交換レンズレビュー

ソニー FE 16mm F1.8 G

小型軽量で取り回しの良い超広角単焦点レンズ

α7R Vに装着(以下同)

ソニーがフルサイズ対応の広角単焦点レンズ「FE 16mm F1.8 G」を4月11日に発売する。コンパクトながら開放F1.8と大口径で、表現力にも期待がかかる1本だ。今回試用する機会を得たのでレポートをお伝えする。実勢価格は13万6,400万円ほどとなっている。

スナップにも好適な小形軽量レンズ

単焦点FEレンズでは唯一となる16mmのレンズだ。単焦点レンズで近い焦点距離では「FE 14mm F1.8 GM」があり、FE単焦点の最広角レンズとなっている。ただ、GMシリーズということで20万円を超える価格など今回のFE 16mm F1.8 Gとはグレードが異なるレンズになっている。

ビルドクオリティもこれまでのGレンズ同様申し分ないものだ
フィルター径は67mm

もう1つ近い焦点距離としては、「FE 20mm F1.8 G」があり、同じGシリーズで価格も近い。20mmでもかなりの広角だが、昨今はVlogなど動画用途でより広い画角が求められており、本レンズもそうしたジャンルを意識した部分もあるのだろう。手ブレ補正の「アクティブモード」や「ダイナミックアクティブモード」、また「ブリージング補正」といった動画向け機能にも対応している。

ちなみにズームのFEレンズで16mmを含むものは7本あるが、いずれも開放F2.8かF4となる。F1.8はF2.8より1段以上も明るいので、このあたりも単焦点ならではといったところだろう。

最大径×全長は73.8×75mm、重量は約304g。ちなみに「FE 20mm F1.8 G」は同73.5×84.7mm、約373gなのでより小型軽量な点も見逃せない。実際カメラに付けてみてもさほど大口径レンズという感じはなく、コンパクトで撮影中も機動性の高さが感じられた。

絞りリングやカスタマイズ可能なフォーカスホールドボタンも備えており、上級者の操作ニーズにも応えてくれそうだ。

絞りリングも備えている
絞りリングのクリックは無しにすることもできる
フォーカスホールドボタンを装備

最短撮影距離は0.15m(AF)、0.13m(MF)とかなり寄れる。作例にもあるが、”ワイドマクロ”にも挑戦したくなるレンズと言える。なおフィルター径は67mmだ。

動画機能も充実。大きなボケも魅力

まずは動画機能をチェックした。動画の手ブレ補正は今回使った「α7R V」だと「切」「スタンダード」「アクティブ」の3つがある。アクティブモードだと画角が少し狭くなるが、特に手持ちの歩き撮影では威力を発揮する。

今回は、片手でカメラを上に掲げて歩きながら撮るというブレの大きい方法であえて撮影した。スタンダードモードではブレがだいぶ残っているが、アクティブモードにするとかなりスムーズになった。旅の記録といった動画も高いクオリティで残せそうだ。

【アクティブ手ブレ補正とAF速度】

開放F1.8とうことで、超広角の映像でもかなり背景をぼかせる。スマホやアクションカムはもちろんだが、暗いレンズとも一線を画した映像を残せるのも本レンズの大きな魅力だ。

次にブリージング補正を試した。ブリージングとはピント位置が変わると画角も変化してしまう現象で、映像表現上マイナスに捉えられる場合もある。

作例では至近から桜の枝にピントを移動させている。ブリージング補正が切の時は、左右の木に注目すると画角が変化しているのがわかる。他方でブリージング補正を入にすると、この画角変化がほとんど無くなる。

【ブリージング補正】

録画中にピント位置を動かす”フォーカス送り”はしばしば使われる手法だが、ブリージング補正機能によって三脚撮影の際に画面が安定するメリットはある。ただし、作例でもわかるとおりブリージング補正を入れると画角が若干狭くなる。

隅まで均一な描写性能と美しいボケ

続いては写真の作例を挙げる。本レンズは高度非球面AA(Advanced Aspherical)レンズ2枚、スーパーED(Extra-low Dispersion)ガラス1枚とEDガラス3枚と高性能な硝材も使用した12群15枚構成となっている。

作例はα7R VのJPEG撮影によるもので、歪曲収差補正、倍率色収差補正、周辺減光補正はいずれもデフォルトの「オート」を使用した。

見上げたビルをF8まで絞り込んで撮影。画面隅の部分でも流れているようなことはなく、全体的に非常に解像力が高い印象。高精細な風景写真などにも向きそうだ。

α7R V/マニュアル露出(1/100秒、F8)/ISO 100

続いては逆光耐性を見た。画面に直接太陽光が入る厳しいシーンだが、木の部分にわずかなゴーストが見られる以外は全体的にコントラストもクリアで逆光性能は良さそうだ。

α7R V/マニュアル露出(1/160秒、F13)/ISO 100

16mmということで、このように空を広く撮っても絵になった。一般的な標準ズームレンズの広角端である24mm辺りとはまた違った広がり感を得られるのが面白い。

α7R V/マニュアル露出(1/100秒、F11)/ISO 100

フラミンゴのオブジェに近づいて広角マクロ的に切り取った。背景を広く写しながらも、絞りを開放にしたことで大きなボケが得られている。玉ボケもキレイだ。

α7R V/マニュアル露出(1/320秒、F1.8)/ISO 100

人物がブレて写っているとおり、1/5秒のスローシャッターを手持ちで切ったもの。超広角というブレが目立ちにくい焦点距離なのに加えて、ボディの手ブレ補正のおかげでこういった表現も手軽にできる。

α7R V/マニュアル露出(1/5秒、F16)/ISO 100

最短撮影距離付近まで近づいて、絞り開放で撮影。椿の花をかなり大きく撮影することができた。近接ではとりわけボケが柔らかく、ふわっとした印象に。このレンズのおいしいところかもしれない。

α7R V/マニュアル露出(1/640秒、F1.8)/ISO 100

最初の超広角単焦点レンズとしてもオススメ

16mmといえば、大三元レンズの広角ズームに含まれる焦点距離としてカメラファンには馴染みのあるところだろう。ズームレンズも便利だが、単焦点レンズになったことで取り回しが良くなり、これ1本で撮影に行きたくなるほどの使い勝手の良さがある。

同梱のフードを装着したところ

動画撮影ではアスペクト比や各種の補正などで画角が狭くなる傾向にあるため、しっかりとワイドに撮るには少しでも画角は広い方が有利という考え方もある。「FE 20mm F1.8 G」も良いレンズだが本レンズはさらにワイドで小形軽量で、最初の超広角単焦点レンズとしては良い選択ではないかと思う。

おまけに量販店の値段を見ると「FE 20mm F1.8 G」より2万円弱安いようで、本レンズは価格面でもお得感がありそう。先に登場した「FE 20mm F1.8 G」の立場が危うくなってしまうほど良くできたレンズと言ったら言い過ぎだろうか?

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。