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プロの仕事を止めない信頼性とAF性能に注力した「EOS R1」/趣味層に向けて重要な役割を担う「EOS R5 Mark II」
2024年7月18日 19:10
キヤノンは7月17日(水)、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R1」および「EOS R5 Mark II」を発表した。
EOS R1は、EOS Rシリーズとして初めて型番にフラッグシップを示す「1」を冠する製品。EOS R5 Mark IIは4年ぶりのモデルチェンジとなる。
同時発表の同世代機として共通の性能は多い。フラッグシップとミドルハイクラスの新製品として、AF/AEや連写などスチルカメラとしての基礎性能を堅実に強化した形となった。
両機とも新開発の裏面照射積層CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC Accelerator」を搭載したことで、AF速度の高速化やローリングシャッター歪みの低減などを図っている。またメカシャッター時最高約12コマ/秒の連続撮影性能も共通。
AFについては被写体の捕捉・認識性能を向上させており、被写体に対する「掴み」(食いつき)や追尾を強化。特定のアクションをしている被写体を認識する「アクション優先」のAFトラッキングに加え、特定人物の登録をもとにした優先度の設定が可能になった。
また静止画撮影時の測光ブロックは6,144分割まで細分化しており、AWBの精度とシーン認識性能が向上している。
機能面では、カメラ内でのトリミング+アップスケーリング同時適用、視線入力AFの強化、静止画プリ連続撮影、連写時のブラックアウトフリーなどを搭載して利便性を向上。レンズ協調制御の手ブレ補正は中央8.5段/周辺7.5段となっている。
動画関連では、フルHD(60p)動画と静止画の同時記録に対応。最長5秒前までの「プレ記録」、Cinema EOSと共通の「カスタムピクチャー」、LUTファイルのカメラ内適用、XF-HEVC S/XF-AVC SやCanon Log 2/3、LPCM/24bit/4chオーディオなどにも新たに対応した。
このほかネットワーク関連ではWi-Fi 6Eと2.5GbEを搭載している。
「フラッグシップ」に要求される性能とは
今回の2機種についてキヤノン イメージンググループ管掌 副社長執行役員の戸倉剛氏は、質問に対しこう答えている。
——EOS R1に込めた想いや意気込みを教えてください。
本機は長らくお待たせしたEOS Rシリーズの「フラッグシップ」です。
「EOS R3」は前回のオリンピックイヤーである2021年に出したカメラですが、このときはあえて「R1」と名付けませんでした。「R1」はもっと進んだ「最高の性能」と「最高の信頼性」を両立した形で出したいと思っていたからです。今回、それがやっと実現できたということで世に出すことになりました。
中身の仕上がりとしては、「プロの仕事を止めない」信頼性と、AF性能に力を入れています。被写体を逃さないことにかけては、EOS R3やEOS R5を凌駕する性能を持てたと思っています。実は現在、プロの方々にプロトタイプをお渡ししておりますので、パリ五輪では実際に使われることもあろうかと思います。ご活用いただけたらと思います。
——フラッグシップモデルの開発に時間をかけた理由について教えてください。
フラッグシップ機を作り上げるのは非常に難しいものです。私自身も開発に携わっていた頃に担当したことがありますが、フラッグシップを仕上げることには、相当なパワーと時間を要します。実際の開発が目指す完成度は「100点満点」ではなく「120点満点」なのです。それでやっとプロの方々から満点がもらえる。そのくらいの意思をもって作り込みます。
それを市場に出すときには、これ以上ないくらいの評価を終えて、問題点を出し切ったうえで出したい。時間優先で出すというよりは、きちんと仕上げてから出すということです。結果的に時間がかかってしまうというわけですね。
——結果としてこの時期に発表することになった点についてはいかがでしょうか?
ほぼ計画通りのタイミングだと思っています。もちろん新製品は早く出せた方がいいのですが、特にフラッグシップは機種としての役割をもって、世の中に出したときに受け入れられるだけの完成度が重要です。
——EOS R1はEOS Rシリーズとして初めてのフラッグシップですが、現行のフラッグシップとなる「EOS-1D X Mark III」が世に出てから今にいたるまで、プロのユーザーから要求される性能に変化はありましたか?
おそらく普遍的な性能という意味で言えば、満足はないと思います。EOSのコンセプトである「快速・快適・高画質」につながる全性能は、特にプロフェッショナルの方々は、いくらでも求めるものでしょう。むしろそれらのバランスを崩さないように性能のボトムアップを図ることが重要です。
一方で操作性については「急に変えない」ことを心がけています。カメラを買い替えても、できるだけそのままの使い勝手で使えること。これは“EOS-1”として維持してきたことです。
——生産台数はどのくらいの規模なのでしょうか?
EOS R1はワールドワイドで月産3,700台ほどになります。EOS R5 Mark IIについては月産1万6,000台ほどです。
——今後、グローバルシャッターを搭載する機種を出す予定はありますか?
この場で開発計画をお話しすることはできませんが、グローバルシャッターについてはもちろん研究開発を進めています。EOS R1に関していえば、グローバルシャッターを採用した場合に画質やノイズなどに関連する性能が落ちることがわかっていたので、今回は見送りました。
——先ほどプロトタイプの提供をしたとのお話がありましたが、EOS R1の発売にあたって、オリンピックを意識することはありますか?
フラッグシップを企画開発するときに、オリンピックを意識しないことはありません。このタイミングに合わせて作ってきました。
——価格について、従来よりも高くなっているように感じられます。値付けに関して円安の影響は受けていますか?
はい。円安の影響をまともに受けております。価格については日本国内価格が一番影響を受けていると思います。
元々の絶対的な価格は、製造コストによって決定します。そこから全世界の標準価格を設定していきますが、そのときに、できるだけ全世界で横並びの価格を設定したいわけです。例えばそのタイミングでレートが円安になれば、どうしても標準価格は上がってしまう。
——今回発表した2機種について、ラインナップ上でのそれぞれの立ち位置についてどのような認識でしょうか?
ラインナップの考え方として、EOSでは「EOSピラミッド」として三角形でフルラインナップを構築しています。EOS R1はその三角形の頂点に置ける機種です。このフラッグシップをプロにしっかり使っていただけることが三角形の世界を強固にすることだと考えています。その意味でEOS R1の立ち位置は非常に重要です。
EOS R5 Mark IIについては、スチル/ムービーを撮る趣味層に向けて非常に重要なレンジになります。特に本機は「EOS R5」の後継機であり、大きな役割を持っています。
——他社との競争の中で、今後の市場にどのような影響を与えていきたいですか?
もちろんシェアのトップは狙っていきたいですが、業界としてはバランスの良い競合がいることが重要ですので、切磋琢磨したいと思います。
一般向けのタッチ&トライも
「EOS R1」「EOS R5 Mark II」ともに予約開始は7月23日(火)の午前10時から。タッチ&トライは7月19日(金)より「キヤノンプラザSコミュニケーションスペース」(品川)、「キヤノンフォトハウス銀座」、「キヤノンフォトハウス大阪」、「名古屋支店コミュニケーションスペース」の4拠点で実施するほか、スタッフがオンラインで質問に応える「オンラインタッチ&トライ」も8月3日(日)まで実施する。