交換レンズレビュー

富士フイルム フジノンレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WR II

小型軽量化に加えて解像力もアップ II型になった大口径標準ズームレンズ

2024年10月に発表された、富士フイルムの「XF16-55mmF2.8 R LM WR II」は、その名の通り、「XF16-55mmF2.8 R LM WR」(2015年2月発売)の後継モデルにあたります。富士フイルムのXシリーズレンズですので、APS-Cサイズ用の大口径標準ズームというわけですね。

大きな特長は、前モデル「XF16-55mmF2.8 R LM WR」よりも大幅に小型軽量化されているところ。しかも描写性能は全般的な向上を見せてくれており、それだけではなく操作性能に関しても、9年の時を経て、ふんだんに最新機能が取り入れられているのが、ユーザーとしては嬉しいところです。

サイズ感と操作性

II型として登場した「XF16-55mmF2.8 R LM WR II」の特長は、なんと言っても大幅に小型軽量化されたこと。

外形寸法は約φ78.3×95mmで、質量が約410gとなっています。I型の外形寸法が約φ83.3×106mm、質量が約655gでしたので、いかに本レンズが小型で軽量になっているかが分かると思います。体積にして約38%もの削減に成功しているとのことです。

左が新型の「XF16-55mmF2.8 R LM WR II」で右が旧型の「XF16-55mmF2.8 R LM WR」。本レンズは大幅に小型軽量化されています

小型化されたものの、レンズ先端から「フォーカスリング」「ズームリング」「絞りリング」というリング類の並びに変更はないため、旧型を使っている人でも操作性について迷うことはないでしょう。

富士フイルムが誇る高性能レンズの証である「レッドバッジ」の下には、新しく「絞りクリックスイッチ」が設けられました。これはその名の通り、絞りリングのクリックをオン/オフするためのもの。動画撮影などで絞りをスムーズに変更したいときに便利です。

「絞りリングロックスイッチ」も搭載されています。「A」ポジションで絞りリングを固定するためのものですが、I型である「XF16-55mmF2.8 R LM WR」が発売された9年前、まだXシリーズレンズに「絞りリングロックスイッチ」が採用されていなかったのですね。

花型のレンズフードが同梱されています。ロックスイッチのようなものはありませんが、I型時のレンズフードよりも着脱がしやすくなっていました。

解像性能

解像性能を確認するために、開放絞り値でワイド端とテレ端で撮影してみました。

II型のほぼワイド端16mm(24mm相当)を使い、開放F2.8で撮影したのが以下の画像です。

II型ワイド端
富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/16.5mm(25mm相当)/絞り優先AE(1/450秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 125

次はI型のワイド端16mm(24mm相当)での開放F2.8の撮影画像です。

I型ワイド端
富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR/16mm(24mm相当)/絞り優先AE(1/420秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 125

新旧とも、非常にハイレベルな高い解像感を見てとることができますが、さすがに新しいだけあって、II型の方が、全体的に解像感が上回っている印象でした。そもそもI型は優れた解像性能の標準ズームレンズとして高く評価されていますので、II型の描写性能の進化はすごいことだと思います。

つづきまして、II型のテレ端55mm(84mm相当)における開放F2.8の撮影画像です。

II型テレ端
富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/55mm(83mm相当)/絞り優先AE(1/420秒、F2.8、+1.0EV)/ISO 125

以下がI型のテレ端55mm(84mm相当)・開放F2.8になります。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR/55mm(83mm相当)/絞り優先AE(1/450秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 125

テレ端になると、解像感の違いはさらに分かりやすく、明確にII型の方が優れていることが見てとれました。個体差や経年劣化による影響もあるかもしれませんが、本レンズのテレ端における高い描写性能は、現代の高画素化したデジタルカメラにも十分に対応できるレンズとして評価したいところです。

