メーカー直撃インタビュー:伊達淳一のもっともっと知りたい!!

ソニーα7 IIの魅力を高める5軸手ブレ補正

フルサイズのイメージセンサーを搭載するミラーレス機として人気を博すα7シリーズ。その最新モデルであるα7 IIの最大のトピックは5軸ボディ内手ブレ補正機構だ。どのようにして小型ボディに入れたのか、どのような仕組みで動作するのか、といった点を中心に話を聞いた。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)

ソニーα7 IIって何?

フルサイズイメージセンサー搭載のα7シリーズの最新機種で、Eマウントボディ初となるボディ内手ブレ補正機構(5軸)を搭載。焦点距離の手動入力によりオールドレンズ装着時も3軸の手ブレ補正が行えるのが特徴だ。基本的なスペックはα7を踏襲しつつ、アルゴリズムの改良によりファストハイブリッドAFが30%高速化し、動体追従性能も向上。動画撮影機能も大幅に強化されている

 伊達淳一的α7 IIの気になるポイント
  • ・フルサイズ初のボディ内5軸手ブレ補正機構を搭載。Eマウントでも初
  • ・焦点距離の手動入力でオールドレンズも3軸の手ブレ補正が可能
  • ・α7よりもファストハイブリッドAFが約30%高速化
  • ・XAVC Sやピクチャープロファイルなどプロ仕様の動画撮影機能を装備
本インタビューは「デジタルカメラマガジン2015年3月号」(2月20日発売、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。
鈴木大輔氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 商品企画2部 2課
「お客さまから要望が多かった手ブレ補正機構を5軸で最高4.5段分、ほとんどボディサイズを変えずに搭載できました」
角谷敬二郎氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 デジタルイメージング アプリケーション設計部門 プラットフォーム3部 2課
「5軸手ブレ補正機構は流し撮りの方向を自動で識別して、最適な補正を行います」
江川哲広氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 商品設計部門 設計1部2課
「電子回路や制御を見直すことで消費電力を抑え、手ブレ補正機構を備えながらも撮影枚数をわずかに増やせました」
藤林茂樹氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 コア技術部門 コアデバイス部1課
「非常に強力なマグネットとコイルを使った電磁誘導方式にすることで、少ない消費電力で効率良く手ブレ補正を行います」
細川孝之氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 デジタルイメージング アプリケーション設計部門 プラットフォーム3部3課
「像面位相差AFとコントラストAFの制御を見直すことでAFの速さと精度を高めました」

 ◇           ◇

強力な磁石で機敏に動く5軸ボディ内手ブレ補正

――α7 IIの開発コンセプトについて、まずお伺いします。

鈴木:2013年11月に発売したα7は、世界初のフルサイズセンサー搭載ミラーレスカメラとして、非常に多くのお客さまに好評をいただきました。α7シリーズは、Eマウントレンズだけでなく、トランスルーセントミラー搭載のマウントアダプター「LA-EA4」を併用することで、Aマウントレンズも高速な位相差AFで撮影できるのが特徴です。

ただ、Aマウントのαシステムは、ボディ側に手ブレ補正機構を備えているため、レンズには手ブレ補正機構を搭載していません。このようなAマウントレンズなどさまざまなレンズをお使いのお客さまから、どうしても手ブレが気になるという声をいただいておりました。そこで、α7 IIでは、そういったさまざまなレンズをお持ちのお客さまにも、より快適に使っていただけるよう、ボディ内手ブレ補正を搭載することにしました。

しかしながら、小さくて軽いのがミラーレスカメラのメリットです。α7にボディ内手ブレ補正を搭載することで、ボディサイズが大きくなったのでは、ミラーレスカメラの魅力が損なわれてしまいます。α7のサイズ感を維持したまま、5軸のボディ内手ブレ補正ユニットを組み込み、なおかつ、最高4.5段分の手ブレ補正効果を実現することを目標に開発を進めていきました。

藤林:これがα7 IIに搭載しているフルサイズイメージセンサーと手ブレ補正ユニットです。Aマウントの手ブレ補正ユニットは、ミノルタの時代からピエゾを使って2軸のガイドレールに沿って動かす機構を採用していますが、今回のα7 IIは、マグネットとコイルによる電磁誘導でセンサーを動かす方式を採用しています。

