私はこれを買いました!

断捨離で「戯れのためのライカ」を最新機種へ

ライカM11-P(赤城耕一)

ブラックペイント信奉者だった私だけど、人間は変わることができます。現行ライカ純正レンズの新型をライカM11-Pと同時に調達するのはさすがに厳しく。最近はシルバー鏡筒のレンズが欲しいのですが、どうでしょうか

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2023年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

センサー測光には慣れました

2023年の最後の日になりました。だから。と、いうわけではありませんが、ついにというか、仕方なくというか、惰性というか、勢いというか、ライカM11-Pにお越しいただきました。不景気な業界だから、アカギは写真とは別の商いで稼いだ(笑)に違いない。と考えられてしまうかもしれません。ハズレです。ただ、商いによるものではないことは当たっています。

購入資金は手元のフィルムライカと、直近まで使用していたライカM10-Pをドナドナして充てました。前者は高騰を続けており、M10-Pは現在も人気で、下取り価格も高額で維持されています。ライカは機種によってはリセールバリューにかなり優れてますから、コレクション目的で台数を増やさなければ、少ない資金で新型への乗り換えが可能になります。本当です。信じてください。

フィルムライカはいくら数があっても写りは全部同じだと気づくまで40年以上かかりました。嘘です。そんなことは最初からよくわかっていました。

ただ、“戯れのためのライカ” が長い年月をかけて増えてしまい、これを整理しておかないと、突然こちらの世界におさらばするようなことになった時、ライカのことなど1ミリも興味がなく、わからない妻に迷惑をかけてしまいます。手元のライカの総計数は減ってもM11-Pが増えたから、大きな断捨離効果はなさそうですが、総数が減ったことを、ここで小さな声ですが力説しておきます。

M11-Pはシルバークロームボディを選びました。ブラックより重たいです、真鍮製です。材質にこだわったわけではなく、老人はシルバーですから当然の選択です。

おまえ、少しでも軽いカメラのほうがいいって言ってるだろ? それはね、仕事カメラのことです。M11-Pは撮影だけではなくて、戯れのための役割も担いますから、多少重たいくらいで文句はいいません。

電源を入れると、M11-Pはカチャっと小さい音を発して、メカシャッターが開きます。イメージセンサーで測光する必要があるからですね。このぶんわずかなタイムラグが生まれ、これを嫌うライカユーザーも多いと聞きました。年寄りはベストなシャッターチャンスを捉えるために躍起になるより、少しタイミングをハズした写真のほうが魅力があることを知っているのでまったく気になりません。

ええ、やはりわかりますか? 無理して言ってます。所詮は慣れです慣れ。ただ、ギミックだったベースプレートがなくなったことは年寄りには少し寂しく、慣れません。赤バッジがないのは嬉しいけど、代わりのマイナスネジの直径はもう少し小さくならないのかしら。

6,000万画素の高画質だから、シビアにフォーカシングしねえとマズいんじゃねえかと思われてしまいそうです。でもそんなことを考えるとM型ライカの撮影は面白くありません。

ISO感度をあげて、ワイドレンズつけて絞り込んで撮影すれば、フォーカシングしなくてOKです。この撮影方法がM型ライカの真髄です、基本です。

あ? それじゃレンズの味がなくなる? それよりも写真の中身の味わいのほうが大切でしょ。海外の著名写真家はボケ味の美しさに、うち震えたりしていませんよ。

今年も読者のみなさま、ありがとうございました。2024年もどうぞよろしくお願いいたします。

川越。ありふれた景色ではあるのですが、正攻法で撮影、どストレートな正攻法で仕上げてみました。仔細なところまで観察したくなる解像力を持っていることは確かでしょう
ライカM11-P/APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical/マニュアル露出(1/1,000秒・F8)/ISO 400

近況報告

変わらない小さい商いばかりなのに、2023年は必然のない機材を多数購入する年になり、ただ本文にあるようにライカ関連機材を大幅に整理、身軽になりました。あ、体重は重たいままです。来る2月には本誌連載をまとめた「アカギカメラ」の刊行予定であります。正月返上で禁酒し、制作作業を進めようかと先ほどだれにも目を見られないようにして空を見上げ、誓いました。こちらもどうぞよろしくお願いします。

赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(EPA)会長。著書に「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。