Nikon Z 7IIに決めた理由

精密な描写と広いダイナミックレンジが、美しい地元の魅力を伝えてくれる…対馬慎太郎さん

撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 20mm f/1.8 S / マニュアル露出(F8.0、1/800秒) / ISO 64

2020年12月11日に発売となった「Nikon Z 7II」(以下Z 7II)。ニコン初のフルサイズミラーレスカメラ「Nikon Z 7」の後継機だ。4,000万を超える高画素記録という基本コンセプトは踏襲しつつ、さらにCFexpress&SDのダブルスロットを搭載するなど進化。NIKKOR Zレンズのラインナップも充実してきた。

このZ 7IIを写真家の対馬慎太郎さんに使ってもらい、使い心地や性能についてうかがった。青森に拠点を構え、会社員と写真家を兼業する対馬さんの目に、Z 7IIはどう映ったのだろうか。

対馬慎太郎

(プロフィール)1994年生まれ、青森県出身。青森が好きで自身を「青森の絶景カメラマン」と称し写真活動をしている。絶景があふれる青森を多くの人に知ってもらうべく日々SNSなどで発信している。

Nikon Z 7II


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青森の魅力を知ってほしい

——写真家になったきっかけを教えてください。

以前から写真が好きで、気になったシーンをカメラで撮影していました。そんな中でInstagramにプロの写真家の方々が投稿した写真を見たり、青森で個展を見たりして、自分の写真との違いに驚いたのです。「自分でもこんな写真を撮りたい」と思って、カメラを買ったのがきっかけです。

最初に買ったカメラは、ニコンのD3300です。その後D750に買い替えました。現在はNikon Z 7も使用しています。ニコン一筋ですね。その上で今回、Z 7IIを試用させていただきました。

冬の青森はどこに行くにしても寒いですし、雪で結露したりもするので、耐寒性能がとても大事になります。その点、周囲の誰からもニコンのカメラでエラーや動作不良の話を聞ききません。実際に-13度の環境下で使っても何も問題がありませんでした。そういう点でもニコンを選んでよかったです。

——青森県出身の対馬さんは当初、青森の観光事業に従事されていたとお聞きしました。

みなさんが知らない青森の魅力を知ってもらいたい、という思いがありました。例えば青森で有名な「ねぶた祭り」。実は県内の各地方で形式が少しずつ違います。

また旅行先で登山をすることはあまりないでしょうから、岩木山に登って景色を楽しむ、というちょっと変わった観光をご提案したりします。山頂から見る夜景もとてもきれいで、穴場撮影スポットのひとつでもあります。そういった想いを伝えるために、カメラは最適なツールだったんです。

カメラを持つ前後では、僕自身も青森の見方が変わりました。以前は夜中の2時に出かけて雲海を撮影してそのまま出社、なんてことは考えもしませんでした(笑)。風景がもっとも美しく見える時期、時間はいつなのか……青森の風景に対する考えた方は、カメラを始めてから大きく変わりました。

——カメラの進化は対馬さんの写真や、「青森の魅力を伝える」ことに影響を与えていますか?

Zシリーズになってからより洗練された印象を受けています。特に感じたのは、プリントした時です。写真展を開催した時、Z 7IIで撮影した写真は、A2サイズでプリントしてもきめ細やかさが失われず、さらに大きくプリントしても問題ないだろうと思いました。それだけのクオリティで撮影できれば、青森の魅力もより伝えることができると思います。

画素数が増えると、手ブレが目立ちますが、NIkon Zのシステムは手ブレ補正が非常に優秀なので問題ありません。手ブレ補正は動画でも役立ちます。

例えばこの動画、青森の尻屋崎という場所に寒立馬(かんだちめ)という馬がいて、その馬をジンバルなしの手持ちで撮影しています。

200mmの望遠域でここまでブレのない動画になるとは思いませんでした。記録画質も申し分なく、静止画で親しんだニコンらしい色味もそのまま動画に継承されています。「ニコンの写真が動いている」ような感覚ですね。新しいファームウェアで可能になったRAW動画の撮影もいずれはしてみたいです。