強力なマグネットで構成される5軸ボディ内手ブレ補正ユニット
電気を流さない状態でも、磁力だけでイメージセンサーをできるだけ正位置に保てるよう、マグネットを強化。その強い力に耐えられるようフレームもかなり強固に作られている

サイズが大きなフルサイズセンサーを動かすため、センサーの右側面と下側にある動力部もかなり大きくなり、ブレを検知するセンサーも搭載する必要があるため、最初はα7のサイズにとても収まりませんでした。そこで、手ブレ補正ユニットの形状を工夫すると同時に、カメラの外装や基板を設計しているメンバーにも協力を仰ぎ、α7とα7 IIとでは内部のパーツの配置をいろいろ変更しました。

例えば、一番顕著なのが側面のコネクタの配置で、α7ではUSBやHDMI、マイク、ヘッドフォン端子が縦一列に並んでいるのに対し、α7 IIは横2列にし、それぞれ前後に離して配置することで、イメージセンサーの右側面の手ブレ補正の動力部を避ける形になっています。

また、α7に比べ、α7 IIの方がマウントの位置がわずかに高くなっていますが、これもイメージセンサー下部に手ブレ補正ユニットの動力部があるためです。

さらに、チルト可動式液晶モニターもα7 IIの方が側面から見て薄くなっていますが、この液晶モニターを薄くしたぶん、ボディ内に手ブレ補正ユニットなどの搭載スペースを確保できています。この液晶モニターも回路部分は厚みが必要なので、液晶モニターを支えるアームに切り欠きを入れて、厚みのある部分がうまく収まるように工夫しています。

こうした細かな積み重ねにより生まれたわずかなスペースにあらゆる部品を押し込んで、α7のサイズ感をほとんど変えることなく、ボディ内手ブレ補正ユニットを組み込むことができました。

α7 II
α7
ボディサイズ維持のために工夫された内部レイアウトの変更例
α7では縦に並んでいた側面の端子が、α7 IIでは基板を避けるように前後に配置。液晶モニターも薄くなり、ボディの厚みの増加分をうまく吸収している

――手ブレ補正ユニットの動力部がずいぶん大きいですね。やはりフルサイズセンサーを俊敏に動かすには、これくらい強力なマグネットが必要なんですね。

藤林:α7 IIからレンズを外してカメラを動かしてみると、電源がオフの状態でもセンサーが上に浮いているのがお分かりいただけるでしょうか? これはバネなどが入っているわけではなく、磁力をうまく使って浮き上がらせることで、ほんの少しのアシストでセンターを保持したり、ブレに応じて効率良くセンサーを動かせるようにしています。

ちなみに、このマグネットから発生する磁力は非常に力が強く、センサーを前後で挟んだ鉄製のフレームを非常に大きな力で引っぱっています。最初に手ブレ補正ユニットを試作した段階では、その力の強さに気づかず、フレームが変形してしまったほどです。これほど磁力の強いマグネットを使っているのは、磁力が強ければ強いほどコイルに流す電流が少なくても大きな力を出せます。少ない消費電力で効率良く動かすには、磁力の強いマグネットが必要で、その磁力を外に逃がさないようにするために、これだけ強度のあるフレームで挟み込んでいます。

江川:ボディ内手ブレ補正機構を搭載したからといって撮影枚数が減ったのでは、お客さまからお叱りを受けてしまいます。手ブレ補正ユニットをはじめ電気回路や制御も見直し、少しでも消費電力を抑える工夫を凝らすことで、トータルではα7よりも消費電力を抑えることができました。ファインダー使用時の静止画撮影枚数はα7と同じ約270枚ですが、液晶モニター使用時は約340枚から約350枚とわずかながら増やすことができました。

また、4.5段の手ブレ補正効果を実現するため、ブレを検知するセンサーをどこに配置するかもこだわっています。非常に敏感なセンサーなので、空いているスペースに適当に押し込めば良いというものではなく、シャッターを切ったときの振動を受けにくく、電気的なノイズも少なく、外的な衝撃からセンサーを保護できる場所でなければなりません。センサーを置く最適な場所を開発チーム全体で検討し、最終的にはグリップの背面に、角度ブレ、シフトブレ、回転ブレを検知する3つのセンサーを設置しました。

――ボディ内手ブレ補正の採用で気になるのが、動画撮影時の発熱に対する対策です。センサーを自在に動かす関係上、熱を逃がす導線が限られると思うのですが、従来のα7と比べ、動画撮影時間が発熱で不利になることはないのでしょうか?

藤林:ボディ内手ブレ補正ではセンサーを動かしてブレを補正するので、動かす部品はできるだけ軽く小さくする必要があり、採用できる放熱材料というのは限られます。普通に考えれば、ボディ内手ブレ補正の方が放熱面では不利になります。しかし、今回α7 IIにボディ内手ブレ補正を搭載するにあたり、動画撮影時でも手ブレ補正をオンにして撮影できることを前提に開発を進めてきました。

従来のAマウントのボディ内手ブレ補正は、イメージセンサーの動力部に樹脂を採用していますが、α7 IIでは熱の伝導率が高い金属部材を使って、イメージセンサーの熱を逃がせるような設計にしています。また、基板からも熱が発生しますが、基板の熱がセンサーに伝わらないように、基板のレイアウトなどを工夫してします。

こうした熱を拡散する設計技術は、4K動画出力対応のα7Sを開発する過程で培われてきましたので、α7 IIにもその技術を駆使して、ボディ内手ブレ補正を採用しても、熱的な問題が出ないように対策しています。

レンズ側とボディ側の連動で手ブレ補正を最大化

――α7 IIには、XAVC Sやレックコントロール、ピクチャープロファイルなど、α7S譲りの動画撮影機能が盛り込まれているのに、ボディ内手ブレ補正が足を引っぱったのでは意味がないですよね。十分な熱対策が施されていると聞いて安心しました。

ところで、OSSを搭載したFE、Eレンズを装着した場合に、ボディ内手ブレ補正と競合しませんか?

鈴木:レンズシフト方式はレンズごとに手ブレ補正を最適化できるのが特徴ですが、すべてのレンズに手ブレ補正機構を搭載できるわけではありません。一方、ボディ内手ブレ補正は、装着できるすべてのレンズで手ブレ補正効果が得られ、回転ブレも補正できるのが特徴です。

ただし、イメージセンサーを移動できる量は限られているため、補正できるブレ量にも限界があります。そこで、手ブレ補正機構搭載のEマウントレンズ(一部を除く)装着時には、ピッチとヨーのブレ補正をレンズ側で行い、上下左右のシフトブレと回転ブレの補正はボディ側で行うというように、それぞれの方式の良さを生かしています。

一方、手ブレ補正を搭載していないEマウントレンズや一部を除くAマウントレンズは5軸手ブレ補正をボディ側で行っています。

5軸の補正に対応するボディ内手ブレ補正機構
マグネットでイメージセンサーを浮かせる機構により、角度ブレ(ピッチ、ヨー)やシフトブレ(X 、Y)に加え、回転ブレ(ロール)の補正にも対応。フルサイズセンサーでは初だ

――ピッチとヨーは、レンズ側で補正した方が補正効果が高いのでしょうか?

鈴木:効果が高いというよりかは、レンズ内手ブレ補正はレンズ1本1本に対してブレ補正を最適化していますので、それを生かしながらレンズ側で補正できないブレをボディ側で補い、トータルで最大のパフォーマンスを引き出す、という考え方で設計しています。

――ちなみに、市販のマウントアダプターを使ってオールドレンズなどを装着した場合にはどうですか?

江川:他社製レンズを装着した場合の動作保証まではできませんが、手動で焦点距離を入力することで、ピッチとヨー、回転ブレの3軸のボディ内手ブレ補正が可能です。

なぜ、5軸で手ブレ補正ができないかというと、シフトブレの補正には撮影距離に関する情報が必要となりますが、電子接点のないレンズやマウントアダプター装着時には、レンズから距離情報を取得できないからです。

――マウントアダプターで他社製レンズを装着し、手動で焦点距離を入力した際、Exifデータにその焦点距離データが反映されないのはどうしてですか? どのレンズで撮影したかの目安にもなるので、ぜひ手動設定した焦点距離をExifに反映させてほしいのですが……。

角谷:α7 IIに、焦点距離の手動入力という機能を付けたのは、E16mm F2.8にウルトラワイドコンバーターやフィッシュアイコンバーターを装着したケースでも手ブレ補正が有効に動作するように、と考えたのが、そもそものきっかけでした。

あくまで、ここで入力した焦点距離は、手ブレ補正のために使う情報であって、レンズそのものの情報とは別と考え、このような仕様になっています。

鈴木:PlayMemories Camera Appsに「レンズ補正」という有償アプリがあり、周辺光量補正や倍率色収差補正、歪曲収差補正が行えますが、このアプリを使用して撮影すると、手動入力した焦点距離をExifに反映させることができます。

――でも「レンズ補正」で撮影する際には、ブラケット撮影ができませんよね。少なくとも電子接点のないレンズを装着して、焦点距離を手動入力した場合には、その数値をExifに反映させるよう、速やかにファームウェアをアップデートしてほしいと思います。

ところで、α7 IIのボディ内手ブレ補正は、流し撮りや三脚撮影には対応していますか?

角谷:流し撮りについては、従来機種と同様、流し撮りされた方向を自動で識別し、それぞれに応じて最適化された補正制御を行っています。また、三脚撮影時には、手ブレ補正オンのままで撮影しても誤動作しにくいように設計していますが、手ブレ補正をオフにすることを推奨しています。

ファストハイブリッドAFがアルゴリズムの改良で精度アップ

――カタログを見ると、α7もα7 IIも、コントラストAF 25点+像面位相差AF 117点の「ファストハイブリッドAF」とスペックは変わっていないようですが、AF性能面で進化しているのでしょうか?

像面位相差AFとコントラストAF併用のファストハイブリッドAF
動体追従性に優れ、高速な像面位相差AFとワイドエリアで高精度なコントラストAFを併用し、それぞれ特徴を生かしたAF方式。アルゴリズムの改良でα7よりも30%高速化している

細川:AF-S、AF-Cともにα7より速くなっています。α7を発売してからさまざまな機種を開発していく中で、非常に多くの知見を得ることができました。

その知見をα7 IIの開発にフィードバックし、制御アルゴリズムの改善を図ることで、α7に比べ、AFの大幅な性能アップを実現できました。動体の捕捉という観点からいえば、同じシーンを撮影してもα7の約1.5倍ヒット率が良くなっています。

――制御アルゴリズムの改善とは?

細川:α7シリーズはフルサイズセンサーを搭載しているので、一般的なミラーレスカメラよりもセンサーサイズが大きく、同じ画角のレンズで比べると、α7シリーズの方が焦点距離が長くなります。

焦点距離が長くなるほど大きくぼける状況が多くなりますので、ほかのミラーレスカメラに比べ、大きくぼけた状況からいかにすばやく合焦までレンズを駆動させるかが、AF-Sの合焦時間を短縮させるための重要なポイントとなります。

そこで、コントラストAFでフォーカスレンズを動かしている途中、複数の画像を取得し、それらの空間周波数の変化から、どれくらいフォーカスレンズを動かせば合焦に至るかを予測しレンズを駆動する“空間被写体検出AF”という技術をα7から採用しています。

ピントが大きくぼけていればフォーカスレンズをできるだけ速く動かし、合焦ポイントに近づいてきたら減速して正確に止めるというフォーカス駆動を行うのですが、α7 IIでは予測精度を改善し、より速いスピードで合焦付近まで動かせるようになりました。また、α7やα7 IIには像面位相差AFが搭載されていますが、像面位相差AFは被写体までの距離をすばやく検知することができます。

そこで、像面位相差AFで得られた測距結果をもとに、合焦付近までフォーカスレンズをすばやく動かし、最終的にコントラストAFで追い込むことで、速さと精度を両立させていますが、この部分の制御も見直しを図り、α7に比べ、AF-Sのスピードを約30%高速化できました。

――AF-C撮影時の動体追従性能は向上していますか?

細川:α7発売後、α6000やα77 IIといった非常に多くの測距点を備えた機種を開発してきました。こうした機種を開発する段階で得られる知見や、発売後にユーザーから寄せられた意見や要望をもとに、こちらも2点ほど改善を図っています。

1つは“選択フォーカスエリアの安定性”です。サッカーなど多くの選手が交錯するシーンでは、意図しない選手に勝手に測距点が乗り移ってしまうというケースが起き得ます。そこで、α7 IIでは、測距点が乗り移る際に、被写体の速度や選択されている測距点の位置などの情報を加味することで、狙っている被写体に対してより安定して食いつき続けるという性能を改善しています。

もう1つは“ピント精度の改善”も図っています。測距しながら得られたデータの信頼性を精査し、前回被写体がいた位置なども加味しつつ、多くの測距結果の中からより精度の高い測距点を選択することで(狙った被写体に対する)ピント精度を高めています。

先ほどの安定性とピント精度の2点を改善することで、動いている被写体に対する追従性をさらに向上させることができました。

――今のお話は、フォーカスエリアを「ワイド」もしくは「ゾーン」にしてAF-C撮影したときの説明ですよね? 「ロックオンAF」を使ったAF-C撮影について、α7よりも追従性は向上しているのでしょうか?

細川:ロックオンAFも改善を図っています。ロックオンAFは、選択したエリアに被写体をとらえ、シャッターボタンを半押しすることで、被写体の色や形状をカメラに認識させ、その情報を元に被写体を追尾し、自動的に最適なフォーカスエリアが選択される機能です。

フォーカスエリアも「ワイド」から「フレキシブルスポット S」まで、撮影シーンに応じてフォーカスエリアの大きさを自由に選択できますが、動体の撮影に不慣れな人には「ワイド」や「ゾーン」でロックオンAFを行うのがオススメです。

というのも、シャッターボタンを半押しする前からカメラ側で被写体の動きを認識していて、動いている被写体に対してより積極的にピントを合わせにいくという技術が、今回のα7 IIから入っていますので、これまでは、フォーカスエリアを小さく絞って狙った被写体を安定してとらえ続けないと撮れなかったような動体も、「ワイド」や「ゾーン」でロックオンAFすることで撮れるようになりました。

ミラーレスカメラは動体撮影に向いていない、と思われている人が多いようですが、我々としては、一眼とミラーレスカメラというのはもはや差がないと考えています。α7 IIの「ファストインテリジェントAF」でもっと積極的に動体を撮影してみて、その性能を実感していただければと思います。

――α6000よりも動体の追従性は上ですか?

細川:うーん、そこは判断が難しいところですね。α6000は約11コマ/秒、α7 IIは約5コマ/秒とコマ速の差が倍以上あるので、より多くの瞬間をとらえられるという意味ではα6000の方が動体撮影に対して強いといえます。

また、サンプリング間隔が短い方が被写体の速度の変化もすばやくとらえられますので、やはりコマ速が速い方がAFにとっても有利だと思います。

とはいえ、α6000よりもα7 IIの方が搭載されているアルゴリズムは進化していますので、狙った被写体に対してより正確にピントを合わせられるという点ではα7 IIの方が良くなっています。

――確かに、江ノ島でイルカのジャンプやジェットスキー、トビを撮影してみましたが、動くモノでも非常にすばやくピントが合うし、ピント精度の高さにビックリしました。α6000よりもコマ速は遅いですが、確かに歩留まりは高く感じます。

ただ、明るくコントラストがあるシーンでは、という条件付きで、日が陰ってコントラストが低くなったり、毛の色がこげ茶だったりすると、いきなりピントの歩留まりが悪くなったり、フォーカスが迷ったりします。このシーンの選り好みが一眼レフよりもまだ多いのが惜しいですね。

細川:やはり低周波被写体であったり低輝度下の性能は、解決すべき課題として受け止めています。弊社はイメージセンサーも作っておりますので、イメージセンサーの改良と合わせ、問題を改善できないかと、常に模索しています。

