新製品レビュー

ソニーα7S(機能編)

注目フルサイズ機にダイナミックレンジ特化モデルが登場

ソニーの「α7S」は、35mm判フルサイズ撮像センサー搭載のミラーレスカメラとして話題の、「α7シリーズ」最新機種である。2013年11月15日に同時発売された先行2機種は、約2,430万画素の撮像センサーを搭載したスタンダードモデルの「α7」に対する、約3,640万画素の高画素撮像センサーを搭載した解像力特化モデルの「α7R」という位置付けであった。

今回紹介する「α7S」は、約1,220万画素の撮像センサーを搭載する高ダイナミックレンジ特化モデルとして登場した。

同シリーズの他2機種にはない、α7Sの特徴として

  • 約1,220万画素のフルサイズ撮像センサーを搭載し、最高ISO409600の圧倒的な高感度性能をもつ
  • -4EVの低照度環境下での合焦が可能。肉眼でも被写体を判別しにくいような非常に暗い条件でAFでピントを合わせることができる
  • 全画素読み出しによるフルHDおよび4K動画出力に対応

といった点が挙げられるだろう。ボディデザインやインターフェースといったカメラとしての基本的な仕様は、兄弟機にあたるα7およびα7Rと共通である。

発売日は6月20日。本稿執筆時点での実勢価格は税込24万8,400円程度となっている。

ダイナミックレンジ性能に特化した撮像センサー

撮像センサーは有効約1,220万画素の「Exmor」CMOSセンサーが搭載されている。α7およびα7Rと同様、35mm判フルサイズ(35.6×23.8mm)を搭載したミラーレスカメラであることが同シリーズの大きな特徴だ。

有効約1,220万画素「Exmor」CMOSセンサー。高画素化に逆行するように画素数を抑え、その分、画素ピッチを広げてダイナミックレンジ性能に特化している。

α7Sは、スタンダードモデルのα7に比べて画素数こそ約半分であるが、その分、画素ピッチを広くすることができ、感度特性は約3倍、飽和信号量は約2.3倍にまで向上しているという。

もちろん、α7およびα7Rと同じく、「高集光プロセス技術」や「ワイドフォトダイオード設計」など、1画素あたりの集光効率を高めるための技術をひきつづき採用。また、α7Rと同様にセンサー周辺部の光の入射角を最適化した「ギャップレスオンチップ構造」も採用されており、センサーメーカーであるソニーならではの最新技術が惜しみなく投入されている。

「α7S」のロゴ。青い「S」がなければ、同じシリーズの「α7」、「α7R」と外見上の違いはほとんど分からない。

画像処理エンジンは新世代設計の「BIONZ X」を搭載。この画像処理エンジンは同社のAマウント最上位機である「α99」に搭載されたに画像処理エンジン「BIONZ」比べ、約3倍の高速処理能力を有しており、エリア分割ノイズリダクションなどの独自技術も手伝って、高速処理と高画質の両立が図られている。

α7Sの特徴である幅広いダイナミックレンジと優れた高感度特性は、以上の撮像センサーと画像処理エンジンの連携によってもたらされるものであるが、いまどきのデジタルカメラ、特にフルサイズ機としては控えめな画素数であるため、解像力についてはα7やα7Rに譲るのは容易に想像できる。

しかし、解像力以外の画質面、例えば階調性や暗所でのノイズ耐性、画面全体の像の安定性など、どれほどの能力を実際に見せてくれるのか非常に楽しみなところだ。

剛性感と高級感が向上したボディ

前述の通り、ボディデザインやインターフェースは兄弟機であるα7およびα7Rとほぼ共通。幅は126.9mm、高さは94.4mm、奥行き48.2mmと、大きさはα7S・α7・α7Rの3機種で全く同じ。レンズ交換式のフルサイズ機として極めて小型で軽快だ。

ただし、重さはα7が416g、α7Rが407gであるのに対し、α7Sは446gとやや重い(バッテリー、メモリーカードを含まない本体のみの質量)。α7Sは、トップカバー、フロントカバー、内部フレームが高剛性マグネシウム合金で造られていることもあり、フロントカバーが樹脂製のα7と手にもって比べてみると、より剛性感が高くズッシリとしている。

とはいっても極端に重くなったわけではないので、適度に高級感が増した印象というのが適切な表現だろう。

シャッターボタン周辺。露出補正ダイヤル、前後ダイヤル、カスタムボタンなどを備え、操作性は大変によい。
カメラ背面。α7またはα7Rと同等の操作系である。
上方向に約90度、下方向に約45度まで角度を調節できる、3.0型92万1,600ドットのチルト式液晶モニター。

約230万ドットの高精細内蔵EVF、前後ダイヤルや露出補正ダイヤルの搭載、ホールディング性に優れたグリップ形状など、小型ボディでありながら操作性は上々。α7Sは動画機能が強化され、像面位相差AFセンサーや先幕電子シャッターの有無などで、わずかにメニュー項目に違いがある他は、基本的にα7およびα7Rと操作性を同じにしているので、詳しくは「新製品レビュー:ソニー α7」または「新製品レビュー:ソニー α7R」も参照してもらいたい。

内蔵EVFは約230万ドットの「XGA OLED Tru-Finder」。視認性に優れ、フルサイズの広い画面でも隅まで確実に確認できる。
「マルチインターフェースシュー」を搭載。汎用のフラッシュに対応する他、ハンディカムの豊富な動画用アクセサリーも活用可能。
インターフェースはマイク端子(3.5 mmステレオミニジャック)、ヘッドホン端子、マイクロUSB端子、HDMIマイクロ端子(Dタイプ)が装備される。
記録メディア室はカメラ側面に独立。SDXC/SDHC/SDメモリーカード、メモリースティックPROデュオ/同PRO-HGデュオ/同XC-HGデュオを使用可能。
Wi-Fi機能を内蔵。NFC対応のスマートフォンなら端末をタッチするだけで接続することができる。

その他、主に動画撮影時に接続したケーブルの脱落を防ぐケーブルプロテクターや、バッテリーチャージャーBC-TRW、ACアダプター AC-UUD11、2個のリチャージャブルバッテリーパックNP-FW50が、はじめから同梱されているのがα7およびα7Rにはない嬉しい特徴。これらは、動画撮影時に問題となる、ケーブル接続の利便性や消費電力の大きさなどに対する配慮であろう。

接続中のケーブルの抜けを防ぐ、ケーブルプロテクターが付属する。主に動画撮影時にケーブルの接続を保護する。
ケーブルプロテクターをカメラ本体に装着したところ。
動画撮影機能が強化され、メニュー項目にもいくつかの新機能が加わった。写真は、動画の記録時にMP4動画をHD動画と同時に記録するかしないかの設定画面。
全画素読み出しによるフルHDあるいは4K動画出力に対応。4K動画の記録には4K動画記録対応の外付けレコーダーが必要になる。
α7と同様、電子先幕シャッターを利用してレリーズライムラグを短縮することが可能。

暗所での合焦も得意なAF性能

α7およびα7Rは、従来のミラーレスカメラのコントラストAFより、速度が約35%高速な「ファストインテリジェントAF」を新搭載して登場した。このコントラストAFはα7Sにも搭載されているため、α7シリーズ登場以前の同社製ミラーレスカメラより高速かつ高精度なAFが可能だ。

実際に、α7とAFのレスポンスを比べてみても、両機のAF性能に際立った違いを感じることはなく、通常使用においてストレスのないAFでのピント合わせを行うことができる。

加えて、α7Sは撮像センサーの感度特性が進化したことで、低照度下における合焦性能が大幅に向上した。肉眼では被写体を判別しづらいほどの-4EVという環境下でもAFで合焦できる。

まとめ

筆者は、同シリーズのひとつであるα7を、相当気にいって使用しているユーザーのひとりである。購入時にはスタンダードな性能で価格も手頃なα7にするか、小さいのに高画素・高解像力に突出したα7Rにするかで随分迷ったものだ。

新たにシリーズに加わったα7Sは、画素数を抑えることでISO409600という途方もない高感度特性を達成したダイナミックレンジ特化モデルであり、静止画撮影において、すでにα7あるいはα7Rを所有している既存ユーザーにとっても非常に気になる存在だといえるだろう。

最高感度はISO409600と圧倒的な高感度性能を誇る。常用感度はISO100〜102400、拡張感度がISO50〜409600となっている(静止画撮影時)。

ボディを共通にしながら撮像センサーの特性を変えることで、カメラとしての方向性を明確に違えるラインナップを構築してきているα7シリーズ。同シリーズの複数機種を併用すれば、操作に迷うことなくそれぞれの特性を使い分けることが可能だ。そう考えると、α7Sの描写性能が実際のところ如何ほどのものか見てみたくなるのがカメラ好きの性というもの。

α7Sに「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」を装着
α7Sに「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」を装着

「機能編」である本稿につづき、次回の「実写編」では、α7Sの特長である広いダイナミックレンジと高感度特性の実力を確認しながら、スタンダードモデルの兄弟機、α7との比較検証を実施していく予定である。

「実写編」では、α7S(写真右)とα7(写真左)との比較も行う予定だ

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。