交換レンズレビュー

手軽に使えて実用的。“F2.8通し”で小型軽量の超広角ズームレンズ

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X

「Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X」は、APS-Cサイズ対応の超広角ズームレンズです。APS-Cサイズ用ですので、35mm判換算での焦点距離は16.5~27mm相当になりますね。先にソニーEマウント用(APS-Cサイズ)が登場していましたが、その後、新たに富士フイルムXマウント用として追加されたのが本レンズになります。

比較的低価格でありながらズーム全域でF2.8の大口径であり、それでいて持ち歩きに便利な小型軽量化を達成しているという、なかなかにして魅力的なスペックがあります。ミラーレスカメラ用の超広角ズームレンズ選びに迷っている人にとっては、大きな選択肢のひとつになるかもしれません。

外観デザインと操作性

外形寸法はφ74.4×74.4mmで質量が320gと、手のひらにすっぽり収まるサイズであるうえに、ほとんど重さが苦にならないレベル。最大径と全長が同じ寸法というのは、見た目にも大きさを感じさせない効果があるように思えます。

軽量化を図ってか外装は樹脂製で、高級感こそないもののチープさを感じるようなこともありません。レンズ先端方向にフォーカスリング、後端方向に絞りリングが備えられ、それ以外のボタンやスイッチの類は一切ないというシンプルな操作系です。AFとMFを切り替えるスイッチすらないという潔さですが、富士フイルムのXシリーズはもともとボディ側でフォーカスモードを切り替える仕様ですので、そこは問題になりません。

「BH-674」という花型のレンズフードが同梱されます。こちらも樹脂製で高級感を覚えるものではありませんが、レンズボディから連続する一体感のあるデザインには感心するものがあります。

面白いのが、マウント面にUSB Micro-B端子を備えているところ。PCと接続することでレンズのファームウェアアップデートができます。ただ、今となっては普及しているUSB Type-Cならもっとよかったのに、と思わないでもないです。

作例

画質については、開放F値から画面全体で解像感に優れているものの、四隅においてはやや甘さが残るといった、超広角ズームレンズでは一般的にみられる写り方をします。しかしまったくもって現代的ですし、実用的なレベルですので心配はご無用でしょう。ただ、F5.6以上に絞ると、目覚ましくハイコントラストでシャープな画を得られるようになりますので、風景など全体を鮮明に撮りたいといった場合はなるべく絞り込んだほうが良いと思います。

富士フイルム X-H2S/Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X/11mm(16.5mm相当)/絞り優先AE(F5.6、1/600秒)/ISO 400/WB:オート

最短撮影距離はワイド端で19cmまで寄れて、その時の最大撮影倍率は約0.11倍になります。もの凄く寄れるというわけではありませんが、17mm相当の超広角レンズとしては十分な近接撮影性能だと思います。ちなみに、テレ端では最短撮影距離0.3m、最大撮影倍率約0.08倍と、ワイド端より弱くなりますのでご注意ください。

富士フイルム X-H2S/Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X/11mm(16.5mm相当)/絞り優先AE(F2.8、1/800秒、-0.3EV)/ISO 400/WB:オート

先の都市風景の作例でも感じられていたことですが、超広角レンズでは特に目立ちやすい歪曲収差がほとんど見られないところは、本レンズの魅力のひとつだと思います。おかげで風景やネイチャーなど、他の被写体も歪みが少なく自然な印象で撮れます。背景のボケ味も、とかく硬くなりがちな超広角レンズとしては柔らかく自然です。

富士フイルム X-H2S/Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X/18mm(27mm相当)/絞り優先AE(F4、1/20秒)/ISO 400/WB:オート

まとめ

F2.8通しの超広角ズームレンズとしては、規格外といってよいほど軽くてコンパクトな本レンズ。描写性能も実用的に高画質で、値段以上の価値をもった優秀なレンズであることに驚いてしまいました。

16.5mm相当のワイド端に対し、テレ端が27mm相当までなのが気になるかもしれませんが、24mm相当や28mm相当がワイド端に設定されている標準ズームとの組み合わせなら、むしろ程よく焦点距離をつないでくれると思います。手軽に使えて実用的な描写性能の超広角ズームレンズを探している人にとっては、まさに打ってつけなのではないでしょうか。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。