交換レンズレビュー

SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary(キヤノンRF用)

APS-CキヤノンRFボディに新たな選択肢 寄れて明るい超広角ズームレンズ

シグマからキヤノンRFマウント対応の超広角ズームレンズ「10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」が発売されました。これまでRFレンズはキヤノン純正レンズしかありませんでしたが、「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN|Contemporary」とあわせ、選択肢の幅が広がるのはユーザーにとって嬉しいことです。

APS-Cサイズ相当のイメージセンサーに対応し、「EOS R10」「EOS 50」「EOS R100」といったキヤノンのミラーレスカメラで使用できます。

キヤノンのAPS-Cセンサーモデルでの焦点距離10-18mmは、35mm判換算で16-28.8mm相当。キヤノン純正にも同じ焦点距離の超広角ズームレンズ「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」がありましたが、開放F値はF4.5-6.3。一方、シグマの方はズーム全域でF2.8と明るいのが特徴です。暗所撮影や広角接写時の背景ボケなど、絞り値の明るさを求める人にはピッタリでしょう。

しかも純正レンズと同じように近接撮影能力が高く、最短撮影距離は広角側で11.6cm、望遠側では19.1cm。超広角ズームレンズながら、被写体にかなり近づけるのは驚きです。作例でも最短撮影距離まで迫って撮ったものがありますのでワイドマクロならではの世界をご覧ください。

外観

質量270g、全長62mmと軽量・コンパクト。キヤノン純正「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」よりはさすがに大きく重いものの、ズーム全域F2.8の大口径レンズとして考えると、うまく凝縮されているように感じます。

外観は高級感があり、シンプルなデザインも好印象です。

フォーカスリングは手前側、ズームリングは奥側で幅はやや太め。ズームとピントリングそれぞれで、リング表面の凹凸感、動かすときの滑らかさに違いがあります。AFは高速で静か。近接撮影時の動作もスムーズでした。

また、レンズフードにも工夫があり、はめるときは回す必要のない、プッシュオン式の花形フードとなっています。

作品

このレンズでもっとも焦点距離の長い18mm(35mm判換算28.8mm相当、以下同)を選択し、最短撮影距離付近で撮りました。APS-Cセンサーでの広角とはいえ、F2.8で最短距離付近だと、被写界深度はここまで浅くなります。ピントは花芯の手前側に合わせていますが、すぐ奥の花びらでさえボケていますね。背景のぼけも嫌味のない素直な感じが好印象です。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/125秒、F2.8、+1.3EV)/ISO 100

ピントは傘の骨の部分に合わせています。編まれた紐の細部まで写されているのと、背景にあるモミジの葉の一枚一枚がしっかり解像されています。これ以上寄ると背景の木が入らない。引くと傘の下に看板が入ってしまうという場所で、ズームを調整して画角を選びながら、細かくポジションを変えて撮りました。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/14mm(22.4mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F8.0、−1.7EV)/ISO 100

街の中を通る江ノ電。順光なので全体的にきりっとして見えます。18mm側ですが、それでも遠近感がつくので広がりの雰囲気はありますね。右下の植物の解像感にご注目ください。画面の隅にありながら、つやつやした感じがシャープに再現されているのに驚きました。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100

18mm側で絞り開放F2.8です。最短撮影距離ほどは寄ってはいませんが、広角ズームレンズならこのような周りの状況を取り入れたテーブルフォトにも役立ちます。雰囲気のある、やや薄暗いカフェでしたが、開放F値が明るいので、低い感度を抑えることができました。このようなシーンでズーム全域F2.8のメリットが発揮されます。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F2.8、+0.7EV)/ISO 250

このレンズの近接撮影能力がよくわかる1枚。最広角の10mm側、ほぼ最短撮影距離でのクローズアップです。文字が書かれているあたりにピントを合わせましたが、被写界深度は数mmといったところでしょうか。拡大してみると、肉眼ではわからないような細かい凹凸があるのが見てとれます。精細感も高く感じます。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/80秒、F2.8、+1.0EV)/ISO 250

竹林を下から見上げているので遠近感がありますね。見上げるような撮影は腕が疲れやすいものですが、レンズがコンパクトなので気楽に構えられます。カメラにこのレンズ1本だけを付けて歩いたのですが、自然風景的な撮影からスナップ、テーブルフォト、クローズアップと多様なジャンルに対応できることがわかりました。

キヤノン EOS R10/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/20秒、F8.0、+2.0EV)/ISO 800

まとめ

キヤノン純正の「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」よりも明るく、もっとボケを生かしたい人にはよい選択肢となるでしょう。今回はこのレンズ1本だけで街を巡ったのですが、遠近感のある風景はもちろん、マクロ的なクローズアップもでき、室内でボケを生かしたテーブルフォトも撮れるなど、多岐に渡った撮影が楽しめました。全域F2.8ということもあり純正よりは少し重くなりますが、このレンズならではの魅力があります。

これからキヤノンのボディに合わせたシグマのレンズが増えていくのでしょうか。選択の幅が広がり楽しみですね。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。