ニコン D850×NIKKORレンズ 写真家インタビュー

極寒の大地で繊細なオーロラを描く/風景写真家・谷角靖さん

D850 × AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8・13.0秒) / ISO 1600

昨年9月に発売され、2017年のカメラシーンを席巻したニコンD850。この一台を愛機として重宝する写真家たちにインタビューを敢行し、写真家になったきっかけ、写真への考え方、そしてD850の魅力などを存分に語ってもらうのが本連載だ。

第6回目は、カナダを拠点にオーロラや絶景作品を発表している写真家の谷角靖さん。マイナス数十度にも達する極寒の環境下でのD850の使用感や超広角ズームレンズの「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」をいかした作品づくりについてお話を伺った。

谷角靖

1973年、大阪生まれ。1999年にスキーインストラクター資格取得のためカナダに渡り、そこでオーロラと出合い撮影を始める。2003年、写真家の田中達也氏に師事。2007年よりプロ写真家としての活動を開始。写真展として「オーロラ」、「アメリカ国立公園」をニコンサロンにて開催。写真集に『オーロラの降る街』(ピエブックス、2004年)、『写真家行く世界の絶景』(青菁社、2016年)、『大切な人と見たい風景 TWILIGHT』(青菁社、2017年)などがある。2018年10月、オーロラの写真集としては5冊目となる『AURORA』を青菁社より刊行した。現在、永住権を取得したカナダを拠点に極地のオーロラと世界の絶景を追いかけている。


D850

カナダでオーロラに出会う

――写真家になったきっかけをお聞かせください。

まずは、私とオーロラの出会いからお話したいと思います。

カナダのウイスラーでスキーのインストラクターをしていた頃、カナダ人の母子家庭と家をシェアして現地に滞在していたのですが、ある日「NORTHERN LIGHTS」が出ているから外に出てみろ、とその家の母親に言われて見たボヤーっとした薄い雲状の光、それがオーロラとの出会いでした。

当時はそれがオーロラとは知らずに、興味も覚えずに寝てしまいましたが、後日、その時のオーロラが写された写真を見たところ、昔映画で見たオーロラそのものだったんです。その時から自分もこんな美しい風景を撮ってみたいと、父から借りて持ってきていたニコンFAでオーロラを撮り始めました。

ちょうどスキーシーズンが終わった頃のことでした。ビザの滞在期間が4カ月残っていましたので、どこへ行こうかと考えていた時に、友人からユーコン川のカヌーを紹介され、チャレンジしてみたいという思いもあり、現地へ行きそこのカヌーショップで働き始めました。

そこで働いていた時、たまたまお客さんとして来ていたオーロラツアー会社の社長さんから就労ビザで仕事をしてみないかと誘われたことがきっかけとなり、オーロラガイドとしての道がひらくことになったんです。

オーロラ写真は趣味で撮る程度でしたが、オーロラにかける熱意は誰にも負けないという自負もありました。

――そこで師匠である写真家の田中達也さんに出会った?

2002年頃のことでした。撮影ツアーでユーコン準州に来られていた際に、その現地ガイドを務めたんですが、これが田中達也さんとの運命の出会いでした。

カナダで永住権を取得した後もオーロラガイドの仕事をしながら写真を撮り続けました。そして、著書の出版やニコンサロンでの展示、ミキモトやモンベルなどでの写真展の開催が実現していったんです。

そして2008年、田中達也さんにJPS日本写真家協会への入会に推薦していただいたことと、ガイドの仕事を一緒にやってきた会社が売却されたこととが重なり、写真家として独立することを決意しました。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 18mm / マニュアル露出(F2.8・5.0秒) / ISO 4000

世界の絶景の撮影も

――オーロラの撮影がメインのテーマかと思いますが、インスタグラムではマングローブや空撮などの写真も拝見しました。現在はどのようなジャンルを撮影されていますか?

オーロラは写真を始めた「きっかけ」で、もちろん今も撮っています。一方で世界の絶景と呼べる場所へ出向き、誰もが「あー行ってみたい、撮ってみたい、見てみたい」と思えるような作品づくりを心がけています。

――オーロラというと、発生条件や撮影スケジュールの兼ね合いが難しいのでは? と想像しますがいかがでしょうか。

オーロラは現地に住み続けて18年間、年に数百回ずっと見てきていましたし、オーロラガイドという仕事をしていたので、お客さんより先にオーロラの出現を発見し、予測して伝えることが必要でしたので、ある程度の予測もつけられます。自分が住んでいる地域であれば山や川のある方角や地形、それがどのようなものであるのかは全て頭に入っていますので、オーロラの強弱を予想することと、その地点での天候や時間帯における月の大きさと位置を重ね合わせて、撮影場所を考えます。

初めて行く場所であれば必ず日中に下見をしながら、その日の夜の月の位置を考慮して撮影ポイントを考えます。あとはどこにオーロラが出るかですが、それだけは運になります。撮れなければ撮れるまでその地で追い求めますね。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8・4.0秒) / ISO 6400

――世界の絶景も撮影されているとのことですが、場所はどうやって探しているのですか?

