イベントレポート

【CP+】MFレンズとマウントアダプターのマニアックな世界

マイクロフォーサーズ用魚眼レンズなど 廉価アダプターのK & F Conceptが日本初上陸

上海伝視撮影器材有限公司のブース。用意していたカタログが2日目でなくなり、増刷が間に合わないとうれしい悲鳴を上げていた。

CP+はカメラメーカー各社の最新機種をまとめて試すチャンスだ。その一方で、マニアックなカメラアイテムを探す絶好の機会でもある。中国メーカーの台頭に合わせ、マウントアダプターやMFレンズといったアイテムが盛況だ。本稿ではCP+で見つけたマニアックなアイテムを紹介しよう。

上海伝視撮影器材有限公司

中判レンズ用のBaveysシリーズは、補正レンズの高画質化にこだわったと言う。

上海伝視撮影器材有限公司は、マウントアダプターのKIPON、MFレンズのHandeVisonを展開するメーカーだ。まずマウントアダプターから見ていくと、フォーカルレデューサーのBaveyesシリーズの新製品が目を惹いた。欧米では発売済みだが、日本国内でもいよいよ中判レデューサーが登場する。ペンタックス67、ハッセルブラッドVなど、各社中判レンズを、ライカSL、ライカM、α7シリーズなどの35mmフルサイズ機に装着し、中判フルサイズ相当の画角で撮れるようにする。焦点距離倍率は0.7倍だ。中判用標準レンズ80mmを例にとると、80mm×0.7=35mm判換算56mm相当で、おおむね標準画角と言える。中判デジタルが話題となる一方で、オールド中判レンズ活用の道も目の前に広がっているわけだ。

ライカMレンズをAPS-C機に装着するフォーカルレデューサーも参考展示されていた。フォーカルレデューサーは一眼レフ用レンズ向けの製品が大半であり、レンジファインダー用レンズ向けは極めてめずらしい。これは焦点距離倍率0.65倍で、標準レンズ50mmを例にとると、50mm×0.65倍(フォーカルレデューサーの焦点距離倍率)×1.5倍(APS-C機の焦点距離倍率)=35mm判換算48.75mmとなる。ちなみに、展示品は堅牢性重視の真鍮製で、レンズ指標にスワロフスキーを用いていた。参考展示とは言え、かなり嗜好性の高い仕様だ。

ライカMレンズ用のフォーカルレデューサーを参考展示していた。真鍮製でかなり重量がある。

レンズはライカSL用のIBERITシリーズが目新しかった。35mm F2.4と75mm F2.4が展示してあり、同社によると、他の焦点距離もすべてライカSLに対応させると言う。また、展示中のIBERITシリーズを見ると、カラーが4色あることに気付いた。元々、光沢感のあるブラックとシルバーを展開していたが、マットブラックとマットシルバーの個体も展示してあった。光沢タイプとマットタイプで思いの外雰囲気が異なるので、購入時は注意したいポイントだ。

MFレンズのIBERITシリーズがライカSLに対応した。アダプター不要で直接ライカSLに装着できる。
左がマットシルバー、右が光沢シルバーのIBERITだ。同じシルバーでもずいぶんと雰囲気が異なる。

焦点工房

オールドレンズファンにはおなじみの焦点工房のブース。ヤフオク時代から知っている人には感涙モノだろう。

マウントアダプターの販売店としておなじみの焦点工房が、CP+に初出展した。近年、中一光学のレンズ、ライカMレンズをAF化するテックアートLM-EA7など、話題性のある商品を取り扱い、トレンドメーカー的なショップとして注目を集めている。

中一光学のレンズは全ラインアップを展示しており、登場間もないフリーウォーカー20mm F2スーパーマクロも並んでいた。これはオリンパスのズイコーオートマクロ20mm F2をモチーフにしたレンズで、4~4.5倍の超近接撮影が可能だ。中一光学は大口径レンズで名を馳せたメーカーだが、最近はラインアップに多様性が出てきたようだ。

フリーウォーカー20mm F2スーパーマクロは近日発売予定。マウントは各社ミラーレスカメラ、一眼レフカメラに対応する。
スピードマスター135mm F1.4は受注生産だと言う。とにかく巨大な中望遠レンズだ。

テックアートのLM-EA7は展示方法がおもしろかった。LM-EA7はマウント面が前後することで、MFレンズをAF化する魔法のマウントアダプターだ。このLM-EA7に様々なオールドレンズを装着した上で、タッチ&トライコーナーを設けていた。LM-EA7はレンズの開放描写によってAF精度が変わってくる。多様なオールドレンズでLM-EA7を試せるのは、貴重な機会だったにちがいない。

タッチ&トライコーナーには、オールドレンズ付きのLM-EA7がたくさん用意されていた。

同社はマウントアダプターのオリジナルブランドとしてSHOTENを展開しており、無限遠ロック付きのヘリコイドアダプターを参考出展していた。試作品ゆえにデザインは変わる可能性があるが、無骨なスタイルに独自性が感じられる。同じくSHOTENブランドからは富士フイルムXマウント用のライカMヘリコイドアダプターも展示されていた。こちらは発売予定だという。

