ミニレポート

お菓子の空き箱で"映り込み防止フード"を作ろう!

ガラス越しの撮影に 「宙玉アワード2020」作品募集中

今回の工作は、お菓子の空き箱で作る映り込み防止フード

ガラス越しに撮影をする際、ガラス面に反射した光が写真に写ってしまう場合がある。そういった映り込みを防ぐための工作を今回は紹介したい。

状況としては、ビルの展望室から夜景を撮る、水族館や動物園での撮影、飛行機の中から外の景色を撮りたい、といったケースだ。製品もいろいろ販売されているが、大きかったりケラれてしまったりでいまいち使い勝手が良くなかったので、自分で工作をするようになった。

"お菓子の空き箱"に辿り着くまで

最初は3Dプリンターで作ったりしていたのだが、ガラス面にピッタリと付け、撮影する角度も自由に変えられるように、黒いゴムシートなどソフトな素材を使っていろいろ試作をした。そして気に入って使っていたのが黒い布とスポンジシートをつかった工作だ。

これはスポンジシートを黒い布で覆い、筒状にしたものだ。筒の端にゴム紐を通しコードストッパーを取り付けた。レンズにかぶせてから絞って留めるような仕組みだ。布とスポンジだから軽いし、カメラバッグに入れておいても邪魔にならない。

スポンジシートと黒い布を使った反射防止フード
ゴム紐で留めるためいろんなサイズのレンズに使える

ただ、大きく角度を変えた場合にはフードが変形し、写り込んでしまうことがあった。またミシンを使った工作なので、ちょっと難易度も高い。

より手軽なバージョンを作る

そこで今回は工作の難易度が低く、安くて手軽にできるようなものをちょっと考えてみた。用意するのはお菓子の空き箱とストレッチ素材の布のみ。ハサミと両面テープがあれば工作できるので、かなりハードルは低くなった。

使ったのはクラッカーの「リッツ」の空き箱だが、この辺りは自分で好きなものを選んでいただきたい。広角系のレンズを使うのなら大きめの箱がいいし。そうでなければコンパクトなものでも構わない。ストレッチ素材の布は生地屋さんで調達した。

しかし、100円ショップにも使えそうなものがいろいろありますね。黒いネックウォーマーやレギンス、腹巻きなど。いずれにせよ少し厚手で光を通さないものがいい。

左:リッツの空き箱、右:伸縮可能なストレッチ素材の黒い布

手順としては、箱にレンズよりも大きめの穴を空け、その穴の部分にレンズより小さめの穴を空けた布を貼り付ける。穴にレンズを通して撮影すると隙間から光も漏れず、レンズの角度も自由に変えられるというわけだ。

レンズよりも小さめの布の穴にレンズを通して使用する。

以下は私が考案した宙玉(そらたま)での撮影結果。宙玉では画角が広がるため、よりケラレが発生しやすくなる。

フードなしで撮影。玉の内側や外側に映り込みが確認できる。
フードを着けて撮影。ガラスへの映り込みが消えてすっきり。
フードを着けて撮影。これも映り込みなしで撮影できた。

工作方法

お菓子の空き箱に、レンズの直径よりも1cm大きめの穴を空けた。このサイズは布の厚さにより調整する。下向きに撮影することを想定して、穴の位置を少しずらした。

逆側(ガラスに当たる面)を四角くカット。箱が変形しないようにするために、7mmほどのマージンを残した。

布に穴を空けるための丸い型紙を作り、メンディングテープで貼る。穴のサイズはレンズの直径よりも3cm小さくした。このサイズは布の伸縮具合により調整。

型紙に合わせて布をカットする。あれば裁縫ハサミで。メンディングテープごと切ると切りやすい。

箱を黒く塗り、両面テープと片面テープで布を貼り付ける。箱の外側を塗る必要はないが、内側は黒くしたい。

箱の内側から見たところ。最初に中心に合わせて仮止めしてから本格的に貼れば、うまく真ん中に貼ることができる。

見つかった課題

菓子箱なので、カメラバッグにギューギューに詰めたりすると壊れてしまうのでご注意を。もし気に入ってヘビーに使いたい場合は、もうちょっと強度のある素材で作ってもいいだろう。

私が良さそうだと思ったのは「Ziplocコンテナー」だ。薄いので穴も空けやすいし、軽いのもいい。レンズとの接続箇所は布なので、あまり重い箱は向いていない。

Ziplocコンテナーとは、こんなもの。模様があるので紙や布で隠すといい。

皆さんの工作を見せてください!

この工作は「ゼンズフード」と名付けた。もし工作してみたら「#zenshood」というハッシュタグを付けてInstagramやTwitterで見せてください。自分なりの工夫をシェアしていただければ嬉しいです!

夜の宙玉・撮影例

今回のゼンズフードは、宙玉(そらたま)で夜景を撮りたいと思って制作した。夜間に宙玉で撮影すると、光がボケてきれいな宙玉写真が撮影できるからだ、これからちょうどイルミネーションのシーズンなので、興味がある方はぜひお試しを。ガラス越しの撮影でなければフードは不要だ。

この写真、バックのボケがきれいな円形なのは何故か?
この作例で使ったのはこのLomogon 2.5/32。絞りがきれいな円形なので、ボケもきれいな円になるのだ。カメラはソニーα6500。宙玉にピントを合わせるため接写リングも使った。
首都高のジャンクションを撮影してみた。工場夜景などもおもしろそう。
この作例で使ったのはオリンパスのOM-D E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro。マクロレンズなので接写リングは不要。
線香花火を撮影。今は打ち上げ花火を撮れないので、ぜひ線香花火でお楽しみを。けっこう迫力のある写真が撮れます。
この作例で使ったのはソニーα7R IV+シグマ 70mm F2.8 DG MACRO。接写リング不要。線香花火を支持するために、ホットシューに雲台や逆作用ピンセットなどを取り付けた。線香花火が燃えて短くなってきたら2WAYフォーカシングレール(Kenko製)を使って位置を調整する。

宙玉アワード2020、募集中!

現在、「宙玉アワード2020」の応募を受付中(12月25日締め切り)です。宙玉写真を撮られた方はInstagramやTwitterを使ってぜひご応募ください! 詳細は宙玉サイト(https://soratama.org/)でご確認ください。

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「改訂新版 写真の色補正・加工に強くなる〜Photoshopレタッチ&カラーマネージメント101の知識と技」(技術評論社)などがある。撮影や工作に関する情報は上原ゼンジ写真実験室にまとまっている。