ミラーレス向けZEISSレンズ、その魅力と実力を探る
第2回:流麗なデザインのAFレンズ「Batis」で実写
ZEISSらしい抜けの良さと緻密さ 階調やボケにも注目!
2016年5月19日 07:00
前回はカールツァイスのフルサイズEマウント用レンズ、オートフォーカスの“Batis”と、マニュアルフォーカスの“Loxia”シリーズについて概要を説明した。
今回はそのうち、Batis全製品について、実写インプレッションをお届けする。いずれもソニーα7R IIに装着して撮影した。
Batis 2.8/18
シリーズ中最もワイドなこのレンズの光学系はDistagonタイプ 10群11枚構成。特殊低分散ガラスレンズ、非球面レンズを使用してフレームの隅々までシャープでクリアな画質を得られるように設計されていて、実写でもその抜けの良さを存分に味わうことができた。
ボリュームがあるルックスだが、手にすると330gという重量を感じさせない造りになっている。Batisシリーズの特徴でもある有機ELディスプレイももちろん備え、撮影距離と被写界深度の表示が可能だ。
発売日 | 2015年5月20日 |
希望小売価格 | 19万4,000円(税別) |
焦点距離 | 18mm |
開放F値 | F2.8 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 10群11枚 |
最短撮影距離 | 0.25m |
フィルター径 | 77mm |
外形寸法 | 78×95mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 330g |
18mmという広大なエリアをフルフレームに写し込むことが可能ながら、ワイドレンズ特有の歪みがとても少ないのがこのレンズの特徴だ。
ノスタルジックな建物を背にしてモデルに立ってもらったが、直線部分の気持ちいい写りと、ハイライト部の粘り、そしてカールツァイスらしいクリアな描写が得られた。
まるでカメラオフフラッシュで日中シンクロしたような写りだが、アベイラブルライトでのショットだ。露出をやや切り詰めて大きな波を待ってシャッターを切ったが、カールツァイス特有のドラマチックなトーンに仕上がって満足している。
緊張感のあるモデルのつま先から、ワンピースの質感、そしてほのかにアイキャッチが入る瞳まで、緻密な描写が得られた。
ガラスとメタルで構成された建造物。そのソリッドでストレートな造りをこのレンズはあるがままに写し出す。18mmというワイドさを感じさせず、被写体をフレームに閉じ込めたような描写が特徴だ。
Batis 2.8/18は建築物から風景、そして人物撮影まで幅広いジャンルで威力を発揮しそうだ。
抜けの良さと高いコントラストがカールツァイスレンズの特徴だが、このBatis 2.8/18も同様だ。また高い解像力と優れた収差補正は、フォトグラファーの期待を裏切らない。
薄曇りの日に新しく都心にできたビル内を撮影したが、クリアな描写を得られた。ホールドしやすいレンズのシェイプもあらゆる撮影シーンで頼もしい。
Batis 2/25
25mmと日常的に使いやすいレンジのこのレンズは、Distagonタイプの8群10枚というレンズ構成。ワイドレンズだがクセのある歪みが抑えられており、オールマイティーに使用できる描写になっている。開放F値がF2なので、暗所でも活躍できることだろう。
最短撮影距離20cmというのもこのレンズの特長である。F2という明るい開放値を活用し、
被写体に20cmまで迫りながら絞りを開けてやると、上質で端正なボケ味を楽しむことが可能だ。アイディアとフレーミング次第で、人と違った写真が撮れるはずである。
シリーズ共通の防塵防滴というスペックは、不意の雨でも撮影を続行できる強みを持つ。マウント部には水の侵入を防ぐ、ZEISSロゴに使われるブルーのラバースカートが施されている。
発売日 | 2015年8月6日 |
希望小売価格 | 15万1,000円(税別) |
焦点距離 | 25mm |
開放F値 | F2 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 8群10枚 |
最短撮影距離 | 0.2m |
フィルター径 | 67mm |