近接撮影性能

II型の最短撮影距離は0.3mで、最大撮影倍率は0.21倍となっています。

I型はAPS-Cサイズ用のミラーレスカメラにしてはなぜか被写体に寄れず、大きく写せないことがネックでしたので、この進化はとても嬉しいところです。

下の画像が、II型のワイド端16mm(24mm相当)における最短撮影距離で撮影したものです。極端な近接撮影性能と言うわけではありませんが、一般的なワイドマクロとして十分に使える性能があると思います。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/16mm(24mm相当)/絞り優先AE(1/850秒、F2.8、+0.7EV)/ISO 400

そして、テレ端55mm(84mm相当)を使い、最短撮影距離で撮影したのが下の画像です。最大撮影倍率の0.21倍はこの状態での性能になります。ここまでの性能でしたら、多くの撮影で不満なく活用できるでしょう。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/55mm(83mm相当)/絞り優先AE(1/950秒、F2.8、+0.7EV)/ISO 400

優れた描写性能ながら寄れないことがネックだったI型でしたが、II型となり近年要求される近接撮影性能を手に入れたと言ったところでしょうか。最短撮影性能でも破綻せず高画質であるところは、さすがレッドバッジの標準ズームレンズです。

作例

本レンズの名称のうち「LM」は、リニアモーターに対応しているという意味になります。それだけに小型レンズであってもAFは速く正確です。最新のXシリーズカメラとの組み合わせなら、本レンズのAF性能の真価を存分に味わえることと思います。静粛性も高いので動画撮影にも適しています。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/55mm(83mm相当)/絞り優先AE(1/250秒、F4.0、+0.7EV)/ISO 400

最新のXシリーズカメラの多くは「人物」はもちろん、「動物」「鳥」「クルマ」「バイク&自転車」「飛行機」「電車」といったさまざまな被写体をAF時に検出できますが、もちろん本レンズもそれらに対応しています。優秀な被写体検出と素早い合焦で、日常のペット写真も簡単に撮影できます。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/34mm(51mm相当)/絞り優先AE(1/40秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 800

逆光耐性に関しては、太陽などの強い光が画面内に入ると、わりと頻繁にゴーストが発生するといった印象でした。これはXシリーズレンズ全般にいえることで、ゴーストは比較的発生しがちですが、それでもフレアは少なく画面内のコントラストは良く保ってくれます。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/18.1mm(27mm相当)/絞り優先AE(1/140秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 400

非球面レンズを多用して比較的強い補正をしているようでしたので、ボケ味はちょっと硬めかも? と思っていたのですが、実写した画像を見る限り、そのようなことはまったくありません。柔らかくて綺麗なボケ味を演出してくれるレンズでした。ピント面での高い解像性能に対して、素直で自然なボケ味を見せてくれます。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/55mm(83mm相当)/絞り優先AE(1/280秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 400

それにしても、本レンズの描写性能にかんする特長と言えば、I型を凌駕する高い解像性能にあると思います。開放絞りから高い実用性を発揮して、絞り込めばさらに目を見張るようなシャープな画像が得られる。あらゆるジャンルの撮影で、常に期待しただけの性能が得られるレンズとして、安心して頼ることができます。

富士フイルム X-T5/XF16-55mmF2.8 R LM WR II/34mm(51mm相当)/絞り優先AE(1/900秒、F4.0、−0.3EV)/ISO 400

まとめ

実のところ、筆者はI型を所有して、多くのシーンで活用していました。標準ズームレンズとして最上級ともいえる見事なシャープネスでしたが、それだけに最短撮影距離の長さがネックになっていったのも、また事実であります。

ところがII型は最短撮影距離0.3m・最大撮影倍率0.21倍となり、現代的なミラーレスカメラでの実用性を考えると、問題のない仕様を手に入れています。しかも、正統進化では語れないほどの大幅な小型軽量化を遂げ、解像性能も前モデルを超えています。

Xシリーズのカメラ・レンズを愛用する筆者も、本気でII型の購入を考えています。16-55mm(24-84mm相当)の標準域については、このレンズにほぼ任せてしまって問題になることはないのではないかと考えているところです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。