中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第12回「四日市あすなろう鉄道」

現代に残る、奇跡のナローゲージ風景

沿線随一と言っても良い、田んぼと電車を撮れるポイント。ちょうどサルスベリの木があったので、青空と薄紫の花を入れてパチり。とても爽やかな田園風景に見えますが、実際はかなりの市街地です。
ライカSL2 VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/24-90mm ASPH. (24mm) 絞り優先オート (F13、1/200秒) ISO 800 WB:太陽光 [Google Maps]

僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介します。

12回目となる今回は、「ナローゲージ」と呼ばれるかわいい電車が走る四日市あすなろう鉄道をご紹介します。ナローゲージとは、一般的な鉄道よりも線路の幅が狭い鉄道のことで、新幹線の線路幅が1,435mmなのに対し、四日市あすなろう鉄道の線路幅はなんと762mm! 約半分の広さしかありません。そのぶん車両のサイズも小さく、走る姿も実にフォトジェニックなのです。

簡易的に鉄道路線を開業できるため、昔は全国各地にナローゲージがありました。しかし次々と廃止になり、現在は専用軌道などをのぞき3社4路線しか残されていません。高速列車が行き交う現代に、トコトコとナローゲージが走る風景は、まさに奇跡の鉄道風景なのです。


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (132mm) 絞り優先オート (F5.6、1/200秒) ISO 400 WB:日陰

四日市あすなろう鉄道は、近鉄四日市駅に隣接するあすなろう四日市駅から出発します。内部線と八王子線の2路線を持ちますが、両路線を合わせても5.7kmしかありません。

写真は両路線が分岐する日永駅の様子。狭い線路をまるで遊園地のおとぎ電車のような車両が行き来する風景は、とても現代の鉄道風景とは思えません。ここではあえて手前の標識を入れて、ゆるい雰囲気で撮影してみました。


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (117mm) 絞り優先オート (F3.1、1/160秒) ISO 400 WB:太陽光

通常の鉄道に比べて、かなり小さくて狭い車内。運転士さんと子供のサイズを見ると、車両の横幅がかなり狭いのがわかると思います。僕のような巨漢が両手を広げると、壁に手がつきそうなくらい可愛いサイズなのです。


ソニーα7R IV FE 16-35mm F2.8 GM (24mm) 絞り優先オート (F2.8、1/1,600秒) ISO 12800 WB:日陰

四日市あすなろう鉄道には、とてもユニークな「シースルー列車」が運行されています。これは車両の床を強化ガラスでシースルーにすることで、ナローゲージならではの小さい車輪が動く様子や、流れる線路や枕木を観察することができます。ふだんは見られない景色が見えることもあり、子どもたちは大喜び。僕は大人なので、同じ姿勢でずっと床にひれ伏して見たい気持ちを必死に我慢しました(笑)これはもう鉄道というより、アトラクションですね。


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (118mm) マニュアル露出 (F8、1/1600秒) ISO 800 WB:太陽光

正直に言いまして、沿線風景はあまりフォトジェニックではありません。風光明媚な田園風景や、のんびりした里山の風景もほとんどなく、新興住宅が建ち並ぶ市街地のなかをのんびりと走ります。まぁだからこそ、この奇跡のような電車が走り続けていられるのですが……。というわけで、狙いは「現代の風景の中をナローゲージが走る違和感」に絞られます。

ここは、あすなろう四日市を出てすぐの市街地。両側を道路に囲まれた細い線路のうえを、可愛い電車が走る姿は、もう違和感バリバリです。これはある意味、絶景だと思いません?


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (152mm) マニュアル露出 (F6.3、1/800秒) ISO 800 WB:太陽光

こちらは鈴鹿山脈と内部線を撮影する、数少ない風景撮影ポイント。日永駅で八王子線と分岐してすぐに渡る、天白川の鉄橋が撮影地です。めずらしく背景にビルなどがないのですが、鉄橋の壁が高く、車両が半分以上隠れてしまうのが残念なところ。車両が小さすぎるのも問題だなぁ。


ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (274mm) 絞り優先オート (F5.6、1/500秒) ISO 800 WB:日陰

とにかく風景が開けた場所はほとんどないので、線路脇を歩きながら細い路地を探していきます。畑のおじさんに許可をいただいて田んぼを狙っていたら、猫ちゃんが現れたので咄嗟に構図を変えて撮影。

こういう予期せぬ被写体との出会いを探すのも、スナップ撮影の醍醐味かもしれません。本人(猫)は低い姿勢になって隠れているつもりみたいですが、丸見えなのが可愛い!


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (280mm) 絞り優先オート (F4、1/800秒) ISO 800 WB:日陰

内部線の終着駅である内部駅は、どんどん広がる市街地に飲み込まれるように佇んでいました。子どもたちと電車を見に来たお父さんがいてくれたおかげで、とってもほんわかした雰囲気になりました。

なんの変哲もない現代の街も、線路のまわりだけは時が止まったような優しい時間が流れているから不思議です。


ライカSL2 VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/24-90mm ASPH. (35mm) 絞り優先オート (F5.6、1/1,000秒) ISO 400 WB:太陽光

こちらは八王子線の田園風景……だったところ。数年前までは田んぼとか畑が広がっていたのですが、どんどん住宅が増え、線路以外の風景は激変しています。八王子線は、分岐駅である日永駅の次がもう終着駅の西日野駅。たった1.3kmのちいさな旅なのです。


ライカSL2 APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm (100mm) 絞り優先オート (F5.6、1/400秒) ISO 400 WB:太陽光

八王子線という名称は、この先に続いていた伊勢八王子駅に由来するもの。昭和49年に天白川の水害により不通となり、そのまま廃止されたことで、この西日野駅が終着駅となりました。いかにも途中で分断されたという感じの線形が、哀愁をそそります。

何度も廃止の危機を乗り越え、激変する風景の中を走り続ける四日市あすなろう鉄道は、まさに不死鳥のような奇跡の鉄道でした。鉄道に興味がある人もない人もぜひこの可愛い電車に会いに行って、この可愛い電車を応援してあげてくださいね。

中井精也からのお知らせ

ゆる鉄画廊NOMAD開催情報

「ゆる鉄画廊NOMAD(ノマド)」は、中井精也が撮影した鉄道写真作品を展示・販売いたします。作品をさまざまな種類の額に入れて販売するほか、ここでしか買えない書籍やポストカード、グッズなどを販売いたします。また直筆サインや、記念写真撮影など、中井精也本人とふれあえる貴重な機会ですので、ぜひお越しください。

・ゆる鉄画廊NOMADホームページ
https://garou.ichitetsu.com/

・中井精也ツイッター
https://twitter.com/railman_nakai

<開催予定一覧>
【第20回】ゆる鉄画廊NOMAD湘南江の島
湘南モノレール主催イベント「第1回モノレールサミット」にゆる鉄画廊NOMADが出店いたします。会場は湘南モノレールの終点湘南江の島駅のビル内です。

中井精也の特別講演会も開催予定!今回もおなじみゴージャスなメンバーの方々も登場です!講演会等の詳細が決まりましたら、ブログでご案内いたします。

・ゆる鉄画廊NOMAD湘南江の島
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12781164269.html

・湘南モノレール公式HP
https://www.shonan-monorail.co.jp/event/2022/11/monorail-summit_01.html

期間:2023年1月21日(土)、22日(日)10時〜16時
会場:湘南モノレール湘南江の島駅構内

第2弾!「ゆる鉄画廊コンビニエンス」

eプリントサービスにて、全国のコンビニに設置してあるマルチコピー機で鉄道写真家 中井精也の作品をプリントできるようになりました。プリント絵柄や操作方法に関しては、リンクからご覧ください。

今回は待望の第2弾!前回にご要望が多かった絵柄を中心にリクエストとして新たなカテゴリーを設置しました。お正月は、ぜひプリント・額装してお部屋に飾ってね。絵柄は今後も増えていく予定です。

・ゆる鉄画廊コンビニエンス
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12781447676.html

・eプリントサービス
https://www.e-printservice.net/content_detail/yurutetsugarou

写真紙Lサイズ:400円
写真紙2Lサイズ:800円

※ねこ鉄はランダムプリントになります。
※一部店舗ではご利用できない場合があります。
※2Lサイズプリントはセブン-イレブンでは取り扱いがございません。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/