特別企画
ニコンD850「フォーカスシフト」 風景撮影での使用法を考える
パンフォーカス表現を深度合成で 海外ソフト「Helicon Focus」も紹介
2017年10月16日 12:11
フルサイズはパンフォーカス撮影が大変
画素数の多いカメラのほうが、より細かな部分までクッキリと再現できる。特に、自然風景など絵柄が非常に細かいシーンを広角撮影するような場合には、画素数が多いほうが細部描写力に優れている。
ただ、フルサイズのカメラは、想像しているよりも被写界深度が浅く、手前から奥までビシッとピントが合った“パンフォーカス”撮影をするのは意外と大変だ。
広角レンズでF11~F16まで絞っても、高画素のカメラではわずかなピンボケもわかってしまうため、ピクセル等倍という厳しい鑑賞条件では、中・近景、もしくは中遠景~遠景までしかシャープに写せない。
最小絞りまで絞っても、中・近景~遠景までカバーできるかどうか微妙なところだし、光の回折の影響を受けて解像やコントラストが低下する、いわゆる「小絞りボケ」が発生してしまうので、せっかくの高画素の解像性能もスポイルされてしまう。
現実的には、遠景の描写が多少甘くなったとしても中・近景重視でピントを合わせるか、逆に手前は少しボケていても中・遠景重視でピントを合わせるか、写真の主題や表現意図によってピント位置を考えることになるが、それでも高画素で画面全体にビシッとピントが合ったパンフォーカス撮影をしたいときは、ピント位置を少しずつずらしながら撮影した複数の画像を合成する「深度合成」というテクニックが有効だ。
絞り値をF4からF22まで1段ずつ絞りながらライブビューAF撮影した。レンズはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR、焦点距離はワイド端の24mm。
その写真から撮影距離の異なる箇所を等倍で切り出してみた。絞り値は、F4(左上)、F5.6(中央上)、F8(右上)、F11(左下)、F16(中央下)、F22(右下)
自然風景撮影における深度合成のむずかしさ
ニコンD850には、この深度合成の素材を簡単に撮影できる「フォーカスシフト撮影」という機能が新たに搭載されている。
カメラが自動的にピント位置を手前から無限遠にずらしながら連続撮影してくれる機能で、その素材をパソコンで深度合成すれば、小絞りボケを回避しつつ、ワンショットでは不可能なパンフォーカス表現が可能だ。
ちなみに、OLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIやパナソニックLUMIX GX7 Mark IIやG8、GH5にも「フォーカスブラケット」機能が搭載されているが、画素数は1,600~2,000万画素。D850の4,575万画素の半分以下で、マイクロフォーサーズはもともと被写界深度が深いのが特徴なので、一般的な広角の風景撮影ではフォーカスブラケットを使わなくても、十分パンフォーカス的な撮影が可能だ。
そういう意味では、センサーサイズが大きく、画素数も多いD850だからこそ、このフォーカスシフト撮影が必要とされるシーンがある。
ただし、当然のことながら、深度合成というテクニックが使えるのは、“被写体が完全に静止している”というのが大前提で、どちらかといえば、宝石などごく小さな静物をマクロ撮影する際、ワンショット撮影では被写界深度が浅すぎるため、これをカバーするために深度合成が使われることが多い。
一方、自然風景の撮影では、完全に被写体が静止していることのほうが珍しく、そよ風で草木が揺れただけでうまく深度合成できなくなってしまう。
また、画面上の同一箇所に近景と遠景が混在しているような場合も、深度合成はむずかしい。というのも、深度合成は、近景にピントが合っている部分と遠景にピントの合っている部分を抽出して合成するのだが、同一箇所に近景と遠景が混在しているような場合、遠景の素材には近景がボケて写っている。
しかも、ボケている分、ピントが合ったものよりも広がって写っている。これを合成しても、ピントが合った近景の周りにボケた近景が重なって、その外に遠景が合成されてしまうため、合成が破綻してしまう。
そのため、自然風景撮影で深度合成が使えるのは、草木が揺れていないほぼ無風で、なおかつ、近景の被写体が遠景と重ならないような構図、というごく限定されたケースだ。
なんだ、風景撮影にはあまり役に立たない機能じゃないか! と思われるかも知れないが、うまく条件に当てはまるシーンであれば、高画素の細部描写性能を最大限に引き出した驚くほど高解像なパンフォーカス撮影ができるのが魅力だ。
深度合成が有効な撮影例
シャッタースピードはなんと1.3秒という暗さだが、微風で揺れるような高さのある草もないので、深度合成ソフトに素材を読み込ませて出力しただけでこの仕上がり。高画素ならではのファインディテール描写が引き出せている。
風でヒマワリが揺れて少しタブって合成されるので、素材を半分に絞って深度合成。撮影距離がある程度離れていて、近景と遠景が同一箇所に混在していないシーンは、深度合成がやりやすい。
深度合成がうまくいかない撮影例
ほぼ無風で静止していると思っていても、意外と草や花は動いていて、特に近景のわずかなズレは深度合成の大きな妨げになる。風が止んだ瞬間を狙って、何度かチャレンジしていると、運良くピタッと止まる瞬間もあるので、ダメもとで頑張ってみるしかない。このカットは合成する素材枚数を減らして、適切なレイヤーをブラシ処理でコピー&ペーストすれば、ほぼ問題ない仕上がりに改善できる。
手前のヒマワリと奥のヒマワリが重なっている箇所は、手前のヒマワリのボケた像がジャマして、うまく深度合成ができないので、近景が背景に被らないように構図を工夫するのがポイント。もしくは、もう少し撮影距離を離して絞り込むことで、近景のボケを小さくし、中遠景とうまく繋がるようにするという方法もある。
D850のフォーカスシフト撮影設定について
それでは、D850のフォーカスシフト撮影を活用した風景撮影について、実例を交えながら紹介していこう。
D850のフォーカスシフト撮影は、静止画撮影メニューの最後から2番目の項目にある。静止画撮影メニューを逆順にたどるか、マイメニューに登録し、Fn2ボタンでマイメニューが表示される設定にしておくと、すばやくフォーカスシフト撮影機能を呼び出せて便利だ。
なお、フォーカスシフト撮影がグレー表示になっていて「現在のカメラの状態・設定では、このメニューは選択できません。」という警告が現れる場合は、1)カメラの日時・時刻が設定されていない、2)ブラケット撮影になっている、かのどちらか。また、フォーカスシフト撮影の設定画面は表示されるが、[撮影開始]がグレーになっている場合は、ドライブモードが[セルフタイマー]になっていないかを確認しよう。
D850のフォーカスシフト撮影の主な設定項目は、フォーカスステップ幅[1(狭い)~10(広い)]、撮影枚数は[1-300コマ]、待機時間は[0~30秒]。このほか、[露出平滑化]や[サイレント撮影(電子シャッター)]のON/OFFと、撮影開始時の記録フォルダーを新規作成するかどうかを選択できる。
フォーカスステップ幅は、とりあえず一番狭い[1]に設定、撮影枚数は、レンズのフォーカスリングが停止する無限遠(実際は無限遠よりも少し先のオーバーインフ)で自動的に撮影は終了するので多めに設定していても問題ないが、風景撮影なら[50]もあれば事足りるだろう。
また、フォーカスシフト撮影では、被写体が静止しているのが大前提なので、電子シャッターのローリングシャッター歪みを気にする必要はなく、無振動のサイレント撮影がお薦め。[露出平滑化]は、レンズ繰り出しによって露出倍数が変わるマクロ撮影以外は[しない]でOKだ。
深度合成に適した素材撮影テクニック
フォーカスシフト撮影の設定を済ませたら、いよいよ撮影だ。D850のフォーカスシフト撮影は、手前から無限遠方向に自動的にピント位置をずらしながら撮影するので、まず最初に一番手前の被写体にピントを合わせるのが基本。
フォーカスモードはAFモードでなければフォーカスシフト撮影を開始できないが、A/MやM/Aモードを備えたレンズであれば、AFモードのまま手動でピント位置を手前に合わせた方が確実だ。
必ずしもライブビュー撮影モードにする必要はないが、三脚撮影が必須となるので、ライブビュー撮影のほうがフォーカスエリアも広く、タッチ操作でピント位置も指定できるし、ファインダー撮影のようにアイピースからの逆入光の恐れもないので安心だ。
一番手前にピントを合わせたら、フォーカスシフト撮影を呼び出して[撮影開始]を選択。これで、カメラが自動的に無限遠までピント位置をずらしながら撮影してくれる。フォーカスシフト撮影自体は、このようにとても簡単だ。
ただ、前述したように、深度合成に適した素材を撮影するにはちょっとした配慮が必要となる。D850の使用説明書には「レンズの絞りを絞り込み過ぎることによる解像感の低下を防ぐため、絞り値をf/8~f/11よりも開いて撮影することをおすすめします。」との記述がある。
同一箇所にピント位置の異なる被写体が混在すると、遠景側にピントが合って近景がボケている像に、近景にピントが合っている像を重ね合わせても、近景がボケた像のほうが一回り像が大きく、その部分の背景が見えないので、境界部分が不自然にボケてしまう。そのため、深度合成素材を撮影する際も、小絞りボケの影響が大きくならない範囲で、できるだけ深い被写界深度を確保して撮影することが重要なポイントとなる。
レンズの解像性能を最大限に引き出せるのはF5.6~F8の絞り値だが、中・遠景を主体とした風景撮影以外ではこれでは被写界深度が少し浅すぎて、近景と中近景、中近景と遠景がうまく合成できないケースが多い。そのため、F11~F16くらいに絞り込んで撮影したほうが、深度合成の際に破綻しにくくなる。
また、風などで草木が揺れると、動いた部分だけ像がズレてしまって多重になってしまうが、これもある程度絞り込んで被写界深度を深くすることで、近景~中近景、中近景から中遠景、中遠景から遠景と、大まかに3~4コマくらいの素材に絞り込んで深度合成を行うと、意外と簡単に破綻なく繋がってしまうこともある。
とりあえずフォーカスステップは一番狭い[1]で撮影しておき、深度合成の際に、必要最小限の枚数に合成素材を絞るというのも手だ。
フォーカスシフト撮影した8枚の素材で深度合成すると、風で揺らいだ影響で手前のコキアがダブって合成されている。
合成ソフトのレタッチ処理で、適切なレイヤーの画像をコピー&ペーストして修正することも可能だが、思い切って合成する素材の枚数を近景、中景、遠景の3枚に絞って深度合成すると、パッと見た目には修正する必要がない仕上がりを得ることができた。
深度合成専門ソフト「Helicon Focus」の作業手順
D850のフォーカスシフト撮影は、深度合成素材の撮影を省力化してくれるが、D850本体内で深度合成は行えないし、View NX-iやCapture NX-Dにも深度合成の機能は搭載されていない。そのため、実際に深度合成を行うには、他社製専用ソフトが必要となる。
ボクが愛用しているのは、「Helicon Focus」という海外製の深度合成専門ソフトで、素材を読み込ませるだけできれいに深度合成してくれる率が高い。
合成が破綻している箇所も簡単に必要な素材を呼び出し、ブラシツールで修正箇所をなぞるだけの簡単作業だ。メニューが日本語化されているのもポイントが高い。
永年ライセンスは200ドル(1年間有効なライセンスは55ドル)と使用頻度が少ない人には高めかもしれないが、30日間のトライアル期間もあるので、まずはその効果を試してみて欲しいと思う。
Helicon Focusの基本的な使い方としては、Helicon Focusを起動し、深度合成用の素材を読み込ませ、[レンダリング]ボタンをクリックするだけ。被写体が静止していて、近景と遠景が同一箇所に混在していない深度合成に適した素材であれば、ほぼ修正要らずで深度合成できてしまう。
深度合成(修正後)
Helicon Focusの[レタッチ]タブのブラシツールで不自然な合成箇所を修正。50mmでF20まで絞って素材を撮影しているが、それでもヒマワリと背景の繋ぎ目が多少不自然な箇所は残っている。フルサイズは本当に被写界深度が浅く、パンフォーカスには苦労する。
なお、Helicon Focusには、A~Cまで3種類のレンダリングメソッド(合成方法)があるが、初期設定のメソッドB(深度マップ)がお薦め。
メソッドA(加重平均)やメソッドC(ピラミッド)は、近景と遠景が同一箇所に混在しているような場合にやや有利だが、メソッドAは全体にエッジのキレが低下し、動いている箇所も破綻しやすくなる。また、メソッドCは全体に彩度がやや落ちる傾向がある。
このあたりは、正直、ボクもよくわかっていないので、ケース・バイ・ケースで試行錯誤して、より自然な仕上がりが得られるメソッドを選択している。
深度合成が終わったら、表示倍率を100%にして、被写体が動いて多重になっていたり、近景と遠景の輪郭が不自然になっていないかなど、合成が破綻している箇所がないかを入念にチェックする。自然風景だとわずかな風で草木がそよぐので、よく見ると不自然な描写が見つかることもある。
Helicon Focusで修正を行う際は、画面上部の[レタッチ]タブを選択。画面左側には深度合成素材、右側には深度合成結果が表示されるので、右側の合成結果を見ながら修正が必要な箇所を探し出す。
画面拡大は[CTRL]+[+]、縮小は[CTRL]+[-]、画面のスクロールは、スペースを押しながらマウスをドラッグ、とキーボードを使ったショートカット操作はPhotoshopと同様だ。
右側の画面で修正したい箇所を見つけたら、ファンクションキーの[F9]を押すと、その箇所の合成に使われた素材が画面左側に表示され、そのまま、左側の画面からスタンプツールで必要な箇所をコピー&ペーストできる。
画面右上には、[ブラシソースファイルリスト]が縦に並んでいるので、ここで左側の画面に表示される素材を必要に応じて切り換え、うまく合成できなかった箇所を修正していく、という流れ。
一通り修正が終わったら、画面上部の[保存]タブを選択して、画面右上の[保存]をクリックすれば作業完了だ。
マクロや望遠撮影にも
マクロや望遠撮影など被写界深度が極めて浅い撮影で、ピントをどこに合わせたらいいのか悩む。
例えば、シベがたくさんあるヒガンバナ。花の中央に付近にピントを合わせるべきか、それとも手前のシベにピントを合わせるべきか? いろいろ悩んでみても、なかなか撮影現場で判断できない。
そこで、とりあえずフォーカスシフト機能を使って、手前から奥まで少しずつピントをずらしたカットをすべて撮って、家に帰ってからどこにピントを合わせたカットが自分にとってしっくりくるのかを熟考する。
そうすることで、自分の好みやレンズ描写のクセがわかってくる。さらに、無風で花がまったく動かなかった場合には、手前から花の中心までのカットで深度合成すれば、大きな後ボケを活かしつつ、花の部分だけ適度に被写界深度を深くした、ワンショットでは撮れない、しかしながら、頭の中でイメージした描写を再現することが可能だ。
以下の作例は、どれが一番自然に見えるだろうか?
1カット撮影の例
※共通設定:D850 / AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR / 1/5秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO 125 / マニュアル露出 / 112mm
深度合成の例
加重平均。ピントが合っていない部分がメソッドBよりもやや柔らかな印象に仕上がっている。近景のシベが一部不自然
デフォルトの深度マップ。一番ピントが合って見える範囲が広く、シャープな描写だが、しべの描写が一部破綻している
ピラミッド。近景のしべの合成は一番自然だが、彩度が低めで、少しカサカサッとした描写なのが気になる
また、後方の被写界深度が無限遠をカバーする一番手前のピント位置を「過焦点距離」といい、過焦点距離を求める計算式もある。
ただ、どこまで微小なボケを被写界深度として許容できるかは人それぞれだ。それに、画面中央に比べ、画面周辺は残存収差が多く、ピント面はともかく、その前後の解像の崩れが大きめだ。
画面中央はもっと後方までシャープに写っているのに、画面周辺の等距離にある部分は像がボケたり流れたりして不鮮明になりやすい。
像面湾曲というピント面が周辺で前もしくは後ろ側にずれる収差が影響している場合もあるが、像面湾曲というよりもピント面から少しズレた位置の解像の崩れが周辺のほうが大きいので、平面に正対して解像チェックを行ってもほとんど問題はないのに、奥行きのあるシーンを撮影すると周辺が流れてみえる原因ではないかと個人的には思っている。
そのため、過焦点距離の計算式どおりの写りが得られるとは限らず、結局のところ、実際に撮影してみて、拡大再生してちゃんとピントが合っているかどうか、その場で確認するのが現実的な対処法だ。
そんな場合に、とりあえずフォーカスシフト撮影をしておけば、その焦点距離と絞り値におけるベストなピント位置を、家に帰ってからじっくりと確認できる。
そうした作業を繰り返していくことで、そのレンズの描写のクセもわかってくるし、どのあたりにピントを合わせ、どれくらい絞れば、小絞りボケを起こさず、できるだけ深い被写界深度が得られるかがわかってくる。そうした勉強にも、フォーカスシフト撮影は有効ではないだろうか?
次の作例は、焦点距離70mmでF11まで絞ってフォーカスシフト撮影したもの。
※共通設定:D850 / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 1/50秒 / F11 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 70mm
小絞りボケの影響はまだ少なく、それなりの被写界深度が稼げる絞り値だが、これだけ遠景の撮影でも、手前にピントを合わせると南アルプスの山々は少しピントが甘めだし、逆に遠景重視でピントを合わせると、ヒマワリの前ボケが少々うるさく感じてしまう。
ピクセル等倍で無限遠がクッキリ再現されているという点では、4枚目のピント位置が過焦点距離。しかし、2枚目のピント位置のほうがヒマワリ畑の像の乱れが少なく、バランスのいい描写だ。
もちろん、この5枚の素材を使って深度合成すれば、それぞれのいいところ取りができ、レンズ性能以上の解像を引き出せる。
まとめ
自然風景撮影では、微風でも草木が揺れて、フォーカスシフト撮影を行ってもうまく深度合成できないケースが多い。また、近景が遠景にかぶっている箇所は、近景がボケたカットの影響で、輪郭が不自然な合成になりやすい。
自然風景の深度合成の成功確率をアップさせるコツは、近景から中近景、中近景~中遠景、遠景くらいのエリアをそれぞれ被写界深度でカバーできる絞り値を選択。D850のフォーカスステップ幅は[1]で素材を撮影しておき、深度合成前に素材を3~4カットに絞り込むことだ。
近景ほど風による被写体の見かけの動きが大きくなるので、とにかく近景~中近景はワンショットで被写界深度に収められるかどうかがポイントとなる。小絞りボケの回避という点からすると、絞り値はF5.6~F8あたりがレンズ収差も含めて考えるとベストだが、自然風景の深度合成にはF11~F16くらいが現実的だ。
また、フォーカスシフト撮影は、深度合成素材の撮影だけでなく、撮影時に判断するのがむずかしいベストなピント位置を後から探すことができる撮影法でもある。画面の中央と周辺では、収差の影響でピント面前後の描写の乱れが異なるため、見かけの被写界深度は中央のほうが深めに見える。そうした収差の影響を考慮したベストなピント位置も、フォーカスシフト撮影を行うことで発見できるはずだ。