イベントレポート

【CP+2019】パナソニックセミナー「S1Rが描き出す生命力・生命美」

高画質と持つ喜びを両立 「光を追い求める全ての撮影者に」

LUMIX S1Rについて説明した写真家の相原正明さん。

CP+2019のパナソニックステージで行われた、相原正明さんのセミナー「S1Rが描き出す生命力・生命美」の模様をお伝えする。同社がリリースした初めてのフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R」「LUMIX S1」のうち、相原さんは「LUMIX S1R」(以下S1R)について語った。

相原さんがここ最近リリースされるカメラに対して感じていたのは、「カメラが情報端末機と化している」ことのようだ。その点、今回のS1Rには、それとは違った感触があったという。

「最近のカメラは情報端末機になっているのではと感じていて、カメラを買った時の箱を開けた時の喜び、手に取った時のワクワク感がなくなっていると感じていました。それがこのS1Rは、久しぶりに『デジタルカメラではなく写真機だ』と感じました。持つ喜び、撮る喜びを感じることによって、作品の完成度も上がる。それを久しぶりに感じました」

「写真を撮るということは、心の中で見た情景をプリントやモニターで写すことです。僕はカメラは『光と影の宝石箱』だと思います。大事なのは、箱の中に入れる宝石です。このプレゼンテーションでは、光と影という宝石をS1Rという箱の中にいかに収めたのかをご紹介します」

「12月に撮影した、北海道利尻富士町の夜明けです。気温-15度くらい、風速も15mほどで、三脚から手を離すと飛ばされてしまいます。S1Rは一部で重いと言われていますが、風がある状況ではボディが軽いと風になびいてブレてしまいます。それを防ぐためにもボディの重さは必要です」

「画質が上がり、このピンクのグラデーションがとてもきれいに表現できるようになりました。夜明けと日没の数十分に訪れるマジックアワーでどんな写真を撮れるかが、風景を撮るカメラには求められます。S1Rはマジックアワーの宝石を閉じ込めてくれます」

テンポよく話が進み、見ていて気持ちの良い写真、重厚感のある写真が次々と表示される。その中には、通常ならいかにもゴーストやフレアが出てしまいそうなシーンもあった。

「S1Rが一番好きな光は、逆光と半逆光です。2カ月の間、こういった逆光・半逆光のシーンを何度か狙いましたが、フレアやゴーストはほぼ皆無です。狙った通りのアングルで狙うことができます。またダイナミックレンジも広いので、いかにも白飛びしそうな海面の反射光や、雲のシャドウ部までしっかりと映されています。」

S1Rはフルサイズにしたことで、高感度撮影にも強いようだ。

「根室半島の夜中に、ISO 1600〜3200で、ノイズリダクションは使わずに撮影しました。これも撮って出しです。ノイズはほぼ見られず、AFも正確に合いました。また、気温は約-20度の中で3時間以上屋外での撮影が続きましたが、性能やバッテリーの問題もなく撮影できました。予備に持って行ったふたつのバッテリーは使わずに終わりましたね」

興味深かったのはモノクロだ。相原さんによれば「インスタ映え」が終わりつつあり、若い世代の写真家はモノクロ写真に移行しつつあるという。

「20代のアーティストはモノクロに原点回帰しています。世界中の美術館が収蔵している名作も、実はほとんどがモノクロなんです。S1Rはモノクロモードを3種類搭載しています。通常のモノクロ、Lモノクローム、そしてダイナミックレンジが広がったLモノクロームDです。今回はLモノクロームDで撮影した写真を持ってきました」

「この写真はモノクロですが、ホワイトバランスを『白熱灯』にして撮影しました。そうすることで、よりシャドウが引き締まり、LモノクロームDの真髄が発揮されます」

その後も軽快なトークでS1Rのメリットを語る相原さん。ボディのみならず、レンズのメリットも「細い剣で切ったような切れ味」など、独特な語り口で魅力を語って行った。

特にモノクロの写真が多く展開され、重厚感を感じるハイコントラストの作品、光や温かさを感じられる淡いモノクロ写真と、白黒の写真だけでもこんなにバリエーション溢れるスライドにできるものかと驚いた。

最後にS1Rに対する印象を改めてまとめて、この日のステージは幕を閉じた。

「S1Rは光を追い求めるすべての撮影者にふさわしいカメラだと思います。作例ではなく作品を作れるカメラで、どんな作品を作れるか。私は屏風絵や掛け軸のような淡い映像を作りたいです。国宝をとったカメラマンはまだいないので、私がその第一号になれるように頑張りたいと思います」

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。