イベントレポート

【CP+】新興レンズブランドのマニアックな世界

AF対応のレンズやアダプターも続々登場

KIPONのブースではおなじみになりつつあるマウントアダプター行列。今年も見事な陳列っぷりだった。

CP+は最先端のデジタルカメラやレンズで盛り上がる。一方、マウントアダプターやMFレンズといったアナクロな製品も大いに賑わいを見せた。マニアック路線にどんな新潮流が見て取れるのか。CP+で見つけた魅力的なマウントアダプターとMFレンズをレポートしよう。

上海伝視撮影器材有限公司

同社はマウントアダプターのKIPONブランドを手がけるメーカーだ。膨大な種類のマウントアダプターをラインアップし、それらを一堂に会したブースは迫力がある。今回力が入っていたのは、富士フイルムのミラーレス機向けのマウントアダプターだ。APS-CミラーレスのXマウント、中判ミラーレスのGマウントともに、キヤノンEFレンズのAF動作に対応したマウントアダプターを出展していた。Xマウント用についてはフォーカルレデューサー内蔵タイプもラインアップし、すべて2018年4月頃の発売を予定しているとのことだ。

最新製品ではないが、ハッセルブラッドX1D用のマウントアダプターも興味深かった。X1Dはファームアップにより、サードパーティー製マウントアダプター経由での撮影が可能になった。KIPONはこうした動向にいち早く対応している。

レンズはレッドバージョンに目を奪われた。IBERIT、IBELUXともに、赤い鏡胴のレンズが展示されていた。デモ用のレンズかと思いきや、CP+後に順次出荷されるという。既視感は否めないが、シリーズで赤を展開する点は勢いを感じる。

4月発売予定のEF-GFX AFは、GFX 50SでキヤノンEFマウントレンズがAF動作する。電子接点搭載のAFアダプターだ。
Xマウント向けはEF-FX AF(奥)とBaveyes EF-FX AF 0.7x(手前)を4月に発売予定だ。ともにキヤノンEFマウントレンズがAF動作する。
GFX用の付加機能付きアダプターが充実していた。Shift EF-GFXはシフト機能付きで、EFマウント経由でアダプターを二段重ねすると、様々なレンズでシフト撮影が可能になる。
HB-GFX Mはマクロ機能付きだ。ハッセルブラッドVマウントのレンズをGFXボディに装着し、レンズの最短よりも寄ることができる。
ハッセルブラッドのミラーレス機X1D用のマウントアダプターも発売済みだ。これはEFマウントレンズを装着し、電磁絞りの制御が可能だ。
X1D用のティルトシフトタイプもラインアップする。レンズ側マウントはマミヤ645になっていた。
IBERITシリーズの全焦点距離にレッドバージョンが登場した。フロントキャップも赤いスクリュー式だ。
赤のIBERITをマウントアダプター経由でライカSLに装着。なかなかどうして個性的な面構えだ。

K&F CONCEPT/焦点工房

K&F CONCEPT/焦点工房ブースは半分をステージに割り当て、HASEO氏、イルコ・アレクサンダロフ氏など、人気フォトグラファーのイベントが開催された。

本ブースはK&F CONCEPTと焦点工房の合同ブースで、K&F CONCEPTのマウントアダプター、三脚、カメラバッグといった主要商品、そして焦点工房が取り扱うマウントアダプターやレンズが多数展示してあった。焦点工房の展示品の中に、発売前の新製品をいくつか確認できた。

マウントアダプターはFringerのEF-FX PROが展示されていた。キヤノンEFマウントレンズを富士フイルムXマウントボディでAF動作させるマウントアダプターである。実際にEFマウントレンズを装着したデモ機が展示してあり、動作を確かめることができた。会場を行き来する人々に、シャッター半押しで速やかに合焦していく。他社製レンズとは思えないレスポンスに驚かされた。

レンズは中一光学から見ていこう。Speedmaster 50mm F0.95 キヤノンEFマウント版がひときわ目立っていた。既存製品のソニーEマウント版のSpeedmaster 50mm F0.95とくらべ、ずいぶんと鏡胴が太くなっている。参考出展ということで詳細は不明だが、どのような描写をするのか、気になるレンズだ。また、Speedmaster 85mm F1.2 富士フイルムGマウント版が展示されており、こちらは本年中に発売とのこと。鏡胴はフルサイズ版のSpeedmaster 85mm F1.2に似ているが、マウント変換だけでなく、GFXに最適化すべく、微調整を行っているという。中判用レンズとしては異例の明るさを備えたレンズだ。

