交換レンズレビュー

ソニー FE 400-800mm F6.3-8 G OSS

最大1,600mmで野鳥を撮影 扱いやすさも兼ね備えた超望遠ズームレンズ

ソニー「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」は、αレンズ初の焦点距離800mmをカバーするズームレンズだ。さらにインナーズーム、フルタイムDMF、テレコンバーター対応などの特徴も備えている。

野鳥をはじめとした屋外での動体撮影に、どのような実力を発揮してくれるか試してみた。

手持ちでの撮影を決定

まずはレンズの外観から見てみよう。全長は346mmで質量は2,475㎏、フィルター径は105mmだ。サイズ感と実際に持ったときの判断により、すべて手持ちで撮影することにした。

ボタン類は上からフォーカスモードスイッチ、フルタイムDMFスイッチ、フォーカスレンジリミッター、手ブレ補正スイッチ、手ブレ補正モードスイッチとなっている。

三脚座は取り外しができないタイプで、前方に太ネジ穴と後方に細ネジ穴がある。

肩にかけながら持ち運ぶ際に便利なレンズストラップも付属している。

良好な操作性と安定の高画質

春になり野鳥の鳴き声が聞こえる時期。本レンズをα9 IIIに付けて撮影してきた。

カメラの基本設定はAF-C(コンティニュアスAF)、フォーカスエリア「拡張スポット」、被写体認識AF「鳥」、ドライブモード[120コマ/秒]、プリ連写(0.5秒)。あとは状況に応じて設定を変えていく。

まずは桜の木にとまるヒヨドリを発見。初めから800mmの画角で狙うと被写体を見つけられないこともあり、まずは400mm側で被写体を見つけて、必要に応じてズームアップして撮影した。

狙った被写体に素早くフォーカスできるのは、ズームリングを回してもレンズの長さや重心が変わらないインナーズーム方式レンズのメリットである。しかも、400mmから800mmへのズーム回転角が小さいので画角調節がスムーズに行える。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/430mm/マニュアル露出(1/2,500秒、F6.3)/ISO 1000/WB: オート
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/430mm/マニュアル露出(1/2,500秒、F6.3)/ISO 1000/WB: オート
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/430mm/マニュアル露出(1/2,500秒、F6.3)/ISO 1000/WB: オート
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F8)/ISO 1250/WB: 5,500K
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F8)/ISO 3200/WB: オート

800mmでの背景ボケも綺麗で、ヒヨドリのディテールが際立っていた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/3,200秒、F8)/ISO 3200/WB: オート

ほかの桜の木にはメジロがいた。メジロは黄緑色でスズメほどの小さな鳥で動きが素早い。手持ち可能なレンズなのでメジロの動きに合わせて追うことができた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F8)/ISO 3200/WB: オート
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F8)/ISO 3200/WB: オート

テレコンバーターにも対応

このレンズは別売りの純正テレコンバーターが使える。1.4倍の「SEL14TC」で560-1,120mm F9-11、2倍の「SEL20TC」で800-1,600mm F11-F16の焦点距離および開放F値になる。ともにAF/AE追随の高速連写が可能。テレコンバーターのおかげで、小鳥に気が付かれない離れた場所から撮影ができた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+SEL20TC/1600mm/マニュアル露出(1/2,500秒、F16)/ISO 8000/WB: 太陽光

この時も被写体認識AFを「鳥」にしていたが、背景と同化しているような鳥や手前に木の枝が写り込むような場合、さすがにAFが合わないことがあった。そんな時に便利だったのが、「フルタイムDMF」。狙ったポイントにAFが合わない時、フォーカスリングを回すだけで瞬時にマニュアルフォーカスに切り替わる。AFが背景に抜けたときやAFを被写体につかませるときなどに便利な機能となっている。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+SEL20TC/1,600mm/マニュアル露出(1/800秒、F16)/ISO 1600/WB: 太陽光
α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+SEL20TC/1600mm/マニュアル露出(1/800秒、F16)/ISO 1600/WB: 太陽光

ツグミが目の前に現れたので1,600mmを使いアップで狙ってみた。2倍のテレコンバーターを使用してもシャープな画質は維持されていた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+SEL20TC/1600mm/マニュアル露出(1/400秒、F16)/ISO 640/WB: オート

北へ帰る準備をするハクチョウ。キラキラと光る背景を選んで、ハクチョウの動きを追ってみたところ、白い羽を広げようとする美しい姿を写すことができた。円形絞りのレンズなので背景のボケが自然で美しい。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/541mm/マニュアル露出(1/800秒、F8)/ISO 400/WB: オート

オナガガモが飛んでいる姿も見られた。ピントはコンティニュアスAF+被写体認識AF「鳥」に任せて、ファインダー内にオナガガモを収めることだけに集中してシャッターを押した。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F8)/ISO 640/WB: オート

ヒドリガモが鳴いている様子を撮影。最短撮影距離は400mmのとき1.7m、800mmで3.5mと近接撮影性能も高い。突然訪れるアップ撮影にも対応できた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/640秒、F8)/ISO 400/WB: オート

旅客機・鉄道の撮影例

離陸する飛行機を800mmで狙う。被写体認識AFは「飛行機」に設定し、800mmから飛行機が近づくにつれズームアウトしながら連続撮影した。ズーミング中もAFを外すことなく、インナーズーム方式のおかげで安定したフレーミングが保てた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F8)/ISO 400/WB: オート

多摩川橋梁を通過する新幹線を撮影。流し撮りに対応した手ブレ補正「MODE2」を使用。安定した像を見ながらスムーズに撮影できた。

α9 III/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/マニュアル露出(1/160秒、F16)/ISO 125/WB: オート

まとめ

すべて手持ちで撮れたのは、ズーミングで全長が変わらないインナーズーム方式によるバランスの良さのおかげだった。思い通りのズーミングの速さと安定感により、狙ったポイントを的確に捉えることができ、シャッターチャンスに備えることができた。

焦点距離800mmとき、開放絞りはF8と比較的暗くなる。ただしα9 IIIの場合、日中の撮影ならISO 3200ぐらいに感度を上げても画質は良好なまま。野鳥の動きを止めるような高速シャッターも利用できる。

約120コマ/秒のα9 IIIとの組み合わせは、遠くから野鳥を撮影するケースで最大限に実力を発揮するセットといえる。もちろん、野鳥以外にも飛行機や鉄道の撮影にも対応するだろう。動体撮影に新しい選択幅を持たせる超望遠ズームレンズだ。

高橋学

1975年、福島県福島市生まれ。父が新聞社のカメラマンをしていた影響で物心付いたころからカメラが好きになり、父と鉄道などを撮り始めた。高校卒業後は専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツフォトを専攻。1996年より有限会社ジャパンスポーツでスポーツカメラマンの仕事に就き、実績を重ねてフリーランスへ。現在はフィギュアスケート、フットサル、サッカー、陸上などの様々なスポーツ取材をしている。また、小さいころから好きな鉄道や飛行機なども撮影を続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員