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ソニーα7シリーズの違いを見てみよう(2015年夏版)

α7R II(8月7日発売)

世界初のフルサイズミラーレスカメラとして登場したソニーα7シリーズ。2013年11月の発売当初は交換レンズが2本しかなかったが、その後徐々に数を増やし、それなりにシステムとしての体裁を整えつつある(もうふた頑張りほど欲しいところだが)。

一方、ボディのほうは、ベーシックモデルのα7と高精細タイプのα7Rの2台体制に、高感度バージョンのα7S(2014年6月発売)、昨年12月にはα7 IIが追加された。

機種名から考えればα7 IIはα7の後継モデルとなるはずが、ボディ内手ブレ補正の有無という違いがあるからか、新旧併売となっている。今年8月にはα7R IIが発売されるが、おそらくこちらも新旧併売となるだろうから、計5機種のラインナップとなるわけだ。

今回は、そんなα7シリーズの個性をチェックしていこう。

α7:コストパフォーマンスと連写性能の高いベーシックモデル

α7(2013年11月発売)

撮像センサーにはローパスフィルターあり仕様の有効2,430万画素Exmor CMOSを搭載。ISO感度の設定範囲はISO100からISO25600。拡張感度としてISO50が用意されている。

AFには117点の位相差検出と25点のコントラスト検出を併用するファストハイブリッドAFを採用しており、従来のコントラスト検出AFに対して約35%(APS-C機のNEX-7比)の高速化をはかっている。ただし、位相差検出AFがカバーするエリアはあまり広くない(左右、上下とも画面サイズの半分弱程度)。

連写スピードは2.5コマ/秒だが、速度優先連続撮影モードではAF追従で5コマ/秒となる。また、レリーズタイムラグが短縮でき、シャッター走行ショックによる機構ブレを軽減できる電子先幕シャッターを備えているのが有利な点といえる。

実売価格はFE 28-70mm F3.5-5.6 OSS付きのレンズキットで税込17万円台と、一眼レフを含めたフルサイズ機でもっとも身近な価格設定となっているのも魅力。フルサイズにチャレンジしてみたい人にも目を向けてもらいたい。

α7R:手の届く価格を実現した高精細仕様の上位モデル

α7R(2013年11月発売)

α7との大きな違いは、撮像センサーがローパスフィルターレス有効3,640万画素Exmor CMOSであるところ。今でこそ、α7R II(有効4240万画素)やキヤノンEOS 5Ds/EOS 5Ds R(有効5,060万画素)のカメラも登場しているが、本機が発売された当時は、フルサイズ機では最多の画素数だった。

当初はボディ単体で税込約22万円だったが、本稿執筆時点では20万円を少し切っており、高精細仕様の一眼カメラとしては、もっとも手の届きやすいモデルとなっている。

AFは25点のコントラスト検出で、α7に比べると少々まどろっこしい印象は否めないが、風景などの動かない対象をメインにするのであればストレスを感じることはまずない。

連写スピードは、通常で1.5コマ/秒、速度優先連続撮影モードでも4コマ/秒にとどまる。また、レリーズタイムラグがかなり長めであるため、動く被写体を撮影する機会の多い人にはおすすめしづらい。電子先幕シャッターを搭載していないのも物足りない部分といえる。

α7S:超高感度と低輝度AFを実現した低画素バージョン

α7S(2014年6月発売)

α7、α7Rと同じデザインの姉妹モデルで2014年6月の登場。有効画素数をα7の約半分の1,220万画素に抑え、その分、高感度特性を向上させている。ISO感度の設定範囲は拡張域も含めるとISO50からISO409600まで。α7やα7Rよりも4段アップしている。

AFは25点ファストインテリジェントAF。コントラスト検出方式だが、空間被写体検出AFアルゴリズムによって、NEX-7比で約35%高速化している(この数字はα7と同じだ)。また、低輝度に強くなっているのも特徴で、-4EVの暗さでもAF合焦が可能としている。

動画は、AVCHDに加えてXAVC Sフォーマットを採用。本体のみではフルHD(60p)までだが、対応する外部レコーダーを併用することで4K(30p)の撮影も可能となる。また、プロ用オーディオ機器と接続するためのXLRアダプターキットも用意されている。

マウント部が強化されているのも見逃せないほか(α7、α7Rはバヨネットの爪の部分がプラスティック製だが、本機は金属製)、機構ブレ対策として有効な電子先幕シャッター、電子シャッターも搭載している。

α7 II:デザインの刷新とボディ内5軸手ブレ補正を搭載

α7 II(2014年12月発売)