また本ブースでは、7artisansの単焦点MFレンズ、全ラインアップが展示されていた。7artisansは中国のレンズメーカーで、昨年、ライカMマウント用の7artisans 50mm F1.1がマニアの間で話題となった。フルサイズ向けの35mm F2、APS-C向けの55mm F1.4など、興味深い仕様のレンズが並んでいた。中国製レンズの新旗手として注目を集める予感がする。

Fringer EF-FX PROを実際に試すことができた。Fringerは電子接点付きのAFマウントアダプターに定評のあるメーカーだ。
富士フイルムGマウントのSpeedmaster 85mm F1.2が登場する。既存の85mm F1.2をベースに、GFXに最適化を図ったという。
キヤノンEFマウントのSpeedmaster 50mm F0.95はそのファットな鏡胴に驚かされる。
EFマウント版Speedmaster 50mm F0.95の後玉を見ると、フレアカッターが付いていた。後玉のこのような形状はめずらしい。
7artisansの全ラインアップを展示。ライカMマウントの35mm F2は発売未定だという。
K&F CONCEPTのマウントアダプターを多数展示していた。安価で仕上げも良いと昨今人気のマウントアダプターだ。

木下光学研究所

昨今、中国のレンズメーカーの出展が増えているが、国産レンズメーカーの初出展は久しぶりだ。

木下光学研究所はCP+初出展の日本のレンズメーカーだ。元々は業務用レンズを手がけるメーカーだが、2015年から写真用レンズKISTARシリーズをスタートさせ、現在は55mm F1.2、35mm F1.4 85mm F1.4の3本をラインアップしている。

ファーストプロダクトとなるKISTAR 55mm F1.2は、富岡光学のTominon 55mm F1.2を復刻したレンズだ。Tominon 55mm F1.2の光学設計者が、実は木下光学研究所の創業者である。復刻にあたり、設計者にヒヤリングを行い、設計思想も反映して現代の技術で再現した。その他のレンズもオールドレンズ風の描写テイストを宿しており、たくさんのオールドレンズファンがブースに足を運んでいた。

新製品はKISTAR 85mm F1.2だ。昨年暮れに発売になった大口径ポートレートレンズである。オールドレンズの大口径中望遠はぐるぐるボケのクセ玉が多いが、あえてそうした描写は避け、周辺部でもしっかり解像し、ポートレートで実用的な描写を目指した。絞ってもシャープネスがギスギスしないため、人物撮影で使いやすいという。

KISTARレンズ3本が並ぶ。すべて国内工場で製造した純日本製の単焦点MFレンズだ。
ヤシコン互換のKCYマウントを採用し、マウントアダプター経由でデジタルカメラに装着する。写真はTominon復刻のKISTAR 55mm F1.2だ。
KISTAR 35mm F1.4とKISTAR 85mm F1.4は木下光学研究所オリジナル設計のレンズとなる。

サイトロンジャパン(LAOWA)

APS-Cミラーレスに最新の9mm F2.8 ZERO-Dを装着して展示していた。ライブビュー画面からも歪曲の少なさがよく伝わってきた。

サイトロンジャパンのブースでは、昨年同様LAOWAのレンズをアピールしていた。LAOWAは中国の写真用レンズに特化したレンズメーカーで、高性能かつ個性的なレンズを多数ラインアップしている。わかりやすく言うと、尖ったレンズを得意とするメーカーだ。

新製品を中心に見ていこう。まず、9mm F2.8 ZERO-Dだ。APS-C向けの超広角レンズで、EDレンズ3枚、非球面レンズ2枚を使用している。名称の「ZERO-D」からもわかるように、ディストーションを極限まで抑えた設計だ。最短12cmまで寄ることができ、機動力のある仕様である。

25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACROは、近接撮影に特化した最大5倍のマクロレンズである。100円玉を接写するデモンストレーションが行われており、100円玉の製造年号の部分に超クローズアップする様子は圧巻だった。

光学系内蔵型のマウントアダプターでは、EF-GFXマジックフォーマットコンバーターが目新しかった。これはキヤノンEFマウントレンズを富士フイルムGマウントに装着するマウントアダプターだが、補正レンズでケラレないように調整してくれる。GFX 50Sで35mm判レンズを使いたいときに便利な製品だ。なお、レンズの焦点距離は1.4倍になる。

