交換レンズレビュー

SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports(動体編)

小型軽量で手ブレ補正も強力 動体を手軽に撮影できるF2.8望遠ズームレンズ

昨年12月に発売されたSIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sportsは、シグマのラインアップのうち高い動体適正を発揮する「Sports」ラインの製品となる。

35mmフルサイズセンサーのイメージサークルに対応したズーム全域F2.8の大口径望遠ズームレンズで、高速AF、最新の手ブレ補正機構、防塵防滴構造、絞りリングの装備といったところが特徴だろう。

現時点ではLマウント用とソニーEマウント用がラインナップされている。

ソニーEマウント用の場合、質量は1,335g、外形寸法はφ90.6mm×207mm。ズームしても全長変化のないインナーズームタイプだ。

レンズ構成はFLD6枚、SLD2枚、非球面レンズ3枚を含む15群20枚。フィルターサイズは77mmとなっている。

先端から見てみると、撥水・防汚コーティングされた最前面のレンズに続き、ズームリング、AFロックボタン3か所、フォーカスリング、絞りリング、スイッチ部、三脚座、レンズマウントと続いている。

スイッチ部は上からフォーカスモード切替スイッチ、フォーカスリミッタースイッチ、手ブレ補正(OS)スイッチ、カスタムモードスイッチ、絞りリングクリックスイッチとなっている。その裏側には絞りリングロックスイッチがある。

三脚座は細ネジ穴が一つあり、360°の回転が可能。回転して横位置と縦位置にしたときのポジションにクリック感があるので使いやすい。

また三脚座はアルカスイス互換形状となっていて、アルカスイスタイプのクランプを使用する際は、必ず付属のセーフティストップスクリュー2本を取り付けるよう説明書きがある。

三脚座は付属の六角レンチで4本のネジを外し、取り外して使うことが可能だ。

レンズフードは軽量で強度が感じられるかぶせ式タイプ。ロックネジでしっかり固定できる。

付属品はケース、レンズフード、三脚座、フロントキャップ、リアキャップとなる。

画質

今回は飛行機・鉄道・野鳥などを撮影したが、画質はズーム全域にわたって良好だ。

周辺光量補正はカメラ側の設定でオートにしているが、ワイド端・絞り開放時に周辺光量落ちが見られる(F8にすれば解消)。ボケもきれいで、被写体を浮き立たせてくれる。

離陸するスカイマーク機。200mmでは焦点距離が足りないかなと思っていたが、200mmで周りの風景を入れた感じも良いなと感じられた1枚だ。
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F8)/ISO 400/WB: 太陽光
絞りをF8にすることで、離陸する飛行機と背景の建物まで優れた描写になった。歪曲収差補正が「切」になっていたため糸巻型の収差が発生している
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/193mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F8)/ISO 400/WB: 太陽光
飛行機と富士山を狙うため絞りをF8にして撮影。テレ端で撮影したので富士山がぐっと引き寄せられた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F8、−0.3EV)/ISO オート(ISO 500)/WB: オート
飛んできた鳩が着地する瞬間。AFは目をしっかり追尾していた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/2,500秒、F2.8)/ISO 2000/WB: オート
小鳥が走り回っていたので、チルト式モニターを使いローポジションから撮影。軽量レンズなので小鳥の動きにも素早く反応できた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F2.8、+0.3EV)/ISO オート(ISO 320)/WB: オート
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F2.8、+1.3EV)ISO オート(ISO 1250)WB: オート
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F2.8、+1.0EV)/ISO オート(ISO 1000)/WB: オート
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/4,000秒、F5.0、+1.3EV)ISO オート(ISO 3200)/WB: オート
夕日が電車を照らす。200mmの圧縮効果で背景のビルを大きく写せた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F4.0、-1.3EV)/ISO オート(ISO 100)/WB: 日陰
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/120mm/マニュアル露出(1/160秒、F2.8)/ISO 1600/WB: 日陰
低照度下でもAFが電車を追尾。手ブレ補正機能のおかげで、狙ったポイントで動きを止めることができた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/189mm/マニュアル露出(1/100秒、F2.8、+0.3EV)ISO オート(ISO 2000)/WB: 日陰

逆光耐性

逆光対策としてナノポーラスコーティングおよびスーパーマルチレイヤーコートを採用。逆光や強い光が入ってきてもゴーストやフレアを抑えるコーティングとなっている。

夕日がレンズに直接入ってくるシーンでは、テレ端、ワイド端ともにフレアやゴーストが気にならない。とてもクリアな描写が得られた。

α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/8,000秒、F2.8)/ISO 200/WB: 日陰

手ブレ補正

シグマ最新の手ブレ補正アルゴリズム「OS2」を搭載。手ブレ補正効果はワイド端で約7.5段分、テレ端で約5.5段分となっている。

手ブレ補正モードは1と2があり、1は通常撮影、2は流し撮りに適したモードになっている。

夜の東京駅にて手ブレ補正の限界をチェックした。手ブレ補正モード1にして、テレ端の200mmで撮影。シャッター速度1/125秒〜1/40秒は100%の確率で手ブレが発生しなかった。1/40秒より遅くした場合は、1/30秒が63%、1/20秒が56%、1/15秒が43%、1/10秒が23%、1/5秒が12%、1/4秒が6%。効果の高さを実証した。

レンズの説明書によると、シャッターを半押しして画像が安定するまで約1秒かかるとのことだ。

手ブレ補正モードを1にして撮影。夜の東京駅も手持ち撮影で気軽に写せた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/4秒、F2.8)/ISO 500/WB: オート/手ブレ補正モード1
ライトアップを手持ちで撮影。絞り開放でのボケも美しい
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/6秒、F2.8)/ISO 250/WB: 太陽光/手ブレ補正モード1
手ブレ補正モード2で流し撮り。安定してレンズが振れるので成功率も上がる。太陽が沈んでかなり暗い状況だったが、反射した周辺の明かりが車両を浮き立たせてくれた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/20秒、F2.8)/ISO 3200/WB: 日陰/手ブレ補正モード2

スポーツ撮影(フットサル)

日本女子フットサルリーグ2023-2024 ファイナルシーズン上位リーグ 第15節が千葉県浦安市のバルドラール浦安アリーナで行われた。

前節でリーグ優勝を決めているバルドラール浦安ラス・ボニータスは、宮原ゆかりらの活躍でアルコ神戸に6-2で勝利した。

前半、攻める浦安・塚本夏希
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F2.8)/ISO 8000/WB: 2,600K(B2.50補正、G2.50補正)
前半、浦安・宮原ゆかりの左足シュートが決まり2-0でリードする
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F2.8)/ISO 8000/WB: 2600K(B2.50補正、G2.50補正)
前半、浦安の選手たちが宮原ゆかりのゴールを祝福する
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/200mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F2.8)/ISO 8000/WB: 2,600K(B2.50補正、G2.50補正)
試合後に行われた日本女子フットサルリーグ2023-2024の優勝セレモニー。バルドラール浦安ラス・ボニータスはリーグ4連覇を果たし、今シーズンキャプテンを務めた伊藤果穂が優勝トロフィーを掲げた
α7 IV/SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sports/70mm/マニュアル露出(1/200秒、F5.6)/ISO 5000/WB: 2,600K(B0.50補正、G1.50補正)

フットサルのコートサイズは約縦40m×横20mとなっている。その撮影において、標準ズームレンズといえるのが70-200mmレンズだ。また、ズーム焦点距離により絞り値が変動しないF2.8通しという点も使いやすい。

α7 IVのコンティニュアスAFでトラッキングを使っているが、本レンズは選手にピントを合わせ続けてくれた。

まとめ

小型・軽量なので取り回しやすく、持ち運びも楽な点が良い。フォーカススピードも静かで速く、トラッキングで狙った被写体へのAFの食いつきも良かった。

気になったのはズームリングの位置だ。レンズフードなしだと最前面のレンズ付近にズームリングがあるので、左手親指でのズームリングの操作がしづらく感じた。レンズフードを装着して使用することを前提とした設計なのかもしれない。

ただしそのレンズフードがズームリングに少し被るため、親指でズームリングをまわした際に、レンズフードとレンズ本体の隙間に親指が食い込むことがあった。使い慣れるうちに気にならなくなるのだろうか。

価格は直販で24万2,000円。小型軽量でAF速度も申し分なく、手ブレ補正も強力。逆光耐性も含めて、本格的な動体撮影を気軽に楽しめるレンズという印象だ。

高橋学

1975年、福島県福島市生まれ。父が新聞社のカメラマンをしていた影響で物心付いたころからカメラが好きになり、父と鉄道などを撮り始めた。高校卒業後は専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツフォトを専攻。1996年より有限会社ジャパンスポーツでスポーツカメラマンの仕事に就き、実績を重ねてフリーランスへ。現在はフィギュアスケート、フットサル、サッカー、陸上などの様々なスポーツ取材をしている。また、小さいころから好きな鉄道や飛行機なども撮影を続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員