外形寸法 | 78×92mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 335g |
素直でクセのない描写はさまざまなシーンで活躍する。洗濯物をなおす(ふりをした)モデルをしゃがんであおり気味に撮影したカットだが、建物とポール類は真っ直ぐに、かつモデルの表情やワンピースはトーンと質感が実によく描写されている。ややくすみがちの色合いはこのレンズの味だろうか。これがなかなかいいではないか。
自然でクセのないパースはこのレンズの武器だ。背景を適度にフレームに入れ込み、
モデルのポーズと視線をクリアにそしてナチュラルに写しとることができた。肌のトーンといい、瞳から髪の毛にいたるまでの質感、レースの立体感がいい雰囲気である。このレンズがカメラバッグに入っていると、あらゆるシーンで心強いに違いない。
硬質で直線的な構造物。このような被写体はこのレンズが得意とするシーンだ。やや冷たそうなスチールとガラス部分のリアリティが伝わってくる。
極端なパースペクティブを抑えつつ、ワイド感をうまく出せるので、建築物や室内、スナップ撮影などに重宝することだろう。
曇天の下、水路沿いの新緑を撮影した。ややヘイズがかっていて難しい色合いだったが、若々しい木々と葉をみずみずしく捉えられた。細かい枝の線もよく出ている。
Batis 2/25は高い描写、明るいF値、そして使いやすい焦点距離なので、初めてこのシリーズを購入するのに向いていると思う。
Batis 1.8/85
光学系はSonnarタイプ8群11枚構成でFloating Elements設計となっている。
ポートレートで多用される85mmだが、Batis 1.8/85の静かで正確なオートフォーカスは武器になった。特にバストアップから顔メインのショットで、α7R IIの瞳AFとの組み合わせは快適そのもの。描写も絞り開放付近での柔らかさと、少し絞ったときのシャープさの二面性を持つので、これをうまく使い分けると面白い。
またこのレンズはシリーズ唯一の手ブレ補正機能を備えている。ボディ側の同機能と合わせることにより、光量が乏しいシチュエーションでも安心してシャッターを切れるのが嬉しいところだ。
発売日 | 2015年8月20日 |
希望小売価格 | 14万500円(税別) |
焦点距離 | 85mm |
開放F値 | F1.8 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 8群11枚 |
最短撮影距離 | 0.8m |
フィルター径 | 67mm |
外形寸法 | 78×105mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 475g |
絞り開放でローカル線の踏切横でモデルを撮った。瞳AFで向かって右の目にフォーカスし、背景とのバランスを考えてシャッターを切ったが、見事なジャストフォーカスと瞳と肌の美しい描写に舌を巻いた。
シャープさが身上のカールツァイスレンズだが、絞り開放だとややソフトで上品な写りを見せてくれる。これがまたいいのである。
砕ける波をバックに、黒い砂利の海岸にモデルに立ってもらった。ニコパチのポートレートではなく、少しダークさを表情に出してもらったが、シチュエーション的に面白いカットになった。
浮き出るようなモデルの立体感と、足元の泡だった波、そして白い飛沫がリアリティ感に溢れている。あるがままの光景を確実に捉えてくれるレンズは使っていて心強い。
シャープでクリア、そしてクリーンな写りがカールツァイスらしい。このような対象物は高解像度のα7R IIとの組み合わせが最適だ。構成物の質感、そしてひんやりとした感じまで見るものに伝わってくるようだ。
F1.8という開放値と手ブレ補正機能を活かせば、薄暮から夜のシーンまで、あますところなく都会をドラマティックに撮影できるだろう。
開放F値での端正なボケ味もこのレンズの魅力だ。上品に拡散していくようなボケ方はEVFを覗いていても美しい。ポートレートはもちろん、静物やテーブルフォトでも大いに活用できそうなボケ具合である。
有機ELディスプレイで被写界深度を確認しながら絞っていき、イメージ通りの写真を手にすることができるのもこのレンズの強みだ。