熱田護の「500GP-Plus」
第7回:1996年 ベネトンに移籍したジャン・アレジ
2020年10月1日 06:00
オーストラリアグランプリ、メルボルン。僕は自慢してもいいくらい、クラッシュシーンには出くわさないんですが、この時は、知り合いのカメラマンに誘われて、この場所に行ってしまった結果が、この1枚。
クラッシュをあえて狙いに行くというのは心情的にどうしても前向きにはなれません。どうしてもドライバーの気持ちになって考えてしまいますからね。画面右に見える白いボケはフェンスです。スタートの3コーナー。ちょっと、ビックリしましたが、カメラを手にしていると、シャッターを押してしまいますね。これはカメラマンとしての性(さが)としか言いようがありません。
イモラ・サーキット。撮影している2年前の悪夢が蘇る悲しい思い出のサーキットですが、美しいコースレイアウトで綺麗なサーキットでもあります。直線とシケインが交互にやってくる、いわゆるストップ・アンド・ゴータイプのレイアウト。
アクアミネラーレの朝。今年、久しぶりにF1が復活開催されます。
ジャン・アレジ選手がエンジン始動の合図をする、その左手を狙います。挙げるのはほんの一瞬なので、何度も失敗しています。
アレジ選手とは、この当時も、今もよく話します。というか、僕の英語レベルに合わせて、ゆっくりと話してくれるのです。奥さんが日本人タレントの後藤久美子さんということもあって、日本人に優しく接してくれることもあったのだと思います。そうしたこともあって、大好きなドライバーの1人です。
この年、フェラーリからシューマッハ選手の代わりにベネトンに移籍したのがアレジ選手です。ちょうど、チームが入れ替わったような形になります。この年は総合ランキングで4位。2位入賞が4回もあったのですが、それと同時にリタイアも5回ほど、ありました。2度目の優勝という可能性もあっただけにとても残念です。ひいき目な見方かもしれませんが、運が味方してくれることが少なかったという印象です。
ポルトガル、エストリル・サーキットのテスト。夕日の時間、コーナーの立ち上がりに日陰になる場所があって、その場所でカウルにヌメッとした天空が映り込む瞬間を撮りました。
600mmの超望遠でアレジ選手の目にフォーカスした1枚。ブルーアイズがとても綺麗です。
コクピットに座っているアレジ選手。このように、僕が正面に立って狙っていると目線をくれることが数多くありました。ある時、マシンから外に向かって手を振ってくれたことがあって、誰に振っているんだろうと思って、僕も後ろを向いたのですが、誰もいなくて、「お前だよ!」って指を差されたことがあります。自身のレース前なのに、カメラマンのことまで気にしてくれる、優しいナイスガイです。しかし、一度レースとなればアグレッシブな予選のアタックラップなど、攻撃的な一面も持ち合わせていて、そういう部分も愛されている大スターの1人でした。
ベネトンのメカニックさんが、僕の600mmを貸して欲しいと言ってきました。代わりばんこで、皆さん同じ方向を覗くのです。何をしているのでしょうか? そのファインダー越しに見えたのは、なんと向かいの観客席にいた可愛い女の子でした!
お役に立てて光栄です!
レース後のパルクフェルメに収まっていたマシン。そのノーズのオイルが戦った証となって、鈍く光を放っていました。