無限遠ロック付きのヘリコイドアダプター。ヘリコイドの誤操作を防いでくれる。
SHOTENブランドの富士フイルムXマウント用のライカMヘリコイドアダプター。クラシカルなスタイルが特長だ。

サイトロンジャパン

LAOWA 12mm F2.8は収差の少ない描写に加え、鏡胴の作りの良さも強調しておきたい。

サイトロンジャパンのブースではLAOWAの新製品、LAOWA 12mm F2.8 Zero-Dにタッチ&トライできた。フルサイズ向けの超広角MFレンズで、ニコンFマウントとソニーEマウント用をラインアップする。ディストーションフリーを掲げ、従来からの高画質路線をより明確にした製品だ。鏡胴の作りが良く、ヘリコイドのフィーリングは丁寧に調整されている印象を受けた。

LAOWAはたくさんの参考出展品があった。中でも興味深かったのは、マジックシフトコンバーターと呼ばれる製品だ。これは補正レンズ入りのシフト機能付きマウントアダプターだ。補正レンズでフルサイズ機の対角43mmを対角60mmまで広げ、その上でシフト操作を実現する。何故このような構造になっているのかというと、既存のシフト機能付きマウントアダプターを使った場合、レンズによってはシフト時にケラレてしまうことがあった。そこで補正レンズでマスターレンズのイメージサークルを広げ、シフトによるケラレを防ごうというわけだ。レボルビング機能も搭載しており、シフト方向は縦横自由に変更できる。製品化は未定とのことだが、自由闊達な発想力に驚かされる。

参考出展されていたLAOWAの製品の数々。どれもひと癖ふた癖ある製品だった。
参考出展の15mm F2。ディストーションゼロを掲げ、動画向けのクリックレスにも対応する。
スーパーマクロ25mm F2.8は、2.5~5倍の超近接撮影が可能。この製品も参考出展だった。
補正レンズ搭載のマジックシフトコンバーター。イメージサークル拡大という発想に驚かされる。
虫の目レンズも参考出展されていた。24mm F14で、先端にLEDを搭載している。

インタニヤ

特殊なスタイルの魚眼レンズゆえに、多くの人がその前玉をのぞき込んでいた。

インタニヤのブースでは日本製の魚眼レンズ、フィッシュアイ250MFTを展示していた。3種類のイメージサークルをラインアップし、マウントはマイクロフォーサーズとソニーEマウントに対応する。250度という広い画角が、2カットで360度VRの撮影を可能にする。ただし、VR用途のみならず、オーロラ撮影や天体撮影など、従来スタイルのスチルユーザーにも好評だと言う。

YONGNUO

YONGNUOのブースではキヤノンEFマウントとニコンFマウント用のAFレンズを展示していた。焦点距離は、35mm F2、50mm F1.8、85mm F1.8、100mm F2の4種類だ。MFレンズではなく、絞りリングのないAFレンズである。鏡胴デザインに強烈な既視感があり、どうコメントすべきか悩ましいレンズだった。

35mm F2(右)と50mm F1.8(左と中央)。35mmレンズは同社Webサイトにも掲載されていた。
85mm F1.8(右)と100mm F2(左)。マウントはキヤノンEFとニコンFの2種類に対応する。
中国製レンズはMFレンズが多い中、AFレンズの登場に新たなムーブメントを感じる。

K&F Concept

K&F Conceptは総合カメラ用品ブランドだ。カメラバッグ、フラッシュ、三脚など、取り扱い商品は豊富だ。

K&F ConceptはCP+初出展となるブランドだ。お手頃マウントアダプターとして急速に人気を高めているブランドである。付加機能のないノーマルタイプのマウントアダプターとは言え、1個2,000円前後という価格は驚かされる。無論、かねてから格安マウントアダプターは存在していたが、大半はノンブランド品だった。ノンブランド品はいわゆる売りっぱなしの製品であり、その点K&F Conceptのマウントアダプターは、安価でありながらブランディングされている。CP+に出展していることからも、品質保証という観点のある企業であることが感じられるだろう。同社の製品はいくつか試用したことがあるが、機能面や仕上がりに大きな問題はなかった。少なくとも価格以上の品質を備え、コストパフォーマンスの良さは群を抜いている。

マウントアダプターは主要マウントをおおむねカバーする。コストパフォーマンスの高い製品だ。

まとめ

マウントアダプターやMFレンズは、中国製品が幅を効かせている。しかしながら、「安かろう悪かろう」の印象が強かったのは過去の話だ。製造精度が上がるにつれ、信頼を得るためにブランディングが進み、着実にカメラ写真業界の一翼を担いつつある。KIPON、中一光学、テックアート、LAOWAあたりの新製品を見ていると、これまでなかった商品を作ろうという気概が伝わってきた。同時に高精度高画質というクオリティについても、真摯に向き合おうという姿勢が感じられる。何かを手本にしながら製造技術を高め、次第にオリジナル商品の開発へと向かう。かつて日本のメーカーがそうであったように、中国のメーカーもしかり、と言ったところだろう。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp