新製品レビュー
RICOH GR IV
着実な“進化と深化”を実感したスナップシューター
2025年9月26日 09:05
ユーザーの大きな期待を抱えながら遂に発売となったGR IV。従来モデルのGR III登場から約6年ぶりのモデルチェンジで、満を持しての登場となりました。これ以上何が進化・深化するのか。というくらい、GR IIIでもかなり満足感があったのですが、実際に撮影をしてみると、その正常な進化に魅了されてしまうのです。
外観上の変更点と操作系の変化
GR IIIと比べ、厚みが2mm薄くなってスマートになったボディ。反対に質量は5gほど増えて約228g(本体のみ)となりました。グリップが背面側にもやや張り出してホールド感が高められ、とても握りやすいです。片手での撮影、操作性の良さはグリップの形状に起因することが感じられます。
前ダイヤルの開口部も多少広がり、モードダイヤルロックボタンにくぼみがあります。小さなパーツにまでこだわり操作性を重視した配慮が感じられるデザインに仕上がっています。
レンズは、新開発の18.3mm(35mm判換算28mm相当)F2.8のGRレンズを搭載。開放F2.8の明るさはそのままに、5群7枚の最新光学系により、ディストーションや色収差を徹底的に抑制し、画像周辺部までのシャープネスはさらに向上しています。
操作系で大きく変わった点は、背面にあったコントロールダイヤルの廃止。回転式ホイールがなくなり、その分十字ボタン部分は大きくなりました。ボタンを押す感触もなかなかしっかりとしています。
露出補正ボタンは、GR IIの時と同様の位置に戻り、+-ボタンとなってグリップ上部に。さらに再生ボタンはその下に位置しています。
また、ADJレバーは回転式のダイヤルへと変更。レバーの突起はなくなりましたが、GR III同様にダイヤルを押し込めば、イメージコントロール/フォーカスエリア/測光モードなどの各種設定が変更できる仕様は同じです。
バッテリーと記録メディアの変更
さらに大きな変更点として、専用バッテリーが大容量充電式リチウムイオンバッテリー「DB-120」になりました。従来の「DB-110」よりも大容量になったことで、静止画撮影可能枚数は約250枚、動画記録は約240分にアップしています。
GR IIIでは“電池の消耗が早い”と言われ続けてきたことが少し改善されたよう。半日くらいぶらぶらとゆっくり撮り歩いて十分に持ちました。
メモリーカードにはmicroSDカード(microSDHC/microSDXCはUHS-I規格に対応)を採用。なぜ? と一瞬思いましたが、GR IVは内蔵メモリーに約53GBという容量があり、JPEGのみの撮影で約3,500枚の撮影が可能になっています。
GR IIIの内蔵メモリーは約2GBだったので、あくまで補助的なものという印象でしたが、約53GBの内蔵メモリーは必要十分、頼りになる容量で、安心感が得られるのは大変ありがたいですね。
microSDカードは頻繁に抜き挿しすることで破損しやすいため、むしろ、内蔵メモリーとUSB Type-Cケーブルや専用アプリでのデータ転送をうまく利用したいところです。
新しい撮影モード「スナップモード」と「プログラムオートEx」
「Sn(スナップ撮影距離優先AE)モード」が新たにモードダイヤルに追加され、設定したスナップ撮影距離と被写界深度を組み合わせて奥行きにこだわった表現が楽しむことができます。
GR IIIでは、スナップ撮影距離を決めておき、さらにプログラムラインの設定で「開放優先」「深度優先(深い)」を選択する必要がありましたが、1つのモードで設定できるので、とっさの判断で瞬発力の高い撮影が可能になるのがSnモードです。
GRシリーズで最速となる約0.6秒の高速起動で、スナップシューターとしての使い勝手はかなり発揮されるでしょう。
有効画素数約2,574万画素の超高精細に加えて、画像処理エンジンが「GR ENGINE 6」から「GR ENGINE 7」へと進化。処理速度が高速化したことで、AFをはじめとするカメラのレスポンスも向上しているので、心地よくサクッと撮れる感触が得られます。
また、シャッターの前にある電子ダイヤルを回せば「絞り優先AE」、後電子ダイヤルを回せば「シャッター速度優先AE」に瞬時に移行できる「プログラムオートEx」機能も新たに搭載されました。
これまでにも、個人的にはかなり活用してきたプログラムシフト機能に似ていますが、「P-Exモード」では前ダイヤルで絞りを、後ろダイヤルではシャッタースピードを変更でき、それによってISO感度が自動的に露出を調整する役割を担っています。
GRユーザーが慣れ親しんできたPモードと、Snモードを使い分けると、より快適な撮影が可能になるというわけです(ISOオートが有効なとき)。
Pモードなら前ボケも効果的に扱えますし、Snモードなら一定の距離を保ったパンフォーカスが楽しめます。個人的にはそんな撮影の使い分けが適しているようでした。
映画のワンシーンを思わせるイメージコントロール「シネマ調」
画像処理能力の向上により、解像感と階調再現性に優れた高画質を実現したことで、表現に関する細やかな部分も進化を遂げました。
イメージコントロールは、新たに「シネマ調(イエロー)」と「シネマ調(グリーン)」が加わり、計14種に。従来モノトーンでしか設定できなかった粒状感も、モノクロ系とネガフィルム調、シネマ調では粒状感の大きさを設定できるようになっています。
「シネマ調(イエロー)」と「シネマ調(グリーン)」はその雰囲気を引き出すためにも、使うシーンや天候・時間を見分けて使いたいと感じました。
また、アスペクト比には4:3と16:9が加わったので、静止画でも16:9で撮影すれば一層シネマチックな印象が深まることでしょう。
3種になったオートホワイトバランス
オートホワイトバランスに「ウォーム優先」「ホワイト優先」が加わり、マルチパターンオートがなくなりました。とはいえ、「AWB」はマルチパターンオートのように温度感のバランスの良い補正がかかります。
意図に合った設定で、忠実な再現を求めるか、雰囲気のある表現を楽しむか。そんな選択肢を託すところもGRらしいのかもしれないです。
頼れる手ブレ補正と内蔵NDフィルター
「最強のスナップシューター」という明確なコンセプトとともに、真面目で素直な描写も好ましく、こういうところに“サブ機”といわれる所以を感じます。GRはこうした力のあるカメラであることは忘れたくないものです。
GR IIIで3軸4.0段だった手ブレ補正は、角度ブレと回転ブレに加え、近接撮影時に気になるシフトブレも補正され5軸6段となっています。手ブレ補正は強力で、内蔵NDフィルター(2段分)を併せて使用することで、表現力がかなり高まります。様々なシーンで活躍してくれること間違いなしです。
マクロモード
マクロモードへの切り替えや、レンズ収納時間も高速化されています。接写時のピント合わせも迷いが少なくスムーズ。撮影距離範囲はレンズ先端から6~15cmで、接写によるボケを生かした印象的な作品作りと繊細な表現が楽しめます。
マクロモード撮影時に無限遠撮影ができないのはGR IIIと同様なので、マクロモード撮影後に通常撮影モードへの切り替えを忘れずに。
おわりに
なにぶん、GRだから撮りたいシーンは多い。いつも持ち歩きたくなる理由や、シャッター数が増えるのも、やはりこのコンパクトさのせいか。その描写か。
それ以外にも答えがあるとしたら、撮影スタイルへのフィット感なのかもしれない。
深化するとは、性能や描写だけに限ったことではなく、やはりGRを選びたくなる心地よさとフィーリングが不可欠なんだと思う。
信頼性の高さに、スピード感とクリエイティブな表現が加わり益々魅力が増したGR IVを片手に、「やっぱりGRなんだよね」と、思いながら撮影していた。