ニコン D850×NIKKORレンズ 写真家インタビュー

撮影に欲しいもの、そのすべてが集約されている/風景写真・山村健児さん

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 70mm / 絞り優先AE(F11、1/200秒、±0EV) / ISO 64

昨年9月に発売されて以来、2017年のカメラシーンを席巻したニコンD850。発売当初から人気のあまり品薄状態が続き、予約から入手できるまで半年かかるという話もあったほど。当サイトの年末企画「デジカメ Watch アワード 2017」においても、読者投票で1位を獲得している。

そんなD850を愛機として重宝する写真家たちにインタビューを敢行。写真家になったきっかけ、写真への考え方、そしてD850の魅力などを、毎月1名ずつ登場してもらい、存分に語ってもらうのがこの連載だ。D850に加えて、愛用のNIKKORレンズについても聞いている。

記念すべき第1回目は、絶景をおさめる写真家として知られる山村健児さん。自ら写真を撮る傍ら、「PASHADELIC(パシャデリック)」という写真投稿型SNSの運営も務める。会社経営者という一面も持つ山村さんに、写真に対する心構えや、D850の魅力を聞いた。

山村健児:1974年生まれ。大学卒業後、証券会社を経てウェディングギフトサービス企業を友人と創業し、中国のバイオテクノロジー企業の経営に携わる。2010年より渡米。ハルト・インターナショナル・ビジネススクールでMBAとファイナンスのダブルマスターを取得。アメリカの広大な景色に刺激を受け、風景写真において重要な、撮影場所を共有するサービス「PASHADELIC(パシャデリック)」を開始。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRを装着したD850。山村健児さん愛用の組み合わせだ。

海外旅行での記念撮影が高じて……

――まずは写真家になったきっかけからお願いします。

もともと旅行で記念写真を撮ることが好きだったんです。ただその頃は一眼レフカメラではなく、コンパクトデジタルカメラで撮っていました。回数を重ねていくと記念写真とはいえ、徐々にこだわりが出てきます。背景に人が写らないよう気を使ったりするようになりました。では、なるべく人がいない時に撮ろうということなり、気がついたら午前4時に妻と2人でエッフェル塔の前にいました(笑)

ただ、それが続くと妻からは「いい加減にしてほしい、もうついていけない」と訴え始めました。一方で僕は撮影が楽しくなっていたので、1人でも出かけるようになってきます。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 48mm / 絞り優先AE(F2.8、1/2,000秒、±0EV) / ISO 31

そんな折に、カリフォルニアであるポストカードを見つけました。その写真を見た瞬間、「ここを僕もちゃんと撮らなきゃ」と、なぜか思ったんです。そこで場所探しから始めたのですが、ポストカードを売っていたお店の店員さんに聞いてもわからない。一眼レフカメラを持っている地元の人に聞いて、ようやく「ファイファイビーチ」という場所だとわかりました。Googleマップで調べてなんとかたどり着きました。

その写真は昼間ではなく、ある程度陽が傾いた時間だろうと予想していたのですが、いくら待ってもその光景にはなりません。その日はそのまま太陽が沈んでしまいました。調べると私が行ったのは6月で、写真で見た景色が見られるのは1月だったんです。太陽の沈む角度が違うからですね。

でもあの風景を収めたい。次の1月まで半年間あので、その間にいろいろ調べて一眼レフカメラを買いました。きれいな写真を見ると、やはりみんな一眼レフカメラで撮っていたので、これは自分も買うべきだなと。

おかげさまでリベンジした1月にはそれなりの写真が撮れました。その写真をSNSにアップしたところ、友だちから「お前いつそんなに写真上手くなったの!?」とコメントが来るんです。それで余計楽しくなって、本格的に風景を撮るようになりました。2013年の1月ごろですね。

