新製品レビュー

ソニーα7S(実写編)

超高感度・ダイナミックレンジ特化モデルの真価を問う

まずは、前回お届けした新製品レビュー「ソニーα7S(機能編)」のおさらいをしてみよう。

撮像センサーには約1,220万画素の35mm判フルサイズCMOSセンサーを搭載。ボディデザインや操作系統は、昨年11月に発売された「α7」および「α7R」と基本的に同じ。約2,430万画素の撮像センサーを搭載するスタンダードモデルのα7、ローパスフィルターレス仕様で約3,640万画素の撮像センサーを搭載する解像力特化モデルのα7Rにつづく、「α7シリーズ」の第3弾として6月20日に発売された。

注目すべき性能は、画素数をα7の約半分として1画素あたりの受光面積が広がった分、最高ISO感度がα7のISO25600からISO409600(静止画撮影時の拡張感度)へと、4段分もの驚異的な拡大を実現したことである。そしてこれは、ベース感度のISO100を含む、常用感度でのダイナミックレンジも広がっていることを期待できるということだ。

「実写編」である今回は、スタンダードモデルであるα7との比較を交えながら、ダイナミックレンジ特化モデルであるα7Sの画質の特徴を見ていきたいと思う。

遠景

遠景の作例をα7Sとα7で撮り比べてみると、解像感においてはα7のほうがα7Sより明らかに高い結果となった。しかしこれは、α7Sの画素数がα7の約半分なので、当然の結果である。

以下のサムネイルは青枠付近の等倍切り出しです
α7S F2.8
α7 F2.8
α7S F4
α7 F4
α7S F5.6
α7 F5.6
α7S F8
α7 F8
α7S F11
α7 F11
α7S F16
α7 F16
α7S F22
α7 F22

※レンズはFE 35mm F2.8 ZA

ただし、α7とα7S、どちらの解像感もそれぞれの画素数に対して、最新機種らしい十分な性能を備えているのは、もちろんのこと。撮影した画像をプリントするときに、画素数に応じた適切なプリントサイズを選択すれば、解像感が問題となることはまずない。

解像感は絞り込むほどに鮮鋭になり絞りF8で最高となる。とはいえ、α7Sは絞りに応じたフィルター処理を適用する「回折低減処理」機能をもっているため、絞りF8以降F16程度までは解像感に大きな変化は見られずシャープネスを良好に維持している。α7Sは画素ピッチが広いため、理論的に絞りによる回折の影響を受けにくいことも好結果の一因であるだろう。

感度

画素ピッチを広げ、「高集光プロセス技術」や「ワイドフォトダイオード設計」などの技術により集光効率を大幅に高めたα7S。当然のように、その高感度特性はα7あるいはα7Rよりも向上している。

以下のサムネイルは青枠付近の等倍切り出しです
α7S ISO50(拡張)
α7 ISO50(拡張)
α7S ISO100
α7 ISO100
α7S ISO200
α7 ISO200
α7S ISO400
α7 ISO400
α7S ISO800
α7 ISO800
α7S ISO1600
α7 ISO1600
α7S ISO3200
α7 ISO3200
α7S ISO6400
α7 ISO6400
α7S ISO12800
α7 ISO12800
α7S ISO25600
α7 ISO25600
α7S ISO51200
α7S ISO102400
α7S ISO204800
α7S ISO409600

ISO感度の違いによる色再現性の変化としては、α7S・α7とも非常に安定しており、常用感度内(α7Sの場合、ISO100〜ISO102400)であれば、高感度に設定しても極端に色調が崩れることはない。また、これはα7Sに限らずα7シリーズの3機種全てに言えることである。

ノイズ耐性についても、α7S・α7とも大変優秀で、両機ともISO6400まで徐々にノイズが増加するのは当然のことだが、実用上は問題なく使用できるレベルだ。ただし、α7はISO12800になると目だってノイズが多くなり、細部のディテールも喪失されだすのに対し、α7SのISO12800にはまだ極端な変化がみられず、十分実用の範囲内である。

印象としては、α7SのISO25600の方がα7のISO12800より高感度画質が優れており、α7のISO6400よりはやや劣るといったところ。画素数が異なるため単純には比較できないが、プリントサイズを同一にした場合なら、約1段強ほどα7よりα7Sの方が高感度に強い。

α7Sは拡張感度も含め、ISO409600という驚異的な最高感度まで用意されていることを考慮すれば、「圧倒的な感度性能」という謳い文句は決して伊達でないと言えるだろう。

