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新宿 北村写真機店に、“手ぶらで本格自撮り”のセルフ写真館「PICmii」オープン。誕生の背景を聞く

“Z世代”だけにはもったいない撮影体験

株式会社キタムラは、セルフ写真館「PICmii(ピックミー)新宿店」を4月15日にオープンした。場所は同社の旗艦店「新宿 北村写真機店」の7階。料金は2名利用で税込3,800円(15分。モノクロ撮影。3名以上は1名につき1,500円追加)。カラー撮影(1,000円)、特殊フィルターレンタル(500円)などのオプションも用意。ハッシュタグ割や学割なども利用できる。

PICmiiは、本格的な照明や撮影機材を利用して自分撮りができる個室のプライベートスタジオ。機材は撮影に適したセッティングがされており、利用者は手ぶらで訪れ、用意されたレリーズボタンを押すのみで簡単に撮影体験ができる。15分の利用時間内で撮影枚数は無制限。撮影したすべてのデータを、サービス利用後にすぐに受け取れる。

利用はWebサイトの応募フォームから、日時と希望の部屋を予約する。ただし、予約が空いていれば当日の店舗での受付も可能としている。

なお、同社は5月13日に渋谷店もオープンする予定。場所はカメラのキタムラ 東京・渋谷店の4階。利用料金は新宿店と同様。オープン記念として、トイカメラやロモフィルムがもらえる「写真がもっと楽しくなるプレゼント抽選会」も開催する。

キタムラの強みを生かした“こだわり”のスタジオに潜入

PICmii 新宿店の受付

PICmii 新宿店には、それぞれイメージの異なる3つのスタジオが用意されている。爽やかな水色の壁が印象的な「Studio A:Modern」。床の木目が映える「Studio B:Natural」。花をモチーフにした壁紙で囲まれた「Studio C:New Retro」。他のセルフ写真館では、ホワイトもしくはグレー背景のみの場合も多く、こうしたバリエーションも楽しめるのは同店ならではだという。

Studio A:Modern。ビビッドな印象が楽しめる(同社提供画像。以下同)
Studio B:Natural。一番スタンダードなタイプ
Studio C:New Retro。背景の雰囲気から、自然と真剣な表情になってしまう利用者も多いという。

スタジオには既に撮影機材がセッティングされている。レンズのフォーカシングはマニュアルで、全域にフォーカスが合うように固定し、利用者がバシバシとシャッターを切れるようにした。背景の色や柄を活かすため、ストロボの向きも工夫。背景の色が利用者の肌色に乗らないよう、色づくりにもこだわっているという。

また、同店は“全身が撮影できる”という点にもこだわった。カメラとの距離が短くそれが難しいセルフ写真館も多いというが、同店では全身撮影を可能にする広さを確保した。また、ヒキで撮ってもヨリで撮っても歪みなどの影響が少ない画角でレンズを固定。このほか、スタイルがよく見えるよう、カメラの角度なども工夫しているのだそうだ。これは、写真スタジオとして同社が積み上げたノウハウによるもので、キタムラならではの強みなのだという。

このように同社がスタジオに最適なセッティングをしているため、利用者には機材の位置をずらさないようにお願いしている。

撮影に使用するカメラは「α7 III」。USB Type-C接続が利用できるのも選定のポイントだったという。撮影中はついついモニターを見てしまう利用者もいるため、「Look at Me!」でアピール
撮影小物も充実。利用者も思わず笑顔があふれるという“おもしろアイテム”が並ぶ
ポーズの“お手本”も
15分間の撮影時間の中で、多い人は200カット程も撮影するという。それらのデータはすべて受け取れるため、利用料金に対して“お得感”が得られるかもしれない
全身をカメラに収めることも可能だ

撮影後は、受付にてすぐに撮影データを受け取ることができる。撮影データは、渡されたQRコードを読み取るだけで簡単にアクセス可能。同社によると、個人情報の漏洩などにも細心の注意を払い、データの受け渡し方法もこだわりを持って検討したのだそうだ。