――半年間、情熱が衰えなかったのはすごいですね。

「1月にあれを撮らなきゃ」という意地がありましたね。それに、写真を始めた最初の頃が一番楽しいと思うんです。車の光跡や星空など、目には見えない景色も撮ることができて、こんなにも楽しいことがあるのかと、どんどん夢中になりました。プロの写真を見て真似したりもしました。

逆に、この時期に一眼レフカメラから離れてしまう人は、撮るものがわからないのかもしれません。どんなものをどういう風に撮れるのかがわかれば、絶対に楽しいはずですから。私はそうやって楽しい体験を重ねて、どんどんハマっていきました。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 70mm / 絞り優先AE(F9、5秒、-0.3EV) / ISO 64

好きが高じて2013年には、写真家フランス・ランティングさんの写真教室に参加しました。5日間の合宿で、計約100万円かかっています。当時私は30代だったのですが、他の参加者はみなさん70歳くらいでした。

風景を撮る合宿なのかと思いきや、1日目は人、2日目はマクロ、3日目は動物と、風景以外のテーマが続きます。なかなか風景にならないことにストレスを感じていましたが、これが狙いだったようで、自分が撮りたいものや表現したいものへのアプローチは、何を撮るにしても結局同じ。例えばマクロ撮影だと、いかに無駄なものを省くかが大切になります。風景にも生かせる考え方です。

また、合宿では何度も「なぜそれを撮ったの?」と聞かれました。その時は「なぜと言われても……」と思っていましたが、その被写体に何かを感じて撮っているのは間違いない。「きれいだったから……」という回答にはすぐ「何がきれいだと感じた?」「本当にそれがきれいだと思ったの?」と返ってくる。夕日の写真なら「きれいだと感じたのは太陽じゃなくて、光に照らされた草と花の色合いじゃないの?」など深掘りされていくんです。つまり、「何に感動したか」を追求していくんです。それが決まれば自ずと主役が決まりますし、構図や露出の調整も決まります。そういったことを5日間叩き込まれました。

午前中に撮影し、午後は自分の撮った写真をみんなの前でプレゼンする。なぜ撮ったか、どんな状況だったか、何に感動したかを発表するんです。初日は何をしゃべればいいのかほとんどわかりませんでした。僕以外の参加者はその講座の常連なので、すごく饒舌に話すんですよ。僕だけがしどろもどろでした。それでも2日目には、自分でもわかっていなかった「なぜ撮ったか」がわかるようになりました。それをきっかけに、自分の写真表現も変わったと思います。

合宿を経てもう一度風景を撮った時、やはり僕は風景が一番好きだと思いました。風景は夕日や朝日、星空にしても、景色が一瞬で移り変わります。だからこそ、その瞬間を見たときの感動が大きいんです。

特に初めての景色に出会った瞬間の感動は凄まじいですね。僕の場合は、狙って撮りに行った風景より、行き当たりばったりで「とりあえず行ってみよう」と行った先で出会う風景の方が、感動が大きいです。

――その合宿の前と後では、自分の写真も違うと感じますか?

そうですね。それに、他の方の写真を見てもわかるんです。フォトコンテストで審査員を務めるとき、写真を見ると考えて撮ったのかどうかが不思議とわかるんです。私の写真も同じだと思います。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 24mm / マニュアル露出(F13、1/60秒) / ISO 400

――風景撮影では場所の選定も重要だと想像します。どのように探されているんですか?

有名な撮影地はいくつか知っていましたが、それを撮り終わると、次にどこに行けばいいかわからない。昔はFlickrなどのサービスを見ていましたが、場所について詳細な情報は得られませんでした。

それに、かろうじて撮影地がわかっても、時期がわからないんです。そういった場合はその場所で撮影したことがある人に「これはいつ撮ったの?」と聞いたりしていましたが、そのうち「なぜそういう情報を集めたサイトがないのか」と思うようになりました。それが「PASHADELIC」をはじめたきっかけです。

もちろん撮影地を教えたくない方もいらっしゃいますが、基本的に地元の方は情報開示にウェルカムで、むしろ撮影で多くの人が訪れてくれれば、地域経済も潤うと考えています。私は47都道府県すべて回ったことがあって、いく先々で歓迎してもらえます。

――「PASHADELIC」を立ち上げたのはいつ頃だったのでしょうか?

リリースされたのは2013年の9月です。カメラを買ってから、2013年1月にファイファイビーチの写真を撮るまでの半年間で、そういうサービスが必要だと思いつきました。その後は「こんなサービスを作りたい」と話して仲間を集め、現地で会社を立ち上げました。

――撮影地を見つけてから、実際に行くまでの苦労もあるのでは?

ありますね。まず、写真を見て「ここに行きたい」と思っても、いくら調べても場所の情報が出てこないときです。例えば、写真を見てアメリカの国道1号線のどこかまでは絞れますが、1号線は1,000kmくらいあります(苦笑)。写真の場所を2時間くらいずーっとGoogleストリートビューで探していたこともあります。ようやく見つけたはいいのですが、実際に行くと複雑な小道を進まないといけなくて、さらに携帯電話の電波も入らない。たどり着くまでに相当苦労した思い出があります。

ちなみに、山の中へ撮影に行く場合は、私は日の出を狙います。日の出ならだんだん明るくなって行くので、何かトラブルがあってもすぐ下山できるんです。夕日を狙いに行くとどんどん暗くなるので、翌朝まで待たないと危ないですからね。実際に迷って帰り道がわからなくなることもありました。夕日を撮る場合はGPS装置を持って、自分が歩いた経路がわかるようにしました。

――今まで何カ国くらい撮影に行かれましたか?

撮影となると10カ国程度だと思います。旅行は40カ国弱ほどです。

広いダイナミックレンジが重要

――山村さんがカメラに求めることを3つあげてもらえますか?

まず一番は、頑丈さです。けっこう落とすんですよ(苦笑)。アイスランドに行った時、すごくきれいなオーロラが撮れたんですけど、撮影を終えてカメラをリュックに入れて担いだら、ジッパーを閉め忘れたようで背後からすごい音がして……。当時使っていたカメラは完全にダメになりました。

さすがにそこまでいくと自分の不注意ですけど、例えばふとした拍子に落としてしまったり、三脚が倒れてしまったりすることはけっこうあるので、頑丈さは重要です。防塵防滴も必須ですね。

その次はダイナミックレンジです。昔は露出の違う写真を複数枚撮って、あとでHDRで合成していましたが、今は1枚撮ってRAW現像で暗部を持ち上げれば十分です。その便利さを知ってしまうと、ダイナミックレンジの広さはないと困ります。夕日や朝日を撮ることが多いのも理由です。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 24mm / マニュアル露出(F11、1/13秒) / ISO 400

最後は高感度耐性ですね。特に星を撮るときには必須です。星を流さずに止めて写すにはシャッター速度10秒程度に抑えたいのですが、ISO感度を上げないと10秒では何も写りません。それと、やや暗めの場所で風が吹いているときなどは、ISO感度を高めてシャッター速度を稼ぐしかないので、そういったときも高感度耐性がほしいですね。

――RAW現像時に気をつけていることはありますか?

正確にいうと「現像をするために撮影時に気をつけていること」ですね。私は現像ありきで動いているので。

その意味でいうと、ヒストグラムのデータです。白飛びと黒つぶれはNGです。太陽が飛ぶのは仕方がないですが、どこまで許容するかは考えます。また、RGBのヒストグラムも見ています。色飽和が起きてしまうと、それも調整できないので。

撮影時にそれらの条件を整えた上で現像に入ります。私が必ずやるのは、一番お気に入りの写真をすぐ横において、それと比較しながら現像することです。感覚的に調整すれば似たような仕上がりになっていきますが、どうしてもやりすぎてしまうときやまったく違う雰囲気になってしまうときもあります。そうならないように、自分の一番お気に入りの1枚を基準にして、なるべく似たような雰囲気の作品に仕上げていきます。

本当にお気に入りの写真は、1日では仕上げないんです。日を置いて調整し直すことで、写真の見方をフラットにしてから、慎重に調整していきます。最後は妻の一言ですね(笑)。

――カメラやレンズ以外で重要視している撮影用品は?

間違いなく三脚ですね。Really Right Stuff(RRS)を使っています。安い三脚だと、カメラをセットした後に少し傾いてしまうんですよね。初めの頃はその傾く分も計算して位置を決めていたんです。そんな中で、あるとき友人に勧められて使ったところ、セットした位置でピタッと止まるので、以来ずっと使っています。雲台は自由雲台です。

それと、同じくRRSの「Lプレート」です。カメラボディに取り付けることで、雲台にスライドさせて設置することができます。横位置で調整した構図を、縦位置にしてもほぼ同じ位置に設置できるんです。雲台だけで縦位置・横位置を変更すると、そのたびに構図の調整が必要になりますが、Lプレートなら最小限の調整で済む。私は三分割構図で主役をずらしたパターンを3カットほど撮りますが、さらに縦横それぞれも抑えます。場所によっては最後にパノラマを撮ることもあります。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 32mm / 絞り優先AE(F11、1/640秒、±0EV) / ISO 64
ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 24mm / 絞り優先AE(F11、1/640秒、±0EV) / ISO 64

作風に合った優れた階調表現

――いよいよD850の話に移りましょう。いつ頃購入されましか?

発売日にアメリカで買いました。アメリカでも予約が殺到していて、手に入るか微妙だったんですが、なんとか買えました。前機種のD800E、D810を買っていたので、その流れでD850は必ず買うと決めていました。

D850

――使ってみて感想は?

D810に比べて、グリップ感はだいぶ良くなったと思います。大きさはあまり変わらないですね。もう少し重くなったとしても気にしないです。

――手持ちで撮影することはあるんですか?
実はけっこうあります。ただ、手持ちで撮る写真は世に出ることは少ないです。家族写真やスナップ写真ですね。基本的には明るいところの写真は手持ちです。

――D850の画質はいかがですか?

階調表現が良くなった印象があります。私の作品だと暗部のデータが残っていることが重要で、D850は解像力に加えて、その部分も良くなりました。シャドウがきちんと表現されます。私の作風にはそれが重要です。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 70mm / 絞り優先AE(F11、1/20秒、±0EV) / ISO 64

ここまで画素数が多いと、写真の隅々まで気が抜けません。撮影の時には毎回等倍まで拡大して確認します。70mmくらいまでズームさせると、シャッターボタンを押したときのわずかな衝撃でぶれが生じています。それ以上の望遠になると、まず間違いなくぶれが見えます。

――プリントはされるんですか?

はい。D850ならかなり大きいサイズまで引き伸ばせます。以前開催した写真展では、壁一面のサイズまで大きくしたこともありました。

D850で「大きくプリントしたい」と思った時、画面のすべてにピントを合わせた状態になるフォーカスシフトを使います。ステップ幅を「1」、撮影枚数を10枚にしています。ほぼデフォルト設定ですね。

――ライブビューは使われますか?

三脚に取り付けるときはほぼライブビューです。チルト式液晶モニターも便利で、寝っ転がって撮影する必要もなくなりました。上位機種にはしばらくチルト式液晶モニターがなかったので、抵抗がある方もいるようですが、私はとても便利に使っています。

三脚の時はAFですか? MFですか?

川を挟んだ向こう側など、同じ距離に被写体が並んでいる景色の時はAFを使います。夕日と花などの組み合わせでは、ライブビューで見ながらAFで合わせます。

ニコン D850 / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 24mm / マニュアル露出(F11、1/30秒) / ISO 64

――ファインダーの見やすさはどうですか?

EVF付きのミラーレスカメラも持っていますが、ファインダーは間違いなく光学の方が見やすいです。EVFには仕上がりを確認しながら撮影できるメリットがありますが、、私の原点は「何に感動したか」を追求して風景を撮影することです。それを考えると、そのままの景色が見える光学ファインダーの方が合っています。

D850のファインダーは視野率が100%で、それも助かるんですよね。視野率が違うと、ファインダーで見たものと実際に撮影した構図が微妙に違ってくるのが困ります。初心者にとっても、見たものがそのまま写るのはすごく助かるのではないでしょうか。

――D850の操作性で気に入っているところはありますか?

「露出ディレーモード」をいつも使っています。シャッターボタンを押すと内部のミラーがアップされ、その数秒後にシャッターが切れる機能です。これにより、ミラーアップの衝撃によるぶれを防ぐことができます。画素数が多いからこそ、小さなぶれも気にしなければなりません。

カメラとスマートデバイスをつなぐアプリ「SnapBridge」「SnapBridge」もよく使います。撮影したその場でスマートフォンやタブレットに転送して、すぐに画像を確認するんです。カメラの背面モニターで確認するより、別の端末に移して確認した方が、画面の隅々まで目が行き渡ります。

帰ってから確認し、余計なものが写っていたりぶれていたりしたことに気づいても、もう一度同じ場所に行って撮影し直すことはできません。撮った時にいい感触があった写真は転送し、確認するようにしています。

――バッテリーの持続性はいかがですか?

まったく問題ないですね。動作環境は0度までとなっていますが、-30度の環境下で2時間くらい撮影した時も、ひとつのバッテリーで十分でした。予備のバッテリーは10個くらい持っていますけど、1カ所で約200枚撮影するのを1日で何箇所かまわり、1個の消費ですみます。

作品として追い込む時はマニュアル露出

――基本の撮影設定を教えてください。

昼間の明るい時間帯は絞り優先、暗くなってくるとマニュアル露出ですね。シャッター優先はほとんど使わないです。

ホワイトバランス(色温度)は晴れていたら5000K、夕日や朝日は6800K程度ですね。夜の天の川などは3700K程度にします。やはり撮影した時に決めた色がベースです。RAW現像で色は変えられますが、PC上で必死に合わせた色と、撮影現場できちんと合わせてから調整した色では、印象が違います。

私が開催する写真教室では、「まずはすべてマニュアルで撮ってください」と話します。マニュアルで設定できるようになれば、オート機能が必要なくなるんです。その上でオートとマニュアルを使い分けていきます。私の場合は、作品として追い込む時はマニュアル、そうでない時はオートです。そして、オートの中でもより良い作品になるように微調整していきます。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 24mm / マニュアル露出(F11、1/40秒、±0EV) / ISO 64

――ピクチャーコントロールは何を選んでますか?

必ずRAW現像で調整していくので、見た目に忠実な表現の方がやりやすいですね。マニュアルホワイトバランスで現場に近い色を出したいのも同じです。イメージから離れた色が出てきた方が困ります。なるべく忠実に写しつつ、自分が感動した思いを乗せるという作風を目指しています。「本物だけど、絵のように感じる」とよく言ってもらいます。ですので、ピクチャーコントロールも「ニュートラル」が基本です。

――D850はXQDカードとSDカードを同時挿入でき、RAWデータとJPGデータを別々に記録することもできます。

2つのスロットで同時記録をするときとしないときがありますが、作品撮りをする時はJPGはほとんど残さないので、XQDカードへのRAW記録だけですね。SDカードは予備です。

それと、動画やタイムラプスもけっこう撮るんです。きれいな景色は、周囲の音や景色の移り変わりも含めて記録に残るので、それも残せるように動画を撮ります。朝方の鳥の鳴き声、風の音も記録します。動画を撮る時はマイクもつけます。ただ、その時は動画用、タイムラプス用のカメラも持っていくので、荷物が多くなって必然的に車移動になりますね。

信頼性の高い「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」

――NIKKORレンズに抱いている印象は?

簡単に言うと「撮りたい絵が撮れる」。ナノクリスタルコート仕様のレンズは特に重宝します。朝日や夕日を撮るときはどうしても逆光になるのですが、ナノクリスタルコートだとそうした状況でもフレアやゴーストが出にくいです。

――見せていただいたいくつかの作品は「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」で撮られたものです。どんな印象を持っていますか。

とても便利ですね。個人的に一番好きなのは広角レンズの「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」ですが、一番使うのはこの24-70mmですね。作品撮りでも家族スナップでも、これが一番便利です。山登りになると望遠レンズは持っていきません。14-24mmは撮影の目的次第ですが、基本的には24-70mmだけで間に合います。どうしても24mmより広角で撮りたい時はパノラマで撮影します。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

――遠景を撮る風景撮影は、開放F4のレンズでも十分かと思います。やはり画質の面を考えてF2.8なのでしょうか。

おっしゃる通りです。画質の違いがわかるようになってからは、F4のレンズでは物足りません。カメラを始めた当初はF4でも十分と考えていましたが、カメラ本体の画質が高くなるにつれて、レンズの性能もどんどん求めるようになるんです。

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 48mm / マニュアル露出(F11、1/320秒、-2EV) / ISO 250

――ニコンの24-70mm f/2.8もこの代になり、ついに手ぶれ補正がつきました。

その効果は感じますね。手持ちで撮影した写真もぶれなくなりました。もちろん手ぶれしないシャッタースピードを確保して撮影しますが、いずれにしてもあった方がいいのは間違いありません。手ぶれ補正があることで、余計なことを考えずに撮れるのは安心できます。手持ちに切り替えたら手ぶれ補正は常にONです。

――AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの大きさ、重さはどうですか?

やや重いです(笑)。ただ、私は「作品撮りで使う」と割り切っていて、本当にいいレンズならこの倍の重さのレンズでも持ち運びます。旅行写真ならさすがに重いと感じますけど(笑)。D850ボディと同じく、防塵防滴設計である点も助かっています。

◇   ◇   ◇

――山村さんがローンチした「PASHADELIC」の概要を教えてください。

風景写真に特化したSNSです。写真だけでなく、場所と時間を記録でき、いつどこでどんな写真を撮ったのかをみんなが共有できるサービスです。単なる共有サイトではなく、一般ユーザーの集合知として成長させていきたいですね。

サイト内でフォトコンテストを開催したり、キュレーションマガジンを発行したりしています。ユーザーの方もブログを書くことができます。

2018年にはグローバルフォトコンテストを開催して、まもなく結果発表になります。入賞作品は7月6日(金)・7月7日(土)に東京駅のKITTEで展示されます。ゲストに写真家さんをお招きして講演会も開催するので、みなさんぜひいらしてください。

パシャデリック・グローバルフォトコンテスト2018

パシャデリック会員限定で開催されたフォトコンテスト。ショーン・バグショー、ケント 白石、井上 浩輝など、世界の名だたる写真家が審査員を務める。入賞作品を東京駅KITTEにて、7月6日(金)〜7日(土)にかけて展示予定。

パシャデリック・グローバルフォトコンテスト2018 PASHADELIC|パシャデリック -風景写真を3つの写真レシピで撮影しよう-

デジタルカメラマガジン連載「ハーモニクスタイル」でも山村さんが登場

デジタルカメラマガジンの連載「ハーモニックススタイル」では、D850を愛用する写真家がテクニックを披露。デジカメ Watchとも連動し、最新の2018年7月号では、山村健児さんが執筆しています。ぜひご覧ください。

制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。