熱田護の「500GP-Plus」

第6回:1996年 シューマッハと二世コンビ

EOS-1N HS EF200mm F1.8L USM(F5.6・1/500秒) コダクローム(以下KR)

1996年シーズンは伝説のドライバー、ジル・ヴィルヌーヴの息子であるジャック・ヴィルヌーヴがウィリアムズへ、さらにはグラハム・ビルの息子のデイモン・ヒルが2世コンビを結成したことが話題の中心だった。そして、2年連続のチャンピオンになった、ミハエル・シューマッハはベネトンを去り、名門フェラーリへ移籍。チャンピンと二世コンビの戦いがどのように展開されるのかが、ファンの注目の的だった。

サンマリノGP、イモラサーキットのトサコーナーのお客さん。観客席は超満員! 全員、フェラーリの応援、まさに圧巻の景色です。現在のイタリアGPもお客さんがスタンドを埋め尽くしますが、ここまでの熱気ではありません。

EOS-1N HS EF600mm F4L USM(F5.6・1/500秒) KR

ベネトンからフェラーリに前年チャンピオンのミハエル・シューマッハ選手が移籍。チームメイトには、エディー・アーバイン選手。期待は高まるものの、チーム体制もマシンも常勝というレベルには至らず、3勝をあげたのみ。でも、あのシューマッハ選手だからやってくれるに違いないと、イタリア、ドイツのファンは盛り上がります。

EOS-1N HS EF600mm F4L USM(F5・1/500秒)KR

シューマッハ選手のフェラーリでの初優勝はスペインGP。この日のコンディションは雨でした! 選手からしたら、悪コンディションなのかもしれませんが、私は大好きな雨ということで、ついついコースに長居してしまって、パルクフェルメは諦めてスタジアムセクションで手を上げてくるのを待ちました!

結果、良いカットが撮れて一安心……。

EOS-1N HS EF17-35mm F2.8L USM(F5.6・1/250秒)KR ストロボ

そんな絶大な人気者のシューマッハ選手を迎えるべく、1996年はドイツで2回開催したのも当然という雰囲気でした。この写真はニュルブルクリンクで開催されたヨーロッパグランプリ。プレスルームで行われた記者会見の後に、ここに出てくるに違いないとヤマを張って成功した例です。もちろん、失敗もたくさんあります。

EOS-1N HS EF200mm F1.8L USM(F32・1/15秒)KR

モナコグランプリ、最高速でトンネルから出てシケインの入り口に向けて減速している途中の1コマ。橋の上から身を乗り出して真俯瞰を狙える場所ですが、なかなか、うまく撮ることができません。帰国して、ライトテーブルで確認して反省し、来年こそは! と強く心に刻み……そうして、いったい何回繰り返せば納得するのだろうかと自分でも時々わからなくなります。

EOS-1N HS EF17-35mm F2.8L USM(F8・1/250秒)KR ストロボ

ブラジルグランプリのグリッドに付いてマシンを降りるシューマッハ選手。外でマシンの乗り降りを間近で狙える唯一のチャンスがレース日のグリッドです。大好きで貴重な時間です。

EOS-1N HS EF600mm F4L USM(F11・1/500秒)KR

ブラジルグランプリ、インテルラゴスサーキットの最終コーナーの登り。朝の光で逆光になる場所。背景が影になりシューマッハ選手のマシンだけが光ればいいと思って、積極的に狙っていった1枚です。

EOS-1N HS EF600mm F4L USM+1.4×(F25・1/13秒)KR

オーストラリアグランプリ、路面に落ちた木陰からノーズだけ出た瞬間をスローシャッターで止めた1枚。などと書くとカッコ良いですが、正直なところを言えば、たまたま連写して撮れたカットです。デジタルだと後処理でどうにでもできる昨今ですが、フイルムだとそうはいきません。もう写っていてくれ! と願い込めて撮影したことを覚えています。

EOS-1N HS EF600mm F4L USM(F8・1/500秒)KR

ベルギーグランプリ、スパ・フランコルシャンサーキット。この日はバスストップシケインが、昔ながらの形をしていて、朝の光が綺麗だった。ウイリアムズがこの年起用したのは、前年のカートチャンピオンで伝説のジル・ビルヌーヴ選手の息子、ジャック・ビルヌーブ選手。用意周到にF1カーで事前テストをかなり走ってシーズンイン。初年度でランキング2位を見事に獲得しました。そしてこの年、シリーズチャンピオンになったのはチームメイトのデーモン・ヒル選手。2人とも伝説ドライバーの2世です。

EOS-1N HS EF200mm F1.8L USM+EF25 II(エクステンションチューブ)(F2・1/320秒)KR

ジャック・ビルヌーヴ選手の青い瞳は本当に美しかった。独特な雰囲気もあったし、何よりも速かった。

EOS-1N HS EF200mm F1.8L USM(F2・1/400秒)KR

どこのグランプリで撮ったかは、覚えてはいない。おそらく、パレードランでの1コマだったかな? 本戦とは違って、優しい表情がとても印象的でした。

EOS-1N HS EF200mm F1.8L USM(F2・1/320秒)KR

日没後のピットに置いてあったフェラーリのカウルをクローズアップして撮影した。曲線美が織りなすフォルムが、とても美しいですね。

熱田護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。 広告のほか、雑誌「カーグラフィック」(カーグラフィック社)、「Number」(文藝春秋)、「デジタルカメラマガジン」(インプレス)などに作品を発表している。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集『500GP』(インプレス)を発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。