特別企画

[保存版]ペトグラファー小川晃代さんが教える “一歩先行く”ペット撮影テクニック!

世界初「動物対応のリアルタイム瞳AF」の実力!

撮影:小川晃代さん
α7 III / FE 24-70mm F2.8 GM / 43mm / 絞り優先AE(1/800秒・F2.8・±0.3EV) / ISO 800

ソニー35mm判フルサイズミラーレスカメラ「α7R III」および「α7 III」とAPS-Cミラーレスカメラ「α6400」の最新ファームウェアが公開され、CP+2019のソニーブースで話題だった「動物対応のリアルタイム瞳AF」が使えるようになりました。

今回は、αを仕事で使いこなしているペトグラファーの小川晃代さんに、動物対応リアルタイム瞳AFを使った撮影術を教えてもらいました。使用したのは「規格外のベーシックモデル」ソニー35㎜フルサイズミラーレスα7 III。これから初めてフルサイズを検討する、ペット撮影をできるだけ高品質で撮影したい方には必見です。

ペトグラファー・小川晃代さん

トリマー、ドッグトレーナー資格をはじめ様々な動物資格を保持した写真家で今までに撮影した頭数は3万匹以上に及ぶ。

写真教室やスマホの撮り方講座の講師をはじめ、ペット雑誌の編集長やペット番組のディレクター、ペットモデルのコーディネートなどその活動は幅広い。

著書には「ねこきゅう」(東京書店)、「いぬのココロがわかる本」(ぶんか社)、「ねこの撮り方まとめました!」(日本カメラ社)、「こいぬ」「こねこ」(ポプラ社)他がある。


α7 III

生き物の写真は「瞳にピント」が絶対条件

——ペットの写真を見るのは好きですが、撮るのは難しくて諦めている人が多いと聞きます。小川さんが考えるペット写真のポイントは何でしょう?

写真を見る時、最初に被写体の瞳に視線が誘導されます。瞳にピントが合っていることが、写真の基礎中の基礎だと思います。

特に仕事の写真の場合ですが、瞳がぼけてしまうと、どんなに良い表情、良いシャッターチャンス、良いロケーションで撮っても失敗写真になります。

撮影:小川晃代さん

——いきなり難しそうですね。具体的にはどのような操作や設定が必要でしょうか。

従来のカメラで瞳にピントを合わせるためには、フォーカスフレームの位置を瞳に合わせる必要があります。私はマルチセレクター(ジョイスティック)を動かしてフォーカスフレームを動かしています。タッチでフォーカスを指定する機能を使う方法もあります。フォーカスモードは前後にペットが動いでも追い続けるAF-Cが良いでしょう。

フォーカスフレームを手動で瞳に合わせるのは難易度が高く、ある程度の習熟が必要です。特にペットは予想しない動き方をするため、カメラを始めたばかりの人に限らず「ペットが動いてしまって上手く撮れない」という悩みをよく相談されます。

また、カメラの背面モニターで確認するとピントが合っているように見えすが、パソコンのモニターで確認したら瞳ではなく、鼻にピントが合っていたという話もよく聞きますね。

瞳にピント
撮影:小川晃代さん
鼻にピント
撮影:小川晃代さん

——フォーカスフレームを中央に固定してAFを合わせ、その後カメラを動かして構図を作る、いわゆるフォーカスロックではだめですか?

キットレンズのような暗いレンズですとフォーカスロックも有効です。しかし、開放F1.8やF1.4のような明るい単焦点レンズになると被写界深度が浅くなるため、コサイン誤差によるピントのずれが生じます。明るいレンズを使うならフォーカスロックは使わず、フォーカスフレームを動かしたほうが確実ですね。

——相手が動物なので、人物のポートレートより難しそうです。瞳に光が入る、いわゆる「キャッチライト」も狙ったほうが良いですか?

はい。状況によっては難しいのですが、できればあったほうが良いですね。光のある場所で撮影してあげると、瞳にキャッチライトが入りやすくなります。犬は黒目が大きく、キャッチライトのあり/なしの効果がはっきりでます。

キャッチライトあり
撮影:小川晃代さん
キャッチライトなし
撮影:小川晃代さん

特に黒い毛の子は瞳が目立ちにくいので、キャッチライトを入れてあげたいですね。そもそも黒いワンコで逆光気味にとると、表情や輪郭がはっきりでません。光を意識してあげるのが重要になります。環境がよくない場合は、飼い主さんが白い服を着るのがオススメです。レフ板と同じように補助光をあてることで、毛の質感が出やすくなり、キャッチライトも入りやすくなりますよ。

猫は暗い場所で撮影すると瞳が大きくなります。なるべく暗いところで撮ってあげたいですね。

——止まっているペットを撮るだけでも難しそうですが、動いているところを残すとなるともっと難しそうです。

確かに、素早く動くペットを追い続けてフレームに収めるのは大変です。さらに最高の一瞬を残せるかとなると、カメラの性能と撮影者の技量が問われます。

解決策の一つが連写です。私も連写で撮影したのち、その中からベストショットを選んでいます。被写体が動いている場合だけでなく、止まっているときでも連写ですね。突然の動きに対応するためです。

——ということは、連写性能も重要になりますね。

はい。AFの精度・速度はもちろんですが、同じくらいカメラの連写性能も重視しています。最低でも7コマ/秒以上。いま使っているα7 IIIはフル解像度で最高約10コマ/秒のAF/AE追随高速連写できるので助かっています。

撮影:小川晃代さん

——そんなに連写するとなると、メモリーカードの記録速度も重要になりますか?

そうですね。私もそこは気になっており、α7 IIIではUHS-II Class 3対応のSDメモリーカードを使っています。

——シャッター速度はどのくらいに設定するのですか?

1/1,000秒前後に設定すると、走っている姿をピタッと止めて撮影できます。露出モードはシャッター優先AE、AF-Cが良いでしょう。

止まっている場合は最低でも1/200秒。これは室内での撮影の時です。なるべくISO感度を上げたくないからですが、最近のデジタルカメラは高感度での画質が良いため、ある程度感度を上げても問題ありません。むしろ高感度にして被写体ブレを抑えたほうが良いでしょう。

撮影:小川晃代さん

——さて、ソニーのα7 IIIとα6400に動物対応のリアルタイム瞳AFがファームウェアアップデートで追加されました。すでに使われているそうですが……

α7 IIIで動物対応のリアルタイム瞳AFを利用しているところ。

はい。私はこの時α7 IIIを使いましたが、カメラが自動で犬の瞳にピントを合わせ、かつ“合わせ続ける”能力について、かなり精度は高いと感じます。しかもシャッターボタンを半押しするだけで瞳を検出し、追い続けてくれるのは驚きです。

ペットの動きは予測がつきませんし、しかも瞳にピントを合わせなければならない。まさに動物対応のリアルタイム瞳AFは、ペット撮影の問題を解決する機能だと思います。フォーカスロックで発生するコサイン誤差を気にする必要もありませんし。

——小川さんのようにフォーカスフレームを瞳に合わせるテクニックがなくても、瞳にピントがあった写真が撮れそうですね。

撮れる確率はかなり高まりますね。どんなに良い瞬間を捉えたとしても、瞳にピントがあってなければ印象の薄い、いまひとつの写真になってしまいます。難しい操作をすることなく、それを自動的に撮影できるのは画期的です。

単に被写体を追って連写するだけでなく、構図や背景を考えたり、他のことに気を使えるようになるのも非常に強いメリットです。これまでペットの撮影を諦めていた人も、この機能を使ってぜひチャレンジして欲しいですね。動物の瞳へのフォーカシングをカメラ任せにできる機能の登場によって、むしろ撮り手の撮影技術は進歩するのではないでしょうか。

人気インスタグラマーにも感想を聞いてみた

動物対応のリアルタイム瞳AFの話を聞いたところで、小川さんが講師を務める撮影体験会にお邪魔しました。この体験会には、ペットの撮影が得意なインスタグラマーさんに集まっていただき、α7 IIIとα6400を体験してもらいます。

撮影体験会に集まったsarah_star1021さん、__leoleo____さん、manokalaさん、講師の小川さん(左から)。参加者さんは、いずれもフォロワー数8,000越えの人気インスタグラマーです。

カメラは小川さんも使用するフルサイズミラーレスのα7 IIIと、動きに強い軽量コンパクトなAPS-Cミラーレスα6400の2種類。

「α7 III」と装着レンズ「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」、「FE 24-70mm F2.8 GM」(写真左)
α6400ダブルズームキット

◇   ◇   ◇

3名の参加者には1名ずつ「背景ぼかしフォト」「動きフォト」「表情生き生きフォト」というテーマが与えられました。

テーマ「背景ぼかしフォト」はmanokalaさんが担当。

manokalaさん&ニウちゃん(♀ 7歳)
・カメラ歴:5年
・普段使っているカメラ:α7 IIとハイアマチュア向けミラーレスカメラ
・撮影で気をつけていること:できる限り奥行きがある撮影スポットを探します。
・撮影で困っていること:ピントを合わせる時に時間がかかってしまう。

α7 IIIのリアルタイム瞳AFを使って撮影:manokalaさん
α7 III / FE 35mm F1.4 ZA / 35mm / 絞り優先AE(1/3,200秒・F1.4・+0.3EV) / ISO 640

manokalaさん「動物対応のリアルタイム瞳AFだと、シャッターボタンを半押ししただけで、瞳にピントが合います。そのあとも緑色のAF枠がずっと瞳を追い続けてくれました。これがかなり便利で感動しました。しかも正確。軽いレンズなら片手で簡単に撮れそうです」

◇   ◇   ◇

テーマ「動きフォト」は__leoleo____さんが担当。使用カメラはα6400です。

α6400は、動物対応のリアルタイム瞳AFに加えて、認識した被写体を追い続ける「リアルタイムトラッキング」も搭載している動きに強いAPS-C機です。

__leoleo____さん&レオくん(♂ 2歳)
・カメラ歴:1年
・普段使っているカメラ:ハイアマチュア向けミラーレスカメラ
・撮影で気をつけていること:構図を意識して、背景に合わせてボケの絞りを変えています。玉ボケが好きなので、できそうな場所や向きを探しています。
・撮影で困っていること:ダックス系の子は鼻が長くそこにピントが合いやすいので、なかなか瞳にピントがこないことが多いです。
α6400のリアルタイム瞳AFを使って撮影:__leoleo____さん
α6400 / E 55-210mm F4.5-6.3 OSS / 70mm(105mm相当) / シャッター優先AE(1/1,000秒・F5.0・+0.3EV) / ISO 1000

__leoleo____さん「電源をONにしてシャッターを半押しするだけなので、初めてでもとても簡単に使えました。カメラ教室などに行かなくてもすぐに使いこなせそうです」

__leoleo____さん「うちの子は動きが速いのでピント合わせにいつも苦戦していますが、犬が目線を動かしてもAFがそれを追ってくれます。連写も速いので失敗写真がいつもよりほんとうに少なかったです」

◇   ◇   ◇

テーマ「表情生き生きフォト」を担当したのはsarah_star1021さん。α7 IIIに標準ズームレンズや望遠ズームレンズをつけて、撮影しました。

sarah_star1021さん&サラちゃん(♀ 2歳)
・カメラ歴:20年
・普段使っているカメラ:ハイアマチュア向けミラーレスカメラ
・撮影で気をつけていること:犬の体が白いので、後ろの背景の色みを気にしています。また、表情が豊かなので、喜怒哀楽が表現できるような写真を心がけています。
・撮影で困っていること:背景のぼかし方や、外光が入らない時にどのように自然な写真に魅せれるかを悩んでいます。
α7 IIIのリアルタイム瞳AFを使って撮影:sarah_star1021さん
α7 III / FE 24-70mm F2.8 GM / 58mm / 絞り優先AE(1/800秒・F2.8・+1.3EV) / ISO 800

sarah_star1021さん「ピント合わせに夢中になってしまう苦労がなかったので、サラが良い表情になった瞬間と、構図を考えることに意識を集中できました。可愛い顔の写真がほんとうにたくさん撮れるので、夢中で何枚も撮ってしまいました(笑)」

まとめ

人物のポートレート写真もそうですが、ペット写真も「瞳にピントを合わせる」ことが、基本中の基本です。しかし、写真が上手な参加者のみなさんでも、動いてしまうペットの瞳にピントを合わせることが一番大変だとのことです。

そんな参加者に動物対応のリアルタイム瞳AFについて感想を尋ねたところ、「いつもより失敗写真が少ないです」「ピント合わせはカメラがしてくれるので、背景にこだわれて良い写真が撮れました」「カメラを買い替えたくなりました」などなど、ペットの瞳だけでなく、愛犬家の心もガッチリ捉えたようでした。

私も犬を飼っているのですが、「今の姿が可愛い!」と思ってシャッターを切っても、ピントが外れてしまったり、ワンテンポ遅かったりすることが多くあり、ペット撮影でシャッターチャンスを狙うのはすごく難しいと感じています。簡単そうに素敵な写真を撮っている参加者さんの様子を横で見ていたら、私まで欲しくなってしまいました。

昔はプロのカメラマンしか撮れなかったような素敵な写真が、技術の進歩で誰でも簡単に撮れるようになったのはすごいことだと思います。

というわけで、気になるペットの飼い主さんは、お近くのソニーショールームで試してみてはいかがでしょうか。瞳の検出精度の高さに、きっと驚くと思いますよ。

瞳AFの実践動画を配信中!!

日本最大級のペット総合メディア「PECO(ペコ)」で、体験会当日の模様を動画で配信しています。ペットの瞳にAFが合う様子をばっちり収録していますので、気になる方はぜひチェックを!

体験会の様子を細かく紹介している記事はこちら↓

「動物の瞳」に自動でピントを合わせてくれるカメラ!? PECO編集部が体験イベントに潜入! | PECO(ペコ)

犬猫フォトコンが開催中です

ソニーでは「ソニーオープンフォトコン 犬猫フォトコンテスト」を開催します。ソニー製カメラ以外の作品もOK。スマートフォンで撮った写真も募集中のようなので、自慢の作品があればドシドシ応募してみてはいかがでしょうか。

開催期間

2019年7月16日(火)〜2019年8月18日(日)

賞品

大賞:ソニーポイント50,000円分 / 1名様
特別賞:ソニーポイント30,000円分 / 1名様
αユーザー賞*:ソニーポイント30,000円分 / 1名様
PECO特別賞:ソニーポイント30,000円分 / 1名様
入選:ソニーポイント2,000円分 / 12名様
*αユーザー賞のみ、ソニーのデジタル一眼カメラαシリーズで撮影された作品を投稿された方の中から受賞作品が決定されます。

提供:ソニーマーケティング株式会社

加藤マキ子

編集者、ライター。女子美術大学卒。二児の母。カメラ書籍を手掛ける編集プロダクションで女性向けのカメラ雑誌や書籍を多数手掛ける。その後、実用書系編集プロダクションを経て、2013年に独立。仕事が好きで、マグロのように止まらず常に全力疾走中!