ライカレンズの美学
LEICA ELMARIT-TL F2.8/18mm ASPH.
抜群の携帯性が魅力のパンケーキレンズ
2018年4月27日 12:00
ライカレンズの魅力をお伝えする本連載。今回はELMARIT-TL F2.8/18mm ASPH.を取り上げよう。本レンズはライカCL(2017年12月発売)と同時に登場したAPS-Cフォーマットのパンケーキレンズで、フルサイズ換算27mm相当の画角となる広角レンズ。全長わずか21mmの薄型形状と、80gという超軽量による携帯性の良さが最大のポイントで、足で稼ぐタイプのスナップ撮影にはもちろん、日常的にライカを常時携帯したい人にとっても注目の1本だ。
外観は他のライカTL用レンズと同様にきわめてシンプルで、可動部はフォーカスリングのみ。ライカCLと同時に発表されたレンズだが、もちろんライカTLやTL2にも使用可能で、鏡胴のカラーはブラックだけではなくシルバーもラインナップ。シルバーボディのライカTLシリーズに装着する場合でもカラーリングをバッチリ統一できる。鏡胴は樹脂などではなくアルミ製でブラック、シルバー共にアノダイズ処理による滑らかで美しい表面仕上げが施されている。小さなレンズでも外観品位に手抜きが全くないところはライカらしい。
レンズ構成は6群8枚で、薄型パンケーキレンズとしては構成枚数が多めだ。一般的に薄型レンズは鏡胴内スペースの関係で繰り出し式のフォーカシングを採用することが多いけれど、本レンズはインナーフォーカス式なので、ピント合わせに伴う全長の伸縮はなく、構造的に極めて堅牢な鏡胴になっている。当然、前玉も回転しないのでPLフィルターなどの使い勝手は良好だ。最短撮影距離は30cmで、実焦点距離が18mmであることを考えると正直もう少し寄れればなぁと思うけれど、薄型設計+インナーフォーカス方式でフォーカスレンズの移動量にかなり制限があることを考慮すれば納得できる。
薄型形状をスポイルしないよう、純正レンズフードは用意されていないが、ライカによるとコーティングをしっかりと行うことでフード無しでもライカ基準の光学検査はパスしているという。レンズ前枠には39mm径のフィルターネジが切られているため「どうしてもフードを付けたい!」という人は、その気になればサードパーティのフードを取り付けることは可能だ。また、このフィルターネジに市販のステップアップリングを介してクローズアップレンズなどを装着すれば、ライカの保証範囲ではないが、前述の最短撮影距離の不満についても解消できるだろう。
今回はライカCLと組み合わせて試用したが、EVF付きのAPS-C機としては小型軽量で持ち出しやすいサイズ感の魅力も相まって、ブラブラ歩きのスナップ散歩には最良のパートナーと感じた。インナーフォーカスということもありAF速度はかなりスピーディで、その点でもストレスを感じる事なく軽快に撮影できる。フードなしでも本当に大丈夫なのか、かなりイジワルな光線条件でも試してみたが、確かにフレアによるコントラスト低下は最小限で、フードが無いことによる写りへの悪影響は特に感じられなかった。
描写は想像以上にシャープで良く写る。他のTLレンズのようにカミソリ的な鋭いキレ味というのとは少し異なり、線はやや太めだがなかなかシッカリとした解像。興味深かったのは絞りによる描写変化がほとんどないことで、絞り開放から合焦部には十分な解像とコントラストがあって、絞っても被写界深度が深くなるだけで基本的な描写傾向はほとんど変化しない。これは本レンズに限らず最近のライカレンズに共通の傾向だが、本レンズは特にその印象が強い。安心して絞り開放から使えるレンズと言えるだろう。
APS-CのライカCLやTLシリーズは、コンパクトでいつでも気軽に連れ出せるのが最大の魅力。今回のELMARIT-TL F2.8/18mm ASPH.はそういうAPS-Cライカの本領を発揮させるレンズとして待ち望んでいた人も多いはずで、色々な意味で肩の力を抜いて撮影を楽しめる良レンズだ。
協力:ライカカメラジャパン