イベントレポート
【CP+】新興レンズブランドのマニアックな世界
AF対応のレンズやアダプターも続々登場
2018年3月6日 07:00
CP+は最先端のデジタルカメラやレンズで盛り上がる。一方、マウントアダプターやMFレンズといったアナクロな製品も大いに賑わいを見せた。マニアック路線にどんな新潮流が見て取れるのか。CP+で見つけた魅力的なマウントアダプターとMFレンズをレポートしよう。
上海伝視撮影器材有限公司
同社はマウントアダプターのKIPONブランドを手がけるメーカーだ。膨大な種類のマウントアダプターをラインアップし、それらを一堂に会したブースは迫力がある。今回力が入っていたのは、富士フイルムのミラーレス機向けのマウントアダプターだ。APS-CミラーレスのXマウント、中判ミラーレスのGマウントともに、キヤノンEFレンズのAF動作に対応したマウントアダプターを出展していた。Xマウント用についてはフォーカルレデューサー内蔵タイプもラインアップし、すべて2018年4月頃の発売を予定しているとのことだ。
最新製品ではないが、ハッセルブラッドX1D用のマウントアダプターも興味深かった。X1Dはファームアップにより、サードパーティー製マウントアダプター経由での撮影が可能になった。KIPONはこうした動向にいち早く対応している。
レンズはレッドバージョンに目を奪われた。IBERIT、IBELUXともに、赤い鏡胴のレンズが展示されていた。デモ用のレンズかと思いきや、CP+後に順次出荷されるという。既視感は否めないが、シリーズで赤を展開する点は勢いを感じる。
K&F CONCEPT/焦点工房
本ブースはK&F CONCEPTと焦点工房の合同ブースで、K&F CONCEPTのマウントアダプター、三脚、カメラバッグといった主要商品、そして焦点工房が取り扱うマウントアダプターやレンズが多数展示してあった。焦点工房の展示品の中に、発売前の新製品をいくつか確認できた。
マウントアダプターはFringerのEF-FX PROが展示されていた。キヤノンEFマウントレンズを富士フイルムXマウントボディでAF動作させるマウントアダプターである。実際にEFマウントレンズを装着したデモ機が展示してあり、動作を確かめることができた。会場を行き来する人々に、シャッター半押しで速やかに合焦していく。他社製レンズとは思えないレスポンスに驚かされた。
レンズは中一光学から見ていこう。Speedmaster 50mm F0.95 キヤノンEFマウント版がひときわ目立っていた。既存製品のソニーEマウント版のSpeedmaster 50mm F0.95とくらべ、ずいぶんと鏡胴が太くなっている。参考出展ということで詳細は不明だが、どのような描写をするのか、気になるレンズだ。また、Speedmaster 85mm F1.2 富士フイルムGマウント版が展示されており、こちらは本年中に発売とのこと。鏡胴はフルサイズ版のSpeedmaster 85mm F1.2に似ているが、マウント変換だけでなく、GFXに最適化すべく、微調整を行っているという。中判用レンズとしては異例の明るさを備えたレンズだ。
また本ブースでは、7artisansの単焦点MFレンズ、全ラインアップが展示されていた。7artisansは中国のレンズメーカーで、昨年、ライカMマウント用の7artisans 50mm F1.1がマニアの間で話題となった。フルサイズ向けの35mm F2、APS-C向けの55mm F1.4など、興味深い仕様のレンズが並んでいた。中国製レンズの新旗手として注目を集める予感がする。
木下光学研究所
木下光学研究所はCP+初出展の日本のレンズメーカーだ。元々は業務用レンズを手がけるメーカーだが、2015年から写真用レンズKISTARシリーズをスタートさせ、現在は55mm F1.2、35mm F1.4 85mm F1.4の3本をラインアップしている。
ファーストプロダクトとなるKISTAR 55mm F1.2は、富岡光学のTominon 55mm F1.2を復刻したレンズだ。Tominon 55mm F1.2の光学設計者が、実は木下光学研究所の創業者である。復刻にあたり、設計者にヒヤリングを行い、設計思想も反映して現代の技術で再現した。その他のレンズもオールドレンズ風の描写テイストを宿しており、たくさんのオールドレンズファンがブースに足を運んでいた。
新製品はKISTAR 85mm F1.2だ。昨年暮れに発売になった大口径ポートレートレンズである。オールドレンズの大口径中望遠はぐるぐるボケのクセ玉が多いが、あえてそうした描写は避け、周辺部でもしっかり解像し、ポートレートで実用的な描写を目指した。絞ってもシャープネスがギスギスしないため、人物撮影で使いやすいという。
サイトロンジャパン(LAOWA)
サイトロンジャパンのブースでは、昨年同様LAOWAのレンズをアピールしていた。LAOWAは中国の写真用レンズに特化したレンズメーカーで、高性能かつ個性的なレンズを多数ラインアップしている。わかりやすく言うと、尖ったレンズを得意とするメーカーだ。
新製品を中心に見ていこう。まず、9mm F2.8 ZERO-Dだ。APS-C向けの超広角レンズで、EDレンズ3枚、非球面レンズ2枚を使用している。名称の「ZERO-D」からもわかるように、ディストーションを極限まで抑えた設計だ。最短12cmまで寄ることができ、機動力のある仕様である。
25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACROは、近接撮影に特化した最大5倍のマクロレンズである。100円玉を接写するデモンストレーションが行われており、100円玉の製造年号の部分に超クローズアップする様子は圧巻だった。
光学系内蔵型のマウントアダプターでは、EF-GFXマジックフォーマットコンバーターが目新しかった。これはキヤノンEFマウントレンズを富士フイルムGマウントに装着するマウントアダプターだが、補正レンズでケラレないように調整してくれる。GFX 50Sで35mm判レンズを使いたいときに便利な製品だ。なお、レンズの焦点距離は1.4倍になる。
ロモグラフィー
ロモグラフィーのブースでは、日本初公開となるレンズが展示されていた。フロントレンズ交換式のレンズシステムNeptune Convertible Art Lens Systemに、15mm F3.8のNaiad(ナイアド)が加わった。湾曲の強い魚眼タイプのフロントレンズだ。飛び出すようなガラス玉が印象的な外観である。本製品の登場により、既存の35mm F3.5、50mm F2.8、80mm F4と合わせて、4本のフロントレンズが揃った。様々な絞りプレートが用意されており、多彩な玉ボケを楽しむことも可能。画角と玉ボケ、双方を自在に使いこなせるシステムだ。
YONGNUO
YONGNUOは中国深圳のカメラ用品メーカーで、オリジナルレンズをリリースしている。中国製レンズはその多くがMFレンズだが、同社はAFレンズという点が特徴だ。今回の出展ではYN14mm F2.8というフルサイズ対応の広角AFレンズを前面に押し立てていた。本レンズはキヤノンEFマウントとニコンFマウントがあり、どちらもAFに対応している。外観にもこだわりがあり、キヤノンEFマウント用は赤いラインを、ニコンFマウント用は金のラインをあしらっていた。純正レンズの外観を意識したデザインが興味深い。
その他にはYN40mm F2.8 N、YN100mm F2 Nが新製品として並んでおり、どちらもAFに対応していた。なお、これらの新製品はすべてUSB端子を搭載しており、将来的なファームアップに対応するとのことだ。
HONGKONG MEIKE DIGITAL TECHNOLOGY
HONGKONG MEIKE DIGITAL TECHNOLOGYは香港のカメラ用品メーカーで、今回の出展ではAPS-C向けの単焦点MFレンズを多数並べていた。どのレンズも小振りで、APS-Cミラーレスに装着した際にバランスが良さそうだった。絞りリングやピントリングの操作フィーリングも上々で、ていねいな物作りを感じさせる。日本での発売については特に言及がなく、むしろ販売店探しの出展といった印象だった。
まとめ
昨今、CP+で初お目見えする、未知の中国製レンズは風物詩になりつつある。今年も7artisans、MEIKEといったメーカーが我々の目を楽しませてくれた。その一方で、継続的に出展される中国製レンズは、年を追う事に実力を高めている。LAOWA、中一光学、YONGNUOなどがこれに相当するだろう。そうした中、国内レンズメーカーの木下光学研究所が初出展し、頭ひとつ抜きん出た高品位なレンズでマニアを魅了していた。
マウントアダプターについては、各社ともAF対応製品に力を入れていた。KIPON、Fringer、Techartなどがこれに該当する。「マウントアダプター経由はMFになる」という認識も、今後は過去のものになるのかもしれない。