デジカメアイテム丼

新型ジンバル「DJI RS 3 Mini」をミラーレスで試す

重量のあるレンズでも安定した動作

DJIがミラーレスカメラに最適な小型スタビライザー(ジンバル)の「DJI RS 3 Mini」を1月にリリースした。今回は、簡単ながらその使用感などを作例と共にレポートする。

「DJI RS 3」から大幅に小型軽量化

DJI RS 3 Miniは、DJIのレンズ交換式カメラ対応モデル「Ronin」シリーズの最小モデルで、ペイロードは2kg。直販価格は税込5万1,480円と一部の旧機種を除けばRoninシリーズで最も買いやすい価格となっている。

モデル名の通り、上位モデル「DJI RS 3」の基本性能を引き継ぎつつ、ペイロードを3kgから2kgに落としたモデルという位置づけだ。安定化アルゴリズムは上位モデルと同じ第3世代。本体重量も1.3kgから850gに軽量化されて扱いやすくなった。

DJI RS 3(右)との比較。かなり小さくなっている

小型化されたと言っても、24-70mm F2.8レンズを装着したソニーα7シリーズなどが搭載可能とアナウンスされているのがポイント。各社のフルサイズミラーレスカメラとそれなりに重量のあるレンズが搭載できるので、クオリティの高い映像が期待できる。DJI RS 3からは映像トランスミッター機能や自動軸ロック機能、バッテリーの交換機能などが省かれているが、趣味レベルで使うには十分と言える。

今回の作例撮影では下記の3本のレンズを用いたが、いずれも問題無い動作を確認できた。

ソニーFE 28-60mm F4-5.6の搭載例
LAOWA 11mm F4.5 FF RLの搭載例
キヤノンEF50mm F1.2L USMの搭載例(マウントアダプター含む)

なお同社でペイロード2kgのモデルとしては、2019年発売の旧機種「DJI Ronin-SC」があった。Ronin-SCは安定化アルゴリズムが第1世代の機種だ。重量も1.1kgあったので、DJI RS 3 Miniで軽量化が進んでいる。

ミラーレスカメラとの相性抜群

筆者は日常的にジンバルを使った撮影をしているわけではないが、今回RS 3 Miniを手にしてすぐに簡単にスムーズな映像を撮影することができた。ジンバルやドローンで名を馳せるDJIだけあって、操作性も良く非常に完成度が高い印象を受けた。

RS 3 Miniにはシュー部分を除くと4カ所のバランス調整ポイントがあり、カメラを載せたらそれらを1つずつ合わせていく。カメラが真上を向くようにするところや水平にするところなどがあり、マニュアルに沿ってセッティングした。最後に本体でオートチューンを行うと準備完了だ。この調整はレンズ交換などをした際にも必要になるが、慣れれば3分くらいでできる内容である。

クイックシュー式でカメラの着脱は素早い
目盛の付いている部分が調整ポイント

準備が完了したら、あとは手に持ってすぐ撮影に移れる。RS 3 Miniには録画開始ボタンがあり、カメラのBluetoothリモコンとして動作する。なので、カメラに触れずに録画のスタート/ストップが可能だ。

グリップ部の操作としては、背面のジョイスティックで上下左右と斜めの動きが可能。前面のトリガーでは長押しでジンバルのロック、2回タップで再センタリング、3回タップで自撮りモードに切り替え可能。さらにフロントダイヤルでは、対応レンズの場合フォーカスやズームも操作できる。

ジョイスティックや録画ボタンのほか、側面には充電用のUSB Type-C端子を備えている
1.4型のタッチパネルでステータス確認や設定が行える
画面のスワイプやタッチで設定変更が可能
前面にはトリガーとフロントダイヤルを装備

グリップの動きに対してカメラの向きを追従させるかを決めるフォローモードという設定がある。「PF」(パンフォロー)ではパン軸のみがグリップの動きに従うので、歩きながらなど一般的な横方向の移動撮影に向く。PTF(パン&チルトフォロー)はパンとチルトのみがグリップの動きに従う。「FPV」にすると3軸全てがグリップを向けた方に向くという具合だ。たとえばPFだと、グリップをチルトしてもカメラは水平を保つ様に制御される。

ローエンドモデルではあるが、「3Dロール360」というカメラをロールして撮影するモードも利用可能となっている。冒頭の作例ではEF50mm F1.2L USM(約590g)という重めのレンズで3Dロール360の撮影をしている。マウントアダプターを挟んでいるので、重心がかなり前に来ているが、安定して回転撮影ができた。

専用アプリで高度な撮影も

専用のスマホアプリ「Roninアプリ」が無料でダウンロードでき、スマートフォンとBluetoothで接続して使う。スマホをジョイスティックとして遠隔操作したり、スマホの傾きに同期してRS 3 Miniを動かすといったことが可能だ。

Roninアプリを起動したところ
「作成」のページではクリエイティブな各機能が選択できる
仮想ジョイスティックの画面

おもしろい機能として「トラック」がある。これは、あらかじめ決めた方向を順番にまわって撮影していく機能で、一度プログラムすれば何度でも同じ動作が繰り返せる。ジンバルを三脚などに固定した状態で実行すれば、パンやチルトが滑らかに行えて便利だ。

作例撮影時のトラックのウェイポイント。計9点を設定してみた

その他には、少しずつ方向を変えながら撮るタイムラプスや合成用のパノラマ写真を撮るモードなども搭載している。

RS 3 Miniでは3つのユーザープロファイルが切り換えられるが、アプリからでも内容を設定できる

有名どころの安心感

「電動スタビライザーといえばRonin」と言うくらい有名なシリーズだが、Roninはどちらかというとペイロード3~4.5kgクラスのやや大きいタイプに注力していたイメージがあった。それが今回、上位モデルと同じ最新アルゴリズムを搭載した小型版が現れたとあって注目されているアイテムだ。

その性能は期待に違わぬ物で歩きながらの撮影はもとより、走ったり片手でのオペレーションでも申し分ない安定性を得ることができた。モノとしての作りの良さや、タッチパネルなどのユーザーインターフェースも良く、ほとんどストレスなく使えたというのが正直な感想だ。

ミラーレスカメラでスタビライザー撮影を始めるなら、まずチェックして欲しい製品だとオススメしておきたい。

モデル:透子

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。