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FUJIFILM X100V詳報:X100シリーズ5世代目は何が進化したのか

「Xシステムへの入り口となるカメラ」 実機写真を掲載

富士フイルムは、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラ「FUJIFILM X100V」を2月下旬より発売する。同社がメディア・写真家向けに開催した製品説明会から、同カメラの進化点を実機写真を交えつつお伝えしたい。

テーマは「The One and Only」

5世代目となったX100Vの発表にあたり、製品テーマを「The One and Only」だと説明した同社。X-Pro3やX-T3、X-T30で採用されている最新世代のセンサー「X-Trans CMOS 4」と画像処理エンジン「X-Processor 4」を搭載したことに触れて、これらレンズ交換式のXシステムに触れたことのないユーザーにも使ってもらえるカメラにしたのだと続けた。

X100Vとデザインや操作性が近しいレンジファインダースタイルのカメラとしてはX-Pro3があるが、X-Pro3では背面モニターを“隠し”仕様とするなど、尖った部分が多いカメラとなっていた。いっぽう、X100Vでは、レンズ一体型であることや、チルト式の背面モニターを備えるなど、他社製品のユーザーにも使ってもらいやすいコンセプトでまとめあげているのだという。

1台で完結するカメラではあるものの、同社Xシリーズのアイデンティティーを保つ製品とすることで、ひろく富士フイルム製品への“ゲート”となっていく役割を担う製品なのだという。

第5世代目の変更点

詳しい製品のスペックは既報のとおり。ここからは、実機を交えつつ前モデル「X100F」からの主な変更点をお伝えしていきたい。変更点・進化点を整理すると以下のようになる。

[1]デザインの刷新
[2]イメージセンサー・画像処理エンジンの刷新
[3]レンズがII型に進化
[4]防塵・防滴構造の採用
[5]EVF・背面モニターのドット数の向上
[6]ISO感度ダイヤルの形状変更
[7]USB Type-Cコネクタの採用

各部を実機で確認

まず、外観デザインからみていきたい。X100Vでは、トップカバーのエッジが立ったデザインとなっているが、これはアルミパネルをプレス・切削加工して成型しているのだという。加工の工程数は28に及ぶとのこと。アルミ素材の成型のし易さをいかして、シャープなラインを実現しているのだという。

表面処理はブラスト処理とアルマイトによる着色で仕上げたとしているとおり、金属らしい冷たい感触が滑らかな手触りとともに伝わってくる仕上がりとなっていた。

これらアルミ材はトップカバーとボトムカバーに用いられている。このうち、トップカバーはホットシューを含めてフラットになるデザインとした。

FUJINON LENS SYSTEMロゴも継承されている

背面モニターはタッチ操作にも対応したチルト式となっている。収納時にはボディ背面とフルフラットになるデザインとなっており、天面のデザイン処理とあわせて、全体的にすっきりとした印象にまとめあげられている。

背面操作部には、フォーカスセレクトレバー、MENU/OKボタン、再生ボタン、DISP/BACKボタン、Qボタンがならぶ。X-Pro3と同じくゴミ箱ボタンは廃されている。

側面には2.5mm径のマイク/リモートレリーズ端子とUSB Type-C端子、HDMI端子(Type D)がならぶ。HDMI端子は動画撮影時に外部モニターへ10bitの出力も可能となっているという。

左側面には、フォーカスモードの切り替えスイッチが配されている。

底面側。三脚穴の位置に変更はない。また、バッテリーは従来同様NP-W126Sを使用する。記録メディアはSDカード(UHS-I)で、スロットはひとつ。バッテリー室と同室となっている。

ISO感度ダイヤルは、今回もシャッター速度ダイヤルと同軸に配置。変更操作時に外周部を引き上げた状態でロックされ、自然に戻らない仕様となった。任意の感度に設定し、外周部を戻せばISO感度の設定が完了する仕組みだ。

レンズが刷新された

X100Vではこれまでのモデルと数値上のスペックは同じながら、新たに設計されたレンズが搭載されている。

レンズ銘に“II”の文字が追加されている

レンズ構成は非球面レンズを2枚含む6群8枚となった。最短撮影距離は約10cm。

このレンズ設計刷新の理由について、同社は裏面照射型のCMOSセンサーX-Trans 4の性能を引き出すため、と説明。これまで搭載してきたレンズは有効約1,230万画素だった初代X100(FinePix X100)に合わせて設計していたもので、センサー性能を引き出せなくなったことが新設計の理由だという。

新しいレンズは、画質を向上させるとともに同じサイズに収めることを目標に設計された。内蔵のNDフィルターもユーザーの要望から1段強くかかる4段分の減光にしたという。

前モデルとの比較

この解像力の向上については、“解像していないものを解像させることはできないが、(像を)にじませるならばフィルター等がある。センサーの性能を引き出せる高性能なレンズに”した、との説明があった。しっかりとセンサーの性能を引き出せるレンズに仕上げることが、まず第一義としてあったのだそうだ。

防塵防滴にも対応

X100Vでは、アダプターリング「AR-X100」とプロテクトフィルター「PRF-49」との併用が必要という条件がつくものの、X100シリーズとして初めて防塵・防滴構造となった。シーリングは約70カ所に施されているという。

X-Pro3と同等の撮影性能を

X100Vでは、ファインダーの光学ガラスやEVFパネルも刷新されている。OVFの視野率は約95%(倍率は0.52倍)、EVFは369万ドット(倍率は0.66倍)となっている。参考までに前モデルX100Fのファインダー性能を見るとOVFは視野率約92%(倍率は0.48倍)、EVFは約236万ドット(倍率は0.64倍)となっている。さらに、X-Pro3を見てみると、OVFの視野率は約95%(倍率は0.52倍)、EVFは369万ドット(倍率は0.66倍)となっている。0.5型の有機ELファインダーという点も含め、ファインダーのスペック値はX100VとX-Pro3で同等となっていることがわかる。

このほか撮影機能では、X-Pro3で搭載されたフィルムシミュレーション「クラシックネガ」が追加されている。また、カラークローム ブルー機能や、X-T3などでも搭載されている機能だが、カラークロームエフェクトも搭載している。

以上見てきたように、X100Vでは同社最新モデルであるX-Pro3の撮影性能が惜しみなく投入されていることがわかる。これらにより、ひろく富士フイルムXシステムの魅力を楽しんでもらえるカメラに仕上げているのだという。同社の“ゲートとなるカメラ”、とはそうした意味からきているというわけだ。

本誌:宮澤孝周