特別編:風景写真で使いたい〜三脚の選び方と使い方


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 デジタルカメラの手ブレ補正機構が一般的になり、高感度性能がどんどんアップしたことで、三脚を使うことが少なくなった人もいると思います。でも、三脚がなければ撮れないシーンはまだあります。

 例えば、流れる滝を糸のように滑らかに表現するには、1秒前後の間、シャッターを開けなくてはなりません。また、バルブでシャッターを開けっ放しにする花火撮影や、星の動きを表現する天体撮影など、数十秒から数十分にわたる露光時間が必要なジャンルもあります。

 撮影倍率が高いマクロ撮影や、画角が狭い超望遠撮影でも、三脚があるとないとでは大きく違います。どちらも手ブレが目立ちやすい撮影の代表ですが、そのうちマクロはボケが大きいことから、花のシベの先など意図した場所に、しっかりとピントを合わせることが重要になります。このときカメラが前後に動くとピントがズレてしまいますが、三脚を使えば風などで被写体が動かない限り大丈夫です。

 もちろん通常の撮影でも、手ブレを防ぐ最良の方法は三脚でしょう。特に2,000万画素オーバーのフルサイズ機になると、わずかなブレもあらわになります。画面上では等倍に拡大しないと気にならないブレも、大きく伸ばすと画像全体の緩さにつながることも。特に遠景をしっかり写したい風景写真では、レンズの品質とともに、三脚にも気を遣いたいものです。

 そもそも風景写真はPLフィルターの使用で1段半〜2段程シャッター速度が遅くなり、パンフォーカス表現のため絞り込むと、さらにシャッター速度が落ちます。これで薄暗い森の中で撮るとなると、ある程度高感度にしないとスローシャッターになるのは必至でしょう。風景写真家には三脚を常用する人が多くいますが、ちゃんとわけがあるのです。

滝の流れを印象的にするため、絞り優先AEで0.5秒の露光。もちろん三脚を使っています。F11まで絞り、さらにPLフィルターを使用
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 0.5秒 / F11 / -1.3EV / ISO100 / 70mm
同じ位置から手持ちでISOオート。ISO感度は2500まで上がりました。シャッター速度は1/50秒と中途半端になり、滝の美しさがいまひとつです
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 1/50秒 / F11 / -1.3EV / ISO2500 / 70mm

 そのほか三脚のメリットとしては、構図をじっくりと定められることや、シャッターチャンスを待つ間、定めた構図のままカメラを保持しなくても良いことなどが挙げられます。また、最近流行のライブビューとの相性がとても良いのも特徴です。

 こうした重要性はわかっていても、重くてかさばることから、あまり使われていないのが現実だと思います。そこでこのページでは、主に風景写真で使うため、三脚の基本的な選び方を改めて解説したいと思います。

 


結構ややこしい? 三脚の選び方

カーボン三脚の例、ベルボンのジオカルマーニュE635。ロックレバー式の3段で、脚径28mm、全高1,435mm。3ウェイ雲台のPHD-61Qが付属しています。同じ脚径で4段にしたE645や、ロックナット式のN635、N645という兄弟モデルもあります

 理想の三脚とは、とにかく重量があって、脚径(脚パイプの直径)が太いこと。結局、「どんな条件でも自分の持っているカメラボディとレンズがぐらつかない」三脚がベストです。ただし重いということは、持ち運びが不便ということにもつながります。重さを感じて結局持ち歩かなくなっては意味がありません。また、脚径が太いと背が高くなり、縮めたときの長さ(縮長)の面で不利です。さらに、大きな三脚は価格も高い。

 というわけで、あちらを立てればこちらが立たず、といった感じなのが三脚の世界。カタログにはラインナップがずらりと並び、いざ選ぶとなると難しいものです。ただし、それぞれのスペックの違いはそのまま選択のポイントにもつながります。順番に見ていきましょう。

・カーボン or アルミ?

