交換レンズレビュー

FE 300mm F2.8 GM OSS

圧倒的な軽さで手持ち撮影も容易 画質・手ブレ補正も安定感ある望遠単焦点レンズ

FE 300mm F2.8 GM OSS。直販価格で税込93万5,000円

ソニーEマウントの大口径望遠単焦点レンズ「FE 300mm F2.8 GM OSS」が2月2日(金)に発売される。フルサイズミラーレスカメラ用の交換レンズとして初の「300mm F2.8」レンズであり、待ち望んでいた読者もいるだろう。画質はもちろん、これまでにない軽量な筐体による取り回しの良さについても期待されている。

新ボディ「α9 III」と組み合わせて、動体撮影における実力を試してみた。

外観・操作性

レンズ構成はスーパーEDガラス3枚、EDガラス1枚を含む17群21枚。外形寸法は最大径124mm×長さ265mmで、質量が約1,470g(三脚座別)となり、フルサイズのデジタルカメラ用300mm F2.8のレンズとしては世界最軽量を謳う。

光学式手ブレ補正機構を搭載したほか、“防塵防滴に配慮した設計“と発表されている。また、1.4倍テレコンバーター(SEL14TC)、2倍テレコンバータ―(SEL20TC)にも対応。

レンズ最前面にはフッ素コーティングを施した。これにより撥水効果があり、ゴミや汚れが付着しても拭き取りやすくなっているという。

主な操作部はレンズ中央部分に集まる。先端側からフォーカスホールドボタン(上下左右に4か所)、細いファンクションリング、幅広のフォーカスリングが並んでいる。その手前側にスイッチパネルがあり、三脚座、差し込み式フィルター、マウント部となっている。

スイッチ部は上からフォーカスモードスイッチ、フルタイムDMFスイッチ、フォーカスレンジリミッター、手ブレ補正スイッチ、手ブレ補正モードスイッチとなっている。

差し込み式フィルターは、NDフィルターなど市販品の40.5mmタイプと、別売アクセサリーとして用意されている円偏光フィルターが使用できる。

三脚座は360°回転する仕様。太ネジと細ネジの穴を備えた。三脚座部分はレンズ本体からの取り外しも可能になっている。

レンズフードは回転して取り付けるとロックされるタイプ。大きなロック解除ボタンを押して外すことができる。軽量なレンズなので取り回しがしやすく、狙った被写体を捉えやすいと感じた。

画質

画質に関しては隅々までシャープな印象。高感度撮影でもディテールが際立つ描写性能がある。F2.8のボケ描写もよく、周辺光量低下も感じられない。


富士山を覆っていた雲がだんだんと少なくなってきて山頂が見えだした。絞り開放で撮影してみたが、周辺光量落ちは感じないほど抑えられていた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/16,000秒、F2.8)/ISO 250/WB:オート

このレンズの最短撮影距離は2m。撮影中に徐々に近づいてきた鳩にも、余裕でフォーカスできた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F2.8)/ISO 400/WB:オート

α9 IIIの被写体認識を「鳥」に設定。レンズが軽量なので飛んでいる鳩をすぐにファインダー内にとらえ、ピントはAF任せで追いかけられた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F2.8)/ISO 2500/WB:オート

開放F2.8の浅い被写界深度で手前にあったハート形のモニュメントをボカすことで、ライトを点灯して着陸してくる飛行機を引き立てた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/500秒、F2.8)/ISO 1600/WB:日陰

日の出直後に成田に着陸してきたシンガポール航空のエアバスA380型機。被写体認識「飛行機」を使いトラッキングAFで撮影。狙った機首部分のピントを外すことはなかった。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/1600秒、F2.8)/ISO 400/WB:日陰

青空を背景に成田を離陸するANAのボーイング787型機。レンズが軽量なため、カメラを空に向けて構えてもフレーミングを維持しながら飛行機を追いかけるのも容易だった。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/16,000秒、F2.8)/ISO 640/WB:オート

ホノルルから成田に着陸したANAの「フライングホヌ」。日没後だいぶ暗くなってきたのでシャッタースピードを1/125秒に設定。α9 IIIのドライブモード「Hi」(約30コマ/秒)で飛行機を連写して追い続けた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/125秒、F2.8)/ISO 12800/WB:日陰

池で見かけた「ニシキゴイ」。カメラを向けるとエサをもらえると思ったのか、口を大きく開けて近寄ってきた。AF開始スピードも速いので、狙ったファーストショットからピント精度が良かった。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F2.8)/ISO 8000/WB:オート

朝焼けの空をバックに走る電車をシルエットでとらえた。コントラストも高く、クリアな印象だ。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/シャッター速度優先(1/2,000秒、F3.2)/ISO 250/WB:日陰

被写体認識機能のおかげで、飛んでいる鳩の目にもトラッキングAFで追尾できた。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/16,000秒、F2.8)/ISO 1600/WB:オート

逆光での撮影

日の出直後の太陽をバックに走る電車を撮影した。ソニー独自のナノARコーティングIIが採用されているため、フレアやゴーストがよく抑えられている。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/シャッター速度優先(1/3,200秒、F5.6、-1.3EV)/ISO 250/WB:日陰
α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/シャッター速度優先(1/3,200秒、F8、-0.7EV)/ISO 250/WB:日陰

手ブレ補正機構

本レンズは光学式手ブレ補正機構を搭載している。

手ブレ補正のON/OFFに加え、手ブレ補正モード切替もついている。MODE1は通常の手ブレ補正モード、MODE2は流し撮り用に最適化されたモード、MODE3はスポーツなど不規則な動きをする被写体に対してフレーミングしやすくなるモードとなっている。


夜の空港で手ブレ補正の限界をチェック。手持ちで駐機している飛行機を、シャッター速度を落としながら撮影した。

今回の試用においては、1/1,000秒から1/60秒までは100%の確率で手ブレは発生しなかった。1/50秒で93%、1/30秒で78%、1/15秒で54%、1/8秒で28%、1/5秒で10%、1/4秒には3%となり、それ以下のシャッター速度ではブレが止まらなかった。

α9 III/FE 300mm F2.8 GM OSS/300mm/マニュアル露出(1/4秒、F2.8)/ISO 250/WB:オート

まとめ

鉄道車両や飛行機のディテールがくっきり写る描写力が素晴らしい。
レンズの各収差も抑えられていて、手ブレ補正などの機能も充実している。

ひとつ前のモデルだがFE 70-200mm F2.8 GM OSS(約1,480g/三脚座別)と同等の質量となっており、すべて手持ちで撮影できたのも嬉しいポイントだった。

テレコンバーターは今回は試せなかったが、1.4倍で420mm F4、2倍で600mm F5.6として焦点距離が伸ばせるので、軽量なこのレンズを使えば幅広いフィールドで活躍しそうだ。

高橋学

1975年、福島県福島市生まれ。父が新聞社のカメラマンをしていた影響で物心付いたころからカメラが好きになり、父と鉄道などを撮り始めた。高校卒業後は専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツフォトを専攻。1996年より有限会社ジャパンスポーツでスポーツカメラマンの仕事に就き、実績を重ねてフリーランスへ。現在はフィギュアスケート、フットサル、サッカー、陸上などの様々なスポーツ取材をしている。また、小さいころから好きな鉄道や飛行機なども撮影を続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員