どの国でも街のポスターや現地国内線の機内誌などに必ず情報が出ていますので、基本的には現地へ行って得た情報を元に、翌年実際にその撮影地へ行くという流れです。もちろん、現地の人や現地を旅しながら出会った人の意見も参考にしています。

例えば今年ギリシャのサントリーニ島へ行ったとします。アテネからサントリーニ島への移動中に機内誌か何かでシミ島について知った場合、時間があれば惜しみになく行きますが、時間がなければ翌年に行き直す、というようになります。

マイナス数十度に達する極寒環境での使用に応える

――ニコンのカメラを使い始めたのはいつからでしょうか。

1999年にカナダへ渡ったのですが、その際に父から借りたカメラが私にとっての初めてのニコンでした。最初にお話したニコンFAですね。

――ずばり、カメラに求めることを3つだけあげると?
耐久性、操作の簡単さ、軽量性の3つです。

極寒地での撮影となりますので、故障しないことが第一です。そして、すぐに設定を変えたりする時に簡単に操作ができるかどうか。最後の軽さは、最近では航空機の機内持込でお金を出しても重量制限がきつい会社が増えてきていますし、年々体力が落ちていきますので、機材の重量もポイントになってきています。

――いまはD850をお使いとのことですが、導入時期やきっかけは?

D850は発売日から使っています。高画素数のカメラであるということはもちろん新型の機材は画像処理エンジンも最新のものを搭載していますので、必ず買い替えています。

――大きさやグリップ感はいかがですか?

D5に比べると小さいですが、グリップ感は男性にはちょうどいいのではないかと思います。

――オーロラの撮影というと、環境も過酷なものになるのでは?

そうですね。まずは、外気温がマイナス45度となる極寒地でも割れることがない頑丈さですね。金属フレームのボディに結露などに対応できる防塵防滴仕様であること、バッテリーの耐久性も助かっています。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8・6.0秒) / ISO 2500

――操作性で気に入っているところはありますか?

ボタンイルミネーションですね。真っ暗な中での撮影となるため、ボタンが光ると押し間違いもなく操作面で非常に助かっている機能です。

それとXQDカード。オーロラの動画作成時に微速度撮影で数百枚を連続で撮りますので、高速で書き込みができるメディアが使える点もポイントです。

――ライブビューは使いますか? ファインダーとの使い分けなどは?

被写体によりますね。真っ暗な中で撮影することになるオーロラや星景では光学ファインダーで構図の確認をします。

ライブビューを使うシーンというと、微速度撮影のように動画にしていくものの撮影が挙げられます。他には、逆光など太陽を直に見ないようにする場合ですね。夕景や朝焼けの撮影でも使います。

ライビュビューは背面液晶がチルト式になっていることもあって、カメラの角度によってファインダーを覗けない場面で役に立つことが多いです。

――他の機能はいかがでしょう。

オーロラ撮影では使用しませんが、「サイレント撮影モード」はシャッターを痛めなくていいかもしれませんね。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8・6.0秒) / ISO 2500

広い画角と高い解像力が魅力

――まず、NIKKORレンズ全般に抱いている印象をお聞かせいただけますか?

F2.8のシリーズは解像度がとても高いですね。そして、ナノクリスタルコートが施されたレンズは太陽に限らず月の逆光でも威力を発揮すると感じています。

――よく使うNIKKORレンズは?

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDです。オーロラ撮影でこれに勝るものはありません。

14mmという超広角であることと、画面の端まで解像力が高いこと、F値がF2.8の通しであることが、愛用している理由です。

――AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDの画質面や操作性については?

まず、星を撮っても隅々まで点像で映るので、画質は非常に高く、シャープです。また描写力も優れていて、階調も豊かです。

超広角レンズでは画角が広いぶんゴーストなどを拾いやすいのですが、ナノクリスタルコートのおかげで、それも軽減されていると思います。

重量は約970gですが、D850との組み合わせでは前後バランスもいいと思います。フォーカスリングも大きく操作しやすいですし、金属製なので多少雑に扱ってぶつけてしまっても大丈夫です。信頼性も問題ありません。ただ、前玉が出っ張っていて大きいのでキャップがないと気を使いますね。

撮影や現像時に気をつけていること

――特にオーロラ撮影で気をつけていることは? そのほかの写真との違いはありますか。

オーロラは色にグラデーションをもった自然現象です。そのグラデーションがきちんと再現できるように意識してます。また夜の写真なので星がハッキリと見えるようにもしています。

撮影が暗い時間帯となるため、どうしても風景部分が黒つぶれしがちですが、撮影時点と現像段階の両方で黒つぶれしないようにハッキリと風景も映るように意識しています。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 15mm / マニュアル露出(F2.8・10.0秒) / ISO 1600

――カメラの設定などは?

ホワイトバランスは太陽光または蛍光灯にしています。太陽光だとオーロラの緑色が濃くなりすぎる場合があるので蛍光灯を使う場合もあります。月のある夜は蛍光灯くらいの方が自然に見えますね。

ピクチャーコントロールは緑になりすぎるオーロラの派手さをなくすためにニュートラルとしています。実際は緑には見えないことが多く乳白色なんです。

夜の撮影なので暗い部分を出すためにアクティブD-ライティングは「より強め」にしています。

――やはりマニュアルでの撮影ですか?

そうですね。ISO感度は状況により異なりますが、ISO 800〜2000に。絞りはF2.8、シャッタースピードは4秒から15秒の間で撮影しています。

――ボディ・レンズ以外で重要視している撮影用品はありますか?

軽量で安定性に優れた壊れにくい三脚です。ケーブルレリーズや予備バッテリーも欠かせません。

撮影:谷角靖
ニコン D850 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8・15.0秒) / ISO 3200

谷角靖さんの使いこなしテクニックがデジタルカメラマガジンで読めます!

発売中のデジタルカメラマガジン2018年12月号に、谷角靖さんによるD850 & AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDの使いこなし方について掲載しました。こちらもぜひご覧ください!

制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。