中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第11回「天竜浜名湖鉄道」

国鉄時代の雰囲気が魅力! オススメ撮影スポットを紹介

天浜線は全長67.7kmの路線ですが、そのなかに36件にも及ぶ登録有形文化財があります。とくに天竜二俣駅に隣接する旧機関区周辺は、文化財の宝庫なのです。こちらは、昭和15年製のターンテーブル(機関車転車台)です。もともとはSLがバンバン走っていた路線なので、牽引する蒸気機関車の進行方向を変えたり、隣接する扇形庫に留置するためのターンテーブルが大活躍していました。当時は手動でしたが、現在は電動化されています。背後には機関車扇形車庫も健在です。
ソニーα7R IV FE16-35mm F2.8 GM (17mm) 絞り優先オート (F6.3、1/800秒)ISO 400 WB:日陰 [Google Maps]

僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介します。

11回目にご紹介するのは、静岡県を走る天竜浜名湖鉄道、通称「天浜線」です。その名称から浜名湖と列車を撮れるポイントがたくさんありそうなイメージですが、列車と道路が並走している区間が多く、撮影地探しの難易度は高めなのが実情。しかし、沿線を丁寧に観察すると、天浜線の前身である国鉄二俣線時代の旅情が点々と残されている、とっても魅力的な路線なのです。


ソニーα7R IV FE16-35mm F2.8 GM (19mm) 絞り優先オート (F2.8、1/2500秒)ISO 400 WB:日陰

最初にご紹介するのは原谷駅。ずっと「はらや」駅と読んでいたのですが、正しくは「はらのや」駅と読みます。地名の読みって難しいですね。この駅は派手さこそないのですが、国鉄末期の雰囲気をむんむんと残している味わいのある駅です。木製の改札口も現役で、最高に絵になります。国鉄時代をイメージしたカラーリングの車両とあわせて撮影したら、昭和にタイムスリップしたかのような作品になりました。


ソニーα7R IV FE24-70mm F2.8 GM (29mm) 絞り優先オート (F2.8、1/160秒)ISO 3200 WB:日陰

続いては戸綿駅の近くにある太田川橋りょうです。とてもシンプルな鉄橋ですが、実は2011年に登録有形文化財(建造物)に指定されている貴重なもの。こういう文化財がゴロゴロとあるのが、天浜線のスゴいところなのです(笑)。

このように列車をシルエットにするシーンでは、できるだけ空の明るい部分に列車を置くことが重要。ここでは雲がなく明るい空の部分に列車を配置することで、車両が夕焼けに浮き立つように工夫してみました。こういう撮影ではつい三脚にカメラをつけたままにしてしまいがちですが、夕方の時間帯は数分で条件が大きく変化するもの。状況にあわせて、こまめに移動しながら最適な位置を模索することが大切です。


ソニーα7R IV FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (400mm) 絞り優先オート (F5.6、1/4,000秒)ISO 1600 WB:日陰

川を見下ろせる鉄橋は鳥たちにはおあつらえ向きの見張り台なのか、ず〜っとサギがとまって魚を狙っていました。そこでサギを主題として、列車が来たらどうなるかワクワクしていたら、列車の接近とともに華麗に飛び立ち、意外にもドラマチックな写真になりました。


ソニーα7R IV FE16-35mm F2.8 GM (20mm) マニュアル露出 (F2.8、1/1250秒)ISO 3200 WB:日陰

続いては河川敷に咲いていたキバナコスモスを入れて撮影。コスモスを基準とした露出にすると、夕焼け空が飛んでしまうので、列車がシルエットになる露出を確保しつつ、階調補正機能(DRO)を最大値までかけて、テストしながら花が黒つぶれしないギリギリの露出を模索しました。まるで絵画のような、メルヘンチックな一枚に仕上がり、気に入っています。


ソニーα7R IV FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (339mm) 絞り優先オート (F6.3、1/800秒)ISO 400 WB:日陰

遠江一宮駅も味わい深い木造駅舎が健在。さらに構内がカーブしているので、円田駅側の踏切付近から安全に撮影できるのも嬉しいところです。駅舎はそば屋さんになっていて、行列ができるほどの大人気だとか。やってきたのは、昔の東海道線をイメージした懐かしいカラーリングの「Re+(リ・プラス)」号。国鉄時代の東海道線を彷彿とさせるカラーは、天浜線沿線名物のお茶の葉とみかんをイメージしているそうです。木造駅舎に湘南色。国鉄おじさんである僕は、まんまと大興奮(笑)させてもらいました。


ソニーα7R IV FE24-70mm F2.8 GM (42mm) マニュアル露出 (F5、1/2,000秒)ISO 400 WB:太陽光

遠江一宮駅から敷地駅方面に進むと、突然斜面に大規模なお茶畑が現れます。ここでは高い位置から見下ろすように、立体的な茶畑と列車を撮影することができます。茶畑はどこでもそうですが、霜取り用の扇風機をいかに目立たなくするかがポイントでしょう。斜面の形状にさからわずにくねりながら続く茶畑が、静岡らしくていいなぁ。


ソニーα7R IV FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (105mm) 絞り優先オート (F6.3、1/320秒)ISO 400 WB:日陰

こちらはそのまま映画のセットに使えそうな運転区事務室。昭和15年製ですが、現在でも1階が運転司令室、2階が会議室としてバリバリ現役なのがスゴい! ちなみに手前の腕木式信号機は使われておらず、飾りです。懐かしい色調にして、前ボケ&ナナメで、レトロチックに表現してみました。


ソニーα7R IV FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (100mm) 絞り優先オート (F6.3、1/200秒)ISO 400 WB:日陰

この運転事務室の裏が、しびれる風景になっています。ナッパ服が無造作に干してあるところが、昭和の機関区の雰囲気ムンムンでしびれました。植え込みにキレイに洗濯された軍手が干されているのも最高! ちなみに奥に写っている「運転区高架貯水槽」も有形登録文化財。こちらも昭和15年製で、現在は使用されていないものの、キレイに保存されています。いかにもSLがいた機関区って感じで、こちらもたまりませんね。これらの施設を見学できる「転車台&鉄道歴史館見学ツアー」を天竜二俣駅にて開催中。詳細は以下URLでご確認ください。

・天竜二俣駅 車両基地を見に行こう!
https://www.tenhama.co.jp/events/9349/


ソニーα7R IV FE16-35mm F2.8 GM (18mm) 絞り優先オート (F5.6、1/3,200秒)ISO 400 WB:太陽光

続いては天竜川橋りょう。1940年に完成した天浜線最長となる鉄橋で、こちらも登録有形文化財(建造物)に登録されています。天竜川が途方もない年月をかけて刻んだと思われる、ゴツゴツした岩の造形を主題として構図をつくりました。雲ひとつないお天気のせいか、どこか現実感のないほかの惑星の風景みたい(笑)カラフルな車両が、青空に映えてくれました。


ソニーα7R IV FE24-70mm F2.8 GM (31mm) 絞り優先オート (F5、1/800秒)ISO 400 WB:太陽光

意外にも浜名湖と列車を撮れるポイントがほとんどない天浜線において、僕がもっともオススメするポイントがコチラです。寸座駅に近い山の斜面にある林道から見下ろすこのポイントからは、寸座駅と湖畔ののんびりした風景を見下ろすことができます。線路の手前には国道があるのですが、手前の木々を重ねて目立たなくしています。


BEST SHOT
ソニーα7R IV FE24-70mm F2.8 GM (30mm) マニュアル露出 (F10、1/640秒)ISO 800 WB:太陽光

尾奈駅を出ると列車は浜名湖を離れ、みかん畑の中をのんびりと走ります。ここは僕が天浜線で一番の絶景ポイントだと思っている場所。全国的にも有名な三ヶ日みかんがたわわに実っていて、実に静岡らしい絶景になったこの一枚が、天浜線のBEST SHOTです。手前にみかんの木を大きく入れた構図にしていますが、ピントは列車に合わせています。

天浜線の前身である国鉄二俣線は、かなり晩年までSLが活躍していた路線。せっかくならここでSLが撮れると最高なんだけどなぁ。ターンテーブルも健在だし。近くにある大井川鐵道からレンタルできないかしら(笑)。

他の路線に比べて、撮影するひとが少ない印象の天浜線。まだまだ隠された手つかずの名景がたくさんあると思いますので、ぜひとっておきの撮影地を探してみてくださいね。

中井精也からのお知らせ

1日1鉄!カレンダー2023

毎年好評の中井精也オリジナルカレンダー「1日1鉄!カレンダー」が絶賛販売中です。今年も最新作品を中心に中井精也が見つけた絶景やゆるい鉄道風景を掲載いたしました。ぜひお部屋に飾ってね。ゆる鉄画廊NOMADの店頭やAmazonで販売中です。

壁掛けカレンダー
壁掛けタイプ/見開きA2相当/本文26ページ/フルカラー/日曜始まり/価格2,200円(税込)※裏表紙にサイン付き
卓上カレンダー
卓上タイプ/B5相当サイズ/表:全面カレンダー(メモ欄付)/裏:写真作品+1行カレンダー/価格1,500円(税込)

ゆる鉄画廊NOMAD開催情報

「ゆる鉄画廊NOMAD(ノマド)」は、中井精也が撮影した鉄道写真作品を展示・販売いたします。作品をさまざまな種類の額に入れて販売するほか、ここでしか買えない書籍やポストカード、グッズなどを販売いたします。また直筆サインや、記念写真撮影など、中井精也本人とふれあえる貴重な機会ですので、ぜひお越しください。

・ゆる鉄画廊NOMADホームページ
https://garou.ichitetsu.com/

・中井精也ツイッター
https://twitter.com/railman_nakai

<開催予定一覧>
【第19回】ゆる鉄画廊NOMAD岐阜2

2022年12月15日(木)〜18日(日)にかけて岐阜のフォトギャラリー「pieni onni」にてゆる鉄画廊NOMAD岐阜2を開催いたします。開催期間中の4日間は、もちろん中井精也は在廊しております。

中京圏ゆかりの絵柄の作品をはじめ、中井精也の代表作品も展示販売いたします。皆様、ぜひお越しくださいっ!

<ゆる鉄画廊NOMAD岐阜2>
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12775609891.html

期間:
12/15(木)14時〜18時
12/16(金)10時〜18時
12/17(土)10時〜18時
12/18(日)10時〜17時
会場:フォトギャラリー「pieni onni」
〒500-8178 岐阜県岐阜市清住町2-4-2 大一グリーンビル1F
https://www.pieni-onni.com/

さらに、NOMAD後の翌日12/19(月)には、貸切バスを使った写真教室も開催いたします。撮影地まで直行できるバスで楽々移動。一緒に高山本線を撮影しましょう!

実施日:2022年12月19日(月)
参加費:29,800円(税込)現地集金
定員:先着20名様
集合:朝9時20分 JR岐阜駅中央改札口前

<ゆる鉄画廊NOMAD岐阜写真教室>
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12777872798.html

それ以外にも、様々な場所でNOMADを計画しておりますので、詳細が決まりましたらご案内いたします。皆様の街へ「ゆる鉄画廊NOMAD」は出張いたしますので、近くに来た際には、ぜひお越しくださいね。

※場所・営業時間など詳細は決まりましたら、メルマガやブログでお知らせいたします。
※スケジュールは変更になることもあります。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/