「ボケ」について詳しく書いておられるので、そちらもご参考に。
写真展を開催中です
3月31日(水)から4月4日(日)まで、四谷三丁目のギャラリーヨクトにて個展「まあるい宇宙」(https://zenji.info/archives/2164)を開催しています。今回紹介した宙玉をはじめ、いろんな方法で撮影した、まあるい写真です。たとえばこれは、今はなき築地市場で発見したマンホールカバー惑星です。