α7の後継モデルで、ローパスフィルターあり仕様の有効2,430万画素Exmor CMOSと画像処理エンジンBIONZ Xの組み合わせはα7と同じ。ISO感度の設定範囲も同じで、常用ISO100~25600、拡張でISO50の設定が可能だ。

117点位相差検出+25点コントラスト検出のファストハイブリッドAF、速度優先連続撮影モードで5コマ/秒の連写スピードも同じだが、アルゴリズムの改良によってα7比で約30%の高速化を果たしており、動体追従能力も向上。動きへの強さに磨きをかけている。

先行する3機種と大きく違っているのはボディデザインで、表面処理、ファインダー部の形状、グリップの形状やシャッターボタンの位置とアングル、前後の電子ダイヤルの形状などが見直され、ホールド製、操作性が大幅に向上している。

最高4.5段分の補正効果を持つセンサーシフト式の5軸手ブレ補正機構の搭載も新たに搭載。125gの重量増は気になるが、マウントアダプターを併用してAマウントレンズやオールドレンズを楽しみたい人には魅力的なはずだ。

α7R II:4,240万画素+5軸手ブレ補正。AFシステム、ファインダー性能も一新

α7R II(2015年8月発売)

α7Rの後継となるシリーズ最新モデル。撮像センサーにはフルサイズ機では初となる裏面照射型の、Exmor R CMOSを搭載。有効画素数は有効4,240万画素に増加している。ISO感度範囲は常用ISO100~25600、拡張ISO50~102400。

AFには399点位相差検出+25点コントラスト検出のファストハイブリッドAFを搭載。位相差検出AFのカバーエリアがα7よりも広がっており、シリーズ最強のパフォーマンスを発揮する。

EVFも有機ELパネル、光学系ともに一新。ファインダー倍率が世界最大の0.78倍に上がったほか、接眼レンズにツァイスT*コーティングがほどこされるというぜいたくぶりだ。

α7 IIと同じく4.5段分の補正効果を持つ5軸手ブレ補正機構をボディに内蔵。外部レコーダーなしでの4K動画撮影が可能になったのも注目のポイントだ。

実売価格はボディ単体で税込47万円強とかなりの高額だが、ハイエンドの画質を手に入れたいならほかに選択肢はない。

まとめ

ひと口にα7シリーズといっても、有効画素数は1,220万から4,240万と差があるし、ボディ内手ブレ補正機構の有無(それにともなう重さの差も大きい)、AF性能、動画機能など、さまざまな違いがあって、実売価格のレンジもボディ単体で15万円弱から50万円弱までと幅広い。

フルサイズ入門者にはもっとも身近なプライスのα7はとても魅力的な存在だと思うが、予算が許すなら改良が加えられたα7 IIをおすすめしたい。実売価格で6万円ほど高くなるが、操作性やホールド性は向上しているし、なによりボディ内手ブレ補正の搭載は大きい。

画素数よりも高感度を重視するならα7Sは見逃せない。現状、常用感度でISO102400を達成しているのはこのα7Sだけだし、拡張ISO409600も、ほかはニコンD4Sしかない。-4EVの暗さでもAF撮影が可能なのも強みだ。

高精細さを求めるならα7R、α7R IIを検討したい。最高峰の画質を手に入れたいなら最新モデルのα7R IIを無視することはできないが、実売価格の面では手を出しづらい。その点、α7Rならぐっと身近な価格となるし、有効3,640万画素なら不満は感じにくいはずだ。

機種名α7α7Rα7Sα7 IIα7R II
発売年月2013年11月2013年11月2014年6月2014年12月2015年8月
ローパスレス
有効画素数2,430万3,640万1,220万2,430万4,240万
手ブレ補正レンズに依存ボディ内
常用ISO感度100-25600100-102400100-25600
拡張ISO感度50-2560050-40960050-2560050-102400
ファインダー0.5型有機EL・2,359,296ドット
倍率0.71倍0.78倍
液晶モニター3型92.16万ドット3型122.88万ドット
AFファストハイブリッドコントラストファストハイブリッド
測距点位相差117点+コントラスト25点コントラスト25点位相差117点+コントラスト25点位相差399点+コントラスト25点
測距可能輝度範囲EV0~20EV-4~20EV-1~20EV-2~20
連写最高速5コマ/秒4コマ/秒5コマ/秒
動画AVCHD、MP4XAVC S、AVCHD、MP4
動画解像度フルHD・60p4K・30p(外部レコーダー要)フルHD・60p4K・30p
幅×高さ126.9×94.4mm126.9×95.7mm
厚さ48.2mm59.7mm60.3mm
重さ474g(416g)465g(407g)489g(446g)599g(556g)625g(582g)

※重さはバッテリーとメモリーカード込み。( )内はボディ単体。

(北村智史)