私はこれを買いました!

スナップ感覚で星景写真が撮れるレンズ

LAOWA Argus FF II 35mm F0.95(茂手木秀行)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2023年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

唯一無二の広角レンズ

2023年に買った機材で一番印象に残ってるのは、これ「LAOWA Argus FF II 35mm F0.95」!! 。フルサイズでF0.95という明るさの広角レンズは他に思い当たらない。開放では決して現代的なシャープさはないし、周辺像にも非点収差が残る。だがしかし、写真も動画も視野中央部に主要被写体を置くことがほとんどだ。特に動画では写野周辺の像質は全く問題にならないと言っていい。それよりも明るさを武器に星を点像に、そして少ない機材で撮りたいためのチョイスなのだ。

静止画では露光時間を短くして、赤道儀を使わないことで三脚を軽く小さく、それによってスナップ的な星景写真を狙える。夜空を見上げながら散歩して、思い立ったら写真を撮ってみる。そんな時間の過ごし方が楽しいのだ。

動画の場合は、ISO 5万、あるいはISO 10万まで感度を上げられるカメラであれば、開放のF0.95で星がよく写る。フレームレートは25pあるいは30pを選択するので、シャッター速度は1/25秒もしくは1/30秒。星景動画というと静止画タイムラプス動画が普通だ。タイムラプス動画は美しく星空を表現できるけれど、時間を圧縮する手法であるので映像としてのリアル感が薄い。やはりリアルタイムで映像が変化してゆく方が、寒さという障壁、暗さという少しの恐怖、そうしたものを乗り越えてでも、美しいものを見たいと思う気分を表現できると思うのだ。

そもそも写真は自分自身が体験した素敵なこと、美しいと感じたものを保存しておきたいとの気持ちから発するものだ。写真を撮るという行為が先にあるわけではない。それゆえ、体験を阻害しない機材、リアルな表現といったことが原初となるのではないだろうか。そのような写真や動画を撮ることの意味さえももう一度考えるきっかけを与えてくれる良いレンズであった。

なお、マウントはソニーEマウントを選択したがマウントアダプターを介してニコン Zでも使用している。そうした使い回しはミラーレスの時代だからかな。ありがたい。

1月の深夜、西に傾くオリオン座とおうし座。静止画では全体的にシャープさを求めたいのでF2としたが他のレンズで同様の周辺像を求めるとF2.8となってしまうので、1段分メリットがある。最周辺部に明るい星、光源がなければ開放でも十分だ。この写真では右下に街灯が入ってしまうのでF2としたのだ
Z 7/ LAOWA Argus FF II 35mm F0.95/マニュアル露出(4秒・F2・±0EV)/ISO 4000/サイトロンジャパンスターエンハンサー使用

動画では全てのシーンを開放で撮影している。動画では意識がより画面中心に向くし静止画からすれば画素数は少ないので、周辺の非点収差は全く気にならないと言っていい。手持ちでも星景写真を楽しめるようになるのだ!

告知

デジカメ Watchでは、茂手木秀行氏による『クルマとカメラ、車中泊』を連載中。自家用車での移動や車中泊などに役立つ情報を配信しています。(編集部)

クルマとカメラ、車中泊 2023年 記事一覧

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。またドローンでの撮影や、国家資格の審査員も行なっている。コロナ禍の影響で拠点を九十九里に移してから、ネット通販、特にAmazonの利用機会が増加。ちょっとくらい評価が悪くても買ってしまう“密林の探索者”を自認している。