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ギミックも楽しい高級ハンドグリップ「Peak Design マイクロクラッチ」

「マイクロクラッチ」(Lプレート)の使用例。ソニーα7R Vに装着

ピークデザインの新製品「マイクロクラッチ」が7月に国内発売された。税込1万2,100円という価格に納得できるか、国内代理店の銀一に借りた実機を試してみた。

マイクロクラッチはカメラ右手側の吊り環と底部プレートを用いる、いわゆるハンドグリップに分類できる製品。グリップ部分はフィンガーループになっていて、カメラや手の大きさに合わせてサイズを調整できる。取り付けるカメラによって、IプレートとLプレートの2タイプを用意している。

2タイプが存在する
上がIプレート、下がLプレート

メーカー公式動画では、LプレートはキヤノンEOS R5、ソニーα7 IV、ニコン Z 6II、パナソニックLUMIX GH5 IIといったグリップ部分を持つカメラにフィットし、Iプレートは富士フイルムX-E4やX100シリーズ、ライカQシリーズといったフラットなカメラにフィットしている。

なお、ピークデザインには既に「クラッチ」という、よく見慣れたスタイルのハンドグリップがラインナップされている(2014年登場)。本製品はその弟分と言えそうだ。なお、兄貴のほうが税込7,700円と値段が安い。縦位置グリップ付きなど、大きめのカメラで使いたい場合は兄貴(クラッチ)について調べてみてほしい。

価格の違いを生んでいるのは、底部の取り付け方式だろう。クラッチは底部の取り付けにアルカ互換のカメラプレートと「アンカーリンクス」を利用している。いっぽうこのマイクロクラッチでは、金属製の専用プレートをカメラ底部にネジ留めする。

Iプレートのカメラ底面と接する側。滑り止めが備わっている

取り付け方とサイズ調節

取り付け時には、まず同梱されている短いほうのカメラネジを、軽くカメラの三脚穴に入れる。そこにプレートをスライドさせながら取り付ける。

パッケージに付属する取り付けネジ2本。長いほうは後で使う
先に軽く入れたネジに、プレートを差し込む。Lプレートの場合、グリップの内側(指先が来る側)にプレートのL部分を合わせる

そして、ネジを締める。工具はプレートに磁石で固定されている。さすがピークデザイン、スパイ道具的な登場で男子のココロをくすぐってくる。「ここまでしなくたって、普通にコインネジでいいじゃん」と思ったアナタの冷静さが羨ましい。

ここに工具が隠れている
これでネジを回す。バッテリー交換などで底部にアクセスしたい場合は、これで軽くネジを緩め、逆の手順でプレートを抜く

ちなみにライカQ3は三脚穴のすぐ近くにSDスロットがあるため、一度完全にネジを抜かないとフタが干渉して開かない。しかしカメラ左手側のUSB Type-C端子でデータ転送もバッテリー充電もできるため、今回の試用中にプレートを外して底部へアクセスする機会はなかった。一日のうちにバッテリーを使い切らない程度の撮り方であれば、他機種でもプレート着脱不要でイージーに使えそうな気がした。

さて、次はカメラの吊り環に、ハンドグリップの上側を取り付ける。マイクロクラッチに付属している三角環をカメラ右手側の吊り環に装着し、ゴム製の三角環カバーを被せる。

三角環。左がα7R Vの標準装着品、右がマイクロクラッチの付属品。標準装着品だとマイクロクラッチのストラップ幅には狭かった
付属品。上から時計回りに、三角環、三角環カバー、三角環の取り付けツール
三角環とカバーを取り付けた

そしてストラップ部分を通し、折り返してサイズを決め、余った部分を差し込んで処理する。見た目にスマートな仕上がりだ。

三角環にストラップを通す
指を入れながら、よきサイズのところで固定する
先端部分をスリットに差し込んで完成
ソニーα7R Vに取り付けたところ(Lプレート)
ライカQ3に装着(Iプレート)。こちらはシャッターボタンが天面なので、人差し指は入れずに使ってみた
Iプレートの場合は、カメラの端とプレートの端を合わせるよう案内されている

サイズは細かく調節でき、パッド部分も穴の位置で固定するためズレることがない。最初のうちは実際に様々な持ち方を試しながら調節し、徐々にポジションが決まってくるだろう。完璧なタイトフィットを得ると撮影中の持ち心地はよいが、指の抜き差しがスムーズではなくなったりする。

位置決めの穴に番号が振られている
指が当たるパッド。肌触りが良い

他製品との組み合わせ:ネックストラップ

プレートにアンカーを取り付けた

マイクロクラッチのプレートには、ストラップ脱着システムの「アンカー」を取り付ける穴がある。こことカメラ左手側の吊り環にアンカーを取り付けることで、ネックストラップも併用可能だ。

ピークデザインのストラップ「リーシュ」との組み合わせ例

マイクロクラッチのグリップ部分は柔らかい素材のため、指を通さずそのままカメラを握ってしまうこともできる。ネックストラップ併用時にはこれも便利な要素だった。

他製品との組み合わせ:カメラクリップとアルカ互換プレート

カメラクリップ「キャプチャーV3」と組み合わせる

マイクロクラッチのプレートに付属のアルカプレートを組み合わせることで、更に汎用性が高まる。同梱されているカメラネジの長いほうを使って、2枚のプレートを重ねて固定する。

アルカプレートを重ね付けしたところ。ネジは長いほうに交換する

これによって、バックパックのストラップなどに取り付けた「キャプチャーV3」にカメラを預けながら、撮影時はマイクロクラッチで取り回しよく扱える。長時間歩いたり、カメラの出し入れのためにバッグを下ろしたくないシーンには便利だろう。

バックパックのストラップに「キャプチャーV3」を装着。ネックストラップのように体の前でカメラがバウンドしない
アルカプレート付きのマイクロクラッチをそのまま取り付けられる。アルカ互換の雲台を使っていれば、三脚撮影への切り換えもスムーズだ

ギミックだけでない設計が魅力

実際にマイクロクラッチを装着したカメラをしばらく持ち歩き、他のカメラユーザーにも感想を聞いてみた。プレートの高級感、パッド部分の感触の良さ、ギミックの面白さなど着眼点は人それぞれだった。また、グリップ部分の下側が自由に動くおかげで持ちやすいと指摘した人もいた。

グリップの下側が90度動く。LプレートでもIプレートでも共通

筆者自身、日頃の撮影には普通のネックストラップで困っていなかったけれど、こうして半月ほどマイクロクラッチを常用してみると、なんだか元のスタイルに戻すのが寂しくなった。自分好みに調節したフィット感が恋しいのだ。カメラが変わっても使い続けられる汎用品ならではのメリットを考えると、1万円を超える価格もいくぶんモトが取りやすそうである。自分の手に馴染むフィット感を追求しやすいこと、他のピークデザイン製品との組み合わせで利便性が高まること、この2つがマイクロクラッチの本質的魅力と言えそうだ。

本誌:鈴木誠