——青森の寒い環境下の撮影だと、バッテリーの耐久性が気になります。

バッテリーの減りについては、Z 7を購入した時に気にしていました。ただ、「ミラーレスのバッテリーはすぐなくなる」と聞いていたほどのものではなく、一眼レフとあまり変わらず使えています。通常の環境下ですと、バッテリーは1本で十分持ちます。念のために予備のバッテリーは持っていますが、それを使うことはほとんどありません。

——Z 7IIはUSBによる給電が可能になりました。いざとなればモバイルバッテリーで充電できますようね。

僕が持っているすべてのモバイルバッテリーで使用できるのを確認しています。いずれ実践投入したいです。

シャープな描写とノイズの少ない高感度画質

——ではZ 7IIで撮影された作品の話をお聞かせください。まずはこの天の川の写真から。

撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 20mm f/1.8 S / マニュアル露出(F1.8、15秒) / ISO 2500

インターバルタイマーで撮影したタイムラプスの素材の1枚です。NIKKOR Z 20mm f/1.8 Sの画質は素晴らしく、四隅まで星がくずれず点として描写しています。

感度はISO 2500。かなりの高感度ですがノイズはまったく気にならず、ノイズが乗りがちな白色もきれいなままで、雪の質感が残っていることに驚きました。


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——続いては、こちらの山小屋を写した写真です。

撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 20mm f/1.8 S / マニュアル露出(F1.8、15秒) / ISO 800

朝方の雪山の中で撮影しました。まだうっすらと空に星が残っており、そこにピントを合わせています。僕は20mmの画角がちょうどいい、と思っています。16mmなどの超広角では散漫となり、50mmだと狭すぎる。この写真は20mmらしいバランスを取ることができました。

Z 7IIの画質もいいですね。夜明け直前の空のグラデーションが淀みなく表現されており、雪の階調も保たれています。データの残り方が非常に緻密で、レタッチもしやすいですね。


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撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S / マニュアル露出(F2.8、1/800秒) / ISO 64

こちらは岩木山を遠景から撮影した写真です。拡大すると山肌に生えている木の1本1本が精密に描写されています。これをみて、「どれだけ大きいプリントができるんだろう」と思いました。影になっている部分もつぶれていません。

また、この写真の中には白い部分が多いですが、空の白、山の雪の白、地面の雪の白と、同じ「白」でもそれぞれの色がはっきり区別することができます。といってもギラギラに強調されているわけでもない、繊細な諧調表現だと思います。

一番重視したのは、木々が黒つぶれしないことと、雪が白とびしないことです。相反することを意識したので、ダイナミックレンジを両方ともギリギリまで見極める必要がありましたが、最終的に自分の思い通りの露出で撮影できました。


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撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S / マニュアル露出(F7.1、1/160秒) / ISO 64

これは「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」で撮影した写真です。20mmと同じかそれ以上の描写力があり、雪の質感がすべて残っています。太陽が画角内に入っているため完全に逆光になっていますが、雪のグラデーションはきっちり残っていますし、フレアやゴーストも出ていません。コントラストが高くなりがちなシーンですが、階調が保たれ、色もはっきりと残っています。シャドウ部のノイズもほとんどわからないですよね。


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これは木の表皮を「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」で撮影した作品です。レンズ先端から被写体までの距離が30cm程度と近く、マクロレンズを使わずにここまで寄れるようになると、望遠マクロレンズの代わりになるのでは、と思いました。かつ、手ブレ補正も強力なので、手持ちで撮影できます。

撮影:対馬慎太郎
Nikon Z 7II / NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S / マニュアル露出(F2.8、1/40秒) / ISO 64


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——NIKKOR Zレンズの信頼性・操作性はいかがですか?

雪の中でも問題なく使えますし、エラーなど起きたことはありません。そのあたりの信頼性はFマウントレンズと変わらないですね。

意外と使っているのは表示パネルです。撮影情報が表示されるのはもちろんのこと、焦点距離が明確な数字で確認できることが嬉しいですね。「30mmピッタリ」などキリのいい数字で撮影したいので(笑)

「フォーカス位置の記憶」も使いこなしてみたいですね。MFで合わせた際のピント位置を、電源を切っても記録しておく機能です。電源を切るたびにピントを合わせ直す手間が省けるので、撮影効率のアップにつながると思います。

ジンバルを使って動画を撮影する対馬さん。雪山でも信頼性は高い

——ボディ側の操作性はいかがですか?

ニコンの一眼レフからボタンの配置が変わりましたが、個人的には違和感なく操作できました。右手だけでほとんど解決できるので、レスポンスが求められる撮影でありがたいです。どのボタンがなんの機能が持っているか、容易に想像できるのが要因だと思います。

ボディは全体的に小さくなりましたが、グリップはむしろ深くなっていて、より握りやすくなった印象があります。若干高さがなくなり、手が大きいと小指が浮いてしまいますが、バッテリーグリップがあればそれも解決です。

——電子ビューファインダーと背面液晶モニター、どちらの方が使う頻度が高いですか?

手持ち撮影ではファインダー、三脚撮影ではライブビューです。撮影設定が撮影された画面が両方に表示されるのがありがたいですね。なおかつ、画質が高いので写真の完成がはっきりイメージできます。最初の1、2枚で露出や色を探る、という無駄なショットがなくなりました。

それとファインダーの視野率が100%になったのも、密かに嬉しいポイントです。一眼レフは100%ではない機種もありましたから。

液晶モニターのチルト機構もよく使います。肉眼で景色を見るときと、ライブビューで写真の画角として見るときとでは、イメージがやや違うんですよね。写真の画角を見たい時には、チルトで画面を上下に向けて見ます。その時は、Z 7IIから可能になった表示情報の完全OFFを活用して、隅々まで構図を確認します。チルト時にファインダーが反応しないよう設定できるようになったのもいいですね。チルト機構は動画でもよく使います。

——サイレント撮影機能は使いますか?

ほとんどすべての撮影で使っています。一眼レフではシャッター時の振動でブレが起きることを気にしていました。ミラーレスでサイレント撮影を使用することで、その心配から解放されました。これだけ画素数が上がり、レンズ描写もシャープになったわけですから、わずがなブレが命取りになります。サイレント撮影は大事な機能といえるでしょう。

——メモリーカードは何をお使いですか?

CFexpressは撮影時のレスポンス、撮影後のパソコンでの作業、データの堅牢性など、XQDから比べて大きく改善されました。画素数が多くなったぶん、データ容量も大きくなるので、カードの速度は大切です。値段相当分の見返りがあると思います。

——ミラーレスカメラへの移行についてご自身の印象をいただけますか?

実はミラーレスカメラを導入するか、結構迷っていたました。ですが導入してみてわかったのは、荷物量が格段に減ったことです。なおかつ、描写力は一眼レフ以上。Z 7IIのより美しい描写を手に入れたい方には本当におすすめしたいですね。

取材を終えて

青森には筆者も何度か訪れたことがあり、奥入瀬渓流、十和田湖、弘前城などを巡ったことがある。当時はまだカメラの知識がほとんどなく、写真を見返しても、そこに筆者が感じたはずの美しい景色は残されていなかった。

撮影が楽しくなり、技術が向上すると、普通に見ているだけでは見えなかった景色が見えるようになる。地元に生まれ、観光業に従事して地元の魅力を再発見し、カメラによって地元の新たな一面を見出した対馬さんも、その好例だろう。そしてカメラの機能が向上すれば、それらの魅力をより伝えやすくなる。生まれ故郷の魅力を発信したい対馬さんの気持ちに、Z 7IIが十二分に応えていることがよくわかるインタビューだった。

制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。