25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACROで接写している様子。フルサイズ機に対応したスーパーマクロレンズだ。
25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACROにて5倍でプレビューしたところ。100円玉の製造年号だけを超近接で捉えている。
マジックフォーマットコンバーターは縮小光学系を応用し、ケラレを回避しつつフォーマット変換を可能にする。
12mm F2.8 ZERO-Dのシルバーモデルが展示されていた。各種マウントをラインアップするようだ。

ロモグラフィー

マウントアダプター経由でα7シリーズにNaiadが装着されていた。ピントと絞りはレンズベースでコントロールする。

ロモグラフィーのブースでは、日本初公開となるレンズが展示されていた。フロントレンズ交換式のレンズシステムNeptune Convertible Art Lens Systemに、15mm F3.8のNaiad(ナイアド)が加わった。湾曲の強い魚眼タイプのフロントレンズだ。飛び出すようなガラス玉が印象的な外観である。本製品の登場により、既存の35mm F3.5、50mm F2.8、80mm F4と合わせて、4本のフロントレンズが揃った。様々な絞りプレートが用意されており、多彩な玉ボケを楽しむことも可能。画角と玉ボケ、双方を自在に使いこなせるシステムだ。

リリース済みのフロントレンズと絞りプレートも並んでいた。
Naiadを手持ちのα7 IIで試写させてもらった。周辺部の強烈な歪曲がインパクト大である。

YONGNUO

YN14mm F2.8は大きく湾曲した前玉が圧巻だった。中国のレンズメーカーでAFレンズを手がける会社はめずらしい。

YONGNUOは中国深圳のカメラ用品メーカーで、オリジナルレンズをリリースしている。中国製レンズはその多くがMFレンズだが、同社はAFレンズという点が特徴だ。今回の出展ではYN14mm F2.8というフルサイズ対応の広角AFレンズを前面に押し立てていた。本レンズはキヤノンEFマウントとニコンFマウントがあり、どちらもAFに対応している。外観にもこだわりがあり、キヤノンEFマウント用は赤いラインを、ニコンFマウント用は金のラインをあしらっていた。純正レンズの外観を意識したデザインが興味深い。

その他にはYN40mm F2.8 N、YN100mm F2 Nが新製品として並んでおり、どちらもAFに対応していた。なお、これらの新製品はすべてUSB端子を搭載しており、将来的なファームアップに対応するとのことだ。

左がYN40mm F2.8 N、右がYN100mm F2 Nだ。取材中、YN40mm F2.8 Nを名指しで見に来たお客さんがいて、同社の注目度を肌で感じることができた。
YN40mm F2.8 Nの銘板を見ると、USB端子を搭載していた。ファームアップなどで使用するという。

HONGKONG MEIKE DIGITAL TECHNOLOGY

MEIKEブランドの単焦点MFレンズは、日本で初披露だろう。APS-Cイメージセンサー向けのレンズを多数展示していた。

HONGKONG MEIKE DIGITAL TECHNOLOGYは香港のカメラ用品メーカーで、今回の出展ではAPS-C向けの単焦点MFレンズを多数並べていた。どのレンズも小振りで、APS-Cミラーレスに装着した際にバランスが良さそうだった。絞りリングやピントリングの操作フィーリングも上々で、ていねいな物作りを感じさせる。日本での発売については特に言及がなく、むしろ販売店探しの出展といった印象だった。

MK-6.5mm F2.0 Fisheye LensはAPS-C向けの魚眼レンズだ。鏡胴に「4K」の文字があるので、動画用途も意識したレンズのようだ。

まとめ

昨今、CP+で初お目見えする、未知の中国製レンズは風物詩になりつつある。今年も7artisans、MEIKEといったメーカーが我々の目を楽しませてくれた。その一方で、継続的に出展される中国製レンズは、年を追う事に実力を高めている。LAOWA、中一光学、YONGNUOなどがこれに相当するだろう。そうした中、国内レンズメーカーの木下光学研究所が初出展し、頭ひとつ抜きん出た高品位なレンズでマニアを魅了していた。

マウントアダプターについては、各社ともAF対応製品に力を入れていた。KIPON、Fringer、Techartなどがこれに該当する。「マウントアダプター経由はMFになる」という認識も、今後は過去のものになるのかもしれない。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp