交換レンズレビュー
RF200-800mm F6.3-9 IS USM
“Lレンズ並み”のシャープな画質 多彩なシーンで活躍する超望遠ズームレンズ
2024年1月18日 09:36
昨年12月にキヤノンから発売されたRF200-800mm F6.3-9 IS USMは、フルサイズセンサー対応のミラーレスカメラ用交換レンズとして、望遠端が800mmとなる世界初のズーム域をもつレンズとなっている。
焦点距離が長いRF望遠ズームレンズには、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMがあるが、さらにテレ端が800mmとなるこの超望遠ズームレンズの登場は衝撃的だった。
そのほかの特徴は手持ち可能な軽さ、5.5段分の手ブレ補正、防塵防滴、エクステンダー対応などがある。
このズーム域があれば近くのものから遠くの被写体まで、1本のレンズで様々なシーンが切り取れるだろう。
外観
レンズ単体で長さが約314.1mm。質量が2,050gと軽量になっている。レンズ構成はUDレンズを含む11群17枚だ。
外装が白いのでキヤノンの高級ライン“Lレンズ”に見えるかもしれないが、それらで使われているスーパーUDレンズは使われていないし、遮熱塗装も施されていない。しかしLレンズ同様の防塵防滴構造になっていて、ほこりや水滴の侵入を防ぐ効果があるので屋外撮影には頼もしいレンズとなっている。
レンズ本体には黒ラバーの幅広いズームリング、ズームリングの操作感調整リング(SMOOTHとTIGHT)、各種スイッチ部、レンズファンクションボタン2つ、三脚座を備えている。
AF/MFの切り替えスイッチには、“CONTROL”の選択肢を備えている。これはスイッチの右にあるリングを、コントロールリングもしくはフォーカスリングに切り替えられるというものだ。
もう一つは手ブレ補正(STABILIZER)のON/OFFスイッチ。手ブレ補正のモード切替は付いていないシンプルなON/OFFタイプになっている。
白い丸ボタンはレンズファンクションボタンになっていて、それぞれ縦位置と横位置撮影時に押しやすい場所に2か所あり、お好みの設定に割り当てられる。デフォルトはAFストップが割り当てられている。
三脚座は360°回転可能だが、取り外すことはできない。三脚座にはストラップ取り付け部とロックつまみがある。三脚取り付け部には太ネジ穴と細ネジ穴がついている。
付属品には黒いレンズフード、95mm径のレンズキャップ、マウント側につけるレンズダストキャップ、レンズストラップがある。別売りで持ち運びに便利な専用ケースも準備されている。
絞り値がF6.3-9ということでコンパクトなレンズかと想像していたが、実際に見たレンズは大きいと感じた。
しかし、レンズを持ってみると2,050gということで、手持ちができる軽さだった。
ズームリングを回すと鏡筒が繰り出すが安定して構えられる。
画質はシャープ
ズーム全域でシャープな画質が得られる。このレンズは“Lレンズ”ではないが、それらに匹敵する画質という印象だ。ナノUSMが採用されていて、高速で被写体にフォーカスできAF追従性も優れている。
逆光での撮影
本レンズには、フレアやゴーストを低減するASCなどのコーティングは施されていない。
テレ端で撮影時に、レンズに入ってくる強いライトでAFが迷ってしまうことがあった。そのあたりはレンズコーティングの差が出てしまう所なのだろうか。
光学手ブレ補正は5.5段分
レンズ内手ブレ補正を搭載しており、EOS Rシリーズのカメラとの組み合わせで協調制御にも対応している。
STABILIZERスイッチをONにすることでテレ端撮影時には手持ちでの小刻みな手ブレを防いでくれ、思い通りのフレーミングがしやすくなる。
EOS R3の電子シャッターで焦点距離800mm時の手ブレ補正をチェック。手ブレ補正OFFにすると、1/125秒以下になると手持ちでブレをおさえることができなかった。手ブレ補正ONにすると1/30秒までは止めることができた。
それ以下はほとんど止められなかったが、しっかりホールディングして何度かチャレンジすれば1/15秒でも手ブレが抑えられている画像もあった。
飛行機を流し撮り
このレンズはEOS R3の流し撮りアシスト機能に対応しているので、その機能を使い流し撮りを試みた。
夜の空港で、テレ端時はコントラストがないところにフォーカスポイントがいくとAFが迷ってしまうことがあった。しかし、ライト部や窓の明かりなど明るいところをつかめばAF追従も良く、流し撮りの成功率が増えた。
夜間撮影ではテレ端の絞り値がF9という厳しい条件だったが、EOS R3の高感度性能や流し撮りアシスト機能を利用すれば撮影の幅も広がるだろう。
全ズーム域でエクステンダーも使用可能
今回の撮影では試せなかったが、EXTENDER RF1.4xを装着すれば280-1,120mm F9-13相当、EXTENDER RF2xを装着すると400-1,600mm F18-25相当の望遠ズームレンズとして使え、AF撮影も可能にする。
またAPS-Cサイズのカメラを装着すれば約1.6倍の焦点距離となるため、320-1,280mm F6.3-9相当のズームレンズとして使用できるので、組み合わせ次第でさらに望遠の世界が楽しめる。
下の写真はEOS R5の約1.6倍クロップ(APS-Cサイズ相当)を使い焦点距離約1,280mmで撮影。超望遠の圧縮効果で坂を上ってくる特急成田エクスプレスを切りとった。
その他
今回訪れた撮影地で見かけた野鳥たちも狙ってみた。警戒心の強い野鳥たちだが、800mmを使い近づくことなく動き回る様子を撮影できた。
小さくて素早い動きの「ハクセキレイ」を、バリアングルモニターを使いローポジションから撮影した。レンズが軽量なので扱いやすかった。
まとめ
一番良かった点は画質が優れていること。Lレンズではないが、ズーム全域でLレンズに匹敵するシャープな写りだと感じた。
F6.3-9という絞り値なので、撮影する被写体が限定されるかと思っていたが、鉄道や飛行機は日の出から日の入り、そして夜間までかなり幅広く撮影できた。
カメラの高感度性能も上がっているので感度を上げて速いシャッタースピードも得られるし、5.5段分の手ブレ補正が使えるのは利点だ。
気になった点は、ズームリングを回す重さを変えられるが、「SMOOTH」でも少し重く、素早いズーミングが難しいこと。ズームリングを3回ぐらいまわさないと200mmから800mmへとズームすることはできなかった。
また、このレンズの説明書にも書いてあるが、ズームリングを急回転させた場合、一時的にピントがボケる場合があるとのことで、ズーム流しには向いてないだろう。
価格はキヤノンオンラインショップで31万9,000円(税込)となっており、価格的にも入手しやすいレンズだと感じた。