――取扱説明書を読むと、F9より絞られた状態では像面位相差AFが効かなくなるそうですが、一眼レフの場合、絞りが絞り込まれるのは撮影する瞬間だけで、それ以外は測距も含め、開放絞りになっています。測距精度の面からも、撮影時以外は絞りを開放にする方が有利だと思うのですが……。

細川:イメージセンサーでとらえた像をそのままファインダーや液晶モニターに表示できるのがミラーレスカメラの特徴です。撮影前から実絞りにする(設定した絞り値に絞り込む)ことで、撮影する前から被写界深度を確認することができます。

また、あらかじめ実絞りにすることで、シャッターを切った瞬間に絞り羽根を動かす必要がなく、レリーズタイムラグの短縮化には有利です。α7やα7 IIは、電子先幕シャッターを併用することで、20m秒という一眼レフでは考えられないような短いレリーズタイムラグを実現していますが、これもあらかじめ実絞りまで絞り込んでいるから達成できる数値です。

もちろん、ご指摘のようにF9よりも絞り込むと像面位相差AFが効かなくなるというデメリットもありますが、この状態でもコントラストAFは動作しますので、そのデメリットは十分カバーできると考え、現状の方式を採用しています。

――今回、α7 IIにFE 70-200mm F4 G OSSを組み合わせて動体を撮影してみましたが、やはりフルサイズで200mmだと望遠が足りないですね。FEレンズ開発ロードマップには、70-300mmクラスの望遠ズームすら載っていないのが寂しい限りです。

個人的には、FE 70-400mm F4-5.6 G OSSが早く欲しいのですが(笑)、これくらい長い焦点距離でもα7 IIのAFの高速性は保てるのでしょうか?

細川:原理的には、独立した位相差AFセンサー(従来型位相差AF)と比べると、像面位相差AFの方が測距できる幅が狭くなるのが課題です。ただ、コントラストAFの空間被写体検出AFといった、像面位相差AFの弱点を補う技術もありますので、超望遠ズームでどのくらいのAFパフォーマンスが得られるか、という検討は行っています。

――そういった意味では、α7シリーズで超望遠撮影をするには、マウントアダプターを併用してAマウントレンズを装着するしかないわけですね。

α7 IIが発表され、Aマウントレンズでも手ブレ補正が効くと聞いて、これで70-400mm F4-5.6 G SSMIIで飛行機が撮れると大喜びしたのですが、冷静になって考えてみると、ファストハイブリッドAFによる高速でワイドエリアのAFが使えるのは、FE/Eレンズだけですよね。LA-EA4を使えばAFが効きますが、測距点が15点しかなく、しかも画面中央に集中していてフォーカスエリアが非常に狭いのが不満です。

一方、トランスルーセントミラーのない素通しのLA-EA3を使えば、コントラストAFで画面周辺にも高精度でピントを合わせられますが、AFスピードが非常に遅く、とても動く被写体は撮れません。OLYMPUS OM-D E-M1は、フォーサーズレンズ装着時には像面位相差AFで実用的なAFスピードを実現しています。

これと同じように、LA-EA3でAマウントレンズ装着時に、像面位相差AFやコントラストAFの空間被写体検出AFを利用し、ファストハイブリッドAF並とまではいかないまでも、ファストインテリジェントAFくらいにAFスピードを実現できないものでしょうか?

Aマウントレンズを装着できるマウントアダプター「LA-EA4」
トランスルーセントミラー+従来型15点位相差AFセンサーを内蔵。Aマウントレンズを高速な位相差AFで動かすことができる

細川:LA-EA4のように、トランスルーセントミラー・テクノロジーを利用して、従来型位相差AFセンサーに光を導く方式は、大きくぼけている状態でもピントがずれている方向がかなりハッキリと分かるので、超望遠レンズでもスムーズにピントを合わせられるのが特徴です。

一方で、フォーカスエリアの広さは、像面位相差AFの方が有利です。そういった2つの技術をどういうふうに使いこなしていけば、お客さまに対して一番メリットがあるかを考えているところです。

Aマウントレンズには、70-400mm F4-5.6 G SSM IIをはじめ、300mm F2.8 G SSM IIや500mm F4 G SSMなど非常に高性能なレンズが多いので、こうしたレンズの性能をEマウントのボディで十分に生かせる方法を模索しているところです。

――トランスルーセントミラー・テクノロジーを搭載したマウントアダプターを否定はしませんが、やはりLA-EA4の15点AFセンサーは、フルサイズのαで使うには力不足だと思います。ないものねだりは十分承知していますが、α77 IIの79点AFセンサーを奢ったLA-EA6(仮)があればいいな、と思うのですが……。

細川:広いAFエリアを実現するには、AFモジュールのサイズも大きくなります。

それをマウントアダプターとして許容できる大きさに収められるかどうかが問題ですし、そもそもトランスルーセントミラー・テクノロジーによる従来型位相差AF方式が良いのか、それとも像面位相差AFなどを使う方式が良いのか? 技術の方向性としてお客さまにどういうメリットがあるのかを整理して考えていきたいところです。

――α7 IIボディに搭載されているファストハイブリッドAFと、マウントアダプターの従来型位相差AFをうまく連携させることができれば、Aマウントレンズ資産をもっと生かせるのに、と歯がゆく思ってしまいます。

手ブレ補正機構にしても、レンズ内方式とボディ内方式が共存できるなんて、α7 IIが出るまではありえないと思われていたわけで、きっと近い将来、アッと驚く方式でAマウントレンズのパフォーマンスをEマウントボディで生かせる日が訪れることを期待しています。

話は少し変わりますが、α77 IIやα99に搭載されている「AFレンジコントロール」(ボディ側から設定できるフォーカスリミッター)という機能を、ぜひα7シリーズにも採用してほしいのですが、技術的にEマウントレンズでも可能ですか?

AFレンジコントロール機能が搭載されれば、望遠撮影時に被写体をロストしたときのリカバーも速くなり、さらにミラーレスカメラでも動体を快適に撮れるケースが増えると思います。

α99やα77 IIに搭載されるAFレンジコントロール
ボディ側から設定できるフォーカスリミッター機能。フォーカス範囲を限定し、被写体をロストした際のムダな動きを低減できる

細川:EマウントのボディをMFにしてフォーカスリングを回すと、ライブビュー画面の下側に距離指標が表示されます。フォーカスがどの距離に合っているのか、レンズから距離情報を取得できるので、それを元にレンズをうまく制御すれば、AFレンジコントロールの実現は、技術的に不可能ではありません。後は、お客さまの要望がどれだけあるかですね。

α7やα7Rのマウントも強度に問題なし

――手ブレ補正機構やファストハイブリッドAF以外で、α7とα7 IIで進化している部分を教えてください。

江川:イメージセンサーも画像処理エンジンもα7と同じですが、内部の信号処理等はα7 IIに最適化しています。低感度の画質にはほとんど差はありませんが、高感度ノイズ低減のチューニングを見直し、高感度画質のブラッシュアップを図っています。

また、外観上の違いですが、グリップやシャッターボタン周りのデザインを変更し、より大きなレンズを装着した場合でも握りやすく、シャッターボタンも押しやすくなりました。また、シャッターボタン脇のカスタムボタンが1つ増えています。

――α7 IIを使ってみてちょっと気になったのが、背面のコントロールホイールのキーアサインです。α7/α7R/α7Sは右ボタンがWBに割り当てられているのに対し、α7 IIではISOになっています。カスタムキー設定でボタンの機能割り当てを変更できるとはいえ、同じα7シリーズで、主要な機能ボタンの割り当てが初期設定で異なるのは、何か特別な意図があったのでしょうか?

江川:コントロールホイールを誤って回してしまい、意図せずISOを変更してしまうことがあるというお客さまの声をいただいていたことが、大きな理由になります。α7 IIは上面にカスタムボタンが追加されていて、C1ボタンにホワイトバランスを割り当て、空いた右ボタンに同じく使用頻度が高いISO感度を割り当て、操作性の向上を図りました。

――なるほど。でも、どうせならコントロールホイールの右ボタンの機能表記をなくし、下ボタンと同様、なにも印刷されていない状態の方がカスタマイズしても混乱せずに済みますね。

そういえば、α7やα7Rは、マウントの内爪にエンジニアリングプラスティックが使われていますが、α7Sやα7 IIでは金属部材に変わっています。強度的には従来のα7、7Rで問題ないのでしょうか? 問題ないのであれば、なぜ金属部材に変更したのでしょうか?

江川:α7、α7Rのマウント強度は十分なものですので、安心してお使いください。α7Sの場合、外部レコーダーを接続して4K動画を撮影できるので、その際、レンズもシネマ用レンズやフォーカスをアシストするリグを装着するなど、一般的な写真撮影用レンズに比べると大きく重いレンズが装着されることが想定されます。

また、α7 IIもボディ内手ブレ補正を搭載したことで、従来よりもAマウントレンズをはじめ、超望遠レンズや動画用の重量レンズなど、さまざまなレンズが装着されることを鑑み、α7Sやα7 IIでは、マウントの内爪に金属部材を採用しています。

ちなみに、α7やα7Rでマウント面を強く押すとたわむ、とインターネットなどで話題になりましたが、α7シリーズは、マウントとイメージセンサーはマグネシウムの構造体に取り付けられていて、その構造体を外装カバーで覆うという構成になっています。また、マウントの一部分を強い力で押すと沈み込むことがありますが、マウント面とイメージセンサー面の平行は構造体で強固に保たれているので、片ボケなどの心配はありません。

なお、マウント周りのオレンジ色のリングは飾り部品でマウント強度には関係ありません。ただ、極端に強い力でマウント面を押すことは故障の原因にもなりますので避けていただきますようお願いします。

――最近は、α7、α7Rのマウントを強化する市販パーツも出ていますね。

藤林:非常に精密に調整して出荷しておりますので、十分な精度が保たれない可能性があります。マウントはそのままでお使いになることを強くおすすめします。くり返しになりますが、α7やα7Rのマウントは十分な強度や耐久性がありますので、安心してお使いください。

――本日はどうもありがとうございました。

 ◇           ◇

―取材を終えて― 多くのユーザーが恩恵にあずかれる柔軟な手ブレ補正機構に脱帽

ソニーαにはAマウントとEマウントの2つがある。フランジバックが短いEマウントボディには、マウントアダプターを併用してAマウントレンズを装着できるのが特徴だが、Aマウントはボディ側、Eマウントはレンズ側で手ブレ補正を行う仕様。

フルサイズのα7シリーズでAマウントレンズを使うと、まったく手ブレ補正が効かない状況になってしまうので、せめて望遠系のAマウントレンズにはレンズ内手ブレ補正を搭載してほしいと思っていた。まさかEマウントボディに、ボディ内手ブレ補正を搭載してくるとは想像もしていなかったからだ。

しかし、そのまさかが実現した。α7 IIに、Eマウントでは初となるボディ内手ブレ補正が搭載されたのだ。これは画期的なことだと思う。レンズ内手ブレ補正と競合しないのか不思議に思ったが、レンズ側に手ブレ補正が搭載されている場合には、角度ブレのみレンズ側で補正し、レンズ側で補正できないシフトブレと回転ブレをボディ側で補正するという。

さすがに、同じ方向のブレをレンズ側とボディ側で同時に補正して、補正効果を高めるなんてミラクルは実現できていないものの、それでも1つのマウントで同じメーカーが、ボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正の両方を採用したのはすばらしい決断だと思う。しかも、焦点距離の手動入力にも対応していて、オールドレンズなどを装着した際にも3軸ではあるがボディ内手ブレ補正が効く。

ペンタックスやオリンパスではすでに実現している機能ではあるが、Aマウントαでは頑なに拒んでいた機能を搭載してきたことに正直ビックリした。これまでのソニーとはちょっと何かが違ってきている気がする。

残る課題はAマウントレンズ使用時のファストハイブリッドAF対応だ。僕の勝手な願望だが、この難題も近い将来、確実にクリアされると期待している。

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。