イベントレポート

【CP+】EIZOブース「ディスプレイ技術講座」レポート

液晶ディスプレイの仕組からバラツキの補正までを解説

EIZO株式会社のブースは、カラーマネージメント対応液晶ディスプレイ「ColorEdge」の展示と、カラーマッチングプリントの体験コーナーを設置していたほか、セミナースペースも用意しており、写真家による撮り方講座や、色合わせツール「Quick Color Match」の使い方講座などを実施していた。

Quick Color Matchは、ディスプレイとプリントの色合いを合わせるためのソフトウェア。プリンターメーカーなど各種写真用ファインアート紙に対応しており、3ステップで簡単に色合いをマッチングできる点が特徴。2月にはイルフォードやピクトリコのサードパーティ製ファインアート紙に対応している。

セミナースペースでは、CP+における同社初の試みとして、EIZO社員によるディスプレイの技術講座を初日(木)と2日目(金)に実施した。テーマは2つで、「液晶画面が色を表示する仕組み」と「EIZOモニターの画質はどのように作られているか」について解説していた。

登壇したのは、EIZO株式会社 企画部マーケティングコミュニケーション課の梶川和之さんと、同商品技術課の家永篤さん。セミナーは梶川さんの液晶ディスプレイに関する技術的な質問に家永さんが回答する形で進行した。

セミナーではまず、基本的な液晶モニターの構造について説明。大きく分けて液晶パネルモジュールと制御基板、背面キャビネットの3つに分けて説明した。

梶川さん:色を表示するいわゆる「液晶」というのは、モニターのどこにあるのでしょうか?

家永さん:液晶パネルを更に細かく分けると、「液晶層」というのがあります。厚さ3μmの非常に薄い層です。ここでは、いわば窓にあるブラインドのような働きをしています。実際のブラインドでいえば外光にあたりますが、バックライトの光をどの程度通過させるかを制御しているのです。

家永篤さん
梶川和之さん
液晶モニターを奥行き方向に分解した状態。
液晶パネルの構造。
液晶層はブラインドと同じ役割を果たす。
光を通す量を256段階で制御しており、完全に閉じると黒、開放すると白を表現する。

液晶モニターのピクセルはRGBのサブピクセルで構成されており、それぞれのサブピクセルを256段階で開閉することによって、色を表現していることを説明。これによって、一般的な液晶モニターでは1,677万色を表現していると話した。

家永さん:これがColorEdgeなどの高画質モデルになると、各サブピクセルを1,024段階で開閉するようになるので、約10億色の表現が可能になります。液晶の画素の色が変わる速度は、スペック表においては応答速度と表現されます。表示する映像データを処理して、液晶パネルに信号を出しているのが制御基板です。制御基板上にある色処理チップは当社独自のものですが、ここにも色んなノウハウが詰まっています。液晶パネル上で色を表現する仕組みは、ざっくりこんな感じです。

液晶モニター上ではRGBを用いて色を表現する。
画面を拡大すると、1ピクセルが3色のサブピクセルによって構成されていることがわかる。
各サブピクセルを256段階で表示することによって、一般的なモニターは1,677万色を表現している。
色表現の一例。
制御基板上にあるEIZO独自の色処理チップ。

液晶パネルの画質をどのように作っているかについては、液晶パネルを構成する各部材の精度面でのばらつきについて言及した。

家永さん:それぞれの部材はとても精密に作られているので、当然ながら個体ごとに微妙に精度がばらつきます。これが部材ごとに積み重なっていくと、液晶モジュールとして大きなばらつきになってしまいます

梶川さん:精度がばらつくことによって、具体的にはどういった形で支障が出るのでしょうか?

家永さん:数値としては、色温度と輝度にばらつきが出ます。色温度に関しては、調整前の液晶パネル1,000枚に対して、6,500Kのターゲット数値を初めからクリアしているのはごくわずかです。輝度についても、3,000枚のサンプルでは265~360cdの範囲でばらつきがありました。ボリュームゾーンは大体300~310cdあたりですね。

このうえで、EIZO製の液晶モニターに個体差として生じる品質のばらつきを調整する工程の一部を紹介。「ColorEdge」や「FlexScan」シリーズの液晶モニターについては、専用の計測器と調整ソフトウェアを用いて調整を自動化していると紹介。工程の最後には従業員が目視で確認していると話した。

各部材のばらつきが、組み上げた際に大きな個体差となる。
組み上げた直後は個体差が大きい。
とある機種の液晶パネルに関する調整前の色温度分布。
同じく液晶パネル3,000枚の調整前画面輝度分布。
FlexScanの調整工程の一部。自動化されている箇所もあるという。
ColorEdgeではさらに複数の色を表示した際の調整も行なっている。

梶川さん:部材のばらつきによって生じてしまう個体差については、このほかにも何かありますか?

家永さん:同じ液晶パネル上で、表示にムラが出てしまうことがあります。これも液晶層や偏光板、バックライトなどで生じるムラの積み重ねを原因として起きてしまう事象のひとつです。そこで、当社では表示ムラに対する特別な調整工程を行なっています。詳細は伏せますが、画面の領域を細かく区切って、それぞれの領域に対して補正をかけています。

部材のばらつきによって生じる表示ムラ。
ムラ補正工程の詳細については秘密とのことだ。

セミナーではこのほか、温度による液晶モニター表示品質の変化などについても言及し、これを補正する独自の色変換用ICチップ搭載をアピールした。これに関連して、液晶モニターの技術的な基礎知識について掲載している自社コンテンツ「EIZOライブラリー」も紹介していた。

液晶モニターは室温や内部温度によっても表示品質が変化する。
温度による変化は基板上の独自チップで吸収しているという。
業界初の試みとして、温度制御にAIを活用したハイエンドモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」(税別約285万円)。
液晶モニターに関する基礎知識をイラスト入りで解説するWeb独自コンテンツ「EIZOライブラリー」

関根慎一