伊達淳一のレンズが欲しいッ!
FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
Aマウントの70-400mmを凌ぐ画質 α7R IIとα6500で試す
2017年7月18日 08:00
ソニーFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSは、焦点距離400mmまでカバーするFEレンズ初の超望遠ズームだ。既に発売されているFE 70-200mm F2.8 GM OSS用の1.4倍および2倍のテレコンバーターにも対応しているので、更なる超望遠の画角までカバーできる。
レンズのサイズ感はAマウントの70-400mm F4-5.6 G SSM IIとほぼ同等ながら、着脱式の三脚座を除いた重量は約1,395gで、35mmフルサイズ用の超望遠ズームとしてはトップクラスの軽量設計。フォーカス駆動は、ダイレクトドライブSSM(DDSSM)とダブルリニアモーターを組み合わせたフローティング機構を採用し、AF駆動の速さはFEレンズ最速という。
最短撮影距離は0.98mと、超望遠ズームとしては驚くほど寄れるのも特徴で、撮影距離が大きく変化するサッカーなどのフィールドスポーツや、花などを超望遠マクロ的に撮影したいときにも威力を発揮する。
悩ましい望遠レンズ選び
このレンズの強みをもっとも引き出せるのは、約20コマ/秒でブラックアウトフリー連写が行えるソニーα9だろう。いや、α9の連写性能を余さず引き出すためには、現状ではこのレンズが不可欠といっても過言ではなく、α9とFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの組み合わせが理想なのは間違いないが、悩ましいのはその価格。
α9ボディは50万円前後、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSは29万円前後の実売価格なので、両方合わせて80万円前後の出費を強いられる。少なくとも今のボクの財力では両方買うのは絶対に無理(笑)。ただ、レンズだけなら所有している機材をドナドナすれば、分割払いでなんとかなるかも……、という厳しい状況だったりする。
なので、ボクの個人的興味は「α7R IIやα6500でもFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを買う意義があるか?」だ。AF-Sで止まっているものを撮るだけなら、Aマウントの70-400mm F4-5.6 G SSM IIにLA-EA3(マウントアダプター)を装着すれば事足りる。
逆に、α9に70-400mm F4-5.6 G SSM II+LA-EA3なら、約10コマ/秒のAF-C連写が可能なので、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSではなく、α9ボディを買って、所有している70-400mm F4-5.6 G SSM IIを活用した方がむしろ幸せではないだろうか? と、心が揺れ動く日々。
そこで、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSをα7R IIやα6500で使ってみて、この悩みに決着を付けようという、極めて個人的視点からのレビューをお届けしよう。
望遠撮影ならα6500にも注目
前述したように、AF-S撮影に限定するなら、α7R IIやα6500に70-400mm F4-5.6 G SSM II+LA-EA3を装着しても、画質的には十分満足できている。ただ、AF-C撮影では[連写L]にしないとAFが追従しないので、α7R IIだと約2.5コマ/秒、α6500でも約3コマ/秒まで連写スピードが落ちてしまう。
ヒコーキなど撮影距離が遠い被写体であれば、1コマ目でピント固定になってしまうものの、[連写H]で2~3コマ連写を繰り返せば実用上問題ないピントが得られるが、スポーツや動物など撮影距離が短く、前後の動きが大きめの被写体だと厳しいものがある。
それと、AマウントレンズをLA-EA3でEマウントボディに装着した場合には、[ゾーン]や[フレキシブルスポット]、[ロックオンAF]といったフォーカスエリアモードが使えないのもネックだ。
その点、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSなら、当然のことながら[連写H]でもAF-Cが追従するし、すべてのフォーカスエリアモードを制約なく選択できるので、カメラ本体のAF&連写性能を最大限に引き出せるのが魅力だ。
ただ、動体に対する追従性能、食いつきは、α9とは大きな差があり、特にα7R IIだと画素数が多く、ピンボケがシビアにわかることもあり、動物園のレッサーパンダなど中近距離域ではやや歩留まりは低め。
ヒコーキのように撮影距離が長い被写体であれば、なんとか動きに追従できることが多い。どちらかというと、4D FOCUSを謳うα6500のほうが約11コマ/秒と連写が速く、像面位相差AFエリアが撮影画面の周辺まで幅広くカバーしている点は動体撮影に有利。
しかも、APS-Cフォーマットなので150-600mm相当と約1.5倍の望遠効果が得られる点もヒコーキなどを撮影する際にはとても便利で快適だった。
位相差AFができる絞り値に注意
それと、α9はF11まで像面位相差AFが動作するのに対し、α7R IIやα7 IIで像面位相差AFが効くのはF8まで。これらを下回る絞り値に設定してAF-C撮影する場合、AF-Cでのピント合わせは可能だが、コントラストAFのみのAF制御となるため、“ウォブリング”と呼ばれるフォーカスを前後に微動し続けながら被写体の動きに追従するため、AFの品位やパフォーマンスは低下してしまう。
特に、2倍テレコンを装着すると開放F11となるので、位相差でAF-C撮影が行えるのはフルサイズではα9だけ(APS-C機ではα6000シリーズ及びα5100も対応。α6500、α6300は最新の本体ソフトウェアアップデートが必要)。ヘリコプターのローターやプロペラをピタッと止めてしまわないよう、シャッタースピードを落としたいときも、α9などのほうが1段シャッタースピードを低速にしても像面位相差でAF-C撮影できる余裕がある。
とはいえ、日中に1/250秒以下のシャッタースピード優先オートで撮影すると、ISO100でもF11よりも絞り込まれるケースも多く、流し撮りをするなら適切な濃度のNDフィルターを併用したいところ。また、コントラストAFでもAF-C撮影は可能なので、パフォーマンスやAF動作の品位は低下するが、α7R IIやα7 IIでもそれなりに結果を出すことは可能だ。
Aマウントの70-400mmと望遠端を比較
次に描写性能。Aマウントの70-400mm F4-5.6 G SSM IIは、1、2を争うトップクラスの描写を誇る超望遠ズームで、個人的にもLA-EA3経由でα7R IIに装着して愛用している。
正直、この光学設計をベースにFEレンズ化を図ってくれれば万々歳と思っていたほどだが、今回、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSとテレ端の描写を撮り比べてみて、その差に愕然。
FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの切れ味鋭い開放描写に比べ、それまでシャープだと思っていた70-400mm F4-5.6 G SSM IIの開放描写は明らかに解像が緩く、開放から1段絞って撮影する必要性を痛感させられた。
焦点距離・絞り別の画質
また、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの主要焦点距離域で絞りを1段ずつ絞って解像チェックを行ってみたが、開放絞りからしっかり解像していて、絞ったら劇的に解像が良くなったり、周辺画質が向上するタイプではない。
※共通設定:α7R II / +0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE
開放F値があまり明るくなく、AF-C撮影で像面位相差AFが効く絞り値がF8(α9はF11)までなので、被写界深度を深くしたいとき以外は絞って撮影する意義は少ないと思う。
さらに、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSに1.4倍テレコン(SEL14TC)を装着しても、ほとんど解像の低下がなく、使用感も含め、テレコンの存在を感じない。
※共通設定:α7R II / +0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE
2倍テレコン(SEL20TC)になると、少しコントラスト低下と滲みが感じられ、わずかなフォーカスのズレで解像が崩れやすくなるが、800mmという焦点距離を考えると十分過ぎる描写性能だ。
※共通設定:α7R II / +0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE
α7R IIやα6500だと、2倍テレコン使用時は光量に余裕があれば2/3~1段ほど絞りたくなるが、画素ピッチに余裕があるα9やα7 IIなら、開放絞りからほぼ不満のない描写が得られると思う。
フルサイズでヒコーキを撮影していると、やはり焦点距離400mmでは足りないシーンも多く、テレコンで焦点距離を伸ばせるのは強み。値段は倍以上違うが、FE 70-300mm F4.5-5.6G OSSよりもフォーカスが速く、テレ側の解像が優れているのも魅力だ。
いくつかのウィークポイント
ただ、不満が全くないわけではない。ワイド端が70mmではなく100mmスタートなので、標準ズームレンズとのダブルズーム体制を組んだ場合、70mmから100mmが空白域になってしまう。これをカバーしようと70-200mmズームも携行すると荷物が重くなってしまう。24-105mmクラスの標準ズームの登場を待ちたいところだ。
それと、ミラーレス用交換レンズでは多く見られる仕様だが、このレンズも内部のズーム機構をカムではなく、モーターで電気的に動かしていて、ズームすると一瞬フォーカスがズレてしまう。高速でカメラに向かってくるような被写体をズームで引きながら連写すると、モーターによるズーム機構の動きが追いつかず、AFが高速なα9でも3~4コマはピンボケになり、その後、フォーカスが追いつくという感じ。
α7R IIやα6500だとズームした後にフォーカスが復帰したように見えても、微妙にピントが甘いまま連写されてしまうこともあった。基本的には、ズームするときはいったん連写を止め、もう一度半押しして再AFしてから連写を再開する、というのがこのレンズを使うときの鉄則だ。
さらに、AF-C撮影中にピントが背景に抜けた際にフルタイムMF操作でリカバリーできないのも個人的には残念な点だ。
従来の70-400mm F4-5.6 G SSM IIやFE 70-200mm F2.8 GM OSSは、AF-C撮影中にフォーカスリングを回すと強制的にMFでフォーカス位置を変えることができるので、背景にピントが抜けてしまっても、すぐにフォーカスリングを回して強制的にピント位置を手前に戻すことができる。一眼レフ用の交換レンズ(廉価モデルを除く)なら、できて当たり前の操作だ。
ところが、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM SSMは、AF-C中にフォーカスリングを回してもむなしく空回りするだけで、AF-C撮影中は強制的にMF操作が行えない。そのため、フォーカスフレームから被写体を逃し、ピントが背景に抜けてしまうと、超望遠だけに被写体が大ボケしてしまい、被写体を再びフォーカスフレーム内に捉えることすら困難だ。
ズームをワイド側に引いて、画角を広げて被写界深度を深くすれば、運良くカメラが被写体を認識してくれることもあるが。最悪、ピントが背景に抜けたまま、シャッターチャンスを逃してしまうケースもある。
そこで、なんとか設定で対処できないか、いろいろ試行錯誤してみてたどり着いた答えが、フォーカスホールドボタンに[押している間AF/MFコントロール]を操作ボタンカスタマイズで割り当てる方法。
もし、フォーカスが意図しない被写体に合ってしまって、そのままでは狙っている被写体にピントが戻ってきそうもないときは、フォーカスホールドボタンを押しながらフォーカスリングを回すと、AF-C撮影中でも強制MF操作が可能となる。
フォーカスリングのすぐ傍にフォーカスフォールドボタンが配置されているので、慣れればかなりスムーズにAF-C撮影中に強制MF操作が行える。この設定にしておけば、ピントが背景に抜けたときのリカバー率がグンとアップする。
もちろん、これは苦肉の策。理想は、AF-C撮影中、フォーカスリングがある一定角度以上回されたことを検知したら、自動的にMFに切り替わり、撮影者の意思で強制的にピント位置を調整できること。既存の一眼レフでは当たり前にできるリカバー操作が、なぜかミラーレス用のレンズできないものがほとんどだ。
このレンズに限らず、動体を撮影する望遠/超望遠系レンズは、ミラーレス用であってもAF-C撮影でのフルタイムMF操作が可能な仕様にして欲しいと思う。
まとめ
以上のように、マニュアル操作性に多少不満というか残念に思う部分はあるものの、画質性能とAFスピードには大満足。テレコンを装着して更なる超望遠に対応できるのも魅力だ。
また、メーカー保証外の使い方だが、ズームのトルクをSMOOTHにセットすれば、レンズ先端を掴んで直進的ズーム的な扱いも可能なほど、ズームの動きもスムーズだ。
最短撮影距離も0.98mとかなり寄れるので、超望遠マクロ的に花などをクローズアップ撮影できるのも◎。着脱式の三脚座はちょっと頼りなさも感じるが、手持ち撮影メインなら三脚座を外しておいたほうがカメラバッグへの収納性も良く、多少ではあるが機材も軽くできる。三脚座を外しても装着部分にネジ穴があるので、そのまま三脚に装着することも可能だ。
GMレンズということで価格は想像していたよりもちょっと高めだが(Aマウントの70-400mm F4-5.6 G SSM IIが性能の割に実売が安すぎるんだけどね)、超望遠好きなら迷わず買いのレンズだ。