交換レンズレビュー

お散歩・日帰り旅行向け「50mm単焦点レンズ」(その7)

SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary

焦点距離50mmは写真用レンズの基本ともいえます。そこでこのたび、お散歩・日帰り旅行向けともいえる小型軽量なミラーレスカメラ用の50mm AF単焦点レンズを紹介していこうと思います。

今回のテーマは「SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary」(以下 「50mm F2 DG DN」)です。

焦点距離50mmで開放絞り値はF2と比較的平凡なスペックではありますが、「使うことの嬉しさと所有することの喜びをもったレンズとは何か」を追求する、シグマの思想が詰め込まれたような異色の50mmレンズだと思います。今回使用したLマウント用の他、ソニーEマウント用も発売されています。

外観・仕様

「50mm F2 DG DN」は、2023年4月に登場した35mmフルサイズ対応の50mm単焦点レンズ。シグマがミラーレスカメラ向けの交換レンズとして、機能、サイズ感、光学性能、所有する満足感の追求を、意欲的に掲げている“プレミアムコンパクトプライム”である「Iシリーズ」のうちの1本にあたります。

外装は「Iシリーズ」のレンズに共通する総金属製で、シネレンズの製造技術で培われた高い堅牢性をもつとされています。実際に手にしてみても、金属外装によるモノとしての質感の高さと、確かに伝わってくるリアルな信頼感はホンモノ以外の何物でもなく、「このレンズならイイ写真がきっと撮れるはず」、「いや、このレンズで何としてもイイ写真を撮らねば」、などとすら考えてしまうような凄味があるような気になります。

外形寸法はφ70.0×68.0mmで、質量は350g(ソニーEマウント版は70.0×70.0mm、345g)。口径比の大きなF2であること、総金属製であることを考えれば、かなり小型軽量であるといって差し支えないでしょう。それでいて、SLDガラス1枚と非球面レンズ3枚を配置した、9群11枚の比較的複雑なレンズ構成ですから驚きます。

操作系

メカメカしいデザインと裏腹に、装備するスイッチ類は、AFとMFを切り換えるための「フォーカスモード切換えスイッチ」だけですが、さすが「Iシリーズ」のレンズだけにやたら主張が強く大きく目立っています。その主張の強さから、つい積極的にフォーカスモードを切り換えてしまいたくなりそうです。

リング類は、レンズ前方にある「フォーカスリング」の他、後方には「絞りリング」も備えられています。これまた主張が強くゴツゴツとしたデザインですが(素敵!)、実際にも指がかりはよろしく、ファインダーを覗いたままでも迷うことなく操作できる優れものでした。

「LH633-01」というレンズフードが同梱されています。これも金属製です。デザインも素晴らしく、本レンズはレンズフードを装着してこそ完成形なのではないかと思えてきます。

作例

本格的なデザインと質感の良さが相まって、とかく写欲の湧くレンズだと思います。標準レンズとされる50mmにとって、これは何より大切なことかもしれません。最新のコーティングが施されているため逆光に強く、ゴーストはよほどでなければ発生しませんが、フレアはわりと頻繁に発生します。しかしこれが適度に柔らかな雰囲気を写真に与えてくれるので悪いイメージはありません。よく考えられたレンズということでしょう。

SIGMA fp L/SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary/50mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 400

最短撮影距離は45cmで、そのときの最大撮影倍率は約0.145倍となっています。50mmレンズとしては標準的といったところでしょうか。しかし、近接撮影でも高い描写性能は衰えることなく、ピント面ではシグマらしくエッジのきいた鋭いシャープネスを見せてくれます。

SIGMA fp L/SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary/50mm/絞り優先AE(1/200秒、F2.0、+0.7EV)/ISO 400

スナップ撮影はもちろんのこと、風景撮影やポートレート撮影などで使っても、優れた描写性能を発揮してくれると感じました。高い質感をもちながらコンパクトな外形寸法を追求し、なおかつ優れた描写性能を併せもつというのがコンセプトで、しかもそれを実現しています。

SIGMA fp L/SIGMA 50mm F2 DG DN|Contemporary/50mm/絞り優先AE(1/125秒、F5.6、+0.7EV)/ISO 400

まとめ

あまりにも凝ったデザインですので、思わずマニュアルフォーカスのレンズなのではないかと思ってしまいますが、現代のミラーレスカメラ用レンズらしく、ステッピングモーターを内蔵するれっきとしたAFレンズですのでそこはご安心ください。

確かな描写性能にこだわりのデザイン、それでいてコンパクトで携行性に優れるときているのですから、(F2であることが十分なら)日常の撮影でこれ以上ないくらい満足のいく50mmレンズといえるでしょう。今回はLマウントで試写しましたが、ソニーEマウントも用意されています。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。