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続報・マニア目線で巡る「新宿 北村写真機店」

新宿東口に大きなカメラ沼 圧巻の在庫量とレアモノ達

左のマークは、カメラ・オブスクラをイメージした"紋章"。

既報の通り、株式会社キタムラは旗艦店となる「新宿 北村写真機店」を7月3日10時にオープンする。店舗全体の概要については別記事の通りだが、ここでは少しカメラ機材寄りの目線でレポートしてみたい。新宿 北村写真機店の懐の深さと、そこに込められたキタムラスタッフの熱が伝われば幸いだ。なお、掲載している商品や価格はいずれも取材時点のもの。

所在地は東京都新宿区新宿3丁目26-14。店舗の入口は、以下のGoogleマップの位置情報を参照してほしい。7月1日時点のGoogleマップには「新宿TSUTAYA」と表示されている場所を目指すとわかりやすい。

同店はカメラのキタムラの中でも特に、ライフスタイル提案を取り入れたコンセプチュアルな店舗になっている。建物はA館B館に分かれており、各階の面積こそ大きくないが、館内を縦横に移動することで異なる展示アイテムや世界観に触れられる。担当者いわく「各フロアを小部屋のように演出しているのが特徴」だそうだ。

ざっくり建物全体を俯瞰すると、1階〜3階までは「多くの人に写真やカメラを楽しんでもらおう」というカメラや写真の世界へのいざないで、3階のブックコーナーを経て4階〜6階の中古コーナーへ踏み込むと、一転してカメラ好きのテンションが高まる世界が広がっている。"カメラ沼"とも呼ばれそうな、マニア注目のレア商品や圧倒的な在庫量が印象的だった。館内の商品はほぼ、カメラとレンズだ。

1階:カメラの素材を使ったオリジナルアイテム

3月時点の予告通り、世界最大級という6,000アイテムを揃える同店。担当者いわく"香港と並ぶ世界有数のカメラの聖地"という新宿に出店し、その顔となるのが1階だ。

森ビルが手がけた1/1,000の都市模型「新宿写真」。店内でまず目に入る位置に置かれ、"写真でできている都市を写真に収める"という光景が生まれる。
シンプルで優しさを感じるカメラのイラストは、アーティストのフィリップ・ワイズベッカー氏によるもの。
マグカップなどのグッズを用意。
様々なポーズのフォトグラファーの小さな人形が入ったパック。カメラを建造物に見立てて人物を配置するなどの楽しみを提案。
日常使いできることを意識したというオリジナルアイテムの数々。
カキモリとコラボレーションしたフォトアルバム。機材データを書き込めるようにしたのがカメラ専門店らしさ。今後も新アイテムを順次展開予定だという。
バヨネットマウントをフタの開閉機構に使った小物入れ。革、木、鉄、真鍮といったカメラによくあるマテリアルを使っているのが、このコーナーのポイント。
カメラのキタムラと同じく高知県出身の酒造によるオリジナルのお酒も。

地下1階:アップル修理コーナー

アップル正規サービスプロバイダのカウンターを備える。iPhoneを「一番そばにいる最高峰カメラ」と位置づけ、アタッチメント式レンズを取り付けられるようなケースなどが並ぶ。カウンター奥には"iPhonegrapher"三井公一さんの作品が飾られており、棚にはアップル関連の洋書も並んでいた。

カメラ寄りのiPhoneケースが並ぶ。
アップル製品の修理受付カウンター。

2階:新品カメラ/レンズ

階段を上がった目の前に、キヤノンEOS-1Dシリーズが待ち構える。ここは旬の商品としてメーカーが推したいものを並べるコーナーで、現在はEOS-1D X Mark IIIの登場によせて、歴代のEOS-1Dシリーズが集合している。

歴代EOS-1Dシリーズが集合。ほとんどに超望遠レンズが装着されているのは壮観だ。
「DCSも仲間なんですね」とスタッフに声を掛けてみたところ、「よくぞ気付いてくれました!」と笑顔で回答。どうやら素敵なお店だ。

新品カメラのフロアは、白い什器を使うなど、とにかく明るい印象を目指した。本棚のような陳列棚は幅を70cm程度として、周囲の目が気にならず「自分の世界に入れる感覚」を意識したのだという。

壁面に鏡も使い、明るく広々と感じさせる。
ニコンD6のような高級機も触れる。上下のガラス棚には、触れるカメラと同じマウントのレンズを陳列。これもスタッフに頼めば出してもらえる。
ハッセルブラッドX1D II 50C、ペンタックス645Z、SIGMA fpが一列に。そして奥にはカールツァイスOtusシリーズ。
MFレンズは操作感も大事な要素。ガラスケースの外に置かれていて自由に触れるのは珍しい。
カメラを手に取る際、盗難防止アイテムが気にならないように配慮したという。コードは棚の奥に巻き取られる仕組みで、散らかった印象がない。