 三脚を選ぶとき、最初に考えなければならいのが脚の素材。主流はカーボン、またはアルミです。一般的に同じサイズの三脚なら、カーボンの方が価格が高く、アルミの方が安い。カーボンが軽く、アルミが重いという関係です。重い方が三脚として優秀なのですが、カーボン三脚は軽い割には剛性があることから、いまでは従来のアルミ三脚をしのぐ人気を得ています。アルミ三脚よりも少し値が張りますが、比べて見るとしっかりした剛性感なのに、その軽さに驚くことでしょう。予算があるなら、カーボン三脚をお勧めします。

 ただし強い風が吹くと揺れやすかったり、軽いことによるデメリットもあります。場合によっては、ストーンバッグで重量を増やすなどのテクニックが必要です。私もカーボン三脚派ですが、いざというときのために、車の中に重量級のアルミ三脚を常備しています。

・脚径は? 高さは?

 次に悩むのが高さでしょう。同じカーボン三脚でもカタログにはたくさんの三脚があり、高さが増すほど値段が高くなります。その前に考えてほしいのは脚径です。脚径が太い方が一般的に高さもあり、太さは安定感に繋がります。

 カーボン三脚の脚径には、32mm径、28mm径、25mm径などがよくあります。例えばベルボンでは36mm径を超大型、32mm径を大型、28mm径を中型、25mm径を中小型と説明。脚径が太くなるほど高さと重量が増します。ベルボンでは28mm径付近を汎用的な製品と位置付けているようです。

 高さについては、「脚を伸ばしたときに、自分の目線にカメラがくる高さ」が基本といわれています。三脚は脚をすべて伸ばして使うことが多いためあり、昔からこういわれてました。このとき注意してほしいのは、目線にくる高さは雲台込みの高さであること。使用する雲台によって変わってきますが、雲台の高さは50〜150mm程度と幅があります。雲台とセットの製品ならカタログに記載されていることがありますが、三脚と雲台を別々に買う場合は気をつけてください。

 また、被写体によって必要な高さは変わる場合があります。前者はローアングルでのマクロ撮影、後者はフェンス越しの鉄道写真など。必要とされる高さは様々ですが、脚径28mm前後、高さ1,600mm前後が風景写真で扱いやすいと思います。身長の高い方はもうワンクラス上の三脚を、女性など身長の低い方はワンランク下を選ぶのもおすすめです。ただし、400mmや500mmといった超望遠レンズを使う場合は、身長に関わらず、なるべく大きな三脚を選びたいものです。

・3段 or 4段?

 高さの選び方と関係があるのですが、カーボン三脚の多くの製品には、「3段」タイプと「4段」タイプが選べます。4段の方が縮めたときの長さが短くなるのですが、3段より高さが若干低くなるのと、伸ばすときの手間が増えます。また機構上、ジョイントが多いほど安定度の面でも不利になります。

 どちらを選ぶかは難しい問題ですが、頻繁に伸縮させるなら3段、バッグに取付けるなら4段など、利用スタイルを考えて選ぶしかありません。ちなみに、ローポジション時の最低地上高は、4段の方が若干低くなります。花のマクロ撮影が多い人なら、その点を考慮して4段を選ぶという手もあります。


左からベルボンのジオカルマーニュE433、ジオカルマーニュE645、ジオカルマーニュE635。E635は3段、E645は4段の兄弟モデルだが、高さはコレだけ違う。E443は脚径22mmの小型軽量三脚

・ロックナット or ロックレバー?

 同じ系列で脚ロック(脚パイプのジョイント部)が違うこともよくあります。よくあるのは、グルグル回して留めるロックナットと、ワンタッチで留めるロックレバーの2タイプ。これは好みで選ぶと良いでしょう。ロックレバーの方がスピーディに操作できるという人もいますが、操作に慣れればロックナットでも素早くセッティングできます。外すときにあまり回しすぎないのがコツです。

ロックナットロックレバー

・3ウェイ雲台 or 自由雲台?

 三脚には雲台がついたセットモデルがあります。脚とのマッチングが考えられた雲台が付属しているので、大きすぎることもなく、安心して使えます。

 こうしたセットモデルでは、3ウェイ雲台と自由雲台のどちらかを選べるようになっている機種があります。3ウェイ雲台は厳密な構図のセッティングに向き、自由雲台は手持ちと同じ感覚でカメラの位置決めができるという特徴があります。超望遠撮影は3ウェイ雲台が有利、ポートレートは自由雲台が向くといわれています。

 同じクラスなら、重量は自由雲台の方が軽くなります。また、3ウェイ雲台よりかさばらないのも特徴でしょう。そのため予備としてバッグに取付けておく程度の使い方なら、自由雲台にしておくというのもひとつの手です。

クイックシュータイプの3ウェイ雲台PHD-61Q。E635とE645に付属する
E443に付属する自由雲台QHD-51

・そのほか

 最近の国産三脚製品は、どんどん装備が豪華になっています。脚に装備された発泡ゴムグリップに始まり、雲台への水準器の搭載、クイックシューの採用、ストーンバッグやポシェットの付属、ゴム石突きとスパイク石突きを切り替えられる可変石突きなど。似たようなスペックの場合は、こうした装備で比べてみるのも方法かもしれません。特に水準器は、風景撮影で役立ちます。


基本はしっかりと据えること

 ここからは三脚の使い方のツボを簡単に説明しましょう。

 まずセッティグですが、脚を畳んだ状態でファインダーを覗き、ある程度高さを決めてから、各脚を伸ばします。このとき基準となる脚を決めておき、先に接地させておくと、ほかの脚を楽に伸ばせます。伸ばしたあと、微調整を行ないます。

 どの脚も完全に開いた方が安定します。また、傾斜地や荒れ地など地面が水平でない場合は、各脚の長さを調整し、エレベーター(センターポール、センターコラム)をなるべく垂直にします。カメラの角度は雲台で調整できますが、地面に対して接地する三脚をまずまっすぐに保ち、それからカメラを調整する方が、三脚ごと倒れる可能性が少なくて安心です。

 

脚を目一杯伸ばすとき

 

 

 
途中で止めるときは、太い方の脚を基準に伸ばす

 

 橋の下を覗き込むように撮るときは、後ろの脚を長く伸ばし、前を短くすることで俯瞰ぎみの撮影が行なえます。また、人や車が通るような狭い場所では、脚を目一杯に開かずに使うこともあります。こうした込み合う場所では、三脚を広げて他人に迷惑をかけるより、三脚の使用をあきらめたり、早朝や夕方など、人通りが少ない時間帯を狙う考え方が必要かもしれません。

ひとつの脚だけ段差の上に置いた例。少しでも被写体に近づくためと、車道の端に行きたかったため橋の下を覗き込むようなアングルも可能。後ろの脚を長くセットする
傾斜地では脚を調整することで、エレベーターを三脚をまっすぐに。右は悪い例
ライブビューと三脚の相性は抜群。よほど日差しが強くない限り、最近はライブビューで撮影しています

 また、個人的にはエレベーターをほとんど動かさないようにしています。脚を目一杯伸ばしても高さが足りないときや、微調整に使う程度に留めています。三脚本来の安定感は、ピラミッドのような三角錐の形にあると考えているので、エレベーターを伸ばすことで、それが崩れてしまう気がするのです。特にα900などフルサイズのデジタル一眼レフカメラを使う場合、面倒でも慎重に脚で高さを調整するようにしています。1枚1枚の撮影速度が遅くなりますが、失敗を減らす方が重要だと感じます。

 ライブビューとの相性の良さも三脚の特徴です。ファインダーを覗き込まなくてもすべての撮影が行なえるし、周囲の状況を確認しながら撮影できるのは新鮮です。ほとんどのライブビューはピントを合わせたい場所を拡大表示できます。その後MFでじっくり合わせるには、手持ちよりも三脚使用の方が確実です。

 ほかにも三脚を使いこなすためのテクニックは色々ありますが、まずは撮影のたびに持ち歩き、使い込むことが重要でしょう。大事に使えば長く使えるものなので、皆さんにもお気に入りの1本を見つけて欲しいと思います。

 


 最後に今回のロケで撮影した作品です。もちろん三脚を使用しています。

手ブレ補正機構がないレンズですが、三脚できっちりとると、ここまでシャープに写ります
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 1/30秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 52mm

 

 

定番の滝と紅葉の取り合わせ。さらにPLフィルターも使っています。風によるブレを防ぐため、ISO感度を200にしました
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 1/10秒 / F8 / -1.3EV / ISO200 / 70mm

 


夕方4時の暗い森の中です
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 0.4秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 62mm

 


10月下旬の夕方5時48分。周りはほとんど真っ暗です。20秒の長時間露光により、消えかけていた空の色味を残すことができました
EOS 7D / EF 24-70mm F2.8 L USM / 5,184×3,456ピクセル / 20秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 62mm

2009/10/28 12:00