私はこれを買いました!

写真好きに「動画だからこそ伝わる感動」を教えてくれた1台

DJI Osmo Pocket 3(福島晃)

クリエイターコンボには本体のほか、DJI Mic 2、ウィンドマフ、バッテリーハンドル、ミニ三脚、広角レンズ、キャリーバッグなどがセットとなる

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2023年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

デジカメ Watch Channelのメイン機材として導入を決意

時代に乗り遅れながらも2021年6月にYouTubeに「デジカメ Watch Channel」を立ち上げた。インプレスのカメラ事業部は月刊誌の「デジタルカメラマガジン」、Web媒体の「デジカメ Watch」、そして写真共有サービスの「GANREF」がある。もちろん、スタッフは全員、写真好きなメンバーが集まっている。この「写真好き」というステータスが厄介なのだ。

動画プロジェクトをスタートしたものの、なかなか主導的に挑戦しようとするメンバーがいない。静止画は得意なのに動画は苦手。写真好きな人の多くは、この動画に対する苦手意識が強いようだ。かく言う私もその1人だった。この苦手意識を払拭してくれたのが、今回紹介する機材の前身となるDJI Pocket 2だった。

初期はフルサイズセンサー搭載のデジタル一眼レフカメラにガンマイク(SENNHEISER MKE 400-II)を装着して撮影を試みていた。被写体深度が浅すぎることや環境音などを拾いすぎてしまうなどの失敗を繰り返して、ピンマイクなども利用する知識を得ていった。問題は屋外で撮影をする場合だ。歩きながら撮影をすることも考えて目を付けたのがDJI Pocket 2だった。

求めていたニーズにはマッチしたが、問題点も多かった。液晶モニターが小さく、メニュー画面の操作がしにくく、ピントなどのチェックも難しい。バッテリーの充電時間も長く、稼働時間も足りない。おそらく、過充電による原因だろうが、1年ほど使っているとバッテリー劣化によって、公称値の半分ほどに下がってしまうのだ。充電時間が長いことが過充電の理由になっているように感じていた。そのため、iPhone 13 ProとDJI Osmo Mobile SE(スマホ用スタビライザー)に出番を奪われるような格好になってしまっていた。

そんなタイミングでOsmo Pocket 3が新登場したこともあって、早速、編集部の機材として入手してみた。Pocket 2同様、単品とクリエイターコンボがあるが、高評価のDJI Mic 2と拡張バッテリーユニットがセットになるため迷わずに後者を選んだ。液晶を横に回転させて起動させるアクションが気持ち良い。液晶モニターが2型になったことで、メニューも見やすく、操作も格段に向上している。

まずはざっと、新旧の仕様をまとめてみた。私が述べるまでもなく、すでに多くの記事やYouTuberによる動画が出揃っているので端的にまとめるが、センサーサイズが1/1.7型から1型に進化したことが大きい。有効画素数は非公開になっているが、記録可能な静止画解像度は16:9で3,840×2,160ピクセル、1:1で3,072×3,072ピクセルとなる。ここから3,840×3,072の面積はあると仮定すると約1,180万画素になる。Pocket 2が9,216×6,913ピクセルの約6,400万画素だったことと比べると、スペックダウンになっていると思うかもしれないが、それは静止画だけのこと。センサーサイズが1型になって、画素数が1,180万相当になったのだとしたら、1画素の受光面積は相当に大きくなり、高感度特性や階調再現性は、それに応じて良くなることは、容易に想像ができる。事実、ベース感度は下限がISO 50となり、低照度モードであれば16000まで対応可能となった。静止画の解像度は捨てて、動画に特化したセンサーに切り替えた。そんな印象がある。

Osmo Pocket 3DJI Pocket 2
センサーサイズ1型CMOS1/1.7型CMOS
有効画素数非公開64MP
最大静止画解像度3,840×2,1609,216×6,913
最大動画解像度3840×2160/60fps3840×2160/60fps
動画フォーマットMP4(H.264/HEVC)MP4(MPEG-4 AVC/H.264)
液晶サイズ2型1.2型
ISO感度50~6400(16000)100~6400
バッテリー容量7.7V 1,300mAh7.7V 875mAh
駆動/充電時間166分/32分73分/140分
外形寸法139.7×42.2×33.5mm124.7×38.1×30mm
質量179g117g

もう1つの懸念点であったバッテリーについても明確な回答がある。着脱可能なバッテリーハンドル(950mAh)によって駆動時間を約62%延長できるようになった。ボディ単体、バッテリー装着と使用目的に合わせて対応できるほか、バッテリー劣化の場合はこのユニットを追加購入することでリフレッシュできることも嬉しい改善だ。加えて、充電時間の短縮。ここは期待以上だった。フル充電の時間は公称値で32分、しかも65Wタイプであれば、16分で80%まで急速充電ができる。65W対応のモバイルバッテリーやポータブル電源でロケ中に充電が可能となった。

デジタルカメラマガジン2023年12月号の宣伝動画を宮崎県で撮影したときが、Osmo Pocket 3のデビューとなったが、旧型を使ってきたスタッフ全員が感嘆の声をもらしたのが、液晶モニターの視認性とダイナミックレンジの広さだ。液晶輝度は700ニトのため、屋外でも視認性は高い。むしろ暗い場所だったら50%ぐらいに下げた方が見やすいレベルだ。ダイナミックレンジは、この動画の5:20あたり、屋根のあるベンチに座って私が話しているシーン。人物に露出を合わせているにも関わらず、背景の青空と雲は階調を失っていない。HDRまでの違和感もなく、自然な印象に仕上げている。このシーンを含めて、すべて手持ちで撮影をしているのだが、ジンバル性能もアップしているのか、揺れを感じることがない。まるで三脚に固定しているかのような印象だ。

この性能を目の当たりにして、会社用だけでなく個人用としても入手したいと思い、クリエイターコンボを購入した。都合、DJI Mic 2が2個となるので、対談などの動画にも対応できると考えたからだ。

最後に素人が撮った稚拙な動画で申し訳ないのだが、モーションラプスによるサンプルを掲載しておきたい。左右に首を振りながらタイムラプスするというモードだ。橋向真さんを偲んで、早朝に精進湖と富士山を訪れて撮影をしてみた。30分ほど撮影すると20秒の動画となる。写真の可能性を否定するつもりはまったくないが、動画だからこそ伝わる感動があることもまた事実。Osmo Pocket 3によって、動画は苦手から、少しだけ楽しいという感情に変えることができた。

近況報告

デジカメ Watch Channelでは出演する側が多いのですが、できれば撮影する側と編集する側、つまりは裏方をしている方が圧倒的に楽しいと思っています。どんな仕事でも編集者である方が落ち着くのだと思います。ちなみに、これまで「静止画>動画」だと思っていましたが、いまでは「静止画=動画」ぐらいな気持ちになってきました。

デジタルカメラマガジン編集長:福島晃