交換レンズレビュー
お散歩・日帰り旅行向け「50mm単焦点レンズ」(その2)
キヤノン RF50mm F1.8 STM
2025年1月2日 07:00
焦点距離50mmは写真用レンズの基本ともいえます。そこでこのたび、お散歩・日帰り旅行向けともいえる小型軽量なミラーレスカメラ用の50mmAF単焦点レンズを、一挙に紹介していこう思います。
第2回となる今回はキヤノン「RF50mm F1.8 STM」のレビューをお届けします。
実はこのレンズ、ただの「50mm F1.8」ではなく、かつて単焦点レンズへの入り口としてと称賛を浴びた、誉れ高き単焦点標準レンズシリーズの後継モデルなのであります。今回、実際に試写してみた筆者としても「標準レンズはかくありたい」と思えるほどの正統派でした。
外観・仕様
「RF50mm F1.8 STM」は2020年12月に登場した35mmフルサイズ対応の50mm単焦点レンズ。フィルム一眼レフカメラ時代の昔から標準ズームレンズの次の1本として親しまれてきた、キヤノンの「50mm F1.8レンズ」の系譜にあたります。
キヤノンの「50mm F1.8レンズ」といえば、1990年に登場したII型の「EF 50mm F1.8 II」が有名ですが、そちらは徹底的なコストダウンによりマウントも樹脂製といった仕様でした。しかし、本レンズはマウントを金属製としている他に光学系も刷新しているなど、高画質なミラーレスカメラに合わせた新時代の設計が取り入れられています。
外観・操作系
外形寸法はφ69.2×40.5mmで、質量は約160gと、35mmフルサイズ用としては格段に小さく軽いレンズとなっています。さすがにキヤノンの「50mm F1.8レンズ」の系譜を引いている製品といえるでしょう。小型・軽量なフルサイズモデルとして登場した「EOS R8」とのマッチングもすこぶる良好です。
操作系も随分と現代的に変化し、フォーカスとコントロール機能を切り替えるスイッチの他、好みの設定を割り当てることのできる「コントロールリング」も装備されています。
レンズ構成は5群6枚と、構成枚数こそ歴代のキヤノン「50mm F1.8レンズ」と同じですが、ショートフランジバックのRFマウントに構成を最適化したうえ、PMo(プラスチックモールド)非球面レンズを1枚配置。一眼レフカメラ用を超える高画質を実現しています。
純正のレンズフードとしては丸型の「ES-65B」が適合しますが、残念ながらこれは別売り。レンズフードは遮光効果もさることながら、レンズ自身の保護にも役立ちますので、別売りでもぜひ用意したいものです。
作例
絞り開放のF1.8では2線ボケがあり、わずかながら軸上色収差と思わしき色ズレもあります。ン十万円の高性能レンズと比べれば性能差は顕著と言わざるをいえませんが、それでも往年のキヤノン「50mm F1.8レンズ」と比べれば、格段に性能の向上を果たしているものと思います。個人的には、実用的にはまったく問題のないレベルにあり、むしろ絞りによる写りの違いを楽しめる楽しいレンズだと好意的に受け止めています。
最短撮影距離は0.3mで最大撮影倍率は0.25倍。注目したいのは最大撮影倍率で、このレンズ、意外なほどよく寄れて大きく写すことができます。シーンによって、あるいは設定によって、前述の2線ボケや色ズレが目立つことになるかも知れませんが、多くの場合、それはほとんど無視することができるでしょう。素性のわりには本当に実用性の高い標準レンズ、いや、もしかしたら素性自体が底上げされているのかもしれません。
絞り開放付近で特徴的な描写を見せてくれる本レンズですが、2~3段も絞り込めば画面周辺まで安定した高い解像感を見せてくれます。絞り値による効果の違いを学ぶ意味でも、標準レンズの良さが知れる意味でも、実に懐の広いレンズだといえるのではないでしょうか。
まとめ
いまでこそ、標準50mmレンズは高性能であることが当たり前で、価格もそれなりになっていますが、かつては手に入れやすい価格のわりに写真についての多くが学べる”標準的”なレンズであったと思います。ちょっと大げさかもしれませんが、今となっては、キヤノン「50mm F1.8レンズ」の系譜を引く本レンズこそが、標準レンズの代名詞になっているのではないかとすら思えてきます。
徹底的なコストパフォーマンスでチープだった造りも、価格は勉強しながら、現代の高性能なミラーレスカメラに合わせて向上されています。懐かしさを感じる描写性能の傾向も画質の進化に合わせて向上されています。単焦点レンズは敷居が高いと感じている人にとって、いまもなお良き ”撒き餌レンズ” の立場を堅持しているのが本レンズなのだろうと、しみじみと感じ入った次第であります。