交換レンズレビュー
お散歩・日帰り旅行向け「50mm単焦点レンズ」(その5)
パナソニック LUMIX S 50mm F1.8
2025年1月5日 07:00
焦点距離50mmは写真用レンズの基本ともいえます。そこでこのたび、お散歩・日帰り旅行向けともいえる小型軽量なミラーレスカメラ用の50mm AF単焦点レンズを、一挙に紹介していこうと思います。
今回はパナソニック「LUMIX S 50mm F1.8 S」を紹介します。
ともすれば廉価版とみなされることもある「50mm F1.8」の単焦点レンズではありますが、実際に使ってみたところ、このレンズは確かなコンセプトに基づいた、優れた操作性能と描写性能をもち合わせる、隠れた高性能レンズなのではないかと感じました。
外観・仕様
「LUMIX S 50mm F1.8 S」は2021年6月に登場したフルサイズ対応の50mm単焦点レンズ。パナソニックの50mmレンズとしては、先の2019年3月に発売された「LUMIX S PRO 50mm F1.4」がありましたが、そちらは描写性能を重視したあまりか、いかにも大きく重いレンズでしたので、実用性の高い本レンズの登場が待ち望まれていたところでした。
小型軽量を目指した絞り開放F1.8の50mmレンズとはいっても、非球面レンズ3枚、EDレンズ1枚、UHRレンズ1枚を採用するなど、描写性能に妥協を見せないところがSシリーズのレンズらしさです。AF駆動には本格的なリニアモーターを採用しているあたりも、本レンズがただの廉価版レンズではない証となっています。
操作系
外形寸法は約φ73.6mm×82.0mmで、質量は約300g。35mmフルサイズ対応の50mmレンズとしては、小型軽量なレンズとして頑張っていることが分かります。さらにいえば、同社の「LUMIX S PRO 50mm F1.4」が約90.0mm×130.0mm・約955gですので、比べてみればサイズ感の違いに驚いてしまうほど。
同じく小型軽量なフルサイズミラーレスカメラとして登場した「LUMIX S9」と組み合わせて見ても、バランス上の違和感を覚えることはありません。
比較的シンプルなレンズではありますが、ちゃんと「AF/MF切替スイッチ」が備えられているのは嬉しいところ。MF時の操作性についてもよく配慮されているレンズですので、このスイッチの存在は意外に重要です。
フォーカスリングは、操作性とデザイン性のバランスがとられた縦のスリットローレット。その通り、なかなかにカッコよくて感触もよくあります。今回試用した「LUMIX S9」よりも「LUMIX S5」や「LUMIX S5 II」の方がありがたみを感じられるかもしれませんね。
丸形のレンズフードが同梱しています。パナソニックはレンズの価格によらずなるべく高品質なレンズフードを同梱するように努力しているとのこと。本レンズのレンズフードもロックボタンのついたシッカリとした造りのものです。
作例
フォトスタイルを「ライカモノクローム」に設定して、水辺のシロサギ(コサギ)を撮ってみました。被写界深度の浅い開放絞り値であっても、瞳の認識AFで速く正確にピントを合わせてくれるので安心です。ボケ味の良さもさることながら、ピント面の解像感の高さは、まさに高性能レンズのそれ。ただ小型軽量なだけでなく性能も確かな50mmレンズです。
最短撮影距離は0.45mで、そのときの最大撮影倍率は0.14倍となっています。あまり寄れない印象ではありますが、最大撮影倍率は比較的大きく、それなりに被写体を大きく写すことができます。贅沢なレンズ構成だけあって、近接時の描写性能も収差が少なく大変に良好です。
絞れば画面全体の解像感が安定して高くなるのは当然のことですが、微妙な明暗や色の変化も逃さず写し撮る、階調性の豊かさも見事なところです。この性能は、「生命力・生命美」の思想に基づいたLUMIXボディの絵作りの良さも合わさってのこと。言いかえれば、ボディの性能を完全に引き出せる高い描写性能があるということになります。
まとめ
本レンズ「LUMIX S 50mm F1.8」は、パナソニックが展開する「F1.8単焦点シリーズ」のうちのひとつになります。このシリーズは超広角18mmから中望遠85mmまで、5本のレンズの外形寸法と操作性を統一していますが、描写性能についてもシリーズすべてで高い描写性能を実現するように設計がなされています。
つまり、本レンズの優れた操作性と描写性能は、シリーズを通して約束されていたということでしょう。レンズ単体で見たとしても、本レンズの基本性能の良さは今回の試写でひしひしと感じることができました。こうした50mmレンズがラインナップされているのですから、LUMIX Sシリーズのユーザーがうらやましく思えてきます。