ダイナミックレンジ

最もダイナミックレンジの幅が広いと考えられるベース感度のISO100で、α7Sとα7を撮り比べてみた。被写体は感度比較と同じく、ライトアップされた夜の橋梁である。

ダイナミックレンジ比較(等倍切り出し)

α7S ISO100
α7 ISO100

ハイライトとなる電灯の階調を拡大して確認すると、α7では電灯内の広い面積で白飛びが発生しているのに対し、α7Sはより白飛びの発生面積が狭く、電灯を覆うガラスの凹凸も描写できているなど、α7Sのダイナミックレンジの方が明らかに広いことが分かる。また、電灯の光が橋梁本体に反射した箇所をみても、α7では白飛びが起こっているのに対して、α7Sでは白飛びを起こさずに階調が繋がっていることが確認できる。

こうした広いダイナミックレンジの特性は、特にハイライト側で有効であり、例えば逆光でのポートレート撮影や、太陽が画面内に入るような構図において、ハイライト部のトーンジャンプを抑えて、繋がりのよい階調を描き出してくれる。

また、ベースのダイナミックレンジ性能が高いということは、ISO感度を高くした場合でも、拡張感度のISO50に設定した場合でも、その特性は活かされ、階調再現性に対して有利に働くことになる。

高感度での動画

α7Sは、フルHDおよび4Kでの全画素読出しが可能であるなど、動画機能も強化されているのが特長だ。また、上記の優れた高感度特性は動画撮影時にも有効で、ミラーレスカメラであるα7Sが実現する動画撮影の表現の幅は、今までになく広く自由度が高い。

今回は、機材の都合やWeb掲載という性質上から、AVCHD規格で1,920×1,080(24p、24M、FX)サイズで収録したデータとなるが、α7Sで撮影した動画として参考にしてもらいたい。露出、ISO感度、AFエリアなど全てオートモードで撮影している。

編集部注:MTS形式の動画をYouTubeのImpressWatchChannelにアップロードしています。

作品集

雨の日に窓から弱い光が差し込んでいた。ISOオートで撮影したらISO6400が選択されたが、高感度であってもノイズによる画質低下が少なく、フルサイズ機らいしい立体感をそのまま表現できた。ISO6400 / FE 35mm F2.8 ZA / F4 / 1/100秒
これもISOオートで撮影して、自動的にISO12800が選択された。通常の使用用途であれば全く問題のない優れた高感度性能である。画素数が控え目なこともあってか、1/40秒の低速シャッターでも手ブレを起こしにくいように思える。ISO12800 / FE 35mm F2.8 ZA / F5.6 / 1/40秒
絞り値と撮影距離を変化させることで、被写界深度をコントロールしやすいのもフルサイズ機の特長。撮影距離を短くとって、木漏れ日による玉ボケをいっぱいに入れてみた。撮像センサーの特性に起因した周辺光量落ちや色カブリは極軽微で、周辺画質は安定している。ISO100 / FE 35mm F2.8 ZA / F2.8 / 1/200秒
個体差の問題かも知れないが、自動露出では、ソニーの他のデジタルカメラに比べて明るく写そうとする傾向があるように感じた。-0.7EVの露出補正でややアンダー目に写し、質感描写を狙った。ISO100付近で見せてくれる質感描写は大変素晴らしい。ISO125 / FE 35mm F2.8 ZA / F2.8 / 1/60秒

まとめ

α7シリーズには、発売から半年以上を経てα7Sという新たな仲間が加わった訳であるが、2,000万画素オーバーが当たり前の昨今のフルサイズカメラ事情にあって、高感度特性とダイナミックレンジ性能を際立たせるために、あえて画素数を1,200万画素に抑えたのはむしろ革新的。こと高感度特性においては、現行のデジタルカメラのなかで間違いなく最高性能の1台と言っていいだろう。

また、1画素ごとの集光率が高いことと、α7R同様に撮像センサー上のオンチップレンズを光の入射角に最適化した構造を採用しているため、シリーズの中でも画面周辺の画質が特に安定していることにも注目したい。マウントアダプターを介して他社製レンズ(特に広角レンズ)を使う場合でも、他のフルサイズ機より相性の歩留まりが高いことと思う。

α7シリーズは、“フルサイズのミラーレス機を製品化した”というだけでも驚きであったが、撮像センサーの特性を変えることで有意義かつ魅力的なラインナップを構築していることもまた驚き。撮像センサーを自社で設計・製造するソニーらしい、素晴らしいアイデアだ。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。