受け取れる写真に枚数制限はなく、15分間で撮影したすべての写真データを持ち帰ることができる。また、撮影した写真をつなげて自動で動画を生成するサービスも用意している。

撮影データのダウンロード画面。左上が自動生成された動画ファイル
特殊フィルターの使用例(同社提供画像)

全世代が楽しめるサービス。「撮影体験を提供したい」

韓国でのブームがきっかけに

同社によると、こうしたセルフ写真館は2018年頃から、若い世代を中心に韓国で盛り上がりを見せていたという。朝鮮日報はソウル市内のセルフ写真館の店舗数について、2018年に10店舗程度、2021年には300店舗を超えたと報じているという(同社調べ)。

そうした韓国での盛り上がりを背景に、日本では2020年頃からセルフ写真館のシステムを導入する企業が徐々に増加。それらは韓国の文化に敏感な、日本の若い人たちを中心に広がっていったのだという。

同社としても、メインターゲットに据えるのはやはり20歳前後のいわゆる“Z世代“。新たに20代にリーチする手段としても期待し、友達とのお出かけやデートの際に、それから誕生日などのちょっとした記念日などでの利用を提案している。本格的な機材で綺麗な写真を残せるという点は、近年、再び盛り上がりを見せつつあるというプリントシール機との違い。目的に応じて使い分けできるという、“自分撮り”においての新しい選択肢となっている。

子育て世代にも

しかし、セルフ写真館の利用方法について、同社はZ世代に限らない可能性があると提案している。それは例えば子育て世代に向けたものだ。

ハレの日に写真館でプロカメラマンに撮影を依頼する、ということはあるかもしれないが、それには「価格が高い」「子どもが人見知りをしてしまう」などのハードルもあるという。同社としても、そんなときの選択肢としてセルフ写真館を検討してほしい話す。

ハレの日とまではいかなくても、ちょっとした記念日くらいであれば、価格も抑えられ、リラックスした状態できれいな写真を撮ることができる。同社は写真館「スタジオマリオ」の運営もしているが、“ハレの日”と“ちょっとした記念日”で両者を使い分けてみて欲しいという。ちなみにPICmii 新宿店はスタジオマリオに併設されている。

PICはpicture。動詞で「思い描く」の意味もあり、「本当の自分を思い描く」のメッセージを込めた。miiは自分を意味するmeの造語で、iを二つ重ねて二人が並んでいる様子を表現。さらに世界で通用する「kawaii」のiiをもじっているという。

カメラ屋としてカメラを販売したり、写真館運営を通してアルバムなどを販売する、いわゆる小売業として展開してきた同社において、PICmiiについては“モノを売る”とは別の位置づけがあると説明する。

同社はPICmiiのサービスを通じて、利用者に「撮影するという行為」を体験してほしいのだそうだ。カメラマンがいると、つい緊張していつもと違う自分になってしまう。セルフ写真では、ちゃんとしたカメラで「等身大の自分、自分らしい自分」を写し撮ってみて欲しいという。

PICmiiのコンセプト「Your Life, Your Mirror」(以下、引用)。
「人前で見せる決まったポーズや表情よりも、その瞬間の自然な姿を、
その瞬間のありのままの気持ちを、あなたのペースで撮影する。
毎日見る鏡のように等身大のあなたに寄り添い、
あなたの人生を写し続ける写真館です。」

 ◇◇◇
自撮りというと、「若者文化だなぁ」と感じることもある筆者だが、取材を通してPICmiiは全世代的に利用できるサービスだという印象をうけた。写真館、プリントシール機、スマートフォンなど自分を撮影する手段は多数あるが、それぞれ目的に応じた使い分けができるというのは、これまであまり意識してこなかった。

「カメラを所有する」ことを趣味とする層には、少し距離の感じられる話かもしれないが、「カメラを所有しない写真文化」が存在することも確かなことのように思えた。なにはともあれ、PICmii、けっこう面白い。

「はしゃぐ大人」の図(後列中央で銃を構える筆者)
本誌:宮本義朗