3階:写真プリント/ブックラウンジ/スターバックス

隣のB館のスターバックスと繋がっており、プリントの仕上がりを待ちながらコーヒーを飲むなどの楽しみ方ができる。プリント注文機が設置され、フィルム、雑誌・書籍、写真集を扱っている。なお、新宿 北村写真機店の中には35mm用のC-41自動現像機があるそうだ。

ブックラウンジの一部は、特集コーナーとして定期的に入れ替えを行う。現在は6階で開催中の「蜷川実花展 ー千紫万紅ー」に合わせた内容。
写真プリントやフォトブックを注文する端末が並ぶ。
フィルムが並ぶ棚。
最近の話題といえば、アルミ缶ケースが可愛い限定フィルム「LomoChrome Metropolis TOKYO」。カメラのキタムラとロモジャパンのコラボアイテム。
書籍や雑誌のコーナー。
一歩踏み込みたい人向けの、オールドレンズや中古カメラの本。
もはや引き返せない人向けの本もある。レアなライカがひたすら載っている写真集。

4階:中古カメラ/レンズ

中古フロアは、A館とB館でフィルム/デジタルと大別している。全国から集めたという圧巻の在庫量だ。フィルムカメラ時代と最新デジタルカメラを繋ぐアイテムとして、マウントアダプターの楽しみ方も提案している。

中古デジタルカメラのコーナー。
交換レンズも充実。
種類豊富なマウントアダプターコーナー。
ソニーα7シリーズにTECHARTのLM-EA7を組み合わせ、マニュアルのライカMレンズでAF撮影しよう、という展示。
中古フィルムカメラのコーナー。
通常の中古品と別に、元箱付きのニコンF2/F3だけでこんなにある。
定番のライカだが、とにかく選択肢が豊富。
価格帯にあまり偏りがないのが面白い。ハーフサイズや中判のカメラも扱う。
近年人気が高まっている、富士フイルムのナチュラとクラッセ。恐ろしいほどの物量。
ひたすら、コンタックスT2/T3。これも近年価格が高騰している人気機種。
ひっそりと、オリンパス・ペンS 2.8のブラック。

また興味深い取り組みとして、カメラ本体のカスタマイズ提案を行っている。例えばフィルムライカやレンズキャップを好きな色に塗ってもらうなどの注文ができるそうだ。

ライカの塗りは関東カメラに出すという。

5階:中古買取・修理・メンテナンス

買い取り品の査定や、持ち込み品の修理・メンテナンスを行う場所が5階にある。買い取った商品も、重修理が必要でなければここでメンテナンスを行い、すぐに4階へ並べるようなイメージだという。

ガラス越しに作業スペースが見える。プロの手元を見るのは楽しい。
作業台の一部。バッテリーチャージャーを並べることを考えて、コンセントは間隔を空けて複数設置。預かり品はひとつの通い箱にまとめて扱う。

6階:ライカ/ヴィンテージカメラ、イベントスペース

ここでは「ヴィンテージサロン」という名前のコーナーを展開している。いわゆる"ライカブティック"相当のライカコーナーで、新品は中判のライカSからコンパクトカメラまでフルラインナップで扱う。中古はとりわけ希少価値の高いフィルムライカに加え、フジノン、ズノーといったマニアが喜ぶ国産ライカマウントレンズも揃えていた。

このコーナーでは主にスポットライトを使い、夜はバーのような雰囲気になるという。1階〜2階の明るさとは異なる世界観。
"貴婦人"の愛称でお馴染みの初代ズミルックス50mmだが、これは希少なスクリューマウント版。
レンズ部にコンパーシャッターを備えたライカB型(前期)。これも普通の中古カメラ店では見かけない。
こちらは国産ライカマウントレンズ。Zuiko 50mm F1.5。
"Takatiho"と訓令式で書かれているところに時代を感じる(高千穂=現在のオリンパスのこと)。
お値段300万円。この日に見かけた最高額だった。
ガラスケースの下にも、複数のフジノン大口径とズノーが隠れていた。いずれも1本100万円〜120万円。
6階イベントスペースでは、オープン記念として「蜷川実花展 ー千紫万紅ー」を8月2日まで開催。

ここまで写真たっぷりでお届けしてきたが、まだまだ実際のボリューム感は伝えきれていないと思う。新宿東口の好アクセス立地なので、カメラに詳しいかどうかに関わらず、一度訪れてみると楽しいだろう。

本誌:鈴木誠