交換レンズレビュー

XF 56mm F1.2 R

85mm相当の大口径レンズを試す

 XF 56mm F1.2 Rは富士フイルムXマウントの大口径ポートレートレンズだ。35mm判換算85mmに相当し、開放F1.2はXマウントレンズの中でもっとも明るい。

今回はFUJIFILM X-T1で使用した。発売は2月。実勢価格は税込11万2,930円前後

 レンズ構成は8群11枚で、異常分散レンズを2枚、非球面レンズを1枚用いており、なかなか贅沢な仕様のレンズだ。円形7枚絞り羽根を採用し、ボケの美しさにも期待がかかる。実写結果を交えながら本レンズのテイストを見ていこう。

デザインと操作性

 大口径ポートレートレンズは総じて大柄なものが多いが、本レンズはAPS-C機用ということもあり、X-T1に装着してもほどよいバランスに収まっている。

 質感の高い金属鏡胴に加え、フォーカスリングと絞りリングも金属製だ。フォーカスリングはほどよい粘りがあり、開放時の微妙なピント合わせも的確に操作できる。絞りリングは1/3段ずつクリック感がある。AFレンズとはいえ、アナログフィーリングを重視した設計だ。フィルムカメラからの乗り換え組には親しみやすいレンズといえるだろう。

大きな前玉で迫力がある。フィルター径は62mm。バヨネット式の円形フードが付属する

 絞りリングとシャッタースピードダイヤルを「A」にセットすると、プログラムオートで撮影できる。絞りリングのみを「A」にセットしたときはシャッタースピード優先AE、シャッタースピードダイヤルのみ「A」にすると絞り優先AEになる。

 モードダイヤル未搭載のボディを念頭に置き、いくぶん変則的な操作性だ。ただし、すでに富士フイルムXシリーズを使っているユーザーにはおなじみの操作性と言えるだろう。

 AFはインナーフォーカス方式を採用し、フォーカスレンズの軽量化と高精度モーターが功を奏し、スピーディーかつ静かな動作を実現している。実際に試写してみても、被写体を的確にとらえ、ミラーレス機としてはスピーディなピント合わせが可能だった。

全長は69.7mm、重量は405gだ。35mmフルサイズ判の同クラスのレンズよりは小ぶりだ

遠景の描写は?

 描写面は無限遠撮影から見ていこう。絞り値を変えながら撮影してみたところ、開放近辺はいくぶん軟らかい描写だが、滲みはさほど感じられない。開放からシャープな部類と言えるだろう。

 F2.8あたりまで絞るとコントラストが強まり、精緻な描き方になっていく。F5.6まで絞れば隅々までシャープさが行き渡る。むろん、周辺部で像が流れるようなことはない。X-T1は点像復元技術に対応しているため、F11まで絞ってもシャープさを保っていた。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
【中央部】以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
【周辺部】以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

※共通設定:X-T1 / 0EV / ISO200(F1.2とF1.4はISO100) / 56mm

ボケ味は?

 本レンズはポートレートレンズという位置づけだけあって、ボケ味は前ボケ後ボケともに美しい。近接ではわずかにざわつく場面も見受けられたが、中間距離のなだらかで自然なボケはハンドリングしやすいはずだ。

 円形7枚絞り羽根を採用しており、きれいな玉ボケも本レンズを使う上で大きな強みになるだろう。

絞り開放・最短撮影距離(70cm)で撮影。X-T1 / 1/80秒 / F1.2 / -1.33EV / ISO250 / 56mm
絞り開放・距離数mで撮影。X-T1 / 1/1,500秒 / F1.2 / +2EV / ISO200 / 56mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。X-T1 / 1/80秒 / F2.8 / -1.33EV / ISO320 / 56mm
絞りF4・距離数mで撮影。X-T1 / 1/80秒 / F4 / -1.33EV / ISO250 / 56mm

逆光は?

 フレアとゴーストもよく抑えられている。太陽を写し込んだ作例は、フレアとゴーストがもっとも顕著になった状態で撮影した。あえて悪条件で撮影してこの程度のフレアとゴーストであり、なおかつコントラストの付き方は申し分ない。逆光条件でもシャドウの締まりが良く、光の状態を問わず積極的に構図を作れそうだ。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。X-T1 / 1/1,400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 56mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T1 / 1/1,400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 56mm

作品

開放近辺からコントラストが強く、男性ポートレートも違和感がない。X-T1 / 1/120秒 / F1.8 / -1.33EV / ISO200 / 56mm
近接でF4まで絞った。なだらかなボケのなか、合焦部の鋭さが際立つ。X-T1 / 1/150秒 / F4 / -1.33EV / ISO200 / 56mm
目にピントを合わせて撮影した。毛並みのナチュラルなボケ方が美しい。X-T1 / 1/80秒 / F1.8 / -0.67EV / ISO200 / 56mm
F2.8での玉ボケは真円ではないものの、形の整った7角形だ。X-T1 / 1/80秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO640 / 56mm

まとめ

 XF 56mm F1.2 Rは滑らかなボケ味が心地良い。合焦部からアウトフォーカスした部分へと、ごく自然にボケが広がっていく。開放からシャープでコントラストの付き方も良く、女性ポートレートのみならず、男性ポートレートのような硬派なシーンでも使いやすい。

 なによりも開放近辺での大きなボケは、本レンズを選ぶ強い動機付けになるはずだ。大口径レンズは開放近辺でのピント合わせがシビアになるが、本レンズはフォーカスリングが幅広で、しかも適度な粘りがあって微調整に長けている。開放近辺のおいしい描写をじっくりと堪能できるレンズだ。

(撮影協力:JAY TSUJIMURA

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp